3月も終わりに近づき、送別会シーズンやら総会シーズンやらで妙に飲む機会が増えています。
今回はそんな折に少し酔った頭で考えた事です。ですので筋の通らない所もありますがそこはご勘弁を。
1
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0a/53368224d492b8ac075218eb737030e0.jpg)
(前略)TMSのアンケートのメーカーへの希望で非常に多かったのは「もっと安くしてください」「高すぎる」というものであった。
私の予想よりはるかに多くの人がこう書いている。(中略)
ファン多くが何に比べて高いと言っているのか知る由もないが第一に自分のポケットマネーと比べていると想像される。
このことは日本と外国のファンの年齢の差にもなる。
しかし、大人のファンも同じ事を訴えている。
要するにみんなポケットマネーが足りない訳である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/ff/bc7f64656513e61910c98059d551b13b.jpg)
国鉄形車両については殆どの人が、それも高価な品を買う人でさえも「高すぎる」という声が圧倒的である。
高い理由は単に原価の問題だけでなくファンは知らない流通機構などの問題もあるがとにかくすでに限界に近い事は販売する側もわかっていよう。
今、高い模型を買っている人はまず十分にお金がある人ーこの一部には収得して値上がりを待つファンも含むがーは勿論であろう。
あとはお金はないがどうしても欲しいのを1年に1両と言ったファンが意外に多い様に思う。贅沢はしたいが何もかもとはいかない人々が日本人に多い一点豪華主義で買っているのではないか。3万円の洋服のポケットに9万円のカルティエのライターが入っている様な調子である。
上述の事は最近の傾向の事を書いているのではありません。
上の一文は昭和43年6月号のTMSのミキストから、下の一文は同じく昭和50年のミキストからの引用です。
参考までに該当する号に掲載されている16番モデルでは前者は鉄道模型社のC62の完成品が7700円、後者ではアダチ製作所のD61の完成品で19500円でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/0d/930761b41b85b4a85611fbe30a16ef87.jpg)
更に昭和46年の年少者向けの入門書である集英社の「模型工作教室」の中で「それに完成品じゃあNゲージでも5,6両の列車をぐるぐるエンドレスレールに走らせるだけのセットでも7,8千円もする」「とてもおこずかいじゃあ足りないよ」というくだりがありますし
又、「TOMIXのすべて」の中でブルトレブームの直後の世相を書いた江頭剛氏の漫画に「だってえ、天●堂のSL1台分でNゲージならたくさん買えるもん」というセリフがありました。
で、私が今手にしているTMSの最新号を開くとカンタム仕様の天賞堂プラ製C62は87000円。但しこれは「16番でこの内容としては安い」と言われるレベルであり同じ広告に出ているブラス仕様のEF81の値段は285000円となっています。
実際に時代の流れに伴う物価上昇を考慮に入れなければならないとしても16番モデルの場合、47年前の10倍以上のお値段になり、ブラスともなると更に想像を絶する上がりっぷりな事がわかります。
昭和50年当時と比較してもあの頃はかつ丼一杯が大体300円前後。今近所のパーキングエリアで出されるかつ丼が700円である事を考えると凄い話です。
ですが今回の本題は実はそこではありません(笑)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/c1/dd0db9609ba54705f7df76df13b5fe68.jpg)
ここで考えたいのは50年近く昔から現在に至るまで「鉄道模型の完成品は高すぎる」という声が高く、その傾向が殆ど変わっていない事です。
もちろん16番からNへ、ブラスからプラへという変化もそれなりにあるのですがどのフォーマットに転んでも初期の鉄コレを除けば「鉄道模型は高い」という話にしか行かなくなってしまいます。
