令和元年(2019年)6月13日
「トイレが詰まった」「蛇口から水漏れが!」「鍵をなくして家に入れない」…。突然発生する暮らしの中での困った出来事。インターネット検索やポストに入っていたチラシで見つけたレスキューサービスの業者に、慌てて連絡する方も多いのでは。しかし解決を急ぐあまり、業者や契約内容について十分に検討しないまま契約してしまった結果、高額な請求をされるなどのトラブルになるケースもあり注意が必要です。
1.「暮らしのレスキューサービス」とは?
水回りの修理や鍵開けなど、暮らしの中での困った出来事の対処を手助けするサービス
「トイレが詰まって流れない」「蛇口を閉めても水が止まらない」「鍵をなくして家に入れない」「家の軒先にハチの巣ができてしまった」など、日々の暮らしの中で、このような困った出来事が突然発生し、自分では対処できないとき、皆さんはどこに相談しますか。
そのようなときに、手助けとなるのが「暮らしのレスキューサービス」です。このサービスは、水漏れやトイレの修理、鍵の修理・交換、害虫・害獣などの駆除、冷暖房設備の修理など、専門的な知識や技術がないと対処できないような、日々の暮らしの中で起きる様々な困った出来事の解決をしてくれます。
こうしたサービスは、住宅関連会社やホームセキュリティ会社などが提供している場合もあるため、いざというときはそれらの業者に相談するという方も多いでしょう。しかし、困った出来事が発生してはじめてスマートフォンやパソコンで近所の業者を検索して、早急に対応してもらえる業者を探す方も少なくありません。ただし、業者選びには注意が必要です。
近年、全国の消費生活センター等に寄せられる「暮らしのレスキューサービス」に関する相談件数が年々増加しています。
相談内容をみてみると、「スマートフォンで検索をして一番上に表示された業者に依頼をした」「ポスティングのチラシで見た業者に依頼をした」という人がトラブルに遭っているケースがみられます。緊急時ですから、早く業者を探したいと思うのは当然ですが、焦って業者に連絡し、それでトラブルが起こってしまっては本末転倒です。ではどうすればトラブルを回避できるのでしょうか。消費生活センター等に実際に寄せられた主な相談をもとに、その対策を考えてみましょう。
2.どんなトラブルが発生しているの?
「トイレ」「水漏れ」「鍵」「害虫駆除」に関するトラブルの相談が多い
全国の消費生活センター等に寄せられた「暮らしのレスキューサービス」に関する相談件数をサービスごとにみてみると、特に多いのが「トイレ修理」、「水漏れ修理」、「鍵の修理・交換」、「害虫・害獣駆除」です。
暮らしのレスキューサービス「サービスごとの相談件数」
資料:国民生活センター(2013~2018年度受付、2019年5月31日までのPIO-NET 登録分)
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。
<具体的なトラブルの事例>
【事例1】水漏れ修理でのトラブル
「見積もり無料」の広告を見て蛇口の水漏れを確認してもらったら、見積もりにかかった費用を請求された
蛇口から水漏れが発生したので、「見積もり・出張無料」と書かれたポスティングチラシの業者に電話で見積もりを依頼した。来訪した業者は、「詳しい見積もりを出すために水道管の内部を見る」と蛇口を取り外し、「蛇口がさびて給水配管の中の状態もよくない。給水設備全体の交換が必要だ」と、50万円の見積書を提示してきた。「高額な工事なのですぐには返事できない」と言うと、今日中に返事をするよう言い残し、蛇口を取り外したまま水漏れ修理もせずに帰ってしまった。しばらくしてその業者から電話があったので、「工事はやらない」と伝えたら、「断わるなら蛇口取り外し料金約2万円を支払ってほしい」と言われた。見積もり無料と広告しておきながら、見積もりのために業者が勝手に蛇口を取り外した作業費を請求されるのは納得できない。
(70歳代、女性)
【事例2】鍵の開錠でのトラブル
鍵開けを依頼し、料金が高額だったため作業を断ったらキャンセル料を請求された
夜中の12時頃帰宅し、鍵を紛失したことに気付き、スマートフォンで「地元の鍵業者」と検索し、一番上に表示された業者に電話をした。業者に住所を教え、料金を確認した。「1万4,000円になる。追加料金がかかる場合もある」と言われ、自宅に来てもらうことになった。作業員から「特殊な鍵なので5万円かかる」と言われたが、事前に聞いた説明から1~2万円と想定していたので高額だと思い作業を断ったところ、「キャンセル料として4,000円を払ってほしい」と言われた。財布もなくしていたので支払えないと伝えると、書類を渡され「指定の日付までに銀行振り込みをしてほしい。払わなければ裁判を起こす」と言われた。その後、別の業者に依頼したら、2万円で解錠してくれた。最初に来た業者が言っていた作業料金は、他社と比べて差がありすぎると思う。本当にキャンセル料を支払う必要はあるのか。
