村上 春樹 (著)
1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。
同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。
この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
長編で唯一、僕が映画にしてほしいと思うのは『アンダーグラウンド』です。
映画化を望む理由は「いろんな人のボイス(声)が詰まっているからだ」
「日本人のサイキ(精神)の集積だと思っている」泣いたりすることは
「僕が自分の本を読んで泣いたりすることはないんだけど、『アンダーグラウンド』だけは読み返すと泣いちゃいます。そういう意味では僕にとって貴重な本かもしれない。僕が映画にしてほしい唯一の本かもしれないですね。きっと意味のある映画になると思うんだけれど、いろいろ問題があって難しいでしょうね」
村上 春樹
1949(昭和24)年、京都府生れ。早稲田大学文学部卒業。
1979年、『風の歌を聴け』でデビュー、群像新人文学賞受賞。
主著に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞受賞)、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『ノルウェイの森』、『アンダーグラウンド』、『スプートニクの恋人』、『神の子どもたちはみな踊る』、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』など。『レイモンド・カーヴァー全集』、『心臓を貫かれて』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、『ロング・グッドバイ』など訳書も多数。
『アンダーグラウンド』の映画化こそ、作中で語られた重曹な「声」に対する深い解釈が求められるに違いない。いつか見てみたいものだと感じた(大井浩一)
事件の凶悪さへの理解が深まったと同時に、それぞれの全く異なる人生を垣間見て、人生の尊さをより一層考えさせられる内容でした。おすすめです。
「またこんなことがあっちゃいけない。それがいちばん大事なことです。だからこそ、みんなにこの事件のことを忘れないでいてもらいたい。僕がこうして語ったことが活字になって、少しでもあとまで残って、皆さんに覚えておいてもらうための役に立てばいいなと思います。それだけです」(本書P538より)
そういう意味では、村上春樹という作家によって本書がものされたことの意味は大きい。
そういう意味では、村上春樹という作家によって本書がものされたことの意味は大きい。
僕の読んだのが2015年発行の第40刷だから、今はもっと版を重ねているだろうし、これからも読み継がれていくに違いない。本書には62人のインタビューが掲載されている。その中でもとりわけ心を揺さぶられるのは、病院でリハビリをしている明石志津子さん(仮名)と、亡くなった和田栄二さんのご遺族の話ではないかと思う。
著者は、1995年の初めに起きた阪神大震災と地下鉄サリン事件についてこう記す。「それらはともに私たちの内部から――文字どおり足元の下の暗黒=地下(アンダーグラウンド)から――『悪夢』というかたちをとってどっと吹き出し、同時にまた、私たちの社会システムが内奥に包含していた矛盾と弱点とをおそろしいほど明確に浮き彫りにした」
あれから約30年。日本は東日本大震災を経験し、世界はコロナ禍を経験した。カタストロフという文脈では、これらも先の記述に当てはまるだろう。しかしオウム事件が特殊なのは、社会に適合できない多くの自我に与えられた「物語」によって悲劇が起きたことだ。そして私たちも「誰か(何か)に対して自我の一定の部分を差し出し、その代価としての『物語』を受け取ってはいないだろうか?」と著者は問いかける。
著者は、1995年の初めに起きた阪神大震災と地下鉄サリン事件についてこう記す。「それらはともに私たちの内部から――文字どおり足元の下の暗黒=地下(アンダーグラウンド)から――『悪夢』というかたちをとってどっと吹き出し、同時にまた、私たちの社会システムが内奥に包含していた矛盾と弱点とをおそろしいほど明確に浮き彫りにした」
あれから約30年。日本は東日本大震災を経験し、世界はコロナ禍を経験した。カタストロフという文脈では、これらも先の記述に当てはまるだろう。しかしオウム事件が特殊なのは、社会に適合できない多くの自我に与えられた「物語」によって悲劇が起きたことだ。そして私たちも「誰か(何か)に対して自我の一定の部分を差し出し、その代価としての『物語』を受け取ってはいないだろうか?」と著者は問いかける。
村上春樹がこのような素晴らしいノンフィクション小説を書くとは思わなかった。彼の問題意識がよく分かった。
私は平成6年生まれです。自分の出生数ヶ月後に阪神淡路大震災が、そしてこの地下鉄サリン事件が起きた事を、小学生だった頃に社会科の授業で知りました。