言ってみればこの趣味の世界、常に「お値段との戦い」の歴史を重ねてきたとも言えます(完成品に限らずキットやパーツも含めて)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/3b/cba7a7740850d52a8669506b803717a1.jpg)
上述の文章を見れば「自分の小遣いと比べて」という形で理由をうかがわせる所もあります。
ですがその割に「この鉄道模型が買いたいから携帯を止めてIP電話にした」とか「クルマをやめて自転車通勤を始めた」「好きだった酒やスイーツをやめて金を貯めた」という武勇談をついぞ聞いたことがありません。
(まあ、単に私が聞かなかっただけの話かもしれませんし、もし聞いたとしてもそれはそれで正直感心しないところもあるのですが)
そこで思うのは「では完成品の場合、鉄道模型のユーザーにとっての適正価格はいくらくらいなのか」です。
この際「安ければ安いほどいい」とか「タダが一番いいに決まっている」といった具体性の無い論旨は一旦忘れて考えてみたいと思います
2
今回は自分自身の思い出ばなしと絡めて書きたいと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/14/96abe773bf78c7e5ce496a37a845e169.jpg)
私が最初にこの趣味を始めた頃はKATOの20系が1両800円、M車のキハユニ26が2850円、EF65が3500円だったと記憶しています(あの当時ですから消費税なんてのはありませんでした。その代り安売り店の模型屋というのもなかったですが)
これでも子供~学生の身分ではなかなか手が出せない価格でしたし、ここまでのコストに線路とパワーパックが入っていません。
強いて言えばナインスケールの2軸貨車の「1両300円」が有難かった位でしょうか。前述の様にかつ丼一杯300円の時代でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b4/c4ca41199bf85a0bf75cdb984aec4f62.jpg)
以後、モデルのクオリティの向上、新規メーカーの参入などはあったもののNゲージの世界では車両の価格は徐々に高くなる方向で推移します。
してみると初期の頃からほとんど変わらない値段で今も現役のKATOキハ20系や103系というのは凄いモデルでした。
機関車もそれ位のノリでDD13のふたつ眼辺りをビギナー用と割り切って定価据え置きで継続してくれればうれしかった気がします(今はC11がそのポジションでしょうか)
20年後に再開した時はKATOのきららから入ったのですが「2両で8000円」というのに正直驚いた事が(汗)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/ea/11183b28034ca12898a487254bdeeaa1.jpg)
そんな具合ですから私自身の経験から言うなら鉄コレが最初に出た時の「1両500円、動力ユニット2000円弱」(但し税抜)という値付けはかなり衝撃的でした。
それまで完成品の動力車は電車の中間車でも4千円前後、機関車に至っては6千円位出さないと買えなかったですから多少作りにラフなところがあっても許容できる(実際には価格以上のクオリティは確保されていましたし)レベルでした。
同様な事は初期のマイクロ製品でもあったらしいですが(マイクロが再開したころは私自身は趣味の中断期間でした)
これまでのところ後にも先にも「新品の鉄道模型が安くて驚いた」という経験はその時だけです。
(平成の初め頃の消費税施行に伴う物品税の廃止から高価なモデルについては一時的に定価が下がった例はあるらしいですが)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a4/8d2cbcc9c57291c81c938ec3bcc0542c.jpg)
割合最近の話で16番では以前KATOが1万円ちょっとでEF510をリリースした事がありますがなかなか後続が続かなかったようです。
モデルのクオリティというよりも線区や用途の限定される機関車だった事がその要因のひとつの様な気もします。
これがどんな鉄道でも見かけるDE10とかDD13、あるいは1両でも運用できる京急のデハ290辺りだったら結果は少し違ったような気もしますが。
