原爆症訴訟、5人を認定 広島高裁判決 6人は退ける

2020年06月22日 18時08分39秒 | 事件・事故

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広島高裁判決を受け、「一部勝訴」と書いた紙を掲げる弁護士(右端)=22日午後2時15分

被爆の影響で心筋梗塞甲状腺機能低下症を患っているのに原爆症と国が認めないのは不当として、被爆者11人が原爆症の認定申請の却下処分の取り消しなどを国に求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁の三木昌之裁判長は22日、5人の処分を取り消し、原爆症と認めた。一方、6人の請求については一審広島地裁判決を支持し、訴えを退けた。  

原告は広島や廿日市市の70~90代の男女11人。訴状などによると、原爆が投下された1945年8月6日か、その直後に爆心地から1・2~4・1キロで被爆するか入市被爆し、甲状腺機能低下症や心筋梗塞など認定対象の七つの疾病を発症。2005~14年に原爆症認定を国に申請したが却下された。10年から順次、広島地裁に提訴し、認定要件の「放射線起因性(原爆放射線と疾病との関連性)」や「要医療性(治療の必要性)」があると訴えてきた。  

原爆症と認めたのは、甲状腺機能低下症や急性心筋梗塞を患う5人。三木裁判長は「被爆時は若年で放射線に対する感受性が高かった」とした上で「放射線に被曝(ひばく)したことにより発症したものとみるのが合理的」として放射線起因性があると判断。治療が必要な状態が続いているとして要医療性についても認めた。一方で、残る6人の訴えは「被曝との間に関連性があるとしても限定的」などとして退けた。

 17年11月の地裁判決は、甲状腺機能低下症や心筋梗塞の原告の放射線起因性について「加齢や生活習慣による発症の疑いが残り、放射線被曝が理由でなければ医学的に不自然、不合理な症状の経過があるとはいえない」と否定。白内障の原告が訴えた要医療性は「治療のため必要な手術は予定されていない」として退けた。  

控訴審では、原告11人のうち7人が放射線起因性を巡って争い「他の発症要因があったとしても、特段の事情がなければ放射線によって発症が促進されたと考えるべきだ」などと主張。一方の国側は原告の喫煙歴や年齢も発症の要因になると反論し、要医療性に関する主張も対立した。

中国新聞社

 

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「極めて強い関連性」無視や陰口など25件認定 宝塚中2いじめ自殺、再調査委が報告

2020年06月22日 18時02分33秒 | 事件・事故

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兵庫県宝塚市で2016年12月、市立中学2年の女子生徒=当時(14)=が飛び降り自殺した問題で、同市が設置した再調査委員会(委員長=春日井敏之・立命館大大学院教授)は22日、同年9月ごろから部活動やクラスで無視や陰口など計25件のいじめがあったとする報告書を公表した。同委は「いじめと自死には極めて強い関連性がある」とした。(大盛周平、中川 恵)
この問題を巡っては、当初に調査を担当した第三者委員会が18年7月に報告書を市教委に答申。だが、遺族が事実誤認などを指摘し、同委が同10月に改訂を行う異例の事態に。4件のいじめを認定し「いじめ行為以外に特に自死に結びつくような事柄は見当たらなかった」としたものの、遺族は実態が未解明として再調査を求めていた。報告概要の具体的な内容が公表されるのは今回が初めて。  
再調査委は中川智子市長の諮問を受け、昨年7月、大学教授や弁護士ら5人で発足。女子生徒の同級生や教職員ら計46人に聞き取りなどを実施した。  
再調査報告書によると、女子生徒は16年9月ごろから、クラスや所属する部活動で複数の生徒から無視や仲間外れにされ、「うざい」と言われるなどした。部活動中にボールを集中的にぶつけられることもあったといい、自身の行いを謝罪しようとした行為も笑われ、「尊厳が大きく毀損(きそん)された」と指摘。再調査委は「いじめによって自死したことは明らか」と報告した。  
また、部活動では2015年から別の部員に対するいじめが発生しており、既に4人が退部していたにもかかわらず、顧問らが具体的な対応をしていなかったことなども判明。同委は「学年、学校を挙げた指導、支援が行われていれば当該生徒の重大事態は避けられた可能性が高い」とし、学校や教員の危機意識の乏しさを指摘した。  
さらに第三者委の調査についても「調査プロセスで丁寧さを欠いた」とし、遺族との意思疎通に問題があったことを批判した。
 答申を受けた中川市長は「救える命を救えなかった責任をしっかり受け止める」とし、早急に検証委員会を設けるとした。遺族は代理人弁護士を通じ「娘の自死は偶然が重なった結果ではなく、起きるべくして起きた悲劇だった。徹底した再調査の結果を高く評価し、これを受け入れたいと思う」とコメントした。
 

