犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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まさがいだらけの日本語 選ばれし者の巻

2016年03月11日 | 国語真偽会
現代語の中にちょいと古語を混ぜると、なんかかっこいい。
もっともらしい感じがする。
いかめしい感じがする。

「選ばれし者」なんて言い方を、よく聞く。
オリンピックのナショナルチームだとか、
ロールプレイングゲームの伝説の勇者だとか。

現代語で言えば、
「選ばれた者」だ。
これを古文に置き換えたつもりなのだろう。
「選ばれし者」と。

これをバラバラにすると、
「選ば」「れ」「し」「者」という4つの部分に分けられる。
「選ば」は「選ぶ」という動詞の未然形。
「れ」は受身の意味の助動詞「る」の連用形。
「者」は名詞で、「し」が問題の箇所だ。

「し」は、助動詞「き」の連体形だ。
助動詞「き」の表す意味は、過去である。
ある時点で何かがあった、その過去の一点を示す、そういうただの過去だ。

現代語で、そういう過去を表す助動詞は、「た」である。
「12時ちょうどに昼食を食べた。」
という過去を表す。

さて、「選ばれた者」と言った場合、
「3月の選考会で選ばれた。」
というふうに、過去のある時点のできごとを言っているわけではない。
「選ばれて、今も選手である者」のことを言っている。
選ばれた時のことよりも、今もその状態が続いていることが言いたいポイントなのだ。

現代語の助動詞「た」には、そういう存続の意味もある。

しかし、古語の助動詞「き」には、存続の意味は無い。
ただの過去なのだ。
現代語の助動詞「た」には過去と存続と両方の意味が有る。
「選ばれた者」と言った場合は存続の意味なのだが、
そこを過去だと誤解し、過去なら古語では「き」だ、
と置き換えたところに間違いが起きている。

では、存続の意味を持つ助動詞は何かと言うと、「たり」である。
名詞に続く場合は連体形を取るので、「たる」になる。
ということは、正しくは、
「選ばれたる者」
となる。

案外、現代語の「た」と似たものが正解だったのだ。

「選ばれし者」と言うと、
その時は選ばれたけどそれっきりで、今は別に関係無いただの者、
という過去の栄光になってしまう。
今現在活躍している人は、断然「選ばれたる者」なのである。

ほんと、この「選ばれし者」はよく見かけるから、
見聞きしたら心の中で
「ほんとは『選ばれたる者』なんだぜ!」と
ツッコもう。



↓現役高校生にはここの説明が分かりやすいかも。
http://www.juku.st/info/entry/401

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
為になります。 (早津直人)
2016-03-11 09:55:26
須山さん、おはようございます。お疲れ様です。
文系が苦手な私にも解りやすい説明です。ありがとうございます。(^-^)
返信する
励みになります。 (す~さん)
2016-03-12 06:54:16
そう言っていただけると嬉しいですねー

学校の授業はなんであんなにつまんなくてわかりにくかったんだろう・・・
返信する

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