2015.7.9
□防災・危機管理ジャーナリスト 渡辺実さん
もう4年か、まだ4年か。東日本大震災が発生したとき「1000年に1度の巨大地震が起きた」とメディアや国会などでいわれていたことを思い出してほしい。
東北の三陸沖合で、日本では起きないといわれていたM(マグニチュード)9.0の巨大地震が発生した。
直後、広域にわたって押し寄せた巨大津波が甚大な被害を出した。この地震や津波のありさまが869年の貞観(じょうがん)地震が引き起こした地震・津波被害と類似していることが分かってきたことから「1000年に1度の巨大地震」といわれた。
◆9世紀後半と酷似
実に、この貞観地震が発生した9世紀後半の日本列島は、天地動乱の時代でもあった。この時代と近年の主な天災の発生は非常に類似していることが分かる。863年越中・越後地震(→2004年新潟中越地震・2007年新潟中越沖地震)、864~866年富士山噴火、864年阿蘇山噴火、868年播磨地震(1995年阪神大震災)、869年貞観地震(2011年東日本大震災)、874年開聞岳噴火、878年関東地震、887年西日本地震、である。
日本列島の地殻活動が繰り返されるとすれば、近年まだ起きていないのは富士山噴火、関東地震、西日本地震が挙げられる。これらはいま切迫性があるとしている首都直下地震、南海トラフ地震であり、まさに富士山噴火である。
すでに御嶽山噴火、箱根山の活動、口永良部(くちのえらぶ)島噴火など全国の火山活動が活発化していることからも目を離せない。こうしてみると、われわれの生きている時代は、まさに天地動乱の時代であるといえるかもしれない。
個人が、家族が、組織が、少しでも安心して、責任を持って仕事を継続できること。そのためには、まず国民一人一人が災害に備えるしかないだろう。従来の「防災」という概念は、災いを防ぐこと。
そして近年は「減災」、災いを防げないのであれば少しでも軽減させることに重点をおいている。しかし筆者は、もっと積極的に災いに備える「備災」を徹底的に推進する必要性を訴えている。
その「備災」の原点は3つの備え。講演などでは「備災!三題噺(ばなし)」として仕立て、特別な備えではなく、できるだけ日常生活の延長で備えをするようノウハウをお伝えしている。
まず飲料水の備蓄。家の中に、日常何もせずに飲料水は備蓄されている。トイレのタンクに約10リットル、冷蔵庫の製氷庫に約2リットル、計約12リットルの新鮮な水道水がいつもあることに気がついてほしい。不足分はペットボトルで飲料水の備蓄を。
個人が、家族が、組織が、少しでも安心して、責任を持って仕事を継続できること。そのためには、まず国民一人一人が災害に備えるしかないだろう。従来の「防災」という概念は、災いを防ぐこと。そして近年は「減災」、災いを防げないのであれば少しでも軽減させることに重点をおいている。しかし筆者は、もっと積極的に災いに備える「備災」を徹底的に推進する必要性を訴えている。
その「備災」の原点は3つの備え。講演などでは「備災!三題噺(ばなし)」として仕立て、特別な備えではなく、できるだけ日常生活の延長で備えをするようノウハウをお伝えしている。
まず飲料水の備蓄。家の中に、日常何もせずに飲料水は備蓄されている。トイレのタンクに約10リットル、冷蔵庫の製氷庫に約2リットル、計約12リットルの新鮮な水道水がいつもあることに気がついてほしい。不足分はペットボトルで飲料水の備蓄を。
◆停電時は氷冷蔵庫に
次に食料の備蓄。もう乾パンから卒業し、総合栄養食品(筆者推薦は「カロリーメイト」)を非常食として備蓄してほしい。災害後は、最近の冷蔵庫を昔のローテクな氷冷蔵庫へ変身させる。冷凍庫にある冷凍食品を冷蔵庫の一番上の段へ詰めるだけ詰め氷の役割にし、その下へ野菜など食品を入れ扉を密封する。2、3日後、自然解凍された冷凍食品は食べ頃に。ただし災害時には絶対に生食はNGだ。カセットコンロを使いバーベキューをしよう。
飲んで食べれば、トイレが必要になる。「備災」の中で、この対策が最も遅れている。筆者は阪神大震災以降、「災害時はネコになれ」と廉価なネコ砂を災害時トイレに活用するノウハウを伝え続けてきた。このアイデアが人間用の「Zioトイレ」(http://www.velzio.com)として商品化された。そもそもが廉価なネコ砂をベースにつくっているので、燃えるごみとして焼却炉に負荷をかけないよう環境にも配慮。1回当たりの処理コストも既存商品に比べ大幅に下げられた。
地震・火山など天災は避けられない。天地動乱の時代を生き抜くために、備災を実践してほしい。頭で分かっているだけでは、そのときを生き抜くことはできない。国民一人一人がこの「備災!三題噺」を具体的に実践して、来たるべき巨大災害と向き合ってほしい。
【プロフィル】渡辺実
わたなべ・みのる 工学院大工卒。都市防災研究所を経て1989年まちづくり計画研究所設立、代表取締役所長。NPO法人日本災害情報サポートネットワーク顧問。技術士・防災士。64歳。東京都出身。