2023年1月11日 NHK
新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の数は感染拡大の第8波で急増し、2022年12月以降の1か月余りで全国で1万人を超えています。
国内で感染拡大が始まった3年前、2020年1月以降、新型コロナに感染して亡くなった人は2023年1月10日までで6万411人で、累計の死亡者数のおよそ6分の1の人が1か月余りの間に亡くなったことになります。
厚生労働省によりますと、新型コロナに感染して亡くなったと発表された人の数は2022年10月には全国で1864人でしたが、11月に2985人、12月には7622人と急増し、2023年1月は10日の時点ですでに3145人と2022年12月を上回るペースで増加しています。
また、2022年12月7日から2023年1月3日までのおよそ1か月間に亡くなった人のうち、年代や性別が明らかになっている5825人について年代別にみると、
▽10歳未満が4人で全体に占める割合は0.07%、
▽10代が4人で0.07%、
▽20代が5人で0.09%、
▽30代が16人で0.27%、
▽40代が35人で0.60%、
▽50代が97人で1.67%でしたが、
▽60代は296人で5.08%、
▽70代は996人で17.10%、
▽80代は2398人で41.17%、
▽90代以上は1974人で33.89%と、
高齢者が圧倒的に多くなっています。
60代以上の占める割合はこれまでの累計では95.29%でしたが、このおよそ1か月の間では97.24%となっています。
国立感染症研究所が2022年12月1日までに報告があった重症化したケースや亡くなったケース、あわせておよそ4000人について分析したところ、
▽重症化した人の平均年齢は68.0歳、半数は73歳以上で、
▽亡くなった人の平均年齢は83.1歳、半数は86歳以上と、
亡くなった人は重症化した人よりさらに高齢となっていました。
また、死因が報告されている1168人についてみると、
▽およそ60%にあたる696人は新型コロナが死因とされていましたが、
ほかに▽心不全が34人、▽がんが31人、▽肺炎が29人、▽老衰が29人、▽誤えん性肺炎が28人、▽腎不全が20人などとなっていました。
厚生労働省の専門家会合では高齢者施設で感染が拡大することで、新型コロナに感染して亡くなる高齢者が今後もより増加するのではないかと懸念が指摘されています。
厚生労働省のまとめでは、2022年12月27日までの8日間に全国で確認されたクラスターなどの数は1430件でしたが、このうち高齢者福祉施設でのクラスターは954件と全体の66%を占めて施設別で最も多くなっています。
専門家「第7波を超えるような感染 見えなくなっている」
2022年12月以降、国内で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の数が急増していることについて東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、
▽重症化する割合は以前より低くなっていても感染者数自体が多くなっていることや、
▽コロナの感染をきっかけに高齢者で持病が悪化して亡くなるケースが増えていること、
▽高齢者でオミクロン株対応のワクチンの接種率が十分高くなっていないことがあるとしています。
濱田特任教授は「流行しているウイルスは第7波と変わらず、致死率などの病原性には今のところ大きな変化はないと見られるが単純に感染者数が増えている。感染者の報告数はまだ去年夏の第7波のピークには届いていないが、去年に比べて全数把握がしっかりとは行われなくなり、実際には第7波を超えるような感染が起きている状況が見えなくなっている。医療機関が何らかの形で関わる死亡者についてはある程度正確に把握できていて、死亡者数が過去最多の状況になっている」と指摘しました。
さらに「以前はコロナに感染して重症の肺炎を起こして亡くなるというケースが注目されたが、いまはコロナに感染することで血管障害が起き、心筋梗塞や脳梗塞が原因で亡くなる人がいることもわかってきている。さらに、かなり高齢の方が感染した場合、本人や家族の希望で人工呼吸器などを使った治療を行わずにみとる形で亡くなる方も一部ではいるようだ」と述べました。
その上で濱田特任教授は「感染者数自体を減らさなければ死亡者数を減らすことはできない。高齢者施設での対策など、特に高齢の方が感染して亡くなるケースを防ぐ取り組みが必要だ。ワクチンの重症化予防効果はある程度長く続くことが知られているが、特に高齢者では時間の経過とともにどうしても効果が下がってきてしまう。オミクロン株対応ワクチンの接種率は全体で3割余り、高齢者でも6割ほどとまだ十分な水準ではないのでぜひ接種をしてもらいたい」と話しています。