地味ながら、緊張感が途切れず、一気に観れた。脱獄系映画の秀作だと思う。
彼は、米国各州の刑務所で何度か脱走を企て、あげくに脱走不可能といわれるこの刑務所に送り込まれたのだ。
問題囚ばかりが収容されているこの刑務所は、冷酷な所長ウォーデン(パトリック・マクグーハン)の下で厳重な警備体制がとられていた。
この警備の裏をかいて脱出が成功しても、行手にはサンフランシスコ湾が横たわっている。
潮の流れが早く、冷水のため、泳ぎきるのは不可能に近い。
知能指数のきわめて高い新入りモーリスは、特に所長に目をつけられ、部屋に呼ばれて警告を受ける。
その後、所長のデスクからツメ切りが一個消えているのに気づく者はいなかった。
食堂でまずモーリスが言葉をかわしたのは、ネズミをペットにしているノトマス(フランク・ロンチオ)という年配の囚人。
図書館の係員をしている黒人のイングリッシュ(ポール・ベンジャミン)や絵を描くのが趣味だというドク(ロバーツ・ブロッサム)とも親しくなった。
しかし、敵にまわった囚人もいた。
ウルフ(ブルース・M・フィッシャー)といい、彼とは殴り合いの乱闘騒動まで起こし、一番つらいD棟の独房に2人とも放り込まれてしまう。
もとの独房に戻ってきたモーリスは、隣りに入ってきたチャーリー(ラリー・ハンキン)という話好きの男と知り合う。ある日、モーリスは、食堂で見知った顔と出会った。
別の刑務所でいっしょだったアングリン兄弟(フレッド・ウォードとジャック・チボー)で、彼らも何度も脱走を試みたためアルカトラズに送られてきたのだ。
それまで、秘かに脱走計画をたてていたモーリスは、2人の顔を見ていよいよ実行に移す決心を固めていた。
3人にチャーリーが加わって脱走計画がスタートした。
例のツメ切りや、食堂から盗んだスプーンを使い屋上へ出る穴を掘り、海へ逃げるというものだ。
数ヵ月に及ぶ彼らの努力が着々と進められていった。
D棟に監禁されていたウルフが戻ってきたため、再び狙われ始めたモーリスは、そのために決行を予定より1日早めることにした。
遅れをとったチャーリーだけは失敗したが3人は屋上への抜け道を順調に進んでいった。
翌朝、看守がモーリスの房で発見したのは替玉人形と壁の穴だけだった。
脱走した3人の行方は誰にもわかることはない。
溺死体も発見されはしなかった。
それ以後、アルカトラズ島の刑務所は永久に閉鎖された。