光山鉄道管理局・アーカイブス

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「骨董」に思うコレクション趣味

2012-09-12 06:52:05 | 思いつくままに・考察


 以前、YANチョさんのブログでのコメントの交流をきっかけに当ブログでもたびたび「モデラー」と「コレクター」の違いについて自分なりの考察をひねくった事がありました。
 その折には鉄道模型と言う対象の特殊性をもとにややコレクターに批判的とも取れる書き方をしたと思います。

 
 ですが私個人はコレクターの本質について悪意を持っている気持ちは全然なくてむしろコレクターにはコレクターなりの楽しみがあると考えています。

 そんな事を思う時に常に思い出す随筆が幸田露伴の「骨董(こっとう)」と言う一文です。
 例によってこれは青空文庫でも読めるものですので興味をお持ちの向きは一読をお勧めします(今の方なら「新字新かな」のバージョンのほうが幾分読みやすいと思います)
 
 個人的には以下のくだりが特に心に残る部分です(以下引用)

 骨董はどう考えてもいろいろの意味で悪いものではない。特に年寄になったり金持になったりしたものには、骨董でもひねくってもらっているのが何より好い。
 不老若返り薬などを年寄に用いてもらって、若い者の邪魔をさせるなどは悪い洒落(しゃれ)だ。老人には老人相応のオモチャを当あてがって、落ちついて隅の方で高慢(こうまん)の顔をさせて置く方が、天下泰平の御祈祷(ごきとう)になる。 
 骨董いじりは実にオツである、イキである、おもしろいに違いない、高尚に違いない、そして有意義に違いない、そして場合によっては個人のため社会のためになる事もあるに違いない。

 骨董を買う以上は贋物を買うまいなんぞというそんなケチな事でどうなるものか、古人も死馬の骨を千金で買うとさえいってあるではないか。仇十州の贋筆は凡およそ二十階級ぐらいあるというはなしだが、して見れば二十度贋筆を買いさえすれば卒業して真筆が手に入るのだから、何の訳はないことだ。
何だって月謝を出さなければ物事はおぼえられない。贋物贋筆を買うのは月謝を出すのだから、少しも不当の事ではない。

 さて月謝を沢山たくさん出した挙句あげくに、いよいよ真物真筆を大金で買う。
 うれしいに違いない、自慢をしてもよいに違いない。嬉しがる、自慢をする。その大金は喜悦(きえつ)税だ、高慢税だ。大金といったって、十円のがまぐちから一円出すのはその人に取って大金だが、千万円のドル箱から一万円出したって五万円出したって、比例をして見ればその人に取って実は大金ではない、些少(さしょう)の喜悦税、高慢税というべきものだ。

 そしてその高慢税は所得税などと違って、政府へ納められてどろぼう役人だかも知れない役人の月給などになるのではなく、すぐに骨董屋さんへ廻って世間に流通するのであるからてっとりばやく世間の融通を助けていくらか景気をよくしているのである。
 野暮でない、洒落しゃれ切った税というもので~


 骨董のよい物おもしろい物の方が大判(つまり大金)やダイヤモンドよりも佳くもあり面白くもあるから、金貨や兌換券(お金)で高慢税をウンと払って、釉くすりの工合の妙味言うべからざる茶碗なり茶入なり、何によらず見どころのある骨董を、好きならば手にして楽しむ方が、暢達(のびのびしたの意味)した料簡というものだ。
 理屈に沈む秋のさびしさ、よりも、理屈をぬけて春のおもしろ、の方が好さそうな訳だ 
 関西の大富豪で茶道好きだった人が、死ぬ間際に数万金で一茶器を手に入れて、幾時間を楽たのしんで死んでしまった。
 一時間が何千円に当った訳だ、なぞとそしる(バカにする)者があるが、それはそしる方がケチな根性で、一生理屈地獄でノタウチ廻るよりほかの能のない、理屈をぬけた楽しい天地のあることを知らぬからの論だ。
 趣味の前には百万両だってたばこの煙よりもはかないものにしか思えぬことを会得しない(知らない)からだ


(一部に意味の補足やかなへの変更を加えてあります)

 どうでしょう、ここで取り上げられている「骨董」を「コレクション」と読み替えれば善きコレクターの本質が浮かび上がってこないでしょうか。
 「金さえあれば買える・手に入る」と思う感覚からモデリングに比べコレクションを安易なものと捉えている向きが多い事がコレクターに対する偏見(?)を助長している(実際、そういうコレクターが多いであろうことも事実でしょうが)と思えますが、実際には本当に入れ込んだコレクションと言うものにはモデリングとはまた異質の楽しみと苦労があるはずなのです。

 この他登場人物の描写を通してコレクターの本質について触れている青空文庫の小説としては岡本軌道の半七捕物帳の一編「正雪の絵馬」、あるいはコナンドイルのシャーロックホームズ譚のひとつ「三人ガリデブ」等がありそれぞれに考えさせられるところもあります(笑)
 実際にはこういう題材の小説や随筆はもっともっとあるとは思いますが私の印象に残るのがこれくらいということで勘弁してください。

(写真は本題とは関係ありません)

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