とはいえKATOやTOMIXの16番モデルも「ブラスに比べれば」結構リーズナブルな値段にはなっている気もします。何しろEF65で2万円弱、ED75のプレステージモデルと称するものでも4万円弱というのは30年前のブラスモデルの価格水準にごく近いですし(因みに現在ブラスのED75は25万円だそうです)
ただ、問題はこれを「高い」と見るか「安い」と見るかです。
3
~「私はね、ワインは飲むもんだとばかり思っていましたがね。でも投資の対象にしている人がいるんですね」
「そうですとも。置く年数が経っただけ値が出てくるんです」
「ただの一本で100ドルする奴があるんですってね」
「その程度なら…大した事はありません。私はこの間5000ドルで買いました。N.Yでね」
「へえ…一本5000ドルのワインですか。親父は1年がかりでもそうは稼げなかったなあ。1年の稼ぎを一晩で飲んじまうとはねえ・・・」
(刑事コロンボ「別れのワイン」の会話より引用)
完成品の価格について一番敏感なのはモデラーでしょうか、コレクターでしょうか、それとも運転派なのでしょうか。
どのジャンルでもそれなりにモデルの高価格化の悩みは持っていると思いますが、特にその影響が大きそうなのはコレクターなのではないかと思います。
次に改造やメイクアップの素材、ベースモデルに悩むようなモデラーという所でしょうか。
運転派は・・・コレクター、モデラーのどちらの要素も持っていそうな反面、お気に入りの編成さえそろっていれば(この数の個体差は大きそうですが)割合新車の増備には淡々としていそうな気もします。
その意味で一番鵺的な性格が強いのが運転派とも言えます。
欧州で圧倒的なシェアを誇り彼の地の知名度はコカコーラ以上とされるメルクリンHOのスターターセットは日本で買うなら大体5~6万円。
運送コストなどもあるので現地価格はその半分位らしいと聞いたことがありますがそれでも換算で3万前後といったところでしょうか。
機関車類は彼の地で名の通った大型機で7万から10万前後、上述のパターンに当てはめると現地では4万から6万位という事になります。
これを高いと感じるか安いと感じるか。
少なくともドイツをはじめとする欧州ではこの値付けでも十分鉄道模型が普及できてきた訳です。
しかも一部のマニアに「ビギナー向けの玩具扱い」とされた模型の値段で購買層の何割かは「子供に買い与える父親」です。
ここから逆算するなら16番の場合、今なら上述のC62クラスで5万円を切る程度、運転のできる基本セットで3万円を切る程度ならある程度「安い」という実感は出るのかもしれません。
Nだったら大型機関車1両で5000円を切る程度、基本セットで1万円を切る程度というのがひとつの目安になりそうです。
いずれも新品の場合でコストに見合う程度に細密度の省略やギミックの廃止がされて居るのはやむを得ないでしょうが。
しかもこれはメルクリンと同様に「飾るのではなく走らせて楽しむための鉄道模型」としての値段の理想像です。
尤も、特に16番の世界ではそれを許さない層が完成品市場を支えている側面もあるので実現性についてはかなり疑問です(その理由については後述)
それに、Nの場合田舎の中古屋がそれ位かそれよりやや高い程度の値段で機関車を売っていますから若干事情が異なります。
前ユーザーの手垢が付いていても構わないという覚悟(笑)(と機種の極端な選り好みが無ければ)さえあればNの中古のモデルは今、もっとも安価に鉄道模型を楽しめるフォーマットではないかと思います。
事実日本中の大概のハード●フか万●書店辺りに行けばNゲージの中古が定価の半額かそれより少し高い値段で買えます(但し一部のマニアックなモデルを除く)がこれなどは他のフォーマットではまずできない芸当です。
いずれにしても個人的に思うのですが「安かろう悪かろう」ではない範囲で安価に鉄道模型を楽しむには大なり小なりユーザーが手(いじる)や足(つまり探す)を動かす側面があるべきと思いますし、その過程でのスキルの習得に趣味のプライオリティがあるという考え方が必要な気もします。
そんな訳で鉄道模型に「細密すぎなくてもいいから、手を加える余地がそこそこあって走りの好い製品が安価で出てくれないか」と言ったものを求める層はそうしたモデラーかその予備軍、運転派の一部などではないかと思います。
ですが現実は鉄道模型のユーザーの大半はコレクター、それも「外観第一主義の細密工芸品を求める層」が中心の気がします。特に16番やHOの日本型ユーザーの殆どがそうなのではないでしょうか。
