2-7が本命の時、霞ケ浦から来ているその人は2-5から勝負していた。
だが、結果は大穴で4-3となる。
「旦那さん、競輪歴は長いのだろうけれど、こんな車券を買わないとね」車券が的中した大柄の男は、自慢気に車券を見せるのだ。
競輪仲間の中では、強きの発言が目立つ男である。
車券をバラバラ買うのである。
20通りほどだろうか?
<下手な鉄砲、数多く打てば当たる>―を地で行っているようなのだ。
並びの筋車券を買うことが、多くの競輪ファンの常道であるが、筋違いの車券を買う男なのだ。
利根輪太郎は、あい変わらず出目作戦であった。
2が本命なら隣りの人気薄の車番を軸に車券を買ったり、前のレースか、その前のレースの上がり目や下がり目である。
前のレースが3-7なので下がり目の2-7で勝負したら、4-3となったのだ。