(20歳代、男性)
【事例3】害虫・害獣駆除でのトラブル
コウモリ駆除の見積もりを依頼したが、契約を断れない状況にされ作業内容もずさんだった
コウモリ駆除をするため、ホームページに「見積もり無料」「5年保証」と記載する業者に電話をした。現状を伝えると、業者は「実際に行ってみないとわからない。見積もり後に作業を断っても大丈夫」と言ったので、契約するかどうかは見積もりを見てから決めようと思い、見積もりに来てもらうことにした。翌日、作業担当者が状況を確認し、「コウモリが発生している。これからすぐに仕事にかかれる」と言った。見積もりを求めたら「料金は約10万円になる」と言われた。確認作業の際、コウモリの糞を大量に床に落とされ、作業を断れない状況だったため契約した。業者が帰った後、作業後の状態を確認したら、またコウモリが侵入しそうな雑な作業がされ、汚れた部分の清掃もされていなかった。いい加減な作業をされたと思い、業者に苦情の電話をしたが対応されない。また契約から8日以内に業者にクーリング・オフを申し出たが応じてくれなかった。返金してほしい。
(40歳代、女性)
資料:国民生活センター「水漏れ修理、解錠など「暮らしのレスキューサービス」でのトラブルにご注意」[PDF]
上の事例にもあるように、暮らしのレスキューサービスのトラブルで多く見られるのが、次のようなケースです。
(1)インターネットやポスティングチラシの広告などをみて、その場で業者を選択している。
(2)修理などを急ぐあまり、複数の業者から見積もりをとるなどの比較検討をしていない。
(3)見積もりは無料のはずだと思っていたが、費用を請求されたり、見積もりのつもりで業者を呼んだのに、その場で高額な契約をするよう急がされたりする。
(4)作業が雑でずさんだったり、解約時にキャンセル料を請求されたり、クーリング・オフに応じてもらえないことがある。
3.トラブルを防ぐには?
広告の料金をうのみにしない、納得できない場合は契約しない
「暮らしのレスキューサービス」におけるトラブルを防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
まず、日常の暮らしの中で、急なハプニングが起こると焦って冷静な判断ができなくなることが多いため、日ごろから、信頼できる業者を探すなど情報収集をしておきましょう。
また、インターネットやチラシの広告における表示価格や電話で説明された料金をうのみにしないことです。「業界最安値」などと記載されていても安易に飛びつかないようにしましょう。
契約をする場合はサービス内容や料金について十分に検討することが重要です。サービス内容や料金は業者によって異なりますので、必ず複数社から見積もりを取り、業者の選定を慎重に行いましょう。
そして、サービス内容や料金に納得できない場合には、業者に「今修理しなければならない」などと契約を急がされても、一旦冷静になり、きっぱり契約を断りましょう。
万が一、契約や解約に際し、業者とトラブルになった場合や、不安に思った場合には、最寄りの消費生活センターなどに相談しましょう。
いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできるクーリング・オフが適用できる場合もあります。
<相談はこちらから>
相談窓口などを案内する「消費者ホットライン」は、全国共通の電話番号で「188」です。「188(いやや)」と覚えてください。
【相談受付時間】(相談窓口によって受付時間が異なります)
平日:9:00~17:00など相談窓口によって受付時間が異なります
お近くの消費生活センターや市区町村の消費生活相談窓口につながります。
市区町村の相談窓口が開所していない場合は、都道府県の消費生活センター等につながるか、市区町村の相談窓口の電話番号と受付時間を自動音声でお知らせします。
土日、祝日:10:00~16:00など相談窓口によって受付時間が異なります
都道府県の消費生活センター等または国民生活センターにつながります。
※年末年始(12月29日~1月3日)を除き、原則毎日利用できます。
詳しくはこちら
「どうしよう?困ったときは、消費者ホットライン188番にご相談を!」
<取材協力:消費者庁 文責:政府広報オンライン>