となると鉄道模型の完成品が今以上に高騰する可能性は高いですし、ある意味そうあるべきかもしれないという気もします。
手間暇かけた工芸品を大枚払って手に入れケースに飾って楽しむというのも一つの方向性ですし、それに見合うコストであればC62クラスの機関車1両が50万円してもまだ安いかもしれない。
~「大富豪モーガンがある時自家用ヨットの値段を聞かれて・・・確かこう応えたと聞いています。
『値段を訊かなくてはならない様では買える立場ではない』
この店でもメニューの値段を見なくてはならないなら食事は無理ですよ」~
(刑事コロンボ「別れのワイン」のセリフから引用)
事実模型の世界では、庭を走らせて楽しむ一抱えもありそうな大きさのラージスケールのLGBモデルが天賞堂辺りの16番テンダー蒸気よりはるかに安いのです。これなどは同じ鉄道模型であっても用途によってコストや要求性能に大きな違いがある事を示しています。
その意味では同じ規格であっても目的に応じてモデルの作り分けがあっても良い気もします。
本来、一つの規格にあれもこれもと求め続けた結果のひとつが「高すぎる鉄道模型」の理由のひとつかもしれないですし。
その辺りは気の持ちようだと思いますし、お金を掛けずに模型を楽しむ事は今の時点でも意外に難しくない気がします。
但しその場合、汗は相応にかかなければならないですが。
個人的に金額の大小の差があっても本質的に「趣味とは金を払って苦労を買う(あるいは汗をかく)」事だと思っています。
最後に昭和20年代からレイアウトビルダーとして有名で平成10年頃まで現役の趣味人だった宍戸圭一氏のこの言葉を持って締めたいと思います。
下記の言葉は昭和の終わり頃だったかに当時の「とれいん」誌上に掲載された物を引用させていただきました。
「鉄道模型は良いですな。お金があればいくらでも模型屋が使わせてくれる。金がなければボール紙と定規にナイフ、まあ、ギアとモータ位は買わなければならないが、それでいくらでも遊べる。金があってもなくても楽しめるのだからこれ程面白いことはない」
(この項随時更新)
今回はそんな折に少し酔った頭で考えた事です。ですので筋の通らない所もありますがそこはご勘弁を。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0a/53368224d492b8ac075218eb737030e0.jpg)
(前略)TMSのアンケートのメーカーへの希望で非常に多かったのは「もっと安くしてください」「高すぎる」というものであった。
私の予想よりはるかに多くの人がこう書いている。(中略)
ファン多くが何に比べて高いと言っているのか知る由もないが第一に自分のポケットマネーと比べていると想像される。
このことは日本と外国のファンの年齢の差にもなる。
しかし、大人のファンも同じ事を訴えている。
要するにみんなポケットマネーが足りない訳である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/ff/bc7f64656513e61910c98059d551b13b.jpg)
国鉄形車両については殆どの人が、それも高価な品を買う人でさえも「高すぎる」という声が圧倒的である。
高い理由は単に原価の問題だけでなくファンは知らない流通機構などの問題もあるがとにかくすでに限界に近い事は販売する側もわかっていよう。
今、高い模型を買っている人はまず十分にお金がある人ーこの一部には収得して値上がりを待つファンも含むがーは勿論であろう。
あとはお金はないがどうしても欲しいのを1年に1両と言ったファンが意外に多い様に思う。贅沢はしたいが何もかもとはいかない人々が日本人に多い一点豪華主義で買っているのではないか。3万円の洋服のポケットに9万円のカルティエのライターが入っている様な調子である。
上述の事は最近の傾向の事を書いているのではありません。
上の一文は昭和43年6月号のTMSのミキストから、下の一文は同じく昭和50年のミキストからの引用です。
参考までに該当する号に掲載されている16番モデルでは前者は鉄道模型社のC62の完成品が7700円、後者ではアダチ製作所のD61の完成品で19500円でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/0d/930761b41b85b4a85611fbe30a16ef87.jpg)
