中東テロリズムは終わらない イラク戦争以後の混迷の源流

2020年06月30日 12時09分19秒 | 社会・文化・政治・経済

中東テロリズムは終わらない イラク戦争以後の混迷の源流

内容(「BOOK」データベースより)

過激派思想の伝道師への接触、謎の兵器供与ルートの追跡、CIAの元秘密工作員の苦悩―。思惑が交錯する混沌の地を訪ねた緊迫のノンフィクション。

著者について

●村瀬 健介:1976年、シンガポール生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。
2001年TBS入社。記者として、警視庁、司法、宮内庁などを取材。
その間「NEWS23」「報道特集」の番組も担当。15年からアフリカと中東を担当する中東支局長に。
「”大義なき”イラク戦争から15年」や「シリア内戦 ~兵器供与の闇」などを制作。「報道特集」で放送され、大きな反響を呼んだ。2019年3月、帰国。同年6月より「NEWS23」の取材・フィールドキャスターを務める。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

混迷はなぜ続くのか。

テレビ局の中東特派員だった著者が追った衝撃の現実

(目次)
はじめに 第三次世界大戦前夜
第1章 衝撃の駐在初日 ―後藤さん、湯川さん事件
第2章 拡大するテロリズム ―「イスラム国」扇動者との接触
第3章 逃げ惑う人々 ―レスボス島、難民上陸の瞬間
第4章 大国の欺瞞 ―兵器のバルカンルート
第5章 大量破壊兵器はなかった ―一人の嘘になぜ世界は乗ったのか
第6章 ゴーストタウンとなった要塞 ―政府軍に転身した元兵士の熱狂
おわりに フェイクが蔓延する社会でみたもの
 
 

(評者: 瀬尾 傑 / スローニュース代表取締役)

 この本を読んでいる最中、額に突きつけられた銃口の冷たさを思い出していた。太陽が痛いほど照りつけるイラクで、黒光りするそれは氷のようにひんやりしていた。

 2004年、イラク戦争最中、陸上自衛隊が初めての海外派遣としてサマワに駐留することになった。当時、「月刊現代」の編集部にいたぼくは、そのキャンプをなんとか取材しようと、コラムニストの勝谷誠彦さんとともにヨルダンのアンマンから車でバクダッドにする途中で、武装グループに襲われた。乗っていた後席のドアを開けさせられ、自動小銃をつきつけられたときは死を覚悟した。金品を奪われただけで解放されたのは幸運だった。

 しかし1ヶ月後、同じルートをボランティアとしてバクダッドに向かっていたボランティアの若者たちは不幸にも拉致されてしまった。テロリストから自衛隊の撤退を要求され、日本では「自己責任論」なんてバカな議論がとりざたされた事件だった。

 そして、ぼくが命からがらたどり着いたバクダッドで合流し、ともにサマワやティクリートなどを取材してまわったベテラン戦場カメラマンの橋田信介さんとその助手の小川功太郎さんは、さらに1ヶ月後、現地でテロリストに自動車ごと銃撃されて命を落とした。戦争中に目を怪我した10歳の少年を日本に連れて帰り、手術を受けさせようと走り回っていたときに襲われたのだ。小川さんはまだ33歳の若者だった。

 悔しいが、テロリストはこちらがジャーナリストであろうが、人命救助で動いていようが、憎しみの対象としかみていない。そして、イラク戦争ではじまった不条理な暴力の連鎖はいまも続いている。

 著者の村瀬健介さんが2015年、TBSの中東支局長として赴任したのは、後藤健二さんと湯川遥菜さんが殺害される凄惨な事件の渦中であった。同年11月、130人が殺されたパリの同時多発テロが発生し、血なまぐさい現場に駆けつけた。

 そして、血塗られた事件の余韻ものこる1週間後、ロンドンでイスラム過激派の指導者にインタビューする。殺人を是とする陰惨な思想とはうらはらな穏やかさに、むしろ問題の根深さをかぎとる。それを機に、テロリストを支えるイスラム過激思想の源流を追い求め、エーゲ海やヨルダン、イラクという世界各地の現場をまわった丹念な取材をまとめたこの本は、一気に読ませる。

 イラク戦争では「大量破壊兵器」が開戦の根拠となった。その秘密工場と目された施設を探し出すくだりは、執念を感じると同時に、その取材で検証された事実には唖然とした。そこで何を見たか、どんな証言を聞いたかは、ぜひ本を読んでほしい。


 
 
 
当時何が起こっているのか分からず半ば聞き流していたイラク戦争開戦に至る経緯が、驚きとともにクリアに理解できました。普通に生活していては触れられない情報が多く含まれている一方で、具体的なエピソードや当事者へのインタビューを中心に非常に読みやすく書かれており、あっという間に読み終わりました。次回作が楽しみです。
 
 
TBSで中東支局長だった村瀬記者が後藤健二さんと湯川遥菜さんの人質事件、パリでの同時多発テロなどの取材を機に、欧州に蔓延りはじめたイスラム過激思想の源流を辿るため、シリアやイラク内戦を泥沼化させていった武器取引の闇、米国政治の舞台裏で繰り広げられたCIAによる情報戦の闇を追っていきます。村瀬記者の取材現場での心の葛藤や、問題意識も詳細に描かれており、引き込まれ一気に読むことができました。

中東で「正義」を振りかざし闘ってきた米国が、その裏で民間人を使った武器供与や訓練をいかに続けてきたか、その詳細な状況が、丹念な取材によって生々しく克明に描き出されています。

穏健派と言われたパウエル国務長官の国連での演説を機に、米国は一気に開戦に踏み切っていきましたが、その裏で一体どんな事実が明らかにされていたのか。CIA職員や核の米国の研究者達は事実を知りながら、なぜ、それらを公にせず、戦争に突入していったのか。

CIAの組織の闇、情報戦の恐ろしさとともに一度、戦争に向かって国や軍が舵を切った時、さまざまな情報が行き交う米国であっても、誰も止められなかったのだという恐ろしさを感じました。

米軍とともに軍装備の一体化を進めている日本は、この問題をとても他人事にはできません。

日本はイラク戦で米国をはじめ、有志連合を支持しましたが、間違った情報を基に米国支持を表明したことに対し、当時の小泉純一郎首相らは、政治的な反省や責任を一切、取らずに終わっています。

そして、過去の歴史を総括しないまま、現在日本は、盲目的に米国の軍事方針に追随し続けています。この状況にも改めて危機感を抱きました。いまを考える上でも多くの方に読んでもらいたい一冊です。
 
 
イデオロギーに染まっている。記者としての正義感に酔っていることを除けば、かなり真実に肉薄していると思う。
アメリカの戦争はもはやアウトソーシングによる戦争だ。責任の所在は曖昧。かつ、長引くことこそが利益になるような戦略を取られるようになっている。
また、イラク戦争を引き起こすことにもなった諜報による過信、これは国家の情報員は常に疑ってかからなければならない。
本書では教訓を得ることはできないが、その取っ掛かりを肌感を持って知る上で有益。
 
 
 
 

 


「良き統治」とは何か

2020年06月30日 11時58分21秒 | 社会・文化・政治・経済

独裁化するポピュリズム政治家の暴走に歯止めを打ち立てるには―ピエール・ロザンヴァロン『良き統治――大統領制化する民主主義』宇野 重規による解説

配信

『良き統治―ー大統領制化する民主主義』(みすず書房)

私たちは、選挙で代表者を選ぶだけの「一日限りの主権者」でいいのだろうか? 現在、政治指導者に権力が集中する「民主主義の大統領制化」が進んでいるのではないか?