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「極めて強い関連性」無視や陰口など25件認定 宝塚中2いじめ自殺、再調査委が報告

2020年06月22日 17時12分59秒 | 事件・事故

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宝塚市の中川智子市長に調査内容を答申する市いじめ問題再調査委員会の春日井敏之委員長(右)=22日午前、宝塚市末広町(撮影・村上貴浩)

 兵庫県宝塚市で2016年12月、市立中学2年の女子生徒=当時(14)=が飛び降り自殺した問題で、同市が設置した再調査委員会(委員長=春日井敏之・立命館大大学院教授)は22日、同年9月ごろから部活動やクラスで無視や陰口など計25件のいじめがあったとする報告書を公表した。同委は「いじめと自死には極めて強い関連性がある」とした。(大盛周平、中川 恵)

【表】宝塚市立中2自殺 調査の経過  

この問題を巡っては、当初に調査を担当した第三者委員会が18年7月に報告書を市教委に答申。だが、遺族が事実誤認などを指摘し、同委が同10月に改訂を行う異例の事態に。4件のいじめを認定し「いじめ行為以外に特に自死に結びつくような事柄は見当たらなかった」としたものの、遺族は実態が未解明として再調査を求めていた。報告概要の具体的な内容が公表されるのは今回が初めて。  

再調査委は中川智子市長の諮問を受け、昨年7月、大学教授や弁護士ら5人で発足。女子生徒の同級生や教職員ら計46人に聞き取りなどを実施した。

 再調査報告書によると、女子生徒は16年9月ごろから、クラスや所属する部活動で複数の生徒から無視や仲間外れにされ、「うざい」と言われるなどした。部活動中にボールを集中的にぶつけられることもあったといい、自身の行いを謝罪しようとした行為も笑われ、「尊厳が大きく毀損(きそん)された」と指摘。再調査委は「いじめによって自死したことは明らか」と報告した。  

また、部活動では2015年から別の部員に対するいじめが発生しており、既に4人が退部していたにもかかわらず、顧問らが具体的な対応をしていなかったことなども判明。同委は「学年、学校を挙げた指導、支援が行われていれば当該生徒の重大事態は避けられた可能性が高い」とし、学校や教員の危機意識の乏しさを指摘した。  

さらに第三者委の調査についても「調査プロセスで丁寧さを欠いた」とし、遺族との意思疎通に問題があったことを批判した。  答申を受けた中川市長は「救える命を救えなかった責任をしっかり受け止める」とし、早急に検証委員会を設けるとした。遺族は代理人弁護士を通じ「娘の自死は偶然が重なった結果ではなく、起きるべくして起きた悲劇だった。徹底した再調査の結果を高く評価し、これを受け入れたいと思う」とコメントした。

 

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孤独に悩む人が多い都道府県ランキング!3位山形、2位新潟、1位は?

2020年06月22日 16時28分04秒 | 社会・文化・政治・経済

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新型コロナウイルスの感染防止のため、外出自粛や在宅勤務を強いられたことで、コミュニケーション不足になり、孤独を感じた人は少なくないだろう。一方で、一人で過ごす時間を充実したものにしたり、オンライン飲み会などを通じて新たなコミュニケーション方法を見いだしたりした人もいた。読者の方々は、この期間をどのように感じただろうか。

【11位~25位までのランキング表はこちら】  では、コロナの感染拡大が広がる前から「孤独に悩んでいる」と答えた住民が多い都道府県はどこなのか。  

このランキングは、ブランド総合研究所が2019年に初めて行った住民視点で地域の課題を明らかにする『地域版SDGs調査』によるもの。それでは早速、47都道府県の住民に聞いた「孤独に悩む人が多い都道府県ランキング」を見ていこう。  

※アンケートはインターネットにて実施。1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。調査時期は2019年7月12日~29日。住民の悩みとして挙げた48項目のうち「孤独に悩んでいる」と答えた人の割合から47都道府県のランキングを作成した。

