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2014年10月01日 | 国語真偽会
9月25日の朝日新聞の1面の記事に、国語世論調査が載っていた。

名詞や外来語などを語幹にして、「る」や「する」といった活用語尾を付し、
動詞の形にするものについて、文化庁が調査したというのだ。

表の数字は、左から順に
○使うことがある ○聞いたことはあるが使うことはない
○聞いたことがない ○分からない

愚痴る  「愚痴を言う」  48.3  44.7  6.8   0.2
事故る  「事故を起こす,事故に遭う」 52.6  41.5  5.7   0.1
告る   「(好意や愛を)告白する」  22.3  52.3  25.0  0.4
きょどる 「挙動不審な態度をする」  15.6  34.9  48.7  0.7
サボる  「なまける」  86.4  12.5  1.0   0.1
パニクる 「慌ててパニックになる」  49.4  41.6  8.8   0.2
タクる  「タクシーに乗る」  5.9   21.6  71.9  0.5
ディスる 「けなす,否定する」  5.5   20.1  73.7  0.6
チンする 「電子レンジで加熱する」  90.4  8.3   1.2   0.0
お茶する 「喫茶店やカフェなどに入る」 66.4  27.6  5.8   0.3

調査書全体は文化庁のサイトで見られる。
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/yoronchousa/h25/pdf/h25_chosa_kekka.pdf
上の表は、サイトの調査書の表を、新聞記事に倣って並べ直したものだ。

「愚痴る」「事故る」のように漢語がもとになっているものはそう新しくなさそうに思う。
一番新しいのは「ディスる」ではないだろうか。
これは、ラップで相手をやり込める流儀からきている。
英語のdisrespect、虚仮(こけ)にする、といった意味の語の略だ。
「サボる」は浸透しているように思っていたが、「使うことがある」86.4%とやはり高い。
サボタージュという、労働ストライキの意味のフランス語からきている。
これも語の頭の2音節だけを取っているが、sabotageというフランス語自体が、
サボという木靴を労働者が打ち鳴らしたことからきているのが、面白い。

世代によって、使う~聞いたことがない、に差がありそうだ。
調査書によれば、「タクる」は70歳以上で使うことがある人が0%となっている。
しかし、私が「タクる」という言葉を覚えたのは、子どもの頃、
母が使っているのを聞いてからだ。母は今81歳である。

このように、言葉に関しては、個人の経験や環境の違いによるところも大きい。
調査はあくまで、回答のあった約2,000人についての数値だ。

このように作られた語彙は、「ディスる」「チンする」「パニクる」なら
外来語を略したということが明らかだ。
しかし、使われて時代が進むにつれ、浸透し、日本語になっていくのだろう。

先日、穐山古洲著『戦後風俗史』という本を読んでいて、驚いた。
「ねだる」という語も、そのようにして作られたのだという。
しかも、できかたが複雑だ。
上の表にあるように「ねだ+る」でできたのではなく、
連用形の、「おねだり」から派生したのだという。

戦後に、進駐軍相手の娼婦がいたことは知られている。
彼女たちは、「パンパン」と呼ばれ、蔑まれた。
このパンパンたちが使い始めたのだそうだ。

親密になった米軍兵士に、甘えて言う
「おねがい、ダーリン♥」を略して、
金品を要求することを「おねダリする」と言った。

この「おねダリ」の部分を、動詞の連用形と見て、
終止形を「ねだる」とした。

これは、歴史を紐解いてみないと分からない。

かくも言葉は姿を変える。
日本語は面白い。

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