このような問題意識から書かれたフランスの政治学者ロザンヴァロンの民主主義論『良き統治』。本書の邦訳刊行に際し、東京大学教授、宇野重規氏による解説の一部をお届けします。

◆「良き統治」とは何か――独裁化するポピュリズム政治家の暴走に歯止めを打ち立てるには 『良き統治』という本書のタイトルを見て、「随分と時代がかっている」という印象を持つ読者もいるかもしれない。

何より「統治」という言葉が、今日ではあまり耳慣れないものとなっている。どこか古めかしく感じる方がいてもおかしくないだろう。

「統治」の原語はフランス語のgouvernement、 英 語 で い え ばgovernmentで あ る。 一 般 に は「政府」という組織を指す言葉として理解されることが多いが、この言葉はもともと、「統治する」を意味するgouverner(フランス語)やgovern(英語)が名詞化したものである。

その意味では、この言葉は文字通りには「統治すること」を指す。まさに、統治者が被治者を「統治する」という行為それ自体に着目したのがこの言葉である。

しかしながら、いつの日か、gouvernementやgovernmentはむしろ、統治のための組織や構造を指す言葉としてもっぱら理解されるようになった。

その背景には、いうまでもなく、民主主義の発展がある。かつての絶対王権の時代ならばいざ知らず、今日では人民が主権者となり、民主政治が実現している。一人ひとりの市民が自らの自由や権利を擁護するために政府を組織したのであり、そのように組織された政府の権力は民主的な統制に服している。

ある意味で、主権者としての集合的な人民が、自分たち自身を統治しているのが民主政治であり、それは自己統治に他ならない。

そうだとすれば、自分たちで自分たちのことを律しているのであり、その限りでは「統治」という、上位者が下位のものを支配するという垂直的なイメージにはそぐわない。

このような理解が広まった結果、gouvernement/governmentという場合、「統治」という含意は後景に退き、もっぱら「政府」という組織がイメージされるようになったといえるだろう。

しかし、本書の著者であるフランスの政治学者ピエール・ロザンヴァロンは、今日の民主主義を論じる上で、あえて「統治」という視点に注目する必要があるという。

民主主義の下でも、「統治」という問題は残る。いや、現在、かつてないほど「統治」のあり方やその質が厳しく問われなければならないとロザンヴァロンは強調する。

その理由の一つに、現代民主政治において執行権の力が強大化し、「民主主義の大統領制化」が進んでいることが挙げられる。

その意味で、従来の立法権を中心とした民主主義論は、大きな転換を迫られているのである。現代において、民主主義といえばもっぱら代議制民主主義がイメージされるが、その場合にポイントとなるのは、いかにして社会に存在する多様な利害を、政党を通じて国政に反映させるかである。

しかしながら、このような視角は、「統治」そのものを検討する上では十分ではない。

今こそ、いかなる統治が「良い」のか、この問題をストレートに問い直すべきであるとロザンヴァロンは主張する。 ロザンヴァロンはこの問題をきわめて広い射程において捉えている。

一例を挙げれば、ロザンヴァロンは「良き統治」をめぐる議論の起源を求め、ヨーロッパ中世における君主のための教育書である「君主の鑑」(あるべき君主の姿を描く文学の一ジャンル)にまで遡っている。

そこまで遡らなくても、本書における議論の中心はフランス革命以降の時代、とくに二〇世紀以降にある。その間、多くの啓蒙思想家やフランス革命の当事者たちの想定に反し、政府の権力の中心は立法権ではなく、次第に執行権へと移っていった。

その過程を綿密に検討しているのが、本書の真骨頂である。 が、意外にロザンヴァロンの問題関心の出発点は現代世界にあるのかもしれない。

今日の世界において目につくのは、ポピュリズムと独裁的な指導者たちである。

既成政治のゆきづまり、とくに政党政治の不振に対する不満の増大は、政治家を含むエリート層への批判を加速させている。

ポピュリズム政治家の多くは、伝統的な政党組織を「中抜き」にして直接有権者に訴えかけることを特徴としている。硬直化した政党組織では汲み取れない人々の不満や不安に訴え、その支持をエネルギー源にして自らの影響力を拡大していくという意味で、ポピュリズム政治家はきわめて現代的な存在である。

しかも、そのようなポピュリズム政治家たちは、それまでの政治的常識やコンセンサスをいとも容易に乗り越える。時として、彼ら彼女らは伝統的な人権尊重や権力分立の原則を軽視し、情報操作や隠蔽によって政治的公開性を踏みにじる。自らに批判的なメディアを激しく攻撃するなど、言論の自由を顧慮することもない。

従来、代議制民主主義の不振について論じることの多かった政治学者も、突然巨大な力を持つようになったポピュリズム政治家を前に、十分な批判を行うことができずにいるのが現状である。

はたして独裁化するポピュリズム政治家の暴走に、有効な歯止めを打ち立てることはできないのだろうか。その上で、現代社会における人々のニーズに応える、新たな民主主義の展望はありえないのか。

これまでも『カウンター・デモクラシー』や『民主的正当性』(未邦訳)といった著作を通じて、現代民主主義の直面する難問に答えを示そうとしてきたロザンヴァロンであるが、いわばその集大成ともなる著作が本書『良き統治』である。 (ロザンヴァロン『良き統治』巻頭「解説」より抜粋掲載) [書き手]宇野重規(東京大学社会科学研究所教授/政治思想史・政治哲学)


良き統治――大統領制化する民主主義 (

2020年06月30日 11時20分31秒 | 事件・事故
良き統治
 

 

目次


「良き統治」とは何か  (宇野重規)

序 新しい民主主義への移行

I 執行権――その問題含みの歴史
1 法の聖別と執行権の格下げ
2 非人格性の崇拝とその変容
3 執行権の復権の時代
4 二つの誘惑

II 民主主義の大統領制化
1 先駆的な経験――1848年とワイマール共和国
2 ドゴール的例外から大統領制化の普及へ
3 不可避的かつ問題含みの点
4 非自由主義の規制

III 被治者のものとなる民主主義
1 被治者と統治者の関係
2 理解可能性
3 統治責任
4 応答性

IV 信頼に基づく民主主義
1 良き統治者の諸相
2 真実を語ること
3 高潔さ

結論 第二段階の民主主義革命
訳者あとがき  (古城毅)
原註
索引

私たちは民主主義体制のなかにいるが、民主主義的に統治されているとはいえない。

この大きな乖離が今日の幻滅を生み出している。

執行権の力が強大化し、「民主主義の大統領制化」が進むなか、民主主義の難問にどう答えるか。
いま民主主義が直面する大きな問題は、人々が政治参加できる手段である選挙が、執行者を選ぶだけのものになっていることだ。

そうした「承認の民主主義」では、人々は「一日限りの主権者」でしかない。

民主主義を自らの手に取り戻す「行使の民主主義」のためには何が必要だろうか。
権力の中心が立法権から執行権へと移行する統治の歴史を明らかにし、新たな民主主義の展望をひらく。ロザンヴァロンの民主主義論の総決算。

内容(「BOOK」データベースより)

いま民主主義は機能不全を起こしている。大統領制化する民主主義に展望はあるか。承認の民主主義から行使の民主主義へ。統治の歴史を明らかにし、新たな民主主義の方策を示す。ロザンヴァロン民主主義論の集大成。
 
いまほど各国指導者の一挙手一投足に視線が注がれている時代はないだろう。
既存の制度や利益が大きく揺らぐ時、次なる展望を切り開くことが政治の果たす役割。
それゆえに政治指導者への期待、そして落胆は当然なのかもしれない。
大統領化する民主主義。
大統領化とは、具体的には執権への一極集中である。
期待されるのは、「真実」と「高潔さ」が支配する政治空間。
コロナ禍で不確実性が一層増している。
虚偽と言い逃れが跋扈するようになった民主主義をいかにバージョンアップさせることができるのか-そのヒントが本書に詰まっている。

著者について

ピエール・ロザンヴァロン(Pierre Rosanvallon)
1948年生まれ。フランスの歴史家・政治学者。フランス民主労働
総同盟の経済顧問、社会科学高等研究院研究ディレクターなどを
経て、現在、コレージュ・ド・フランス教授。著書多数。とりわ
け民主主義についての一連の著作は大きな影響を与える。邦訳さ
れた著書に『自主管理の時代』(新田俊三・田中光雄訳、新地書房、
1982)、『ユートピア的資本主義』(長谷俊雄訳、国文社、1990)『連
帯の新たなる哲学』(北垣徹訳、勁草書房、2006)、『カウンター・
デモクラシー』(嶋崎正樹訳、岩波書店、2017)がある。

古城毅(こじょう・たけし)
1975年生まれ。学習院大学法学部教授。専攻は政治学。著書に
『社会統合と宗教的なもの』(共著、白水社、2012)、訳書にジョ
ン・ポーコック『島々の発見』(共訳、名古屋大学出版会、2013)、
ポール・ベニシュー『作家の聖別』(共訳、水声社、2014)、『ジャ
ン=ジャック・ルソーの政治哲学』(共訳、勁草書房、2014)など
がある。

赤羽悠(あかば・ゆう)
1984年生まれ。早稲田大学社会科学部非常勤講師。専攻は社会思
想史。著書に『共和国か宗教か、それとも』(共著、白水社、2015)
、 訳書にクロード・ルフォール『民主主義の発明』(共訳、勁草書房、
2017)などがある。

安藤裕介(あんどう・ゆうすけ)
1979年生まれ。立教大学法学部准教授。専攻は政治思想史・政治
哲学。著書に『商業・専制・世論』(創文社、 2014)、訳書にジョ
ン・ポーコック『島々の発見』(共訳、名古屋大学出版会、2013)
などがある。

稲永祐介(いねなが・ゆうすけ)
1975年生まれ。東京外国語大学世界言語社会教育センター特定研
究員。専攻は政治社会学。著書にL'allégeance à l'État modern
(Paris, L'Harmattan, 2015)、訳書にイヴ・デロワ『国民国家 構
築と正統化』(共訳、吉田書店、2013)などがある。

永見瑞木(ながみ・みずき)
1980年生まれ。大阪府立大学高等教育推進機構講師。専攻は西洋
政治思想史。著書に『コンドルセと<光>の世紀』(白水社、2018)
などがある。