● 1位福岡県、2位新潟県、3位山形県に 孤独に悩む人が多い都道府県ランキング  「孤独に悩む人が多い都道府県ランキング」1位は福岡県で、悩んでいる人の割合は7.3%だった。2位は新潟県(7.1%)、3位には山形県(7.0%)が続いた。

● 40代は最も「孤独に悩む」年代? 悩む年代は都道府県で違いも  今回のランキングで上位になった都道府県には、どのような特徴があるのだろうか。この調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は、「同じ上位の都道府県であっても、順位を引き上げている背景はそれぞれに異なっているようだ」と分析する。実際に、同調査の結果を年代別に見ていくと、その違いが見えてくる。

 「孤独に悩んでいる」と答えた人の47都道府県の平均を見ると、20代は4.4%、30代は3.9%、40代は5.9%、50代は4.2%、60代以上は2.7%となった。40代をピークに年齢を重ねるごとに悩んでいる人は増えるが、50代以降は減少するのが全国的な傾向だ。が、必ずしもそれに当てはまらない上位の都道府県もあった。  

まず、1位の福岡県では、「孤独に悩んでいる」と答えた20代の割合が5.6%に対し、30代では9.9%、そして40代では10.1%とおよそ2倍に増加している。50代では7.7%と減少に転じることから、福岡県では30代と40代が悩んでいることが、順位を引き上げている要因であることが分かる。  

2位の新潟県についても、20代は3.8%、30代は5.9%、40代は11.1%と年齢を追うごとに上昇するものの、50代では6.5%と減少。しかし、60代以上では8.6%と再び増加に転じている。47都道府県の平均では、60代以上で「孤独に悩んでいる」と答えた人の割合が2.7%だったことから、新潟県ではその3倍以上の数値となっており、高齢者層の孤独が課題にある可能性が考えられる。  

福岡県と新潟県の結果から、20代の若者の孤独は問題になりにくいのかというと、そうでもない。5位の鹿児島県の結果を年代別に見ていくと、20代で「孤独に悩んでいる」人の割合は12.7%で全国トップと突出している。20代における47都道府県の平均が4.4%であることからも、その割合の高さが分かるだろう。ただ、30代になると6.7%、40代では5.6%と減少に転じることから、何か鹿児島県の20代に特有の問題がありそうだ。

今回の調査で「孤独に悩んでいる」と答えた人を、「既婚」「未婚」や「子どもあり」「子どもなし」に分けて見てみると、「既婚」では2.5%に対し「未婚」では7.8%に、「子どもあり」では2.6%に対し「子どもなし」では6.8%となった。この結果からも、家族がいるかいないかは、孤独に悩む要因の1つであるといえる。

 しかし、家族がいても孤独に悩んでいる人はきっと全国各地にいるだろう。「既婚か未婚か」「子どもがいるか、いないか」といった表面的な属性だけでなく、年代や地域の事情も含めたさまざまな角度から、孤独に悩む理由を知ることが、あらゆる人が孤独に悩まずに幸せに暮らすヒントになるのではないか。  (ダイヤモンド・セレクト編集部 林 恭子)

ブランド総合研究所/ダイヤモンド・セレクト編集部

 

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味方に殺されたなんて…沖縄戦、17歳少年兵の残酷な最期

2020年06月22日 16時24分19秒 | 社会・文化・政治・経済

6/22(月) 9:54配信
西日本新聞

高江洲義英さんが亡くなる約2年前に撮影した国民学校高等科の卒業写真。後列左から4人目が義英さん

 茶封筒から取り出した一枚のモノクロ写真。丸刈りの少年とセーラー服を着た少女たちが緊張した面持ちで並んでいる。裏には「昭和拾八年卒業生 18名 三月廿八日 高江洲義英(たかえすぎえい)」と記されていた。

【写真】17歳で亡くなった少年兵

 「運良く焼け残った兄の写真。幼いでしょう」。那覇市の高江洲義一(ぎいち)さん(82)は写真を見つめながら語り始めた。兄は昭和18(1943)年、写真に写る仲間と国民学校高等科を卒業。1年7カ月後に少年兵となり、沖縄本島北部の山中で命を落とした。17歳だった。

