図書館で順番が回ってきたのは、「バーニング・ダンサー/阿津川辰海著」、
少し前に同じ著者の長編作「黄土館の殺人」を読んですぐのタイミング、
これだけ立て続けに大作を発表されているところを見るにつけ、阿津川さんは
筆が乗っている旬の作家のひとりなのでしょう。
黄土館~が本格推理もの「静」だったのに対して、こちらはハードボイルド調
アクション編「動」と趣きはかなり異なっていて、警察小説もの、あるいは
超能力バトルものなどのジャンルにも含まれそうなミステリーです。やや硬質な
阿津川さんの語り口からすると、前作よりもこちらのほうがよりハマっている
ように思われ、引き込まれて一気読みに近いような勢いで完読しました。
ただ、各々異なった特殊能力を持つ者が正義(この作品の場合警察組織)と悪
(テロリスト)とに分かれ対峙する設定は、アニメ作品などでもよく見かける
構図で、どれが大元かは存じませんが、たとえば人気作「TIGER & BUNNY」
などでも特殊能力者同士のバトルが描かれていて、バーニング~の根幹を成す
メイン設定は既視感があるもので、正直目新しさには欠けます。また唐突に
「ロカールの原則」が語られるなど、おそらく阿津川さんがこれまで影響を
受けてきた先達らの引用がランダムに散りばめられ、それが作品全体を通して
の統一感を少し阻害しているような気がするのが惜しいところでしょうか。
そして、これは誉め言葉になるかどうかはわかりませんが、このままアニメ化
されてもおかしくないような視覚に訴えてくる作品でもあります。どんでん
返しの連続で、「巨悪」はまだ眠ったまま、続編にも期待したいところです。
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