中村督(なかむら・ただし)
1981年生まれ。南山大学国際教養学部准教授。専攻はフランス近
現代史。著者に『新しく学ぶフランス史』(共著、ミネルヴァ書房、
2019年)、訳書にクリスティン・ロス『もっと速く もっときれ
いに』(共訳、人文書院、2019年)などがある。

宇野重規(うの・しげき)
1967年生まれ。東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史・
政治哲学。著書に『デモクラシーを生きる』(創文社、1988)、『政
治哲学へ』(東京大学出版会、2004、新編2019)、『トクヴィル』
(講談社、2007)、『保守主義とは何か』(中公新書、2016)、『政
治哲学的考察』(岩波書店、2016)、『未来をはじめる』(東京大学
出版会、2018)などがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器

2020年06月30日 11時02分56秒 | 社会・文化・政治・経済

今野 晴貴 (著)

内容(「BOOK」データベースより)

一九七〇年代をピークに減少した日本のストライキだが、近年、再び盛り上がりを見せている。しかも、かつての企業労組主導のものとは異なり、最近のストには世間も好意的だ。実は、産業構造の転換により、日本でもストを起こしやすい土壌が生まれていたのである。一方、海外では、現在まで一貫してストが頻発している。しかも近年は、教師が貧困家庭への公的支出増額を訴えるなど、自身の待遇改善だけでなく「社会問題の解決」を訴える「新しいスト」が行われ始めているのだ。アップデートされ世界中で実践されている新しいストを解説し、日本社会を変える道筋を示す。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

今野/晴貴
1983年生まれ。NPO法人「POSSE」代表理事。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書、第一三回大佛次郎論壇賞受賞)、『ブラック企業ビジネス』(朝日新書、第二六回日本労働社会学会奨励賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
 
『はじめにーなぜ、今ストライキなのか?』で筆者は、2006年からこれまでに若者から1万件を超える無料労働相談を受けてきて、政治家や行政にも対策を提案し、いくつかの法律改正も実現したが、それだけでは非正規雇用問題やブラック企業問題はまったく解決していないとし、日本が欧米に比べ桁違いにストライキが少なく、日本だけが賃金がほとんど伸びていないデータなどを示して、労働条件に関する法的規制に実効性を持たせたり、ブラック企業の撲滅に向かわせるには、海外のようなストライキの実践が不可欠なのではないかとしている。そのうえで筆者は、従来の労組のストライキのあり方とは一線を画する「新しいストライキ」の動きが日本にも現れていることを紹介し、これを「ストライキ2.0」と命名して、本書では、たくさんの事例によって「新しいストライキ」の実情を伝えるとしている。 

筆者はまず第1章で、ストライキの原理を解説したうえで、その古典的な原理を活用することにとどまらず、新しい戦略をも生み出した例として、JR東京駅構内の自販機の補充を担当する社員が行った争議を、争議に至った過酷かつ違法な労働実態とともに詳細に紹介している。 

第2章では、これまでのストライキが世論に理解・支持されにくかった理由を示した後に、この数年、世論の強い支持を受けて、逆に世論の力を企業との「交渉力」に変えてしまうような新しい時代の「新しいストライキ」が次々に登場している事例を、それらが世論の強い支持を受けた理由・手法とともに紹介したうえで、この「新しいストライキ」の特徴を三つの要素から詳しく解説しており、続く第3章では、世界では「新しいストライキ」が、日本よりはるかに大規模かつ進んだかたちで現れていることを紹介している。 

最終第4章では、筆者はまず「20世紀型労働運動」を、「自社の利益に貢献し、その分、(正社員)労働者の賃金を守る。これが、残念ながら現代日本の労働運動のスタンダードであり、20世紀型のストライキの論理が行きついてしまった先である」と総括し、欧米に比して特に日本に顕著な「20世紀型労働運動」が陥ってしまった問題点について詳述したうえで、新しい労働運動にシフトせざるを得ない条件はすでに備わっていることを示しつつ、21世紀のあるべき労働運動とストライキの姿を具体的に展望している。 

なお、本書の巻末には、『付録 労働運動やストライキを行うためのQ&A』として、「ユニオンに加入すれば、ひとりでも団体交渉やストライキができる」、「遵法闘争のようなやりやすいストライキ」など、労働組合とストライキなどの争議行為に関する簡単なQ&Aや、『無料労働相談窓口一覧』が掲載されているので、現在、労働問題で苦しんでいる方は、本文ともども参考になると思う。 
 
 
 
過去を総括しつつ、現在におけるストライキの意義を考えるので、かなり難解です。それでも丁寧に説明しているので、かなり理解できました。
 
 
他の方のレビューが的確なので正直な所書かなくても良い位なのですが、自分も読み終えたので書こうと思います。
簡単に書くと、ストライキとは何なのか?から始まり、どういったやり方や範囲や期間についての説明を
海外や日本国内の実例(ジャパンビバレッジ東京、東北自動車道の佐野SAケイセイ・フーズ)を交えて説明してくれています。
日本はストライキの年間発生件数が異常なほど少ない事やピラミッド建設の労働者が待遇改善を求めてストライキを起こしていた等、勉強になりました。

何故、日本ではストライキが行われづらいかなどの世界と日本とのストライキの認識の違い、組合の横の繋がりの弱さなどを指摘してくれています。
世界中で働くと云う事が不安定になり生活が脅かされています。
今こそ皆で「働く」と云う事を考える時が来たのだと思います。
読んで良かったです。
 
 
ストライキと言えば一昔前までは大企業で旗を建てて戦うイメージだった。目的は賃金のアップ。

しかしいまはユニオン系の労働組合がSNSをうまく使いスマートに戦うイメージ。
目的は最低限の働く環境の改善である。

本書で取り上げられる実例では、自販機ベンダー業者、私立学校、介護、保育業界、コンビニ等があげられている。
あらためて列挙してみると都市社会インフラに直結する業界がブラック化しているのである。
個人的な意見では私立学校、介護、保育業界の働く環境が悪い社会は「相当こわい社会」に感じてしまうのだが…

本書の作者さんは社会学で博士まで取った方。ストライキ・ブラック企業を学問的に分析するのが少しだれる部分があり星1つ減点。
ただし、自分たちの労働環境を少しでも良くしたいなら武器となる一冊です。

なお付録の「労働運動やストライキを行うためのQ&A」が付録と言えないくらい勉強になります。
 
 
 
.
タイトルの「ストライキ2.0」とは、要は「こんにちの新しいストライキ」という意味である。そして、その「新しいストライキ」とは、どのようなものであり、私たちはそれに、どのような「希望」を託し得るのか、ということを語ったのが本書だ。
本書は、「かつてのストライキ(=古いストライキ)」とは違ったものとして、新たな希望を託するに足る「新しいストライキ」像を、すでに生動しているものとして、具体的に語っている。

「新しいストライキ」とは、どのようなものなのか。
簡潔に言うならば「個人の利益を増すためばかりのものではなく、社会正義を実現するためのストライキ」である。

もちろん、労働争議としてのストライキは、労働者の利益や権利を守り増進するためになされるものであり、その点は大前提として変わりはしない。
しかし、日本の労働争議は、長らく企業別の労働組合によってなされていたために、自分たちの利益と権利の防衛増進を第一とするあまりに、しばしば「他者の利益と権利」を無視したり犠牲にしたりする傾向があった。
たとえば、交通機関のストにより多くの人が一方的に不便を被るとか、正社員の利益と権利を守るために非正規社員のそれが犠牲にされるといった現実が、残念ながらがあったのだ。

だがそのために、既成の労働組合は「社会的な信頼と支持」を失い、社会から浮いてしまうことによって、使用者(会社)側との交渉力を著しく低下させて、有効な交渉カードとしてのストライキが、ほとんど使えないようになってしまった。
またその結果、労働組合に所属する正社員の利益や権利が充分に守られなくなるばかりか、労働組合に属さないアルバイトや非正規社員などの待遇はさらに劣悪なものとなり、ブラック企業に象徴される劣悪な労働環境の問題が、もはや例外的なものではなくなってしまったのである。
この劣悪な労働環境を変えるには、もはや「これまでの企業別労働組合によるストライキ」でダメなのは明白であり、そこで「新しいストライキ」が求められることになった。

では、その「新しいストライキ」とは、具体的にどのようなものなのか。
無論それは、これまでの「企業別労働組合」の枠を超えた、「職業別・産業別労働組合」によるストライキだ。

これまでは「我が社の社員のため」だけ、だったものが、これからは「同じ仕事をする、すべての仲間ため」の行動となる。「自分たちさえ良ければいい」ではなく、「同じ苦しみを味わっている、すべての仲間(労働者)のために」となり、「新しい連帯」がそこに生まれる。
そして社会は、そうした人たちに「社会正義実現のための意志と告発」を見て応援することになるから、そうした「新しい主体」によるストライキは、社会からの支援を受けて「大きな力」を持つことになる。
一一これが「新しいストライキ」の姿だ。

