破産者マップ
http://www.hasanmap.tokyo/
※ 現在は,閲覧不能。
「破産者マップ」は,グーグルマップ上に,赤いフラグを立て,そのフラグにポインターを合わせると,当該地を住所とする破産者に関する情報(氏名,住所,官報掲載日,裁判所及び事件番号等)を認識することができるようにしたものであった。
公開されてすぐに気付いたのであるが,さすがに取り上げるのが憚られたところ,その後「とんでもない!」と大炎上となり,現在は閲覧不能状態となっている。
なぜ,このようなものが作成されたのか,製作者の意図が不明である。単なる愉快犯?。上記のサイトでは,「警察から情報が得られれば,交通事故が起こりやすい地点のマップを作成したい」等のコメントが表されていたが。
集団訴訟の動きもあるようだ。
cf. Jcastニュース
https://www.j-cast.com/2019/03/18352957.html?p=all
いかに官報で公表されている情報(有料サービスを利用すれば,昭和22年5月3日以降の情報を閲覧することができる。)であるとはいえ,プライバシー権の侵害ではないのかが問題となっているわけである。
関連する事例としては,
cf.
平成25年3月3日付け「登記情報の暴露はプライバシーの侵害」
上記は,東京地裁平成25年2月27日判決である。
「人は,他人に知られたくない私的な事柄をみだりに開示されない法的利益をプライバシー権として有するから,一般人にいまだ知られておらず,私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事実であって,一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に,他者に開示されることを欲しないであろう事実を開示したときは,その事実を開示されない法的利益とこれを開示する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合にプライバシー権侵害として不法行為が成立するものと解される(最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁等参照)。」(前掲・東京地裁判決)
最高裁平成6年2月8日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52442
【判示事項】
ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合における損害賠償請求の可否
【裁判要旨】
ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。
「前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない。」
「以上を総合して考慮すれば、本件著作が刊行された当時、被上告人は、その前科にかかわる事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有していたところ、本件著作において、上告人が被上告人の実名を使用して右の事実を公表したことを正当とするまでの理由はないといわなければならない。そして、上告人が本件著作で被上告人の実名を使用すれば、その前科にかかわる事実を公表する結果になることは必至であって、実名使用の是非を上告人が判断し得なかったものとは解されないから、上告人は、被上告人に対する不法行為責任を免れないものというべきである。」
というわけで,本件「破産者マップ」の製作者の行為は,民事上,プライバシー権の侵害として不法行為責任を問われ得るであろう。