このたび図書館でお借りして読んだのは、「此の世の果ての殺人/荒木あかね著」
です。少し前に「ちぎれた鎖と光の切れ端」を読み、前作(デビュー作品)を
読んでみたくなったのです。彼女はこの作品で江戸川乱歩賞を受賞し、それが
文壇デビューのきっかけとなったようです。
まず、装丁、装画が二作ともとてもよく似ていることが目を引きます。まるで
姉妹作であるかのように錯覚しますが、共通項はほとんどありません。荒木さんが
福岡出身ということで、両作とも九州が舞台となっていることくらいでしょうかね、
似ている点は。むしろ、ちぎれた~の直球勝負に対して、こちらは特殊設定の
変化球、小惑星が地球に衝突し、人類滅亡まで残された時間が数カ月しかない
極限状態で発生した連続殺人事件、用意された舞台環境が真逆なことに驚きました。
小惑星墜落予測地点が阿蘇周辺、ほとんどの人々が九州から逃げ出している中、
荒廃した街に残らざるを得なかったごくわずかな人々と、それを狙いすまして
殺戮を繰り広げる殺人鬼。この終末期にわざわざ人を殺す犯人も犯人だが、それを
食い止め、逮捕しようと奮起する主人公ふたりの女性もどうにかしてはいます。
しかし、あり得ない話に現実味を帯びさせる巧妙さが荒木さんの魅力で、知らず
知らず物語にのめり込んでいる自分に気がつきます。こんな究極のシチュエーション
でも、ほんまに警察組織は機能しているんかいなとか考えてみたり、すっかりその
世界観に入り込んでいるのです。外国ならいざ知らず、日本では、一部の律儀な
人が最後の最後まで市民の安全を守るため、公務を続ける可能性があるかもなあ。
ただ、ちぎれた~でもそうだったように、荒木さんが描く女性像にはどうにも
共感できず、今回も主役ふたりには、最後まであまり感情移入できないままでした。
それもそのはず、彼女は本作を発表した際には23歳だったそうで、現在もまだ
25,6歳の若きホープ、ジェネレーション・ギャップがあるのは当然で、今時の
方が描く女性像はこれがスタンダード、老兵の感性とずれがあってもおかしくは
ありません。計算づくで、わざとつっけんどんでとっつきにくい印象を植え付けて、
入れ込み過ぎず、客観的に筋を追っていくよう誘導されている可能性もあり得ます。
事件が解決しようとしまいと、いずれ全員木っ端みじんに吹き飛ぶという終末観の
すさまじさと裏腹に、長く余韻が響き渡るような美しいラストが心に残りました。
なんだかんだ言いつつも、ふたりの女性の行く末を、相当気にしながら読み進めて
いたにちがいありません。
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