 10歳離れた兄と遊んだ記憶はほとんどない。ただ、米軍が本島に上陸する数カ月前、訓練の合間に沖縄県東村の実家に一時帰宅した日ははっきりと覚えている。

頭蓋骨を抱いて泣き崩れた母
 「当時珍しかった2色刷りの絵本を買ってきてくれてね。インキのにおいは頭を離れないさあね」。軍服姿の兄は軍靴を棒に引っ掛け、はだしだった。「靴擦れを起こしたんですよ。ほとんど履いたことがないから」。目の前の海で捕れたタコを湯がき、家族でつついたのが最後の晩餐(ばんさん)となった。

 戦後、兄は骨となって戻ってきた。砲弾が当たり破傷風で死んだと聞いた。「畑作業に出ては兄の帰郷を待ちわびた母の姿が忘れられない」。既に2人の子を沖縄戦で失っていた母は頭蓋骨を抱いて泣き崩れた。

 沖縄では三十三回忌で供養を一区切りする風習がある。節目の1977年6月に営まれた慰霊祭で、いつもは冷静な父が取り乱した。兄の元上官に詰め寄り「子どもを殺したのにあなたは生きているのか」と泣き叫んだ。「殺した」という言葉が心に残り続けた。

「どこで、どんな死に方をしたか知りませんか」
 2013年、本島北部を巡る平和学習バスツアーに参加した。兄が死んだとされる恩納村に近づき、座席から身を乗り出してガイドに尋ねた。「兄は護郷隊でした。どこで、どんな死に方をしたか知りませんか」

 この時、ガイドを務めていたのが名護市教育委員会市史編さん係の川満彰さん(60)。彼は、まさに少年ゲリラ部隊「護郷隊」の調査中だった。
護郷隊の実態は

「証言の中にある生きた証しに耳を傾けることが大切だ」と語る川満彰さん=名護市

 「故郷は自ら護(まも)る」

 75年前、旧日本軍がこう命名した護郷隊の実態は少年兵によるゲリラ部隊だった。大本営は沖縄戦を本土決戦までの時間稼ぎと位置づけ、少年兵は沖縄と一緒に「捨て石」にされる。

 護郷隊には14~19歳の少年約千人が集められた。本島北部の山間部に潜み、米軍の進路を防ぐため橋を爆破するなどゲリラ戦を展開。死も恐れない少年兵は、米軍から「ゴキョウタイは手ごわい」と恐れられた。激戦に身を投じた隊の犠牲者は約160人に上った。

 「兵力不足は深刻で、召集の多くは法令違反だった」。名護市教育委員会市史編さん係の川満彰さん(60)はこう指摘する。

 召集は陸軍省令に基づき行われた。1944年11月に19歳から17歳に引き下げられ、翌12月からは志願すれば14歳から召集を可能にした。ただ、施行前の召集や親の承諾など必要な手続きを取らないことが多かったという。

「フェンスの向こうは別世界さね」
 川満さんは米軍嘉手納基地の町、コザ市(現沖縄市)で生まれ育った。「地元の子はみすぼらしい服に島草履。米軍の子はカラフルな服に革靴。フェンスの向こうは別世界さね」

 団体職員の傍ら、30代で戦跡を訪ねる平和ガイドを始めた。沖縄の歴史を学ぶため44歳で沖縄大大学院に入学。2008年に市教委の嘱託職員になり、護郷隊の調査に取りかかった。

 先行の研究は証言の収集が不十分で「点と点の状態」。戦没者名簿や、護郷隊の結成に関わったスパイ養成機関・陸軍中野学校OBがまとめた記録から生き残った隊員、将校を探した。

 「10人殺したら死んでいいと教えられた」「爆薬を背負って戦車に体当たりを命じられた」「遅刻を理由に上官からスパイと見なされ、幼なじみに射殺された隊員がいた」-。目の前の友の死に何も感じなくなったとの証言もあった。

 調査から7年。ある元隊員が「軍医が少年を射殺した」と話した。軍医は少年に毛布をかぶせて拳銃を発射。1発目が外れると少年は毛布を払って笑いだし、2発目で絶命したという。
「味方に殺されたなんてショック。でもモヤモヤは晴れた」

兄義英さんの名前が刻まれた慰霊塔の前で「70年かかったが真実を知ることができて良かった」と語る高江洲義一さん=沖縄県名護市

 少年の名は高江洲義英(たかえすぎえい)。バスツアーで熱心に質問した高江洲義一(ぎいち)さん(82)の兄だった。

 元隊員は、重い病気やけがを負った隊員は足手まといになるため、射殺されたと証言。遺族への説明については「そんな残酷なことはできない」と尻込みしたが、15年6月23日の慰霊祭で対面した義一さんに兄の最期を教えてくれた。