したがって、いまブラックな職場で苦しんでいる人は、迷うことなく本書を手に取って、具体的な「生き残り戦術」を学ぶべきである。

たしかに、一個人が企業に対抗することは困難だし、怒りにまかせて半端な戦い方をすれば、あっさり排除されてお終い、ということにもなるだろう。
しかし、ただ堪えているだけでは、我慢して言われるとおりに働いているだけでは、あなたは単なる「負け犬」と見下され、いいように使い潰され捨てられるか、あなた自身が死を選ぶかしかなくなるだろう。

だからあなたが「このままでは、潰されるだけだ」と思ったなら、一歩踏み出してほしい。
あなたと同じように苦しんでいる人は大勢いるのだから、そうした「罪なき人=被害者」が連帯すれば、決してあなたは一人ではないし、戦い方を知っている仲間もいるのだ。

だから、黙って食い物にされないでほしい。泣き寝入りしてはいけない。
「どうせ潰されるのなら」という気持ちからでもいいから、同じ苦しみを味わっている仲間たちと連帯してほしい。不当に苦しめられているあなたには、人間らしい生活を求める権利があり、そこには誰もが認める「正義」があるのだから、あなたの闘いは、決して「あなただけのもの」ではなく、同じように苦しむ「すべての仲間のためのもの」でもあるし、だからこそそれは「正義」なのだ。

殺されるな。諦めるな。決意しよう。手をつなごう。そして「自分自身」を守り「すべての人の権利」を守るために戦おう。
戦い方はある。本書には、その具体的な方法が示されている。まず「電話1本」からでいいのだ。

あなたには、まだ「希望」が残されている。だから、絶対に絶望するな。
あなたはまだ戦える。仲間とともに戦える。

絶望するのは、まだ早いのだ。

高1女子の髪は「色が目立つ」、女性教諭ら4人がスプレーで黒染め

2020年06月30日 11時00分28秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

千葉県の県立高校1年の女子生徒が今月、頭髪の色が目立つとして繰り返し学校から注意を受け、校内で教員らによりスプレーで髪を染められる指導を受けていたことが29日、分かった。女子生徒は中学時代に髪を脱色していたという。

県教育委員会は「本人の同意を得ている。適正な指導だった」としている。  県議会文教常任委員会で、共産党の加藤英雄議員の質問に県教委が答えた。質疑などによると、学校側は5月27日、「頭髪検査を6月1日に実施する」と生徒全員に伝えた。1日に学校が再開された後、女子生徒の髪の色が目立ったため、「8日までに直すように」と指導した。  

8日には、黒染めが不十分だと改めて指導。翌9日、女性教諭2人を含む教員4人が校内で、スプレーを使って女子生徒の髪を染めた。10日にも再び黒染めが不十分だとして注意した。

 女子生徒の母親は「美容院で髪を染めるので待ってほしい」と学校側に求めていた。女子生徒はその後、欠席や遅刻を繰り返しているという。  この学校の校則は頭髪について、「脱色や染色は禁止」と規定。県教委は「どの県立学校でも、地毛を染める指導はしない方針」としている。

 

【関連記事】


関東大震災と酷似…?相模沖・巨大地震発生の予兆とは

2020年06月30日 10時52分07秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた東北地方。首都・東京も他人事ではない

巨大地震が目前に迫っている、のかもしれないーー。

予兆は、6月4日に神奈川県の三浦半島で起きた異臭騒ぎだ。「ガス漏れのようなにおいがする」など500件を超える通報があったが、いまだ原因は分かっていない。

「異臭の原因は海底から噴き出たガスだろう」と話すのは、考古調査士の資格を持ち火山や地震活動に詳しいジャーナリストの有賀訓氏だ。

巨大船がビルの屋上に…! 大震災の爪痕画像

「南関東の地下一帯には国内埋蔵量の8割を占める広大なガス田が広がっています。地殻活動が活発化することで、ガスが噴き出す。三浦半島に接する相模湾が震源だとされる関東大震災(1923年)の際にも、今回と同じ場所からガスが噴き出したことがわかっているんです」

関東大震災の記録を詳細に記した大正震災志(内務省社会局編)には、地震の直後に測量船で行った相模湾の地盤調査に関する地図がある。そこには、三浦半島突端の城ケ島付近と東部の浦賀で海底からガスが噴出したと書かれていた。

相模湾付近には、東日本を覆う北米プレートと西日本の南方に広がるフィリピン海プレートが接する相模トラフがあり、そのトラフは東西で太平洋プレートとユーラシアプレートに繋がる。

4つのプレートが複雑に絡み合う場所のため過去に何度も大地震を引き起こしてきたが、いままたその兆候が高まっていると言う。有賀氏が続ける。

「2013年には三浦半島の城ケ島近くで最大6mの海底隆起が見つかり、その2年後には箱根の大涌谷で観測史上初となる噴火が起きました。伊豆半島沖でたびたび発生する群発地震や、最近増えている千葉や茨城などを震源とする地震も相模トラフ付近。ここを震源とする大地震は70年周期で起きるとされ、前回の地震からすでに97年が経過しています。いつ起きても不思議はありません」

◆7月中旬に巨大地震が起きる可能性大 立命館大学・環太平洋文明研究センターで災害リスクマネジメントを研究する高橋学氏も、2011年の東日本大震災以来続いてきた北米プレートと太平洋プレート境界での地震の傾向が変化していると言う。

「ここのところ相模トラフ周辺で起きる地震が目立つようになってきました。5月20日から22日にかけて、あまり地震が起きない東京湾で7度立て続けにマグニチュード(M)3前後の地震が発生し、その後、約2週間ずつ間隔を開けて三浦半島の異臭騒ぎ、千葉県南部を震源とするのM4.2の地震があった。その8日後の6月24日早朝に発生したのが千葉県東方沖での震度5弱の揺れです。地下の異常は、すべて地震につながっていると考えるべきです」

高橋氏は、相模トラフ周辺域で7月中旬にも大きな地震が来るかもしれないと予想する。 「あまり地震が起きない場所でM3前後が連続して起き、その後2ヵ月程度の静穏期を挟んだ後に同じ場所でM3程度の地震が起きたら要警戒です。半日から3日後にM6.5以上の地震が起きることが多い。阪神・淡路、新潟県中越、熊本、鳥取県中部地震などもそうでした。 もし7月20日前後に東京湾でM3程度の揺れがあれば、その直後に相模トラフの周辺で大地震が起きるかもしれません」

これらの警鐘が杞憂に終わることを願う一方で、周期を考えれば、巨大地震がいつ起きてもおかしくない状況にあることは確かだ。震災への備えだけは、忘れてはならないのだ。

取材・文・撮影:桐島 瞬 ジャーナリスト。’65年、栃木県生まれ。原発問題からプロ野球まで幅広く取材。『FRIDAY』や『週刊プレイボーイ』、『週刊朝日』など雑誌を中心に活躍している。

FRIDAYデジタル

 

【関連記事】

最終更新:
FRIDAY

永田町は旧ソ連か? 河井前法相が「KGB」と呼ばれた理由

2020年06月30日 07時51分49秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

国会の本会議場で、よく見受けられた光景があるという。公職選挙法違反(買収)容疑事件で逮捕された前法相の河井克行容疑者(57)の疑惑が浮上するずっと以前のことだ。
彼が国会の本会議場など、議員たちが雑談している場に現れると、誰もがよそよそしい顔つきになり、すーっとその場を離れていたというのだ。この奇妙な風景の意味を、河井前法相をよく知るベテラン議員はこう解説する。
「河井がやっていたことはKGBと同じだから」 KGBとはご存知の通り、旧ソ連の国家保安委員会。西側諸国で諜報活動をしていたことで知られる。
では、河井前法相はなぜKGBと揶揄されるのだろうか。 1996年の総選挙で初当選した当時、河井前法相は目立たない政治家だった。政治家になったのに政策に関心がなく、存在感は薄い。
法案づくりや政策論議で活躍することもないのに、その後、異例の抜擢で首相補佐官に就任。しかし、知人の国会議員にこんな頼みごとをしている。
「自分が何をしているのか、地元の支持者に教えてやってほしい」。 そこでこの知人の議員が広島の会場に行ってみると、地元選出の国会議員は誰もいなかったという。
会場では、河井前法相が首相補佐官として外遊した際などに撮影した、海外の要人との写真を集めたパンフレットが用意されていた。
要人と何を語ったのか、外遊や会談についての説明はなかった。 では、そんな政治家がなぜ出世できたのか。ここにKGBと揶揄される理由が関係する。
河井前法相がはっきり変身したのは、故鳩山邦夫元総務相への接近がきっかけだったという。鳩山氏は説明するまでもなく、国会議員のなかでナンバーワンの資産家である。 河井前法相は鳩山氏が主宰する政治集団「きさらぎ会」の中心メンバーになった。
一方の鳩山氏は2010年から12年にかけ、離党した自民党への再々復帰を狙っていた。河井前法相はそんな鳩山氏を助けながら、同氏の豊富な資金力の恩恵に浴していたという。
鳩山氏は年に2度ほど、きさらぎ会メンバーを事務所に呼んで、餅代や氷代として政治資金を支援していた。
その時、必ずと言っていいほど、河井前法相が同席していたという。関係筋は、「みなカネのにおいがする方向に引き寄せられる。河井はその力をうまく利用していた」と語る。
そして、きさらぎ会は徐々に安倍応援団の性格を強くしていった。河井前法相はこの会合をテコに、安倍晋三首相や菅義偉官房長官に接近。両氏も、きさらぎ会の会合に顔を出したことがある。 そして、河井前法相が安倍首相や菅官房長官に接近するために使ったもう一つの手段があった。
彼を知る議員は、「河井がやっていたことはKGBと同じだった。政治家や官僚、マスコミの間で安倍や菅の悪口を言っている奴がいると、それをご注進することで、権力に近づいた」と語る。
つまり、陰口を密告すること。権力者は誰が自分の批判をしているかを気にしたがるものである。
彼はそこを巧みに利用して、安倍首相・菅官房長官に取り入り、重宝されるようになった。彼が現れると、国会議員たちがすーっとその場を離れるのも、何を密告されるかわからないため、首相の側近となった彼を恐れていたのだ。
 

