7/11(木) 時事通信
2016年参院選で、改選数が3に増えた兵庫選挙区で24年ぶりに議席を得た公明。
今回も「最重点区」と位置付け、てこ入れを図る。日本維新の会や立憲民主も交えた混戦が展開される中、組織票の奪い合いにより自民と公明の間では不協和音も聞こえる。(敬称略)
◇「自民色」まとう公明
公示が迫った2日、神戸市内のホテルで開かれた公明新人、高橋光男の激励会。官房長官菅義偉が「高橋を戦いに勝利させてほしい」とひときわ力を込めて訴えると、大きな拍手が湧き起こった。
菅が高橋支援のために兵庫入りするのは、6月に続き2度目。出席者約5300人のうち公明が集めたのは1100人程度で、大半は菅の人脈によるものだという。会合後には、各自治体の首長が公明出身の国交相、石井啓一に直接要望する機会も設けられた。
昨年12月、自民から高橋への推薦を得た公明は党を挙げての「兵庫シフト」を敷いた。5月中旬には幹事長の斉藤鉄夫が衆参両院議員らに「各事務所から1人を兵庫に常駐させてほしい」と指示。6月には県本部近くに新たな事務所を設置した。
とりわけ力を入れるのが業界団体の支援取り付けだ。県建設業協会から今回初めて推薦を得たほか、県歯科医師会も助勢を約束。推薦団体はゆうに100を超える。
港湾業界の組織票を狙い、高橋の後援会長には日本港運協会会長の久保昌三を「三顧の礼」(党関係者)で迎え入れた。代表山口那津男たっての願いが実現したもので、久保は4日、神戸市内の百貨店前で山口と高橋の第一声を間近で見守った。
自民は公明のこうした動きを苦々しく見ている。県連幹部は「うちの友好団体に手を出すことは3年前はなかった」と憤る。同幹部は公明の支持母体が創価学会であることを踏まえ、「県神社庁にも推薦をもらいに行っているとのうわさすらある。悪いジョークだ」とげんなりした顔で語った。
公明が自民支持層を切り崩そうとする動きは、これらにとどまらない。高橋と山口、首相安倍晋三の写真を並べたポスターには、「公明党」より大きな文字で「安倍」と書かれている。自民の神戸市議は、支援者から「参院選で自民は2人候補を出すのか?」と声を掛けられたとツイッターに書き込んだ。
自民は昨年末に死去した元防災担当相鴻池祥肇の後継に、元県議の加田裕之を担いだ。4日の出陣式で加田は「次世代のため、日本のため政策を実現する」と意気込んだ。県連会長の谷公一は「鴻池先生のような知名度がない。混戦から抜け出してない」と出席者にハッパを掛けた。
加田陣営は地方議員と連携し、非改選の末松信介と同程度の60万票は獲得したい考え。ただ、幹部は「うちの票がどの程度、公明に流れるか読めない」と不安を隠さない。
◇維新、大阪の勢い波及
自民が露骨に公明への不快感を示す理由の一つに、維新の存在がある。本拠地大阪で4月に行われた府知事、市長、衆院補選で誇示した勢いは、隣県の兵庫にも波及している。自民県連幹部は選対委員長甘利明に「はじかれるのは公明か、うちか立憲だ」と訴えた。
実際、4月の兵庫県議選では、大阪に接する川西市など二つの選挙区で維新が自民に競り勝った。維新現職の清水貴之に強固な地盤はないが、全県を回って「東京一極集中を打破するためには兵庫が、関西全体が強くなるのが一番大切だ」と支持を呼び掛ける。3日に神戸市内で開いた集会には大阪府知事の吉村洋文が駆け付け、「関西の利益を代弁している政党は維新だ」と胸を張った。
「国の政治が国民に対して、上から一つの価値観を押し付けてしまうような社会になっている」。立憲新人の安田真理は9日朝、神戸市のJR垂水駅前でこう訴えた。公認は3月と遅れたが、兵庫で唯一の女性候補であるのは強みだ。
安田陣営は、安倍政権との対立軸を鮮明にして、政権批判票を取り込む作戦だ。選対幹部は「維新は野党ではない。政権と対峙(たいじ)するのは立憲だ」と語気を強める。今後も党幹部を次々に投入し、自公維の一角崩しを狙う。
◇立候補者名簿
【兵 庫】
原 博義 47 N国党員 諸新
高橋 光男 42 元外務省職員 公新
推(自)
安田 真理 41 アナウンサー 立新
推(社)
加田 裕之 49 元兵庫県議 自新
清水 貴之 45 党政調副会長 維現(1)
金田 峰生 53 元兵庫県議 共新
(注)敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。党派名は自=自民、公=公明、立=立憲民主、共=共産、維=維新、社=社民、諸=諸派。丸数字は当選回数。丸かっこは推薦政党。