更に昭和46年の年少者向けの入門書である集英社の「模型工作教室」の中で「それに完成品じゃあNゲージでも5,6両の列車をぐるぐるエンドレスレールに走らせるだけのセットでも7,8千円もする」「とてもおこずかいじゃあ足りないよ」というくだりがありますし
又、「TOMIXのすべて」の中でブルトレブームの直後の世相を書いた江頭剛氏の漫画に「だってえ、天●堂のSL1台分でNゲージならたくさん買えるもん」というセリフがありました。
で、私が今手にしているTMSの最新号を開くとカンタム仕様の天賞堂プラ製C62は87000円。但しこれは「16番でこの内容としては安い」と言われるレベルであり同じ広告に出ているブラス仕様のEF81の値段は285000円となっています。
実際に時代の流れに伴う物価上昇を考慮に入れなければならないとしても16番モデルの場合、47年前の10倍以上のお値段になり、ブラスともなると更に想像を絶する上がりっぷりな事がわかります。
昭和50年当時と比較してもあの頃はかつ丼一杯が大体300円前後。今近所のパーキングエリアで出されるかつ丼が700円である事を考えると凄い話です。
ですが今回の本題は実はそこではありません(笑)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/c1/dd0db9609ba54705f7df76df13b5fe68.jpg)
ここで考えたいのは50年近く昔から現在に至るまで「鉄道模型の完成品は高すぎる」という声が高く、その傾向が殆ど変わっていない事です。
もちろん16番からNへ、ブラスからプラへという変化もそれなりにあるのですがどのフォーマットに転んでも初期の鉄コレを除けば「鉄道模型は高い」という話にしか行かなくなってしまいます。
言ってみればこの趣味の世界、常に「お値段との戦い」の歴史を重ねてきたとも言えます(完成品に限らずキットやパーツも含めて)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/3b/cba7a7740850d52a8669506b803717a1.jpg)
上述の文章を見れば「自分の小遣いと比べて」という形で理由をうかがわせる所もあります。
ですがその割に「この鉄道模型が買いたいから携帯を止めてIP電話にした」とか「クルマをやめて自転車通勤を始めた」「好きだった酒やスイーツをやめて金を貯めた」という武勇談をついぞ聞いたことがありません。
(まあ、単に私が聞かなかっただけの話かもしれませんし、もし聞いたとしてもそれはそれで正直感心しないところもあるのですが)
そこで思うのは「では完成品の場合、鉄道模型のユーザーにとっての適正価格はいくらくらいなのか」です。
この際「安ければ安いほどいい」とか「タダが一番いいに決まっている」といった具体性の無い論旨は一旦忘れて考えてみたいと思います
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今回は自分自身の思い出ばなしと絡めて書きたいと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/14/96abe773bf78c7e5ce496a37a845e169.jpg)
私が最初にこの趣味を始めた頃はKATOの20系が1両800円、M車のキハユニ26が2850円、EF65が3500円だったと記憶しています(あの当時ですから消費税なんてのはありませんでした。その代り安売り店の模型屋というのもなかったですが)
これでも子供~学生の身分ではなかなか手が出せない価格でしたし、ここまでのコストに線路とパワーパックが入っていません。
強いて言えばナインスケールの2軸貨車の「1両300円」が有難かった位でしょうか。前述の様にかつ丼一杯300円の時代でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b4/c4ca41199bf85a0bf75cdb984aec4f62.jpg)
以後、モデルのクオリティの向上、新規メーカーの参入などはあったもののNゲージの世界では車両の価格は徐々に高くなる方向で推移します。
してみると初期の頃からほとんど変わらない値段で今も現役のKATOキハ20系や103系というのは凄いモデルでした。
機関車もそれ位のノリでDD13のふたつ眼辺りをビギナー用と割り切って定価据え置きで継続してくれればうれしかった気がします(今はC11がそのポジションでしょうか)