それ以来、度々ネットで事件について検索しており、この本を知ったのもつい最近のことです。注文して自宅に届き、まず本の分厚さに驚きました。文庫本で700ページ超え、さらに本編は二段組構成の大ボリュームです。
内容は、最初の方の証言を読んで私は率直な感想、とても怖い。と思いました。深夜に読んでいたせいもあるのでしょう。
正直、大丈夫かな、最後まで読めるだろうかと思いました。しかし読み進めるごとに、リアルな現場の状況や居合わせた人々の背景に引き込まれてゆき、2週間以上かけて全て読み終わりました。
たくさん印象に残った所があるのですが、事件に関係ないところでいうと、通勤の大変さですね。地下鉄を複雑にいくつも乗り継いでみえる人、遠方から片道2時間かけてみえる人、ぎゅうぎゅうに押し潰されそうになる満員電車での通勤…。また、被害に遭われた方の中には、何が起こったのか事態を把握しきれず、体の不調を感じながらもそのまま出勤したというケースも多かったようで、その事にも驚きました。
そして、私だったらどうしただろうと考えました。いつものように地下鉄に乗って通勤していて、目の前で起きた事が化学テロだったなんて、すぐに判断できないですよね…。
事件後、頭痛や気持ち悪さといった後遺症に悩まされている方の言葉に、ハッとした部分があります。自分を立て直すのは自分という発言です。理不尽な被害を被りながらも、気を強く持ち、前を向こうとする男性の言葉でした。ここに書きたいことはたくさんあるのですが、最後に。
サリンの被害に遭われ、亡くなられた男性の遺族の方のインタビューです。涙なくしては読めません。もうすぐ娘さんが生まれる予定で、心待ちにしていた矢先とのことでした。娘さんの年齢は私と同じで、自分と重ね合わせながら読んでいました。本当に悲しく、辛いです。
この本に出ている人々には、一人一人かけがえのない人生のドラマがあります。オウム真理教が引き起こした犯罪は、決して風化させてはなりません。この本は、これからも多くの人にずっと読み継がれて欲しいと思います。
期待して読んだけど、普通に悲しみ、怒り、感動した。心に響いたけど、教団は不条理だけど、それ以上でも、以下でもない。著者は、営団地下鉄組織の指揮者を批判するけど、批判する気にはあまり、なれない。マスコミ批判には同意する。予期できなかった警察も批判されてしかるべき。
初版本買ってたのですが、再読の際がさばるので文庫買いました。
30年近くぶりに読み、あとがきに村上さんがかいてある通りの成果になっているものと思います。
正直、この長い物語を読む期間、いろんな耐えがたき、出口が見えない出来事にさいなまれ、心が晴れない感じで、ようやく本日読了して感心するとともにほっとしたところです。
村上春樹全部読んで、このひとの創造物が嫌いなのか好きなのかはっきりさせようと、まずは講談社文庫からあらためてはじめてる自分の企画ですが、この本をもって、確信した。この人の本は読む価値があると。
SFファンタジーはいまいち趣味に合わないこともあるけども、全般的には読み応えあります。
正直、この長い物語を読む期間、いろんな耐えがたき、出口が見えない出来事にさいなまれ、心が晴れない感じで、ようやく本日読了して感心するとともにほっとしたところです。
村上春樹全部読んで、このひとの創造物が嫌いなのか好きなのかはっきりさせようと、まずは講談社文庫からあらためてはじめてる自分の企画ですが、この本をもって、確信した。この人の本は読む価値があると。
SFファンタジーはいまいち趣味に合わないこともあるけども、全般的には読み応えあります。
地下鉄サリン事件の被害者に村上春樹が行ったインタビューを書籍化したもの
物凄い労力を要した仕事だと思うし、かなり辛い思いをしながら出来上がったものだと思います
著者の努めて被害者のありのままを書こうとした姿勢にも共感できます
こうした本が出ることの社会的意義も感じ取ることができます
村上春樹が感じてしまったこの事件のやるせなさに私も心を揺さぶられました
でも、読んでてこっちも辛くなってくる上に、インタビューも膨大で、しかも淡々と語られるんです
私は半分くらいで挫折、ずっと飛ばして巻末だけ読みました
不真面目な人には向かないです
物凄い労力を要した仕事だと思うし、かなり辛い思いをしながら出来上がったものだと思います
著者の努めて被害者のありのままを書こうとした姿勢にも共感できます
こうした本が出ることの社会的意義も感じ取ることができます
村上春樹が感じてしまったこの事件のやるせなさに私も心を揺さぶられました
でも、読んでてこっちも辛くなってくる上に、インタビューも膨大で、しかも淡々と語られるんです
私は半分くらいで挫折、ずっと飛ばして巻末だけ読みました
不真面目な人には向かないです
読んでみて驚愕した。
小説家としての村上春樹しか知らなかったが、優れたジャーナリストとしての一面があったとは。
巨大な犯罪事件に巻き込まれると人はどうなってしまうのか。
特に精神医療関係者に読んでもらいたい。
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