【関連記事】


大阪と京都で11人感染確認 ヤマト運輸配送員も 6/29(月) 23:53配信

2020年06月30日 07時51分49秒 | 社会・文化・政治・経済

新型コロナウイルスの新規感染者が相次いでいる大阪府と京都府では6月29日新たに11人の感染が確認されました。  

京都府では29日新たにヤマト運輸の配送員など4人の感染が確認されました。府内では29日までの5日間で14人の感染者が確認されていて、西脇知事は感染経路不明者数の平均値などが基準を上回ったとして警戒を呼び掛ける「注意喚起基準」に達したと発表しました。  

 「人と人との接触の機会が増えれば感染のリスクが高まるということで改めて認識していただくことが必要という基準」「改めて皆様に感染しない・させないという意識を持っていただきたい」(西脇隆俊知事)  

注意喚起基準では外出自粛や休業の要請は行ないませんが、「3密」の回避など感染症防止策の実践を呼びかけています。

一方、大阪府は新型コロナウイルスの感染者が新たに7人確認されたと発表しました。5人は感染経路不明、2人は感染経路不明者の家族だということです。大阪府では28日も5人の感染が確認されていて全員、感染経路不明でした。

MBSニュース

 

【関連記事】


【速報】休業要請などの数値基準設けず 東京都 新たな指標 6/29(月) 23:51配信

2020年06月30日 07時48分46秒 | 事件・事故
東京都が、感染拡大の兆しがあるかどうか判断する際の新しい指標について、数値基準を設定しない方向で検討されていることがわかった。

新しい指標は、「東京アラート」解除後、検討が進められていたが、関係者によると、新規感染者数など、これまでの7つの指標については、基本的に踏襲するとみられている。

しかし、警戒を呼びかけたり、休業要請の目安とされてきた具体的な数値基準は設けず、1週間に1回、専門家会議を開いて、感染状況を分析する方向で検討されているという。

最終更新:6/29(月) 23:51
フジテレビ系(FNN)


地球に住めなくなる日: 「気候崩壊」の避けられない真実

2020年06月30日 06時56分09秒 | 社会・文化・政治・経済

デイビッド・ウォレス・ウェルズ (著), 藤井 留美 (翻訳)

商品の説明

出版社からのコメント

<目次>
第1部 気候崩壊の連鎖が起きている
第1章 いま何が起きているのか
第2章 隠されてきた「最悪のシナリオ」
第3章 気候崩壊はすでに進んでいる
第4章 グローバルな気候崩壊の連鎖
第5章 未来は変えられる
第2部 気候変動によるさまざまな影響
第6章 頻発する殺人熱波
第7章 飢餓が世界を襲う
第8章 水没する世界
第9章 史上最悪の山火事
第10章 自然災害が日常に
第11章 水不足の脅威
第12章 死にゆく海
第13章 大気汚染による生命の危機
第14章 グローバル化する感染症
第15章 経済崩壊が世界を揺るがす
第16章 気候戦争の勃発
第17章 大規模な気候難民
第3部 気候変動の見えない脅威
第18章 世界の終わりの始まり
第19章 資本主義の危機
第20章 テクノロジーは解決策となるのか?
第21章 政治の弱体化
第22章 進歩が終わったあとの歴史
第23章 終末思想への抵抗
第4部 これからの地球を変えるために
第24章 劇的な変化の時代が始まる

著者あとがき 残された時間で何をするべきか
解説 江守正多(国立環境研究所地球環境研究センター副センター長)

内容(「BOOK」データベースより)

気候変動の実態は、思っているよりはるかに深刻だ。現状のままでは、2050年までに100都市以上が浸水し、数億人が貧困にあえぐことになる。温暖化がもたらすのは海面の上昇だけではない。殺人的な熱波、大洪水、大気汚染、経済破綻などさまざまな影響をあたえ、壊滅的な危機へと向かわせるのだ。いま何が起きているのか、気候変動により生活はどう変わるのか?近い将来に訪れる衝撃の世界をリアルにあぶりだす、話題騒然の警告の書。
 
英米でベストセラーになっており、アメリカの知人からこの本について聞いて気になっていたので、日本版をさっそく読みました。IPCCのデータなどがもとになっていて、データ自体はこれまでも公開されていますが、ここまで一般的にわかりやすく解説された本はないと思います。
本書に出てくる、気温上昇が1.5℃か2℃で大気汚染による死者数が1億5000万人以上増えるという予測は、いま言われている「早ければ2030年に1.5℃上昇」の予測と直結しており、なんとしても1.5℃以下に抑える必要性を改めて意識することになりました。2℃上昇したときと4℃上昇したときで、どれほど浸水被害の数や暑さによる死者数が変わるかなど具体的な数字があげられ、影響の大きさがイメージしやすくなっています。
気候変動(温暖化)は海面上昇だけでなく、大気汚染や感染症のグローバル化、経済破綻、気候難民などここまで多くの危機をもたらすということも知りませんでしたが、各要素が章ごとにくわしく説明される構成もよかったです。文章も読みやすく、すっと頭にはいります。
警告的な意味合いが強いですが、人間は良い未来を築くことができる力があるとの著者のメッセージに救われました。
 
この先の100年、人類が直面するであろう厳しい状況が、膨大な資料調査の元に記述されている。気温上昇、海水面上昇、飢餓、災害、経済崩壊、戦争と様々な側面から、温暖化による影響を予測している。歴史は希望と進歩へと続く一本道という捉え方は過去のもので、この先は、絶望と崩壊への道が続くとしている。さらに、これは未来の話ではなく、今すでに後戻りのできない下り坂に立っていると説く。ただ、落ちる先のレベルの選択肢は残っており、それは現在生きている人の行動次第だというのが要旨だ。

タイトルの「地球に住めなくなる日」が示す通り、その予測は深刻を通り越して悲惨そのもの、語り口もストレートでショッキングだ。本書は、欧米で昨年、大きなベストセラーになったものだが、それは専門書としてではなく、一般雑誌の連載として書かれたものだということが背景にあるのだろう。終始、(学者ではなく)普通の人の視点で記述されている。読者にも記憶のある事象や新聞などで取り上げられた”事実”(トランプ大統領曰くフェイク・ニュース)も豊富に引用されており、素直に理解できるのだ。学者ならば嘲笑と批判を恐れて中庸に陥るが、著者にはそうした抑制を働かせる必要はない、事態は皆が思っているよりずっと深刻だという語り口も、納得させるものがある。この予測が正しいかどうかはあまり重要ではない。なぜなら、はっきりした時点では手遅れ、人類は滅んでいるのだから。最悪の予測の上に、それを避けるための最良の行動を取ることが、今の私たちがやらなければいけない事だと考えさせられた。希望的な予測の元に、これくらいで良いだろうと最小の努力の小出しに終始ししている現状に強く警鐘を鳴らすことが、本書の狙いなのだろう。

本書は、学術書でも思想書でもない。なぜそうなるのかとか、ではどうすべきかという点についての記述は少ない。そうした期待を持って読むには不適であろう。例えてみると、市場アナリストの調査レポートに近い。それを信じるか、どう行動に繋げるかは読者に委ねられている。著者はシンクタンクの研究員で雑誌の編集者。いわば、調査レポートのプロと言って良い。膨大な調査の元に書き上げられた労作である。何しろ原注だけで91ページ、インタビュー等をした専門家(その中には、アル・ゴアも含まれている)は50名近い。地球温暖化の影響に関心があるのであれば、読むべき一冊だと思う。特に今までこの手の本を読んだことがない人には、良書となるであろう。

