大阪高裁 昭和39年(ネ)222号 判決
https://daihanrei.com/l/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E9%AB%98%E7%AD%89%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%20%E6%98%AD%E5%92%8C%EF%BC%93%EF%BC%99%E5%B9%B4%EF%BC%88%E3%83%8D%EF%BC%89%EF%BC%92%EF%BC%92%EF%BC%92%E5%8F%B7%20%E5%88%A4%E6%B1%BA
※ 日付は不詳。
「寺院明細帳は、明治一二年その制度が制定せられ、同年六月二八日内務省達乙第三一号明細帳製式の件に基き作成せられたものと解せられるところ、寺院明細帳は寺院の存在を公認し、その内容を明瞭ならしめるために、地方長官の職権によつて調整せられる公簿であるからその記載内容は相当信憑力の高いものであると共に、事実寺院としての体をなしていても明細帳に登載がなければ寺院ではなく、また事実廃寺の状態であつても、明細帳からその寺院名を削除しない限り、依然存在を継続するものとして取扱われ寺院の存立と明細帳の記載とは不可分の関係にあるものといえる。そして、昭和一五年四月一日施行の宗教団体法附則第三二条により、寺院明細帳の控訴各寺院についての前記記載が、同条項にいう、同法施行の際現に寺院明細帳に登録された寺院に該当するとして、控訴各寺院が同法により設立を認可せられた寺院と看做されたことは弁論の全趣旨により明らかである。その事実と右の如く寺院明細帳に前記内務省達で記載を要請せられている境内仏堂、境内庵室と異る境内寺院なる概念のもとに、控訴各寺院を記載し、かつこれらが土地等を所有している旨の記載のあることを合せ考えると、控訴各寺院の内には明治一二年当時において、すでに法人格を取得していたものもあつたことが明らか」
「明治初年頃に控訴各寺院が法人格に該当するものを具えていたにしても、それは先きに認定したように、自然発生的のものであつて、特定の日時に法人格を取得したわけではない。」(上掲大阪高裁判決)
民法施行法第28条は,かつて,「民法中法人ニ関スル規定ハ当分ノ内神社寺院祠宇及ヒ仏堂ニハコレヲ適用セス」と定めていた。しかし,これは,法人格を有しないことを意味するのではなく,法人に関する民法の規定を適用しないという趣旨であると解されていたようである。
また,渡部蓊「逐条解説 宗教法人法(第4次改訂版)」(ぎょうせい)70頁以下によると,
「民法第28条の趣旨については,次のように考えられる。独立の主体である神社,寺院等は,本来,法人格の主体であり,また,主体たるべきであるが・・・(民法法人)と別個の組織と性格をもつ法人について規定する民法の特別法が予定されていた・・・宗教団体法,宗教法人令,宗教法人法となり,それによって,宗教団体にふさわしい法人格が与えられることになった。ここに,明治初期からの布告,布達,省令,訓令など300余りの断片的規定を整理した総合的な一つの宗教法規が確立し,それまで不安定な状態にあった宗教団体の法人性が明確になった」
というわけで,不動産登記の登記名義人としても,寺院や神社が明治時代からの所有者として登場するわけである。