防災教育

2025年01月27日 12時33分58秒 | 社会・文化・政治・経済

学校防災のための参考資料
「生きる力」を育む防災教育の展開

まえがき
平成23年3月に発生した東日本大震災により、多数の学校、児童生徒等に甚大な被害が生じたことは、平成7年の阪神・淡路大震災及びそれ以降の地震の教訓を踏まえ、防災教育・防災管理、学校の施設整備を進めてきた学校現場に対し、津波による被害という新たな課題を提示しました。
学校現場における防災を含む学校安全については、これまでも学校保健安全法に基づき、学校安全計画の策定・実施、危険等発生時対処要領の作成、地域の関係機関等との連携など、様々な措置が講じられ、また、平成20年及び平成21年に改訂された学習指導要領及び幼稚園教育要領において、安全に関する指導の充実が図られてきたところです。
文部科学省においては、東日本大震災を契機として、改めて防災教育・防災管理等を見直すため、「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」を設置し、平成24年7月に最終報告が取りまとめられ、さらに、国においても、平成24年4月には、防災を含む学校における安全に関する取組を総合的かつ効果的に推進するための「学校安全の推進に関する計画」を閣議決定しました。
この「学校安全の推進に関する計画」において、「国は学校における安全に関する指導が系統的・体系的になされるよう、各教科等における安全に関する指導内容を整理し、学校現場に対してわかりやすく示す」ことや「安全教育のための指導時間を確保するための方策について、国は、その必要性や内容の検討を行う」ことなどが示されていました。
本資料は、このような状況を踏まえ、平成10年に作成した防災教育のための参考資料『「生きる力」をはぐくむ防災教育の展開』を、新たに学校防災のための参考資料『「生きる力」を育む防災教育の展開』として改訂したものです。
各学校におかれては、本資料を活用し、児童生徒等の発達の段階や地域の実情に応じた効果的な防災教育を実践していただくようお願いいたします。
末尾となりましたが、本書の作成に当たり多大な御協力をいただいた作成協力者並びに関係の方々に、心から感謝申し上げます。
平成25年3月文部科学省スポーツ・青少年局長
久保 公人

学校防災の意義とねらい

学校防災の意義
平成23年3月に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震の発生による災害)が学校現場に与えた衝撃は大きく、我が国において、改めて学校防災の在り方を考え直す機会となっているとともに、今後の復興に向けて心身ともにたくましい人材の育成が求められている。また、学校施設が
周辺地域に果たすべき役割等についても一層重視されてきている。
今までにも都道府県、市区町村の教育委員会などの教育行政や幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等の教育現場は、発達の段階に応じた防災教育・防災管理等に取り組んできた。
最近では、様々なケースを想定した危機管理として防災マニュアルやそれに則った訓練が策定・試行、改善され、学校内外の教職員研修の中でも取り組まれている。
しかし、学校における危機管理は、地震や津波、台風などの自然災害、火災や原子力災害だけでなく、交通事故、活動中の不慮の事故、侵入者、熱中症、さらには学校内の個人情報管理、いじめ等に関する問題なども含むと多岐にわたる。

これらを意識しながらも、自然災害に対する危機管理は学校安全の基礎的・基本的なものになると考えられる。

各学校においては、学校安全をどのように捉え、学校防災にどう対応し、いかに幼児・児童・生徒(以下、児童生徒等とする)を守るかについて、近年の学校の現状と課題から検討する必要がある。
学校安全計画の策定・実施、危険等発生時対処要領の作成、関係機関等との連携など、学校安全に関して各学校において共通に取り組むべき事項が規定された「学校保健安全法」が平成21年から施行された。

各学校においては、この「学校保健安全法」の趣旨を踏まえ、防災の観点も取り入れ
た施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における
安全に関する指導や、教職員の研修等について、学校安全計画を立て実施することが義務づけられ
ている。同時に、自然災害等発生時において教職員が取るべき措置の具体的内容及び手順を定めた
対処要領(マニュアル)を作成するなど、防災教育と防災管理を一体的にとらえ、学校防災の充実
を図ることが求められている。
東日本大震災を受けて、各学校においてはマニュアルの見直しや改善が行われている。平成24年3月には、文部科学省から「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」が配布され、この中では学校の全職員が参加し、地域性を反映した学校独自のマニュアルづくりから避難訓練の
実施・評価、改善まで、その作成手順が示されている。
また、近年の児童生徒等の安全を脅かす事件・事故災害等の発生及びその対応を踏まえ、学校保健安全法や学習指導要領に即した内容に改訂した学校安全参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」を文部科学省が平成22年に作成し、各学校に配布している。

