[あらすじ] 昨年10月に書を独習し始め、嵩じて、
現代日本書道の源流と言える比田井天来の生地、中仙道望月の宿を訪ねた。
南は八ヶ岳が連なり、北には浅間を眺める佐久の地に夜着いて、
私はまず鯉のあらいを食べた。
現地でこその新鮮みだもんねーだ。
天来の生家からすぐ近くの、田んぼの真ん中の公民館の駐車場で泊まった。
田んぼのど真ん中で、蛙の声を聞きながら寝るのが好きなのだ。
シュレーゲルアオガエルの軽い声が好きだが、
自宅で聞こえてくるのはアマガエルの騒々しい鳴き声だけだ。
夏至前のこの時期が、一年のうち日の出が最も早い。
ということは、私の目の覚めるのも早い。
4時前には起きる。
天来記念館の開く9時までに、ひととおり他の場所の石碑も見て回ろう。
天来の生家の小さな裏山に登る。
中腹に碑林が作ってある。
天来を中心に、門流の人たちの書が刻まれている。
私はなんとなく、石碑というのは怖い。どうも苦手だ。
でもつぶさに見る。
石に刻む前の、紙に墨のものが見たいと思う。
遠くからも目に付く位置に、倉がある。
真っ白な土壁に「天鳳」と大きく書いてある。
これを目近で見た。
遠くからでは判からない、墨の濃淡で、筆の動きの跡が見える。
倉の裏には、金子卓義の蔵、と書いてある。
書いているその場を見たかったものだ。
それから、近くの宝国寺の参道入り口にある、門標などを見る。
寺そのものを訪ねてみると、無人になっている様子で、
境内は少し荒れている。
本堂から続いて木造の居館があり、門柱は煉瓦づくりで、
なにか和洋折衷のにおいがして、往時を偲ばせる。
このまま荒れさすのは惜しいように思う。
寺の入り口の門標も立派な字だ。
後になって、記念館で買った本によって、さきほどの倉と同じ金子卓義の書であることを知った。
さて一旦ちょいと時間が飛ぶが、
この日の午後、望月から離れる前に、一軒の菓子屋に寄った。
名物の雁喰い味噌を使った蒸しカステラを、
留守の間の犬の散歩を頼んだ友人Mへの土産に買おうと思ったのだ。
書の町望月では、何人もの書家が町内の店の看板を書く、という
プロジェクトを10年あまり前に行った。
町を歩くと、様々な書の看板が目に入り、実に楽しい。
この木村屋さんのウインドウにも、書の看板が出ている。
看板の写真を撮らせてもらうと、店のご主人が教えてくれる。
「この方は、これを書いた2年後に亡くなってしまったんですよ。」
聞けば、朝見て来た倉と寺の金子卓義である。
店の奥には他に、天来を始め、高橋蒼石などの書が何気なーく置いてある。
「この方もがんばってますよ。」
棚の中央には「無極」との書。
書家本人の説明書が下に置いてある。
見ると、吉野大巨という人で、住所は武蔵野市吉祥寺南町…
って、ウチからほど近いではないか。
「大澤酒造には行きましたか?」とご主人。
ええ、これから向かうところです。ふっふっふ。
つづく
現代日本書道の源流と言える比田井天来の生地、中仙道望月の宿を訪ねた。
南は八ヶ岳が連なり、北には浅間を眺める佐久の地に夜着いて、
私はまず鯉のあらいを食べた。
現地でこその新鮮みだもんねーだ。
天来の生家からすぐ近くの、田んぼの真ん中の公民館の駐車場で泊まった。
田んぼのど真ん中で、蛙の声を聞きながら寝るのが好きなのだ。
シュレーゲルアオガエルの軽い声が好きだが、
自宅で聞こえてくるのはアマガエルの騒々しい鳴き声だけだ。
夏至前のこの時期が、一年のうち日の出が最も早い。
ということは、私の目の覚めるのも早い。
4時前には起きる。
天来記念館の開く9時までに、ひととおり他の場所の石碑も見て回ろう。
天来の生家の小さな裏山に登る。
中腹に碑林が作ってある。
天来を中心に、門流の人たちの書が刻まれている。
私はなんとなく、石碑というのは怖い。どうも苦手だ。
でもつぶさに見る。
石に刻む前の、紙に墨のものが見たいと思う。
遠くからも目に付く位置に、倉がある。
真っ白な土壁に「天鳳」と大きく書いてある。
これを目近で見た。
遠くからでは判からない、墨の濃淡で、筆の動きの跡が見える。
倉の裏には、金子卓義の蔵、と書いてある。
書いているその場を見たかったものだ。
それから、近くの宝国寺の参道入り口にある、門標などを見る。
寺そのものを訪ねてみると、無人になっている様子で、
境内は少し荒れている。
本堂から続いて木造の居館があり、門柱は煉瓦づくりで、
なにか和洋折衷のにおいがして、往時を偲ばせる。
このまま荒れさすのは惜しいように思う。
寺の入り口の門標も立派な字だ。
後になって、記念館で買った本によって、さきほどの倉と同じ金子卓義の書であることを知った。
さて一旦ちょいと時間が飛ぶが、
この日の午後、望月から離れる前に、一軒の菓子屋に寄った。
名物の雁喰い味噌を使った蒸しカステラを、
留守の間の犬の散歩を頼んだ友人Mへの土産に買おうと思ったのだ。
書の町望月では、何人もの書家が町内の店の看板を書く、という
プロジェクトを10年あまり前に行った。
町を歩くと、様々な書の看板が目に入り、実に楽しい。
この木村屋さんのウインドウにも、書の看板が出ている。
看板の写真を撮らせてもらうと、店のご主人が教えてくれる。
「この方は、これを書いた2年後に亡くなってしまったんですよ。」
聞けば、朝見て来た倉と寺の金子卓義である。
店の奥には他に、天来を始め、高橋蒼石などの書が何気なーく置いてある。
「この方もがんばってますよ。」
棚の中央には「無極」との書。
書家本人の説明書が下に置いてある。
見ると、吉野大巨という人で、住所は武蔵野市吉祥寺南町…
って、ウチからほど近いではないか。
「大澤酒造には行きましたか?」とご主人。
ええ、これから向かうところです。ふっふっふ。
つづく
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