今年は久しぶりに盆踊りが開催されている。
暑さがなんとか収まった夕暮れ時に犬の散歩をしていると、
どこからともなく太鼓の音が聞こえてくる。
少し進むと、聞こえてくる方角が変わる。
住宅街で音が反射しているので、なかなか会場がどこだか分からない。
夏だなあ
※
家からほど近い、深大寺の盆踊りがやっぱり好きだ。
北側は湧き水のある森だし、
会場の四方を水路が流れているので、
とにかく涼しい。
他の会場とは比べものにならない、潤いと涼しさだ。
そのくせなぜか蚊がいない。最高だ。
※
コロナ禍明けとでも言うか。
例年以上に人出が多かった。
道ばたに小さいテーブルを出して過ごしている家族もいくつか有る。
夜店には何十人と列ができている。
※
アンパンマンマーチとドラえもん音頭の後に太鼓の交代が有るというアナウンス。
時間が有るので、生ビールを飲む。
8時から子どもたちにお土産が配られる。
櫓の上から、そば組合の兄さんたちがおもちゃを投げる。
水鉄砲だ。
このお土産タイムが過ぎると、会場がだいぶ空く。
だから、
7時半ならいいのになあ。以前は7時半じゃなかったっけなあ。
私はお土産タイムの終わった頃を狙って、踊りに行く。
近所の気軽さだ。
※
踊りの輪が進んでいく。
輪の外に立っている見物客の中に、知った顔が有る。
我が家の前を犬の散歩で通る知り合いだ。
次の曲から一緒に踊る。
※
盆踊りは何拍かの振り付けを、曲の間ずっと繰り返す。
例えば炭坑節は13拍、東京音頭は10拍。
ちゃんちきおけさは18拍、大東京音頭は20拍。
もちろん短ければ憶えやすい。
同じ振り付けが一曲の中で何度も繰り替えされるので、
輪の外で見て練習しても、憶えやすい。
また、奇数の拍は右足を前、偶数の拍は左足を前に出すのが基本だ。
だから、下がる時は左足から下がる。
東京音頭は踊り始めでいきなり左足を下げるので、
初心者は踏まれたり踏んだりする。
この基本とおりの炭坑節や東京音頭は簡単。
大東京音頭やちゃんちきおけさは、輪の中心に向く時が有る。
もう一つの基本は、反時計回りということ。
ちゃんちきおけさや花笠音頭は途中で時計回りの部分が有って、
初心者はビビる。
※
そして、
調布小唄はとにかくやたらと小難しい。
なんたって、48拍有る。
む?シャシャンがシャン、シャシャンがシャン、を入れると52拍か?
反時計回りは守られるが、
途中、その場で右へ4分の3回って、また左回りでもとに戻るという部分が有る。
回りきっちゃいけなくてオタつく。
足は1拍一歩ではなく、たまにちょんちょんと半拍で足を運んだり、
止まったりする。
止まる時も、右足が前なのか左足が前なのか。
部分ごとの振り付けが難しいわけではないのだけれど、
とにかく全体が長いので、憶えきれない。
うろ憶えのまま踊る。
一周が長いので、一曲の間に振り付けが3周しかしない。
やっと憶えかけたか、というところで終わる。
なので、2回続けて掛かったりする。
そんでも憶えられない。
52拍はやり過ぎだよ先生。
いや、多摩川に布を晒す所作などが有って、楽しいですはい。
※
ちゃんとyou tubeを見て、練習して、
来年は踊れるようにして行きたい。
https://www.youtube.com/watch?v=67Xrw4SMj58
※
「す~さん」と声を掛けられた。
踊り好きの常連さんの一人だ。
よくご夫婦できれいに踊ってらっしゃる。
「大雨の時に、お世話になりました。」
いや、結局なんのお世話もしていない。
車で来てらっしゃるということで、問題無かったのだ。
10年くらい前だったかもしれない。
深大寺の盆踊りが低迷していた頃だ。
踊りの人数も少ないところへもってきて、
風呂桶をひっくり返したような土砂降り
あれ?それは大袈裟か。そんなに降ったら中止するか。
とにかく、小人数で雨の中を踊って、いくばくかの高揚感が有ったような記憶が有る。
※
踊り好きの女の子がいた。
最初に見た時は、小学校の2、3年生くらいだったか。
いつも、木の陰でおばあちゃんが見守っていた。
あの雨の日も、一緒に踊った。
考えてみると、今はもう二十歳くらいになっているのだろう。
コロナ禍の数年見ていない。
十代後半の女の子の変わりようったら、
私のようなオッサンにはきっと今、隣で踊っていても気付かないだろう。
会いたいな。
と思っていたら、
いつもの木の下に、おばあちゃんがいる。
おばあちゃんは10年前も既におばあちゃんだったから、
今もおばあちゃんなので、変わり無いのだ。
多分、きっと、あの子のおばあちゃんだ。
ということは、このおばあちゃんの視線の先にあの子がいるだろう。
それが見えなくても、一緒に帰るだろうから、
曲の終わりまで見届ければいいはずだ。
と思っていたが、
なんせ人が多くて。
紙コップを捨てに行くうちに、見失ってしまった。
おばあちゃん、長生きしてね。
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