本日の日経朝刊29面「経済教室」に,大杉謙一中央大学教授(会社法制の行方 改革の焦点)(下)「株主軽視」是正こそ急務」がある。
「なぜ今、会社法の(再)改正なのか・・・『市場主義の失敗』という俗説は会社法改正の論拠とはなり得ない。会社法改正を論じるにあたっては、わが国の会社経営のどこに問題があるのかを見なければならない。」
「上場会社による・・・事例には、投資家(株主)の利益に反するものが見られる。このことは、会社法や金商法などの個別の法令に穴があるというよりも、むしろ会社法と金商法の役割分担・連携がうまく機能せず『両者の間に穴がある』ことに由来している。そうであれば、会社法と金商法の連携を図るべき」
というのは,会社法と金融商品取引法とを一体化すべきとする「公開会社法」を支持する立場か。いずれにしても,「穴」,は避けられないが。
「わが国では株主の利益が犠牲にされている点が問題である」
「欧州ではドイツを含めて、既存の親子会社間の関係を規制するより、むしろ親子会社関係の形成(企業買収)の過程を規制する法律を整備し、投資家を保護することに力を入れている・・・たとえば欧州型のTOBルールの導入=金商法と会社法の有機的連携=を真剣に検討すべきである。つまり、わが国で論じられるべきは親子会社規制ではなく、TOBルールの改善である」
民主党は,「株主至上主義」を改めるべきとする立場のようであるから,議論の前提となる「現状」の捉え方が明らかに異なる。消費者問題と会社法の在り方の視点からも,親会社や支配株主に対する責任追及を可能とする方策について検討すべきであるし,親子会社規制についても,論じられるべきであると思うが。