20年後に再開した時はKATOのきららから入ったのですが「2両で8000円」というのに正直驚いた事が(汗)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/ea/11183b28034ca12898a487254bdeeaa1.jpg)
そんな具合ですから私自身の経験から言うなら鉄コレが最初に出た時の「1両500円、動力ユニット2000円弱」(但し税抜)という値付けはかなり衝撃的でした。
それまで完成品の動力車は電車の中間車でも4千円前後、機関車に至っては6千円位出さないと買えなかったですから多少作りにラフなところがあっても許容できる(実際には価格以上のクオリティは確保されていましたし)レベルでした。
同様な事は初期のマイクロ製品でもあったらしいですが(マイクロが再開したころは私自身は趣味の中断期間でした)
これまでのところ後にも先にも「新品の鉄道模型が安くて驚いた」という経験はその時だけです。
(平成の初め頃の消費税施行に伴う物品税の廃止から高価なモデルについては一時的に定価が下がった例はあるらしいですが)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a4/8d2cbcc9c57291c81c938ec3bcc0542c.jpg)
割合最近の話で16番では以前KATOが1万円ちょっとでEF510をリリースした事がありますがなかなか後続が続かなかったようです。
モデルのクオリティというよりも線区や用途の限定される機関車だった事がその要因のひとつの様な気もします。
これがどんな鉄道でも見かけるDE10とかDD13、あるいは1両でも運用できる京急のデハ290辺りだったら結果は少し違ったような気もしますが。
とはいえKATOやTOMIXの16番モデルも「ブラスに比べれば」結構リーズナブルな値段にはなっている気もします。何しろEF65で2万円弱、ED75のプレステージモデルと称するものでも4万円弱というのは30年前のブラスモデルの価格水準にごく近いですし(因みに現在ブラスのED75は25万円だそうです)
ただ、問題はこれを「高い」と見るか「安い」と見るかです。
3
~「私はね、ワインは飲むもんだとばかり思っていましたがね。でも投資の対象にしている人がいるんですね」
「そうですとも。置く年数が経っただけ値が出てくるんです」
「ただの一本で100ドルする奴があるんですってね」
「その程度なら…大した事はありません。私はこの間5000ドルで買いました。N.Yでね」
「へえ…一本5000ドルのワインですか。親父は1年がかりでもそうは稼げなかったなあ。1年の稼ぎを一晩で飲んじまうとはねえ・・・」
(刑事コロンボ「別れのワイン」の会話より引用)
完成品の価格について一番敏感なのはモデラーでしょうか、コレクターでしょうか、それとも運転派なのでしょうか。
どのジャンルでもそれなりにモデルの高価格化の悩みは持っていると思いますが、特にその影響が大きそうなのはコレクターなのではないかと思います。
次に改造やメイクアップの素材、ベースモデルに悩むようなモデラーという所でしょうか。
運転派は・・・コレクター、モデラーのどちらの要素も持っていそうな反面、お気に入りの編成さえそろっていれば(この数の個体差は大きそうですが)割合新車の増備には淡々としていそうな気もします。
その意味で一番鵺的な性格が強いのが運転派とも言えます。
欧州で圧倒的なシェアを誇り彼の地の知名度はコカコーラ以上とされるメルクリンHOのスターターセットは日本で買うなら大体5~6万円。
運送コストなどもあるので現地価格はその半分位らしいと聞いたことがありますがそれでも換算で3万前後といったところでしょうか。
機関車類は彼の地で名の通った大型機で7万から10万前後、上述のパターンに当てはめると現地では4万から6万位という事になります。
これを高いと感じるか安いと感じるか。
少なくともドイツをはじめとする欧州ではこの値付けでも十分鉄道模型が普及できてきた訳です。
しかも一部のマニアに「ビギナー向けの玩具扱い」とされた模型の値段で購買層の何割かは「子供に買い与える父親」です。
ここから逆算するなら16番の場合、今なら上述のC62クラスで5万円を切る程度、運転のできる基本セットで3万円を切る程度ならある程度「安い」という実感は出るのかもしれません。