本書を読み、もう少し本質を理解したい、どうすべきかを考えたいという人には、以下の2つをお薦めする。
 
 
多くの文献から得られる情報を基に普通の言葉で淡々と語られる現状と将来予測は
私たちが生活する今が極めて簡単に脆く崩れてしまう可能性を強く示唆しています
しかも私たちはこの新しい脅威に対する有効な解決手段を持たないがゆえに
「自分とは縁遠い世界」になっていることが浮き彫りにされます
 都市という巨大なエネルギーシステムとそこから生まれる凄まじい生活の速度は
 私たちが生活するタクトタイムを極端に短縮した上に便利をもたらしました
 生産と流通そして消費は地球へのコストを払うことのない資本の運動の上に成り立っています
 しかし今後は今まで先送りして来たそのコストを災害の形で支払うことになります
気候変動(気候遷移)を阻止する為の経済的,政治的な表現手段を今の私たちは有していません
なんとかしなければと思いつつも無力感の中で生活しています
それは今の経済システム上では解決できないことを暗に示しています
私たちが納得できる生活の新しい仕組みが求められているように感じます
 私たちは自然の中での代謝によって生活し生命を維持しています
 太陽から供給される巨大なエネルギーの上に運動する自然は
 その平衡状態を崩すと元には戻りません
 そうすると自然は脅威になって私たちの前に現れます
 
 
内容は非常に危機感を持てる内容です。
初めの方は特に地球全体のことに危機感を持って取り組まなければならない、という意識にされます。
昨今のウィルス関係の問題も喫緊の課題ではありますが、後ニ〜三ヶ月すれば自然災害の時期になります。
ここ数年を考えるとまた異常気象になるのでしょうから、その備えとしての知識として有効だと思います。
 
 
 
 
 
 

人間生命の全体像を把握する

2020年06月30日 06時09分32秒 | 医科・歯科・介護

ゲノム研究は、医学、薬学、農学等の分野で新技術の開発に貢献するだけでなく、「生命とは何か」「人間とは何か」といった問いに対し、重要な基礎知識を提供する。
微生物ゲノムの解読からは、「生命として成り立つ最小のゲノムは何か」という問いが立てられるようになり、ヒトゲノムの解読からは生物としてのヒトの起源やヒト集団内での多様性が具体的に研究できる。
しかしながら、ゲノム研究が生み出す生命や人間についての見方を体系的にまとめるという作業は、これまで十分になされていなかった。
ゲノム研究から見えてくる生命観・人間観を、ゲノム研究者との議論を通してまとめることを目指した。
人間は特殊な生物か? 

自分自身を変える技術を獲得した点で、やはり、特殊な生物だと考えられる。
生物や人間の全体像の理解が完全でない段階でも、医療やその他の目的のために、人間は自分自身を改変すると思われる。
そもそも科学研究が生命観・人間観(生命の見方・人間の見方)に与える影響を分析しようとする営みは、どこかに区切りをつけられるようなものではない。
ゲノム研究の動向を文献や聞き取り調査によってしっかりと把握する作業を時間をかけて進めることが重要である。

その上で、研究が生み出す知識や技術がどのように生命や人間の見方に影響を与えようとしているのかを、様々な手法を用いて分析することが必要であろう。
人文社会科学的な分析を進めていくことが必要である。

20 世紀の後半は、しばしば生命科学の時代と形容される。

生命の本質と、疾病を含む様々な生命現象についての我々の理解は、この半世紀で飛躍的に深化し拡大した。人類は遺伝子を操作する技術を手に入れ、細胞・生体を用いて有用物質を量産することが可能になり、さらには細胞を望みの組織へと分化させる手段をも獲得しつつある。このような生命科学
の発展が医療や食料生産にもたらした恩恵は計り知れない。しかし我々はまだ、生命を理
解し尽くしたとはとうてい言えない地点にいる。個々の生体化学反応の詳細、それらを統
合して生命システムとして成り立たせている仕組み、さらには脳や神経の働きにより我々
が知覚し、記憶し、行動するメカニズムなどはまだまだ未知の大海である。21 世紀におい
てこれらの問題に果敢に挑戦し、人類の知をより深化させるために、どのような学術研究
体制を構築していかなければならないかは、極めて大きな問題である。
また、生命科学を含めた科学技術の発展により、一方では豊かな生活を享受しつつ、他
方では地球規模で人類の生存基盤の崩壊が進行するという事態に我々は直面している。こ
れからの時代においては、科学技術で生じた負荷を新技術で克服するというテクノロジー
優先の考えではなく、生物としての人類が地球環境の中で生き延びていくには本質的にど
のように生活すべきであるかという叡智を与えてくれる生命科学の展開が不可欠である。

 これからの生命科学
日本の生命科学研究は、これまで生命現象の解明において優れた成果を上げてきた。
しかしそれは、専ら「ヒト」を生物として理解することを目標としたものであり、生命科学の成果を「人間」の福祉につなげることが明確な目標として認識されることは少なかった。
これからの生命科学においては、「生命現象の包括的・統合的な理解」と「人類の福祉への貢献」とを両立させることが重要である。

そのためには、未来を見据えた基盤技術・機器開発と、特にボトムアップ型の研究に対する継続的な支
援の充実を図るとともに、先端的な研究の成果を医療・創薬や農業・食料科学などへ適切に橋渡しする研究を支援する体制を、法制度等も含めた社会的なインフラストラクチャーとして整備することが望まれる。また、人間の生命や健康・生活の安全と、それに影響を与える諸要因との関係を解明し、調整するための目的指向的な科学分野、レギュラトリーサイエンスの発展も重要である。 
こうした目標を達成するためには、生命現象の理解を目指す生命科学領域に加えて、「人間」を深く理解し、その健康と福祉に貢献することを目的とした、新たな生命科学の研究領域を開発し、両者を調和させながら発展を図ることが有効である。
基盤技術の開発とボトムアップ型研究への支援
生命現象の包括的・統合的な理解を大きく発展させるために、

① 大容量データを取得、解析、保持し、関連する資源を保存、頒布する技術

② 細胞や個体の操作、情報計測、システム模倣技術

③ 再生医学、ドラッグデリバリー、ナノテクロジーなどを活用した医療・創薬技術

④ DNA マーカーや組換え DNA を利用した技術など、基盤となる技術の開発が重要である。
 また、我が国の今日の科学政策においては、トップダウン型研究に比してボトムアップ型に対する支援は手薄であると言わざるを得ず、両者の調和に関して適切な考慮が行われなければならない。

生態系の研究など、長期に渡る地道な観測が必要な研究分野においては、研究基盤そのものが崩壊に瀕しているものも少なくない。生命科学研究の基盤として不可欠なバイオリソースやデータベースなどの整備も遅れており、生命科学の幅広い分野の基礎研究に対する支援の拡大は急務である。
 社会のニーズへの対応地球に暮らす多様な生命全体の持続的な存続と、人々の幸福にとって、生命科学は様々な形で重要な関わりを持っている。
生命科学は、遺伝子から生態系まで、多様な生物学的階層において、生物多様性の様々な要素を研究対象として、複雑で動的な生命システムに関する知見を蓄積してきた。

類を含む生命全体にとって危険な方向に向かう地球環境の変化をおしとどめるために、生命科学は、さらに基礎的理解の深化を図るとともに、科学的な監視と評価に基づく対策の立案に積極的な役割を果していくことが求められている。
また、子どもが健全に成長できる環境の整備や、働く人々の心身の健康の維持増進、高齢者の介護予防対策の充実など、人生のすべての段階を通して人々の健康や安全を守るとともに、食料の安定供給と食の安全の確保、環境調和型の農林水産業の推進など、人々の食と、それを支える農林水産業の存立と発展にとっても、生命科学の知見は不可欠であり、社会の期待に応える研究の推進が必要である。
 なお特に医療に関しては、現在直面している危機的な状況を克服するために、何より国民の不信感を払拭し、専門医療職と患者の信頼関係を堅持することが欠かせない。

のためには、専門医制度の抜本的な整備を図り、医療の質とその透明性の確実な保障を医師自らが行うとともに、医療は公共財であり、医療を疲弊させる過度の要求は、結局は国民の損失につながるという理解の普及が重要である。 
 グローバル化への対応
先端的な創薬科学研究は、グローバルな社会を基盤として発展しており、医薬品承認審査基準の合理化・標準化への適切な対応はもとより、若手研究者の海外派遣や留学生の積極的な受入れなど、教育面も含めた国際化が重要である。
また、開発途上国における様々な格差や、保健医療職の偏在・流出などが大きな問題となっており、国際的な保健医療協力や医薬品の適正な供給に積極的に取り組む必要がある。