 その様子をテレビで見たいとこから、義一さんに連絡があった。「やっぱり知らなかったのか」。いとこの兄は護郷隊から生還し、義一さんの父に全てを話していたという。三十三回忌で父が取り乱した理由がようやく分かった。「味方に殺されたなんてショックさ。でもモヤモヤは晴れた」

 川満さんは証言は記録するだけでなく、どう生かすかが重要と思う。「一人一人の生きた証しに耳を傾けると死者の名前がただの記録じゃなくなる。戦争の愚かさが、より理解できる」

    ◇    ◇   

 沖縄戦で日本軍の組織的戦闘が終結して75年。23日に慰霊の日を迎える。市民約9万4千人を含む約20万人が犠牲になった地上戦の体験者は減り、県民の9割は戦後生まれになった。体験者の思いをどうつなぐのか。戦後世代の取り組みから沖縄戦と平和を考える。 (那覇駐在・高田佳典)

 

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16万円の乗車賃「払えない」少女を無賃乗車疑い逮捕

2020年06月22日 15時57分07秒 | 事件・事故

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東京都から滋賀県までタクシーに乗車し、約16万円を支払わなかったとして、滋賀県警草津署は22日、詐欺の疑いで、いずれも自称、山形県寒河江市、無職18歳少女を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は、21日午後8時ごろから22日午前1時半ごろまでの間、JR東京駅から滋賀県の草津駅までタクシーに客を装い乗車し、タクシー料金(運賃と高速道路料金)約16万円を支払わなかった疑い。
少女は、無賃乗車の容疑を認めているという。 事件は、支払時に「お金がないので払えない」と、少女が言ったため、タクシー運転手が110番し、発覚した。
署によると、逮捕時、所持金は数千円だったという。2人にけがは無かった。約5時間半の間、タクシー運転手と少女との間に、主なやりとりはなかったという。
運転手は「払ってくれる物だとおもっていた」と、少女に不審な点は無かったと話している。
署によると、逮捕時、キャリーケース1個を所持していた。自称、山形県居住にもかかわらず、なぜ東京駅にいて、草津に向かったのか、署は今後、詳しい理由を調べる。
 

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コロナ感染「死を覚悟」 熊本市の50代飲食店長 店名公表決断した思いは

2020年06月22日 15時41分36秒 | 医科・歯科・介護

6/22(月) 13:23配信
熊本日日新聞

「馬料理二代目天國」の店内を消毒する専門業者=4月、熊本市中央区(店長提供)

 「食べても甘いとも、酸っぱいとも感じない。『コロナだ。間違いない』と思った」ー。

 熊本県内では6月21日現在、47人が新型コロナウイルスに感染し、3人が命を落とした。44人は回復したが、重症化して死の淵をさまよった人もいる。熊本市の飲食店「馬料理二代目天國」の男性店長(53)もその一人。「死を覚悟した」-。県内の感染者として熊日の取材に初めて答え、退院するまでの闘病生活や、店名公表に踏み切った理由、容赦ない差別的な言動に対する思いなどを語った。(地方・都市圏部 潮崎知博、社会部 國﨑千晶)      

■「コロナだ、間違いない」

 「だるさを少し感じたのが3月25日の夜だった。葛根湯と市販の風邪薬を飲んで寝たが、薬が切れたら、高熱が出た。全身の節々も痛くなった。酒も飲まないし、たばこも吸わない。若い頃から体力には自信があり、風邪をひいたこともないので『もしかしてコロナかも』と思った」


店長の肺を撮影したレントゲン写真。右から入院した日の状態、人工呼吸器を付ける手前の状態、退院前日の状態

 最初に異変を感じた3月25日、店長はメモを残した。「仕事終了後、けん怠感 22時 37・2度 少々のせき」

 「27日朝、かかりつけの病院に行き、インフルエンザ検査をしたが陰性。解熱剤を服用し、熱は下がった。仕事柄、手洗いは一日何度もして、人一倍神経を使っていたので、どこで感染したのか見当がつかなかった」