内容としては、学習指導要領の改訂に準じる以外にも、評価の観点やボランティア活動、不審者侵入防止、地域学校安全委員会など、今日の現状を反映したものとなっている。

さらに、小学校教職員用研修資料(映像、DVD)「子どもを事件・事故災害から守るためにできることは」、中学校・高等学校教職員用研修
資料(映像、DVD)「生徒を事件・事故災害から守るためにできることは」並びに防災教育教材「災害から命をまもるために」(小学生用、中学生用、高校生用)を作成し、学校安全参考資料と同様に各学校に配布している。これらを参考としながら、各学校の現状に応じた学校防災の一層の充実が望まれる。

2 災害の発生と学校防災推進上の課題
(1)大規模な自然災害の教訓と課題
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、児童生徒等や教職員等の学校関係者の死者・行方不明者が700名を超え、その規模が甚大であり被害が広範囲に及んだ。

特に沿岸部の被害の大きかった学校では教育活動再開までに長い時間を要している。

この災害の教訓と課題について検証や研究が行われているところであるが、平成7年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震の発生による災害)の特徴と併せ、課題について考えてみたい。
阪神・淡路大震災では、発生が早朝で、断層型の瞬間的な強い揺れが発生した。

他の時間帯であれば学校や通学路、活動場所において児童生徒等に多大な被害が出た可能性が高いと考えられてい
る。

そのため、大地震など大きな自然災害発生時において児童生徒等の安全をいかに確保するかという防災管理について大きな課題となった。

一方、東日本大震災では、平日午後の地震発生であったため、発生時刻には多くの児童生徒等が在校していたが、日常の避難訓練の成果や教職員の適切な避難誘導により、地震発生時の揺れによる児童生徒等・教職員の死者は発生せず、沿岸部の学校においても多くの児童生徒等が津波から避難している。

しかし、津波によって人的被害を受けた学校もあり、特に、石巻市立大川小学校では、避難の判断が遅れ、津波によって全校児童108名のうち70名が死亡、4名が行方不明、教職員13名のうち10名が死亡(平成25年2月末現在)している。
さらに、学校外施設で部活動中の高校生や下校途中、保護者への引き渡し後に津波の被害にあった例もみられた。

このような災害が、長期休業中や児童生徒等が学校外にいる時間帯に発生していたら、児童生徒等はどのように行動していただろうか。東日本大震災により、防災管理の課題とともに、防災教育の課題も浮き彫りになったと言える。
さらに、阪神・淡路大震災及び東日本大震災の共通した特徴の一つとして、多数の被災者が学校に避難したことが挙げられる。

これらの大震災に限らず、大規模な自然災害が生じた時は学校が避
難所となることが多い。その場合、行政担当者の組織的な避難住民への対応が始まるまで、その学
校の教職員が避難所の運営協力にあたることがこれまでも見られた。学校が避難所となった場合。
3
第1章 学校防災の意義とねらい
1学校防災の意義とねらい
その運営から食料の配給等の適切な指示まで、教職員の献身的なはたらきに対する評価は高かった。
東日本大震災での教職員の対応や復旧に向けての活動の辛苦は筆舌に尽くしがたい。復興、復旧に向けての取組はもとより、精神的に不安定な状態にある避難者への対応能力、集団のまとめ方などの能力は日常の教育活動から培われたものと考えられる。

言い換えると、教職員に対する社会的な信頼が、むしろ、このような危機管理のときに大きな意味を持つと言える。

しかし、一方では、それらの対応のため、児童生徒等の安否確認や教育活動の再開に向けた業務に支障をきたしたとの報告もあり、災害時における学校の役割、学校・教育委員会等の防災体制、学校施設の防災機能・耐震性、地域住民の防災教育等の在り方等について、大きな課題となってい
る。
(2)近年の自然災害と課題
日本列島においては、平成7年1月の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)から平成23年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の間に、平成12年鳥取県西部地震、平成13年芸予地震、平成15年十勝沖地震、平成16年新潟県中越地震、平成19年能登半島地震、平成19年新潟県中越沖地震。
平成20年岩手・宮城内陸地震(いずれも気象庁が命名した地震)など、人的被害を伴う震度6弱以上の地震が18回発生している。
また、地震防災対策特別措置法に基づき設置された「地震調査研究推進本部」(文部科学省所管)