さらに、近隣諸国との国境をこえた環境汚染や食の安全問題への対応や、感染症対策のための国際的なネットワークの構築など、グローバルなレベルで健康と安全に関わる問題は数多く、こうした問題を総合的に捉える科学領域を発展させるとともに、国境を越えて活躍できる人材を育成することが急務である。
アジア・アフリカ地域の国々に対しては、生態系・生物多様性と調和した、持続可な土地と資源の利用を実現するための科学的・技術的支援を行い、食料問題等の解決に貢献すべきである。

またその際は、地域の文化を尊重し、固有の知識を活かしながら、人々の生活の質や福祉を充実させて行くという視点が重要である。
生命科学における人材育成大学や研究所では、短期雇用のポストが増加して常勤職が減少した結果、若い研究者の意欲が著しく低下している。

能力ある若手研究者の雇用環境の改善は喫緊の課題であるとともに、大学院生への経済支援や、大学院修了者の雇用拡大のための対策も重要である。

研究に従事する人材の不足は、とりわけ医学・歯学・薬学など、専門職業資格に直結した分野で深刻であり、経済的なサポートを含めた支援策が必要とされる。
 また、健康科学や予防医学、安全性に関する評価やリスクマネジメント、基礎となる疫学・生物統計、政策的なマネジメントや国際保健など、多様なニーズに対応する人材養成のために、文理統合型の教育を行う公衆衛生大学院の整備が望まれる。
 小・中・高等学校の教育や大学の教養教育に関しては、遺伝子に始まり、様々な生命現象の仕組みや、生態系とその保全などを論理的に系統立てて教え、そこから医療や環境、食料等の問題に展開するような、新しい教育体系の構築に取組むべきである。
  生命科学と生命倫理
生命倫理に対する今日の生命科学の基本的視点として以下が重要である。

①人を対象とした治療や研究の透明性と説明責任。

②脳の計測・加療や脳死問題の開かれた充分な
検討。

③次世代に影響を与えるような生殖細胞等の操作の禁止。

④温血動物を実験材料とすることの可能な限りの回避。

⑤地球環境と生物多様性の歴史の中に人類を位置づけた生命倫理観。

⑥ 適切なインフォームドコンセント等、研究や医療における倫理面での法令遵守と体制整備。
 なお、高度医療の恩恵は大きいが、各種の先端的な医療技術の適用に関しては、倫理上の諸問題への配慮が不可欠である。高額の費用を伴うことによる保険財政への影響の懸念もあるが、高度医療の費用が医療費全体に占める比率は大きなものではなく、総合的な観点から適切な判断を行い推進すべきである。
また、代理懐胎を始めとする生殖補助医療は、未成熟な「実験的医療技術」であり、新たに誕生する命と、さらにその後の世代への影響の全体像は把握されていない。

生まれてくる子の健康で幸せな人生を送る権利を最優先に、子と親の長期的な追跡・観察体制を確立し、透明性を確保した上での実施と、安全面・倫理面での厳格な検証・評価を行いながら、社会的合意を形成していく必要がある遺伝子の本体としての DNA 二重らせんの発見に端を発し、生命を分子のレベルから理解する生命科学は 20 世紀の後半に爆発的に進歩した。

その成果は、疾病の予防・治療や、食料の増産から、犯罪捜査や親子鑑定など社会生活の諸々の局面まで、広く多様な場面で人間の生活に恩恵をもたらしている。

しかし、このような生命科学の成果も大元を質せば、科学者が生命の本質の疑問に対して、粘り強く一つ一つ解き明かしてきた謎解きの積み重ねの上に築かれたものである。

科学が歩んできたこのような歴史背景を十分理解した上で、その流れを受け継ぎ、さらに発展させられるよう、我が国の学術研究体制の整備に資することが、日本学術会議の生命科学を担当する第二部に課せられた第一の責務である。

21 世紀の生命科学においても、研究で得られた成果を基盤にさらに新たな技術が展開され、また技術開発を契機とした研究の進展によって新たな知識が人類にもたらされるという科学の基本メカニズムを着実に推進することが、まず基本的に重要であると考えられる。
 一方、科学技術の発達に裏打ちされて、人類の経済活動、社会活動はその範囲を大きく広げ、かつては各国各地域において限局的な問題であったことが、今や時間、空間の距離を超えて互いに因果関係を及ぼしうる状況が出現している。旅行者の往来によるインフルエンザの急速な拡大、フロンガスなどによるオゾン層の破壊、森林や湿地の開発による野生生物の生息域の縮小や侵略的な外来種の影響の拡大など、グローバル化してきた問題は枚挙に暇がない。

また CO2 の大気中濃度の上昇による地球温暖化が強く懸念されており、人類の活動により絶滅へと追い込まれていく生物種がいくつも存在するなど、人類が自らその生息圏・生存基盤を破壊していることも周知の事実である。

人類の将来の生存に関わる諸問題に対して 21 世紀の生命科学は、科学的で有効な指針を与えていかなければならない。 


イランがトランプ氏の逮捕状取得 「英雄」司令官の殺害関与で

2020年06月30日 06時09分32秒 | 事件・事故

配信

【テヘラン共同】イラン学生通信によると、イラン検察当局は29日、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害に関与したとして、米国のトランプ大統領を含む36人の逮捕状を取得したと明らかにした。殺人とテロ行為の疑いとした。「国家的英雄」と称された司令官殺害でイランの米国への敵対姿勢は強まっている。
 検察当局は国際刑事警察機構(ICPO)に対し「国際逮捕手配書」(赤手配書)発行を要請したとも明らかにしたが、ICPOが要請を受け入れるとは考えにくく、実効性はないとみられる。  米軍は今年1月3日、イラクで、ソレイマニ司令官を無人機による攻撃で殺害した。
 

【関連記事】


元交際女性の6歳愛娘を絞め殺した「DV男」の蛮行

2020年06月30日 05時49分15秒 | 事件・事故

配信

響子さんへ暴力を振るい接近禁止命令が出ていた湖山。身勝手な動機で幼い命を奪った

幼女を絞殺し側溝に捨てたうえ家を放火ーー。

あまりにも身勝手な殺人事件が起きたのは、今から10年ほど前のことだ。犯人として逮捕されたのは交際相手に暴力を振るっていた男だった。ノンフィクションライターの小野一光氏が、凄惨な事件が起きた背景を振り返る。 【画像】猛暑のゴミ部屋で愛児を餓死させた美人ホステス

******************** 11年5月27日、山口県警は山口県下関市の湖山忠志(韓国名・許忠志=逮捕時27)を殺人、死体遺棄容疑で逮捕した。 事件が起きたのはその約半年前の10年11月28日のこと。同日の早朝、下関市にある山中響子さん(仮名、30)と3人の子供が暮らすアパートの玄関付近で火災が発生。響子さんは仕事で帰宅していなかったが、火事に気付いた近所の住民が、小学生の長男と長女を助け出した。 しかし、家にいるはずの保育園児の次女・真奈ちゃん(仮名、6)の姿がなかったことから、近くを探し回ったところ、アパートそばの側溝内で死亡した状態で発見されたのである。彼女の首には紐のようなもので絞められた痕があり、警察は殺人事件と断定して捜査を進めていた。山口県警担当記者は言う。

「湖山と響子さんは2年前(09年)に下関市内のパチンコ店で同僚として働いていました。やがてふたりは交際するようになり、10年になってからは、響子さんが子供たちと暮らすアパートの部屋に、湖山が出入りしています。しかし響子さんは同年9月に子供3人を連れてそこを出て、事件が起きたアパートに母子4人で暮らしていました」

響子さんが以前住んでいたアパートの住人は証言する。 「山中さんは3年前からここに住み、彼女と3人の子供の名前は表札に書かれていましたが、男(湖山)の名前はありません。以前は別の男性と一緒に暮らしていたのですが、その人がいなくなり、いつの間にかあの男が来るようになっていたんです。男は不愛想で挨拶とかはなく、こちらが『こんにちは』と言っても無表情でした」

一方で、同アパートの別の住人は、響子さんの子供と遊ぶ湖山の姿を目撃していた。 「(響子さんと湖山の)仲が悪かったという印象はありません。男(湖山)がいた時期はそんなに長くありませんでしたが、子供たちを可愛がっていましたよ。よくアパートの前で一緒に遊んでいる姿を見かけました。男の見た目はちょっと“元ヤン”という感じでしたが、3人の子供とまんべんなく遊んでいて、自転車に乗せてあげたりとかしていました。子供もとくに警戒する様子はなく、懐いている感じです。あと、みんなで買い物に行ったのか、男が手に買い物袋を提げている姿も見かけました」

◆転居先を突き止め暴力 響子さんが10年9月に子供を連れてこの部屋を出て、事件現場となったアパートに引っ越したのは、湖山による暴力が原因だった。前出の記者は説明する。