 3月28日のメモ。「15時 味覚、嗅覚鈍る 18時 激しい悪寒」

 「ポンカンを手でむいていて、匂いが全くしない。家族に聞いたら『するよ』って言われて。食べても甘いとも、酸っぱいとも感じない。『コロナだ。間違いない』と思った」

■アビガン服用も重症化 「死ぬんだろうな」

 男性店長が熱発した当時、国は風邪の症状や37・5度以上の熱が4日以上続く場合に、保健所の「帰国者・接触者相談センター」へ相談するよう呼び掛けていた。

 「3月28日は本当にきつかったけど、25日の発熱から4日後を強く意識した。『病院に迷惑を掛けてはいけない』と、29日まで受診するのを我慢した」
3月29日、日曜の当番医が診察し、保健所へ「コロナの疑いがある」と連絡した。

 「病院の駐車場で約1時間待ち、車内で保健所の人から検体を取られた。コロナと確信していたので、他人にうつさないよう早く入院したかった」  

 陽性の電話が自宅にあった後、29日午後8時ごろ、防護服姿の人たちがワゴン車で迎えに来た。

 「病院には、誰とも接触しないよう裏から入った。先生の説明を受け、アビガン(新型インフルエンザ治療薬)や人工呼吸器、エクモ(人工心肺装置)を使う承諾書にサインした。『助かるなら、何でもしてほしい』という思いだった」

 「アビガンは4回飲んだ。最初は入院2日目の夜。飲み込むのに苦労する量だけど、一気に9錠。2回目は翌朝に同じく9錠。3、4回目は次の日で朝晩に4錠ずつだった。熱は下がったが、容体は悪くなっていったので、薬の効果はよく分からない」

 4月4日、軽症から中等症へ。肺のエックス線写真は真っ白な範囲が広がっていた。


「馬料理天國本店」に掲示されている「消毒済」を知らせる貼り紙。入店客にも手の消毒を呼び掛けている=6月18日、熊本市西区

 「急にウーッと苦しくなるのではなく、じわじわと呼吸が浅くなって、自分で息を吸い込めない。鼻から酸素を吸入してもらっていたが、4日に人工呼吸器を着けた。意識はもうろうとし、『半分は夢、もう半分は現実』みたいな感じだった」

 4月5日、重症に。集中治療室へ移った。人工呼吸器に点滴、心電図の装置など体は完全に固定され、約2週間を過ごした。

 「集中治療室は何重にも扉があり、医療ドラマで見るような厳重さで、天井には監視カメラも付いていた。入室から1週間後に意識が戻った時、相当きつかったので、『このまま死ぬんだろうな』と死を覚悟した」

 看護師は24時間交代で対応した。

 「床擦れを防ぐため体の位置を変えてくれたり、たんを10分に1回ぐらい吸引してくれたり。厳重に防護服を着て、汗だくでやってくれた。疲弊していただろうに、本当に感謝しかない」

■2週間ぶりの水 「人生最高のおいしさ」

 容体は徐々に良くなり、元の病室へ。リハビリも始まった。
 「約2週間ぶりに飲んだ水が人生最高のおいしさだった。病室の水道水だけど、涙が出た。ずっと点滴だけだったので13キロも痩せた。鏡を見ると、あばら骨が浮き出て、足は皮だけ。がくぜんとした。座ろうとしても体が揺れて怖い。座るのに3日、歩行器につかまって立つのに7日、歩行器で歩くのに10日かかった」

 退院に必要なPCR検査は、三度目の正直で5月9、12日に陰性となり、45日間の入院生活が終わった。

 「退院が決まった時は人生で一番うれしい瞬間だった。『病院の威信をかけて治す』という言葉を実行してもらった先生方のことは一生忘れない」

「感染広げてはいけない」 公表に踏み切る

 「馬料理二代目天國」の店長は、自身の新型コロナウイルス感染確認後、店名を公表するに当たり、差別や偏見、経営への影響に不安を覚えた。だが、そこで浮かんだのは、これまで店をもり立ててくれた全国の顧客の顔だった。「ここから感染を広げてはいけない」。家族と相談し、公表に踏み切った。


中学生から届いた感想文を読み返す「馬料理二代目天國」の店長=6月16日、熊本市西区

 「できれば店名を公表してほしい」。3月29日の感染判明後、市保健所から頼まれた。店長には3人の子どもがいる。東京にいる会社員の長女(25)と大学生の次女(21)、同居する中学生の長男(13)。「公表すれば、子どもたちが、特に地元にいる長男が、周囲から傷つくようなことを何か言われるかもしれない」と不安がよぎった。

