ホームズもの読書シリーズ第五弾は、「シャーロック・ホームズ全集5・
バスカヴィル家の犬/アーサー・コナン・ドイル著」です。このところは
全集の番号順、書かれた年代順に読めていることになります。
バスカヴィル家~を読むのは初めてでしたがタイトルには聞き覚えがあり、
それもそのはず、ホームズの長編もの四作中、一番の人気作だということです。
確かに、これまで読んだ「緋色の習作」や「四つのサイン」と比べても、
これが一番面白くて、よくできていると思いました。いにしえの作品にしては、
現在でもそのまま通じるくらい完成度が高く、昨今発表される数多くの
ミステリー小説は、本を正せば、底の底の部分では、どれも皆この作品を
下敷きにしているのではと思えるほどです。直接本件に関係あるのかないのか
よくわからない事件を並行して勃発させ、読者をミスリードする、解決までの
道筋を余計にややこしくするなんてことを、こんな創世記にすでにやっていた
ことにも感心します。サスペンス、スリル、怪奇趣味などが高いレベルで融合
しているように思いました。
前二作の長編と比べても工夫がみられ、前作では最後に年代を遡り事件の背景が
明らかにされるのに対し、今作では冒頭で事件に至るまでの古い因縁が語られるし、
ホームズがロンドンに残留し現場へは赴かず、名探偵不在のまま、途中経過は
ワトスンの手紙や日記で事件の進展が明らかになったりと、読者を飽きさせない、
中だるみを防ぎ、興味を持続させることを意図したつくりとなっています。
またこの作品にも、ドイル家の複雑な家庭事情が織り込まれていて、ドイルの
当時の深層心理が読み解けるなど、いわば二重構造のような構成は、現代の複数の
推理、結末が用意された難解な作品たちと相通ずるようにも思われ、この点でも
先駆者だったと思えてきます。
短編の切れのある作品群もいいですが、やはり長編で読み応えのある本作は
とても魅力的です。そういえば、前作でホームズは死んだはず、なんの説明も
なくこの物語はしらっと幕を開け、何事もなかったようにホームズが活躍します。
この作品の位置づけに関しては、ホームズが死去する前の過去の物語だとする説、
「実は死んでいなかった」的な復活後の物語だとする説との、二通りの見解に
分かれているそうです。ドイル自身商業的な誘惑が捨てきれず、ホームズものを
復活させたのには違いないとのことで、どちらにせよそれなりの矛盾が生じて
いることはやむを得ないでしょう。
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