旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

時空旅行者の砂時計

2023-12-10 17:17:17 | 図書館はどこですか



続けざまに図書館でお借りしたのが、「時空旅行者の砂時計/方丈貴恵(ほうじょう
きえ)著」です。きっかけは新聞の紹介記事で、今度、文庫本化され、再発売される
との内容でしたが、私が手にしたのは初版単行本でした。

同じく方丈さんの作品では、以前「名探偵に甘美なる死を」を読んでいて、この時空~
は『竜泉家の一族』シリーズ第一作目、名探偵~はその三作目となるようです。正直、
名探偵~は読むのに相当苦戦した作品でした。VR空間など、私がついていきにくい
最先端ハイテク機器をふんだんに取り入れた内容に加え、シリーズを初めて読む身には
理解しがたい初期設定もあるなどしたためでした。結果、読む順番が逆になっても、
いい機会でもあり、手に取りたいと思ったのです。

タイトルからもわかる通り、タイムトラベルにより1960年へと舞台を移すという
SF的な要素を手助けに、まずはクローズドサークルを作りよい状況を生みます。
このあたりは近年発表されるミステリーの共通項、かなりの力技でないと、スマホや
防犯カメラなどが使えない設定に持ち込めないんですね。ここからは、横溝正史ばり
の旧家にまつわるおどろおどろしい連続殺人事件が勃発、作者は本格路線のみにこだわる
ことなく、変格的(SF的)なスパイスを絡ませて犯罪を成立させるのが、この小説の
特徴でしょうか。やや反則技っぽい構成にも、ストーリーにより深みを持たせるためだと
理解できなくはありません。

ただ、複雑な家系設定の割には、人物の性格付けなどがステレオタイプであまり練り
込まれていないのが少々気になるし、明確なトリック解明はできないまでも、おそらく
この人だろうと勘繰った人がやはり犯人で、最後に動機が判明した後も、それじゃ
ちょっとありふれてないですか? と突っ込みを入れたくなりました。過去と未来
(タイムトラベラー)が交差する世界観が独特なだけに、あっさりしすぎている描写が
それに水を差すようで、もったいない気がしたのです。

細々とした不満はあるのは確かだけど、陰惨な事件のあとにしては読後感は比較的
さわやかで悪くなく、シリーズ化しているということは、たぶん主人公(正義)は
負けない設定、安心して感情移入でき、親しみやすいのは確かでしょう。この勢いで、
シリーズ第二作も読んでみますか!

コメント
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