Nだったら大型機関車1両で5000円を切る程度、基本セットで1万円を切る程度というのがひとつの目安になりそうです。
いずれも新品の場合でコストに見合う程度に細密度の省略やギミックの廃止がされて居るのはやむを得ないでしょうが。
しかもこれはメルクリンと同様に「飾るのではなく走らせて楽しむための鉄道模型」としての値段の理想像です。
尤も、特に16番の世界ではそれを許さない層が完成品市場を支えている側面もあるので実現性についてはかなり疑問です(その理由については後述)
それに、Nの場合田舎の中古屋がそれ位かそれよりやや高い程度の値段で機関車を売っていますから若干事情が異なります。
前ユーザーの手垢が付いていても構わないという覚悟(笑)(と機種の極端な選り好みが無ければ)さえあればNの中古のモデルは今、もっとも安価に鉄道模型を楽しめるフォーマットではないかと思います。
事実日本中の大概のハード●フか万●書店辺りに行けばNゲージの中古が定価の半額かそれより少し高い値段で買えます(但し一部のマニアックなモデルを除く)がこれなどは他のフォーマットではまずできない芸当です。
いずれにしても個人的に思うのですが「安かろう悪かろう」ではない範囲で安価に鉄道模型を楽しむには大なり小なりユーザーが手(いじる)や足(つまり探す)を動かす側面があるべきと思いますし、その過程でのスキルの習得に趣味のプライオリティがあるという考え方が必要な気もします。
そんな訳で鉄道模型に「細密すぎなくてもいいから、手を加える余地がそこそこあって走りの好い製品が安価で出てくれないか」と言ったものを求める層はそうしたモデラーかその予備軍、運転派の一部などではないかと思います。
ですが現実は鉄道模型のユーザーの大半はコレクター、それも「外観第一主義の細密工芸品を求める層」が中心の気がします。特に16番やHOの日本型ユーザーの殆どがそうなのではないでしょうか。
となると鉄道模型の完成品が今以上に高騰する可能性は高いですし、ある意味そうあるべきかもしれないという気もします。
手間暇かけた工芸品を大枚払って手に入れケースに飾って楽しむというのも一つの方向性ですし、それに見合うコストであればC62クラスの機関車1両が50万円してもまだ安いかもしれない。
~「大富豪モーガンがある時自家用ヨットの値段を聞かれて・・・確かこう応えたと聞いています。
『値段を訊かなくてはならない様では買える立場ではない』
この店でもメニューの値段を見なくてはならないなら食事は無理ですよ」~
(刑事コロンボ「別れのワイン」のセリフから引用)
事実模型の世界では、庭を走らせて楽しむ一抱えもありそうな大きさのラージスケールのLGBモデルが天賞堂辺りの16番テンダー蒸気よりはるかに安いのです。これなどは同じ鉄道模型であっても用途によってコストや要求性能に大きな違いがある事を示しています。
その意味では同じ規格であっても目的に応じてモデルの作り分けがあっても良い気もします。
本来、一つの規格にあれもこれもと求め続けた結果のひとつが「高すぎる鉄道模型」の理由のひとつかもしれないですし。
その辺りは気の持ちようだと思いますし、お金を掛けずに模型を楽しむ事は今の時点でも意外に難しくない気がします。
但しその場合、汗は相応にかかなければならないですが。
個人的に金額の大小の差があっても本質的に「趣味とは金を払って苦労を買う(あるいは汗をかく)」事だと思っています。
最後に昭和20年代からレイアウトビルダーとして有名で平成10年頃まで現役の趣味人だった宍戸圭一氏のこの言葉を持って締めたいと思います。
下記の言葉は昭和の終わり頃だったかに当時の「とれいん」誌上に掲載された物を引用させていただきました。
「鉄道模型は良いですな。お金があればいくらでも模型屋が使わせてくれる。金がなければボール紙と定規にナイフ、まあ、ギアとモータ位は買わなければならないが、それでいくらでも遊べる。金があってもなくても楽しめるのだからこれ程面白いことはない」
(この項随時更新)
うどん、または蕎麦とセットなら480円です。
最近の鉄道模型は極端に高価なものと、廉価なものの両極端になりつつありますね。
例えば、昨年暮れにトミックスから発売された近鉄80000系はHG製品ではなく、通常製品ですが6両セットで20400円もします。
量販店で買っても18000円近くするのですから驚異的です。