[あらすじ] 物置を整理するのだ。
つまり、物を捨てるのだ。
古い鞄がどうしてこんなにたくさん有るのか。
とっておくなら使えばいい。新しい物を買う必要が無くなる。
使わないなら捨てていい。使わないのだから。
昨年の6月に特別養護老人ホームに入居した老母は
私に片付けろ片付けろと口やかましかった。
しかし、母の片付け方は「見えない所にやっちまえばOK」
というやり方である。
見えない所にやると、もう見ないので、忘れる。
捨てるのと同じである。
いや、同じではない。
捨てないで抱え込む分、スペースを食う。
収納には限界が有る。
いつか物は現在の生活を圧迫する勢いとなる。
※
45年近く前に二十歳で他界した兄の、
幼稚園から高校時代の紙の物が山ほど有る。
教科書、ノート、成績表、スケッチブック。
見始めたらキリが無い。
でも少しだけ見ちゃう。見ちゃうよね。片付けの時って。
※
子どもの頃のスケッチブックを見ると、
めくれどもめくれども、乗り物の絵ばかりである。
車、電車、船、ロケット、飛行機、
レールや橋も描かれる。
人物はまったく登場しない。
兄は後にカメラに夢中になった。
一眼レフを中心に、二眼のカメラも持っていた。
最後の都電や、どこぞまで出張って蒸気機関車などを撮っていた。
自分で現像して、モノクロの焼き付けもしていた。
※
成績表がある。
中学3年。
成績は5段階で3と4がほとんどで、
数学だけ5だったり、中学では保健体育が年間2だったり。
担任の評価の欄を見る。
「第2学期
数学などはよく努力しているように見えましたが 他はどうでしたかネ。
まだたりないヨ。」
保護者からの連絡欄を見る。母の字だ。
「第1学期
本人の自覚が漸く見られて来たようです。
道のけわしいことは本人が一番感じていると思われます。」
ゲゲッ
「第2学期
旨いとは言えないエネルギーの配分にも問題があるように思えました。
実技の不得意なものはペーパーテストの方で頑張ればよいのに
特に努力しているようには見えませんでした。残念です。」
おお。
母も父も大学の教員であった。
家の中に先生がいる。
親の代わりに先生がいる。
安心の代わりに監督が有る感じがして、
私は中学生の頃にずいぶん反発した。
ということを思い出した。
思い出しながら湧き上がる言葉はひとこと、
「うぜえ」だけだ。
※
先日、高校時代の成績表やノートを見たが、
保健体育もきっちりとしたノートを作って勉強して、
中くらいの成績を取っていた。
https://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/0a589a5db97214b9e98aa07a6b2ac1d6
親先生の指導に従ったのか。
※
小学1年生
「・おとなしく素直で何事にも熱心さが見られます。
お友達とも仲良く交わっていますが
もう少し活気があればよいと思います。」
小学2年生
「・温和で級友とけんかすることが全くみられない。
人に頼らず自分で正しいと信ずることをはっきりと述べるが、
活気のある生活態度をほしい気がする。」
小学3年生
「・非常におだやかである。
動作にきりっとしたところがみられないが、学級のきまりなどよく守っている。
男の子らしい活発なところをほしいものである。
・まじめで、基本的な生活習慣が身についている。
級友間ではふざけたり、大声を出したりすることがあるが、
教師の前ではやらない。言葉づかいがていねいである。」
そう。亡兄は非常におだやかであった。
おだやかに、親の言い付けも守ったものであろう。
小学4年生
「・性格や行動面には何らの心配することはありませんが、
顔色から受ける印象は健康的ではありません。
身体の精密検査を受けさせる必要があるように思えますので医師と相談してください。」
相当、元気が無かったようである。
兄は5歳くらいの時に産みの母と死に別れている。
小学2年生くらいの時に、父は再婚した。
※
何年生の時のスケッチブックだろうか。
表紙の裏に、珍しく文字が書いてある。
「パパバカ
パパバカ
パパのバカ」
父はこれを見ただろうか。
※
私は、十代前半の女子二人のいる女性と同居していたことが有る。
ある日、下の子の部屋の座卓を見たら、
「お母さんのバカ
すやまのバカ」
と小さく書いてあった。
必ず出る言葉だけれど。
どんな時に書いたのだろう、と思う。
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