司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法制の行方

2010-04-13 08:57:52 | 会社法(改正商法等)
 本日の日経朝刊27面「経済教室」に,上村達男早稲田大学教授「(会社法制の行方 改革の焦点)(上)証券法制との一体化急げ 」がある。


「日本の会社法制は「いまだ戦後」が続いている。」が骨子で,抜本的な改正が必要と主張している。

「会社法は規制の緩いかつての有限会社の原則を株式会社の原則とし、法律の規定と異なる行為も当事者同士が合意すれば有効とする任意法規化を推進した・・・会社法が認めている制度を証券取引所のルールで修正するといったことが続いている」という点は,指摘のとおりである。

「千葉法相は「会社法制の見直し」を法制審議会に諮問したが、金商法との調整というもっとも肝心の部分は当面、諮問対象ではないらしい。あくまでも会社法は法務省民事局担当の民事法制であり、金融庁所管の金商法とは別という認識のようだ」ということであり,総合調整は,やはりなかなか難しい・・・と思っていたら,

「3月10日の参院本会議で、民主党の大久保勉議員による公開会社法に関する質問に対して、鳩山由紀夫首相は「関係個所がしっかりと連携を取ること、決して縦割りにならないようにすることが大事だ」との答弁・・・幸い千葉法相は今後、追加諮問がありうることを明言されているが、金商法ないし金融庁との正面からの調整を想定した追加諮問はできるだけ急ぐことが望ましい。」

 ええっ! 追加諮問するんですか?

 平成22年2月23日の法務大臣閣議後記者会見でのお話でした。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/kaiken_point_sp100223-01.html

cf. 3月10日参議院本会議会議録
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りそなHD,登記上の本店を東京へ

2010-04-13 00:08:13 | 会社法(改正商法等)
 日経によれば,りそなHDが登記上の本店を東京に移転するそうだ。住友信託銀行も来春移転する計画であるようだ。

 大阪から東京への流れが止まらない。

cf. 平成22年3月11日付「大阪から東京への本店移転」
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会社分割と根抵当権

2010-04-13 00:00:08 | 不動産登記法その他
 根抵当権の債務者が会社分割を行った場合,当該根抵当権は,民法第398条の10第2項の規定により,吸収分割会社(A)と吸収分割承継会社(B)(あるいは新設分割会社と新設分割設立会社)の共用となる。その後に,「債務者の変更」契約によって,当該根抵当権の債務者を「AB→B」と変更する場合に,被担保債権の範囲も同時に変更する必要があるであろうか。

 道垣内弘人著「担保物権法(第3版)」(有斐閣)234頁以下では,根抵当権の被担保債権の範囲は,設定契約によって特定されなければならないとして,

① 債権者基準
② 債務者基準
③ 債権範囲基準

の3つの基準を掲げている。

 この分類の出自は,鈴木禄弥教授で,過去に読んだ際の記憶では,「債権者(根抵当権者)」「債務者」「債権の範囲」は,根抵当権の重要な要素であるとして,これらの変更契約は,新たな設定契約と同視できると論じていたように思う。

 この考え方によれば,

①→ 根抵当権の全部譲渡
②→ 債務者の変更
③→ 債権の範囲の変更

の場面においては,新たな設定契約と同様に考えるべきであることから,例えば根抵当権設定者と債務者の利益相反が問題となるときには,①~③いずれの場合も,利益相反の承認の手続が必要となると考えられ,実務もそのように取り扱っているはずである。

 根抵当権の債務者が会社分割を行い,民法第398条の10第2項の適用がある場合においては,法律上当然に「債務者基準」及び「債権範囲基準」の変更が行われるわけであるが,その後に「債務者の変更」又は「債権の範囲の変更」を契約によって行うときは,契約によって「債務者基準」又は「債権範囲基準」の変更が行われることから,新たな設定契約と同視すべきということになる。

 会社分割の後に,「債務者の変更」契約によって,当該根抵当権の債務者を「AB→B」と変更する場合,根抵当権者である金融機関の意図としては,民法第398条の10第2項の適用場面からAが脱落しただけということなのであろうが,根抵当権の変更契約によって,債務者をBのみに変更するというのは,根抵当権の重要な要素の変更であって,新たな設定契約と同視され,「分割の時に存する債権」のうちBが承継した債務についても,「債権範囲基準」から外れることになると考えられる。したがって,会社分割によってBが承継した債務が存するのであれば,「債務者の変更」契約と同時に「債権の範囲の変更」契約も行い,債務者Bについての被担保債権の範囲を「銀行取引,手形債権,小切手債権,年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社A)に係る債権」のように変更すべきであると考える。

 また,単に根抵当権の債務者を「A→B」と変更する場合,Bが根抵当権者に対して負担する債務は,「債権範囲基準」に合致する限り,変更契約以前のもの(もちろん,当初の設定契約以前のものも)も担保されるが,本件で,変更契約によって根抵当権の債務者が「AB→B」と変更された場合に,相変わらず会社分割以降のものしか担保されないというのも不合理な感がある。したがって,変更契約によって根抵当権の債務者が「AB→B」と変更された場合には,Bが根抵当権者に対して負担する債務は,「債権範囲基準」に合致する限り,変更契約以前のもの(もちろん,当初の設定契約以前のものも)も担保されると考えるべきである。

 仮に,「債権の範囲の変更」不要説に立つと,債務者の変更後に,Bが追加設定を行う場合に,追加物件の登記記録上,債権の範囲に「会社分割によってBが債務引受した債権」が表示されないこととなり,債権管理上も執行実務上も甚だ適当ではないであろう。

 なお,吸収分割のケースで,根抵当権者が吸収分割承継会社と従前から取引があった場合,会社分割による債務者の変更の登記に際して,Bについての債権の範囲に「年月日吸収分割前の承継会社Bに対する債権」を追加する手法をとっている金融機関も多いようだ。しかし,上記のとおり「債権の範囲の変更」契約を行うと,「債権範囲基準」の変更となって,「分割の時に存する債権」のうちBが承継した債務についても,「債権範囲基準」から外れることになると考えられる。したがって,このような「債権の範囲の変更」契約を行うのであれば,むしろ,債務者Bについての債権の範囲を「銀行取引,手形債権,小切手債権,年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社A)に係る債権」のように変更すべきであると考える。この変更によって,「年月日吸収分割前の承継会社Bに対する債権」は,通常の場合「銀行取引,手形債権,小切手債権」によって当然に担保されると考えられる。

 ところで,吸収分割承継会社が吸収分割後に根抵当権を新規に設定する場合の債権の範囲に,あるいは別途Bが設定済みであった根抵当権の債権の範囲を変更して,「年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社A)に係る債権」を加えたいというニーズがあることもあると思われる。このような場合の記載について,青山修著「根抵当権の法律と登記(改訂版)」(新日本法規)123頁以下で,出典元として登記インターネットの記事が紹介されているが,「Aが本根抵当権の旧債務者であったかのように表示されていることに問題がある」として,「年月日会社分割による債務引受に係る債権」でなければ受理されないということである。旧来がたまたまそのようなケースばかりだったというだけであろうし,「債務引受(旧債務者A)に係る債権」という記載をみて単なる債務引受契約の特定以上のことは考え難いと思われる。「年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社A)に係る債権」という記載も認められるべきであろう。
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