日本の企業内に内部統制やリスクマネジメントが導入され、仕事のやり方が大きく変わりました。
従来の稟議制度や社内申請のシステムが精緻化され、IT化され、今まで以上に書式や添付資料を要求され、多大な時間と労力を要するようになりました。
まるで、社員が何か悪だくみをしているので、それを阻止するかのようです。
わたしの友人に「出来ない理由を述べさせると日本一」というMBAホルダーがいます(笑)。
何かのアイデアや案件が発生した場合、それが絶対に出来ないという理由を理路整然と説明、証明してしまうのです。
しかも、スライドやパワポに綺麗に、しかもロジカルにまとめるため思わず納得しそうになります。
「できない理由は3つあります。それは・・・」といった感じで美しいデキナいストーリーを展開します。
わたしは、彼のことを「デキナイ教の教祖」と呼んでいます(笑)。
飲み屋にいって彼と語り合うと、それはそれで面白いのですが・・・。
「米国仕込みのMBA 対 現場密着の中小企業診断士」という図式は、
「メカゴジラvs.ゴジラ」の構図と同じです(古い~)。
今では、現場で顧客に接するより、新しい仕組みやサービスを作るより、こうした「デキナイ教の教祖」が社内で跋扈しています。
総務や経理や企画などの絶対に弾の飛んでこないのシェルタ内の参謀本部でパソコンの前に座り、「わたしは絶対に騙されない」というポリシーのもと、稟議や申請に目を通します。
この場合、頭がいいにも関わらず、結構時間がかかります(これが日本の組織が弱体化した最大の原因だと思っているのですが・・・)。
お客様のことや下請けのことや、現場の社員の苦悩のことなどアタマの中にはありません。
そして、デキナイ論を展開し、現場に突き返します。
彼彼女は、出世の階段を登っていきます。
でも、途中で不幸な顛末になることも多々あります。
それは、会社にとって付加価値を産み出さないことが次第に判明してくるからです。
その理屈っぽさは、日本的な「和」の組織では浮いたものとなりがちなのです。
こういった組織は、
1.業績悪化して組織の存続が厳しくなった時
2.トップの交代のタイミング
3.M&Aや外資系に買収された時などでしか、変われません。
今からの組織は、いかにして「デキナイ教の教祖」を減らしていくかにかかっていると思います。
けだし、その逆の思考と行動がデキル人材の育成、輩出が必要不可欠です。
「こうすればデキルと語れる人」「どうすればデキルかと考えられる人」「そのために社内外を問わず人の力を借りられる人」です。そういう人の持つ思想・行動を「可能性追及ドクトリン」と名付けてみました。ベースは、ポジティブな前向き指向にあります。
優秀な弁護士や医師は、どうすればそれが出来るか?を語ります。
しかも、素人でも分かる簡易な言葉で。
「この事件は、××が鍵となります。そのために具体的に××すれば解決します。その際に3つの選択肢があります。どれを選択されますか・・・?」。
実にシンプルです。
可能性追及ドクトリンを日常の仕事に取り入れていくためには、自分自身の専門性を高めるための努力が求められます。表象的ではない本質を捕まえる普段の努力が必要です。
日本の会社や組織が元気を取り戻すためには、可能性追及ドクトリン・・・「デキル教の教祖」を多数生み出していくしかないと考える今日この頃です。