スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

和歌山グランプリ&第四部定理五〇備考

2018-01-14 19:02:39 | 競輪
 和歌山記念の決勝。並びは横山‐武田の茨城,南‐東口の和歌山,三谷‐村上の近畿で菊地と郡司と原田は単騎。
 武田がスタートを取って横山の前受け。3番手に三谷,5番手に南,7番手に原田,8番手に菊地,最後尾に郡司で周回。残り3周の1コーナーを回ると郡司が上昇。これに原田と菊地が続きました。郡司はバックで南の横に並ぶとそれ以上は上昇しませんでした。しかし南も引かなかったので村上の後ろで南と郡司が併走。残り2周のホームの手前から後方を警戒した三谷が武田との車間を開け,変則的な隊列でそのままバックへ。打鐘直前にようやく誘導を抜いて横山が流れ先行。ホームで郡司に踏み勝った南が発進。東口の後ろにスイッチしたのが菊地。バックで南に合わせて三谷が発進。前と車間があったので武田が三谷を大きく牽制。このあおりで南が落車。東口がすかさず村上の内に斬り込み,コーナーで村上の前に出ると一杯になった横山を抜いて優勝。東口を追う形になった村上が半車身差で2着。東口の後ろにいた菊地が内目を伸びて4分の3車身差で3着。大外を捲り追い込んだ郡司が半車輪差で4着。
 優勝した和歌山の東口善朋選手は記念競輪初優勝。このレースは南の先行が有力で,横山が先行争いを挑む可能性もあると予想していました。郡司に被せられたときに南が引かなかった理由がよく分からないのですが,もしかしたらまず三谷が横山を叩き,その上から南が先行するという近畿勢の作戦があったのかもしれません。逆にいえば郡司はそれを見越していたから南の横で執拗に併走したのでしょうか。いずれにしても想定とはかけ離れた展開になったのですが,最終周回のホームで南が郡司に踏み勝てたので,不発に終わることはありませんでした。アクシデントが発生した3コーナーでの俊敏な動きが東口に地元での優勝を齎したといえるレースだったと思います。

 第四部定理五〇は,理性ratioに従う人すなわち自由の人homo liberにとって憐憫commiseratioという感情affectusは,悪malumであり無用であるといっています。しかし同時にこのいい方は,明らかに自由の人ではない人,第四部定理七〇のいい回しに倣えば無知の人にとっては憐憫が有用である,少なくとも有用であり得るという裏の意味を有しています。その理由についてのスピノザの考え方は,第四部定理五〇備考に示されています。
                                
 「容易に憐憫の感情を催し他人の不幸や涙に動かされる者は,のちにいたって自ら悔いるような行ないをしばしばなしているのである。なぜなら我々は,感情に基づいては,善であると我々の確知するような何事をもなすものでなく,また我々は偽りの涙に容易に欺かれるからである」。
 このあたりは,少し前に記述した,不幸な人間の不幸を期待してしまう性質に対する警告として読むこともできるでしょう。そしてこの部分は,自由の人にとって憐憫が悪でありまた無用であることについての言及です。続けてスピノザは次のようにいっています。
 「しかし私はここで明らかに,理性の導きに従って生活する人について語っているのである。というのは,理性によっても憐憫によっても他人を援助するように動かされない者は非人間と呼ばれてしかるべきである」。
 要するに,理性に従えば人間は他人を援助するように動く,他面からいえばそのような能動的な欲望cupiditasを感じるのであって,憐憫という感情affectusにはそれと同じように受動的に人間を動かす力potentiaがあるとスピノザは認めているのです。第三部定理二七は,人間が現実的に存在する限りでは必然的にnecessario生じるような感情の模倣imitatio affectuumなので,憐憫という感情の模倣を感じない人間は,おおよそ人間らしさを欠いているといわざるを得ず,だから非人間と呼ばれて当然だとスピノザはいっているわけです。なお,これは極端な話をしているのであって,この感情の模倣は人間が現実的に存在する限りでは必ず生じるのですから,ここでいわれているような意味での非人間が現実的に存在するというわけではありません。むしろこの文脈は,非人間に対する批判というより,憐憫という感情の有用性として読解するのが妥当です。

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