商品の説明
内容紹介
維新は「革新」、共産は「保守」。
これは、日本の若年層が抱く各政党のイデオロギー認識である。つまり、彼らにとって「革新」とは、改革を意味しており、決して「左」と同意義の言葉ではない。
さらに、若年層では「保守」「革新」のイデオロギー対立軸も共有されておらず、日本人が政治を語る上での共通認識語であった「イデオロギー・ラベル」が通用しないという状態が起こっている。
日本人のイデオロギー認識はいつから変わったのだろうか?
著者である遠藤とジョウは、30年にわたる世論調査の結果を分析し、日本人のイデオロギー認識がどのように変化していったのかを検証した。
日本人の考えるイデオロギーの意味について、考えるきっかけになる。
★2019年6月15日 朝日新聞読書面 東京大学教授・宇野重規さんの「(ひもとく)若者の政治意識 自明性を失う「保守」と「革新」」で紹介!
★共同通信配信の著者インタビュー 以下の新聞で紹介!
・2019年4月19日 沖縄タイムス
・2019年4月23日 河北新報、新潟日報、神戸新聞
・2019年4月24日 愛媛新聞
・2019年4月25日 東奥日報
・2019年5月5日 茨城新聞
・2019年5月8日 秋田魁新報
・2019年5月10日 山陽新聞
・2019年5月11日 山梨日日新聞
・2019年5月12日 埼玉新聞
・2019年5月13日 宮崎日日新聞
・2019年5月15日 信濃毎日新聞、南日本新聞
・2019年6月4日 京都新聞
★2019年4月20日号 週刊東洋経済の書評で紹介!
★2019年3月15日 橘玲×ZAi ONLINE「日々刻々」で紹介!
★2019年6月7日 山陰中央新報「明窓」で紹介!
出版社からのコメント
研究論文発表時から、歴史社会学者の小熊英二氏や政治学者の中島岳志氏らが注目し、朝日新聞、中央公論など、各誌で紹介された研究がついに書籍化します。
55年体制の終焉とともに大変革期に入った日本政治を、イデオロギーと世代間ギャップから検証した話題作です。
内容(「BOOK」データベースより)
維新は「革新」、共産は「保守」。日本人のイデオロギー認識はいつから変わったのか?「右・左」、「保守・革新」、「保守・リベラル」…日本人の考えるイデオロギーの意味とは?55年体制の終焉とともに大変革期に入った日本政治をイデオロギーと世代間ギャップから検証した話題作!
著者について
遠藤 晶久(えんどう・まさひさ)
1978年、東京生まれ。博士(政治学)。
早稲田大学社会科学総合学術院准教授。
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、早稲田大学政治学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学経済学研究科グローバルCOE研究助手、早稲田大学政治経済学術院助手、高知大学人文学部(後に人文社会科学部)講師等を経て現職。
主要著作に『熟議の効用、熟議の効果:政治哲学を実証する』(勁草書房、2018年、分担執筆)、Japan Decides 2014: The Japanese General Election(Palgrave Macmillan、2015年、分担執筆)。
ウィリー・ジョウ(Willy Jou)
1979年生まれ。Ph.D in Political Science
早稲田大学政治経済学術院准教授。
カリフォルニア大学アーバイン校政治学博士課程修了。
主要著作にWhy Policy Representation Matters (Routledge、2015年、共著)など。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
遠藤/晶久
早稲田大学社会科学総合学術院准教授。博士(政治学)。1978年生まれ。早稲田大学政治学研究科博士後期課程単位取得退学
ジョウ,ウィリー
早稲田大学政治経済学術院准教授。Ph.D in Political Science。1979年生まれ。カリフォルニア大学アーバイン校政治学博士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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「保守」と「革新」という政治的ラベルが時代遅れになったと言われて久しい。にもかかわらず、日本の有権者が政治をとらえるにあたって、この対立軸はまだ有効性を失っていないようだ。ただし、「保守」と「革新」が何を意味するかについては、かなりの変化が見られる。
遠藤晶久とウィリー・ジョウによる『イデオロギーと日本政治』によれば、高齢者が共産党をもっとも革新的な政党と見ているのに対し、若年層は日本維新の会をもっとも革新的と考えているという。これは50代の筆者にとって驚きの指摘である。
日本政治においては長く、憲法や安全保障といった争点を中心に保守と革新の対立軸が形成されてきた。「大きな政府」か「小さな政府」といった社会的・経済的な次元ではなく、あくまで日米安保や防衛力の強化がイデオロギーを決める最大の争点であり続けたのである。
これに対し、40代以下の層においてはむしろ、「既得権益への挑戦」や「改革派」のアピールこそが「革新」の判断基準となる。この層にとって「革新」とは「変化」を意味する。変化の方向性を考慮に入れないとすれば、これはこれで一つの理解と言えると著者たちはいう。
「右」「左」が逆転
橘玲もまた、『朝日ぎらい』において、同様の傾向を示す世論調査に言及している。読売新聞・早稲田大学共同世論調査(2017年)によれば、70代以上では、もっとも保守的なのが自民党であり、共産党がリベラルに位置づけられている。これに対し18~29歳では、もっとも保守的なのが公明党で、次いで共産党、もっともリベラルなのが日本維新の会である。これを橘は「右」と「左」が逆になった「不思議の国のアリス」と呼ぶ。
ただし、橘はこれを「若者の右傾化」などと誤解してはならないという。50代以上と40代以下の間に断層があるとすれば、その原因は冷戦の終焉(しゅうえん)とバブル崩壊にある。「変わらなければ、生き残れない」と言われ続けたバブル以降の世代にとって、年功序列・終身雇用という日本型雇用制度を守ろうとする年上世代は「保守」以外の何ものでもない。かつて「リベラル」だった世代が高齢化することで、言葉の意味が入れ替わったというのが、橘の解釈である。
「自民支持」誤り
この点に関連して、三春充希の『武器としての世論調査』が興味深い点を指摘している。第48回衆院選(17年)における比例投票先出口調査を見ると、自民党支持が18・19歳や20代で多く、立憲民主党や共産党支持は60代周辺に多い。これは一見すると、自民党が若年層に支持され、「リベラル」が高齢化したという仮説を支持するように見える。
しかしながら、その一方で、意識調査によれば、自民党の支持率は高齢者ほど高い傾向にある。この矛盾について、三春は若年層において「支持政党なし」や「わからない」と回答する人が多いことに注目する。
与党であれ、野党であれ、若い世代ほど支持率は下がる。ただし、その下がり方には違いがあり、野党の方がより激しい。与党支持がかろうじて残っているのに対し、野党支持が劇的に減ったのである。結果として、投票に行った人に限って言えば、与党支持が相対的に多くなる。したがって、いまや自民党は若年層にこそ支持されているという議論は誤りであると三春はいう。
いずれにせよ、現在の50代以上にとって自明であった「保守」と「革新」の区分は、40代以下の世代にとって自明性を失っている。若い世代にとって、どの政党を支持すべきかについて迷いがある以上、政党再編以上に、政党を評価する軸の再編が急務と言えるだろう。=朝日新聞2019年6月15日掲載
宇野重規(ウノシゲキ)
東京大学教授(政治思想史)
1967年生まれ。著書に『保守主義とは何か』『トクヴィル』など。
好書好日より引用