湖山には離婚した妻との間に女の子がいるのですが、響子さんと付き合うときに隠していて、後で打ち明けたときに受け入れてもらえなかった。その頃から湖山による暴力が始まり、響子さんは子供を連れて転居したのです。

しかし湖山が引っ越し先のアパートを突き止めて押しかけ、暴力を振るったため、彼女は警察に駆け込んで被害届を出し、彼は10年9月13日に暴行容疑で逮捕されました。その件では暴行罪で起訴され、翌10月には山口地裁下関支部で罰金30万円の略式命令が出されています。また同裁判所は、配偶者暴力防止・被害者保護法(DV防止法)に基づいて、湖山に響子さんに対する半年間の接近禁止命令を出していました。だが、それから1月半で湖山は今回の犯行に及んだのです。

火災発生時、山中家の玄関の鍵は開いており、窓ガラスやドアは破損されていなかった。室内は物色されておらず、殺害された真奈ちゃんと一緒に寝ていた長男と長女は物音に気付いていない。

山中家では事件の5日前にポストに入れていた玄関の鍵が紛失していることから、その鍵を使って湖山が室内に侵入。真奈ちゃんを殺害して側溝に捨てた後、玄関に火をつけたと見られている。

前出の記者は続ける。 「真奈ちゃんの遺体が見つかった自宅アパート横の側溝付近に残されていた遺留物が、湖山のDNA型と一致しています。

また、真奈ちゃんの着衣に付着した微物のDNA型も同様でした。山中家の室内にあった扇風機の電気コードが切断されており、これを使って真奈ちゃんを絞殺したものと見られています」 湖山は下関市の公立中学校を卒業後、大阪府内の高校に進学。

その数年後に地元の下関市に戻って来ていた。彼の実家を知る人物は、私の取材に次のように答えている。 「いまあの家に住んでいるのは父親と母親、それから忠志くんと娘、それに父方のおばあちゃんです。忠志くんには姉と妹、弟がいますが、現在は一緒に住んでいません。

中学時代は野球部で、地元ではおとなしく、礼儀正しい子でしたよ。挨拶もちゃんとできる子でした。あそこの家はおばあちゃんとご両親がすごく厳しい人だったから、地元では行儀よくしていたのかもしれません。 今年(11年)4月までは忠志くんの両親が子供のお守りをしていて、時々お姉さんも家にやってきて面倒を見ていました。それからは忠志くんが朝、子供を連れて保育園に行き、夕方4~5時ごろに子供を連れて戻ってくるという生活でした。

忠志くんのお父さんは土建業の仕事の手伝いをしていて、忠志くんもどこかに働きに出ているようでしたが、逮捕前は昼間もずっと家にいたようです。子供を買い物に連れて行く姿も見ています」 当初から捜査線上に湖山の存在は浮上していたが、彼が逮捕されるようだとの情報が駆け巡ったのは11年5月24日のこと。

前出の記者は明かす。 「各社とも一応マークはしていましたが、ベタ張りすることはありませんでした。24日の事情聴取と家宅捜索を受けて、これは逮捕もあるかもしれないと一斉に色めきたったのです。ちなみに24日の事情聴取は午前7時から午後9時まで行われました。 うちの記者が逮捕前に話を聞こうとすると、淡々とした口調で『迷惑だ。帰ってくれ』と言っていました。あと、『自分にも小さな子供がおるのに、同じような小さい子を殺すわけねえやろ』とも口にしていました」

27日午前9時12分に下関署で、殺人と死体遺棄容疑で逮捕された湖山は、後に殺人、住居侵入、器物損壊、DV防止法違反で起訴された。 山口地裁で開かれた裁判員裁判では、湖山は一貫して無罪を主張したが、12年7月に懲役30年(求刑・無期懲役)の判決が下され、その後、控訴審、上告審を経て14年11月に懲役30年の刑が確定している。 取材・文:

小野一光 1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。アフガン内戦や東日本大震災、さまざまな事件現場で取材を行う。主な著書に『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(文春文庫)、『全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと』(小学館)、『人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー』 (幻冬舎新書)、『連続殺人犯』(文春文庫)ほか

FRIDAYデジタル

 

【関連記事】

最終更新:
FRIDAY

6月に4件も…相次ぐ子供のベランダからの転落死 実は毎年この時期に増加 その理由と防止策は

2020年06月30日 05時49分15秒 | 事件・事故

配信

ベランダからの転落死事故相次ぐ

FNNプライムオンライン

「子供が6階から落ちた」 6月27日夜、男性の声で消防にかかった1本の通報。 神奈川県山北町のマンションで4歳の女の子が6階にある自宅から転落。女の子は搬送先の病院で死亡した。

【画像】消防庁のデータでみる、子供の転落事故が多い月

ベランダの物干しに足をかけ、高さ125センチの塀を乗り越えたとみられている。 6月に入って同様の事故はすでに4件発生。いずれも誤ってベランダを乗り越えてしまったとみられている。 福岡県久留米市では6月8日夜4歳の女の子がマンション18階から転落し死亡。 16日には横浜市でもマンション8階から5歳の女の子が転落し死亡した。

平均の4歳児でも120cmに手が届く

ベランダではどんな危険が潜んでいるのだろう。9歳と8歳、2歳の男の子がいる家族を取材した。 約120センチのマネキンを基準に見てみると、 リポーター: 4歳の子どもの平均身長は100センチ。手を伸ばすと120センチまで届くということが確認できます。

3人の子供の母親 小粥裕子さん: 手が届くようになると上からの景色を見たいとかいろいろ興味が出てくると思うので、本当に目が離せないところだと思います。 産業技術総合研究所などが行った実験映像では、ほとんどの子供が法律で定められた最低基準の1.1メートルの柵を簡単に乗り越えられることがわかる。

転落事故は5月6月で増加、その理由は

東京消防庁によると、2015年からの5年間で起きた5歳以下の子どもによる転落事故で多いのは4歳児。ベランダや窓からの転落がほとんどを占めている。 また5歳以下の子どもの転落事故は5月から6月に増加。まさに今この時期なのだ。

なぜ顛落がこの期間に増えるのか。そこにはこの時期特有の理由が背景にあった。 セーフキッズジャパン 大野美喜子理事: 5月からとか窓を開ける機会が多くなると転落が増えるという傾向はあるので、2歳の子供でも110センチの高さを自分の力で乗り越えるという子供がいたので、子供が一人で出ないように補助錠をつけるというのはすごく大事な対策だと思います。

 

【関連記事】


新型コロナ感染、東京都内から他県に拡大か 往来リスク浮かぶ

2020年06月30日 04時44分54秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

都内からの感染拡大イメージ
 

 新型コロナウイルスの感染者の高止まり状態が続く東京都に引っ張られる形で、全国的にも感染者の増加傾向がみられる。都内の飲食店での会食などを機に、職場や家族内感染で隣県などに広がったとみられるケースが複数確認され、人々の往来リスクが改めて浮かぶ。「3密」の中でも接触や会話、発声を伴う場所での感染が目立ち、専門家は警戒を促している。 【イラスト】電車に乗る位置、どこがベスト?  

28日の感染者数は都内60人、全国113人で、いずれも5月25日の緊急事態宣言全面解除後最多。都内は29日も58人で、4日連続で50人以上の高水準だった。都は30日にも感染状況を評価する新指標の方向性を公表するという。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は29日の記者会見で「直ちに再び宣言を発出したり、県をまたいだ移動の自粛を要請したりする状況にあるとは考えていない」と説明。都内の感染状況を「症状の有無にかかわらず積極的な検査を行った結果も含まれている」と冷静に受け止めた。

 ただ、数字上は楽観視できない。29日時点の都内の新規感染者(7日間平均)51・9人、感染経路不明割合(同)51%、週単位の感染者増加比1・64は、従来の東京アラートの指標を全て上回った。ホストクラブやキャバクラなど「夜の街」関連に加え、職場や家族内、グループでの会食という感染経路の特徴が隣県にも波及している恐れがある。

 都内居住の感染者の女性が感染発覚前に神奈川県内の実家を訪れ、28日に50代母親、きょうだいの20代男性の感染が判明。千葉県では同日、都内で知人同士で食事をした2人の感染などが明らかになった。  

さいたま市内のキャバクラでは都内居住の従業員の感染をきっかけに、同じ店の従業員計8人の感染が発覚。埼玉県内では15~28日の感染者88人のうち45人が東京由来だったといい、大野元裕知事は29日の会見で「大変憂慮している。都内での会食や繁華街訪問を避けてほしい」と述べた。  

また、北海道小樽市では昼間にカラオケができるスナックでクラスター(感染者集団)が発生し、高齢者の感染が相次いでいる。  

東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「都内から隣県への感染拡大は行き来が激しいため防止が困難」と指摘。「接触を伴うホストクラブや近距離で言葉を交わす会食、大声で歌う『昼カラ』などハイリスクな場所が明確になっている」とし、改めて警戒を呼びかけた。

 

【関連記事】