主要活断層帯、海溝型地震について地震規模や発生確率等を公表しており、「東海地震」「東南海・南海地震」など重大な地震災害の発生が懸念されている。平成24年12月に地震調査研究推進本部地震調査委員会が公表した「今後の地震動ハザード評価に関する検討」によれば、プレート(境
界)型地震の生じやすい太平洋側だけでなく、日本国土の多くの地域において、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の高いことが報告されている。
東日本大震災では、犠牲者のほとんどが津波によるものであったが、阪神・淡路大震災では、地震発生直後の犠牲者の8割以上が建築物の倒壊による窒息死、圧死であった。

平成16年新潟県中越
地震や平成20年岩手・宮城内陸地震などにおいては、建物やブロック塀の倒壊などのほかに斜面崩壊等が原因で亡くなっている人が多い。また、これらの災害後の長期間に渡る避難所生活によるス
トレス等が原因で死亡している人もいる。
阪神・淡路大震災後は、各学校においても防災教育や防災管理の検討と改善が進められてきた。
特に、地震や津波の甚大な災害を経験した地域、近年災害が多発している地域、あるいは、今後災害の切迫性が高い地域等を中心に、積極的な取組が行われている。

しかし、その一方で、避難訓練
が火災発生時の対応に関する指導のみとなっているなど、児童生徒等の災害に適切に対応する能力
を高めるような取組が十分に行われているとは言えない地域も見られ、防災教育の取組が地域に
よって大きな差異があることも懸念される。
津波への対策については、東北地方太平洋沖地震の発生以前から、懸念されていたことが多かった。

例えば、平成22年のチリ中部沿岸を震源とする地震による津波において、津波警報(場所によっては大津波警報)が発表された市区町村の中で、避難指示または避難勧告が発令された地域での避難率が37.5%という調査結果があった(出典:チリ中部沿岸を震源とする地震による津波避難に関する緊急住民アンケート調査結果【平成22年4月】/内閣府、総務省消防庁)。

日本近辺で地震が発生した場合は当然ながら、海外等遠隔地で発生した場合でも津波による被害が生じるおそれがある。

学校においては、海岸近くに立地するなど津波被害が予想される地域だけでなく、海岸周辺等で校外学習や課外活動等を行う際には、気象情報や自治体の避難勧告等の情報収集体制等を確立するとともに、高台等への避難経路を確認し、津波情報を入手した時の対応を事前に定めておくこと
が必要である。

平成19年10月から気象庁によって緊急地震速報がテレビ放送等などを通じて一般に提供されるようになったが、学校においても、児童生徒等に周知を図るとともに、学校の特色や児童生徒等の状況に応じた緊急地震速報の利活用についても検討されたい。

地震・津波以外の災害として、特に目立つのは気象災害である。

近年では平成23年7月新潟・福島豪雨、平成23年台風第12号、平成24年7月九州北部豪雨で甚大な被害が生じた。

台風、低気圧、集中豪雨などがもたらす風水害は、ある程度予測が可能であるため、気象情報等を確認し事前の対応をとることで被害を軽減させることが可能である。また、自治体が発令する避難勧告等と連動した対応も必要となる。

竜巻等突風災害としては平成18年に宮崎県延岡市、北海道佐呂間町での竜巻災害がある。

平成24年につくば市で発生した竜巻では中学生が犠牲となった。

校内においても運動会や体育祭、球技大会など屋外運動場での活動では、不安定な気象条件下で発達する積乱雲による雷の発生、竜巻、突風、急な大雨には備えておかなくてはならない。

これらの現象は局地的であり範囲も限定的であるため正確な予測が難しい。そのため、学校や教職員は気象情報を活用しつつも、積乱雲が接近する兆しを感じたら、落雷や竜巻突風等に備えて、速やかに活動を中止し、児童生徒等の安全を確保する必要がある。

また、予期せぬ風等に備えて、常にテントやサッカーゴール等を固定しておくことが必要になる。

以下略

 

2018年12月25日 · 東日本大震災の被害を受けた学校現場に対応するために、防災教育・防災管理等を見直した文部科学省の計画に基づき、防災教育の指導内容や方法を整理した資料です。 …

 

 


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