長時間労働などで睡眠不足が続けば、どんなに健康な人でも心と体が不安定になります。
そこにパワハラや人間関係などのストレスがかかったり、結果が出なかったり、体調を崩したりすると、簡単にうつになり得ます。
心身を病みそうなのに「逃げたらいけない」と思い込んでいる人もいます。
本では「逃げてええ。会社なんて他人がつくった金儲けの箱。一番大切なのは自分自身」と中村恒子先生の言葉で書きましたが、これは私自身の意見でもあります。
過重労働や理不尽なパワハラなどに対しては、行動を起こさないと、ガマンしていても何も変わりません。
まずは信用できる上司や人事、産業医などに相談を。
それでも状況がかわらなければ、転職などの決断が必要になります。
今は転職も起業も自由な時代。
その組織に居続けるか新天地に行くかは自分の意思で決めていい。
理不尽なことに無理して合わせているとおかしくなってしまうので、自分を見失わず賢くしたたかに選択していくことです。
やりがいがないなど「何のために働くのか」悩む人もいます。
中村先生はたった一人、16歳で広島から大阪に出て来て、2か月後に終戦を迎えました。
家族に頼ることもなく医者になり、結婚後もお酒が好きな夫に経済的に頼れず、ずっと働いてこられました。
だから「仕事は食べるための手段」と割り切っています。
私たち戦後世代のように仕事で自己実現しなくちゃとか、自分に向いている仕事をしたい、といった感覚はゼロ。
「医者は好きでも嫌いでもない」と淡々と仕事をされますが、この世代の方は忍耐強く、社会組織にいる以上、求められたことはギリギリまでやろうとされます。
<こんなの自分がやるべき仕事じゃない>と悩む人は「食べる手段」と仕事を捉え直せば、余計な力が抜けます。
まずは全力で頑張ってみて、それでも嫌なら次を考えるくらいでいいのではないでしょうか。
自分は自分、人は人と線引きをきちんとして、別々の人生を生きていると心得ながら付き合っていくのがコツです。
そう思えば依存し過ぎず、関係が壊れにくくなります。
くつろいで、ゆったりリラックスの時間が必要です。
「つながらない」権利があります。
ストレスをコントロールするには、自分でオフの時間をつくること。
孤独を恐れない人は、他者を束縛したり同調圧力をかけたりしないので、その人の周りの人間関係はいつもスッキリ爽やかで心地いいのです。
精神科医・産業医 奥田弘美さん