 それを払拭[ふっしょく]してくれたのは当の子どもたちだった。「お客さんのため、感染拡大を防ぐため、店名を言うべきだよ」。長女と次女の言葉が背中を押してくれた。長男も思いは同じだった。

 身内には当初、「公表すれば、客が来なくなる可能性がある」という慎重な意見もあったが、「店名を伏せても、どこからか話が広がる。正直に公表しよう」と心を決めた。

■店の電話鳴りっぱなし 「よく言ってくれた」8割が激励

 3月31日の公表後、入院中で店長が不在だった店の電話は一日中鳴りっぱなしだった。「よく言ってくれた」「再開したら絶対行くよ」。電話の8割は目頭が熱くなるような励ましの声。残り2割は「周りにうつすな」「県外客を入れるからだ」といった差別的な内容だった。そんな電話にも店として、感染予防に最善を尽くしていたことを伝えた上で謝罪した。
感染症指定医療機関に入院中、看護師がふと、「自分がどこで働いているかは外で言わない」とこぼした。献身的に世話をしてくれる人が見せた涙。「人助けをしている医療従事者がなぜ、差別の対象になるのか」とショックを受けた。

 店長、妻、母、従業員の計4人が感染し、3月末から営業を休止していた天國本店(西区二本木)は6月1日に、二代目天國(中央区下通)は12日に営業を再開した。両店舗の消毒には100万円近い費用をつぎ込んだ。常連客の予約も入り始め、再開後、苦情の電話は1本もない。  

 店名公表で思わぬ連絡も入った。県内のある中学校の教諭から「新型コロナと差別の問題を人権教育で取り上げたい」。死を覚悟するほど重症化し、差別の現実を突き付けられた店長のインタビューを、教諭が動画に収め、生徒に伝えた。

 生徒たちから「苦しんでいる感染者や頑張る医療従事者をなぜ差別するのか。自分は絶対にしない」「病気を恐れる気持ちが、人を傷つける行動を招くと分かった」と、実直な感想が寄せられた。


入院中に家族と携帯電話で交わしたメッセージを振り返る二代目天國の店長=熊本市西区

 店長は「思いが伝わり、すごくうれしい。偏見をなくさなければと親と話し合った生徒もいる」。びっしりと書かれた生徒たちの感想文を読み返し、ほほ笑んだ。大西一史市長からもメッセージをもらった。「勇気ある行動に敬意を表します」。感染した4人の症状も回復し、店に元の活気が戻ってきた。店長はかみしめるように言う。「いろいろ悩んだが、公表したことは、決して間違いではなかった」

■母、妻も感染 「俺のせいだ」

 「発症時、自分はだるさを感じ、妻は『すっごく頭が痛い』と訴えた。母は無症状。三者三様なんですよ」

 「馬料理二代目天國」の店長は3月29日、新型コロナウイルスへの感染が判明。異変を感じた3月25日以降、自分の部屋にこもって隔離生活を続けていたが、30日に母(80)、4月3日に妻(51)の感染が確認された。「俺のせいだ」。店長は自責の念に駆られた。

 苦しむ店長を支えたのは家族だった。東京に住む会社員の長女、大学生の次女たちが次々と無料通信アプリLINE(ライン)でメッセージや写真を送り、会いたくても会えない病室の父に寄り添った。精神的なダメージは和らいでいった。
 ただ、店長にはもう一つ心配の種があった。夫婦で入院し、自宅に残した中学生の長男のことだ。母も入院し、そばには自分の父(83)しかいない。食事のことが気掛かりだった。そこは、次女が東京から帰省し、世話役を買って出てくれた。市保健所の担当者も親身に相談に乗ってくれた。

 それでも家族の試練は続く。店長の容体が悪化。店長はLINEで、3人の子どもたちへ思いを伝えた。「お父さんは、これで死ぬだろう。悔いのないように、しっかりと生きなさい」

■「生存率1%」 高齢の母、奇跡の生還

 集中治療室での懸命の処置で店長には回復の兆しが見えたが、4月11日、今度は母が重症となった。

 家族は人工呼吸器を装着するかどうかの判断を迫られた。医師は「高齢なので、着けても生存率は低く、1%ほどかもしれない。助かっても一生、呼吸器を外せないと思う」と説明した。家族は回復を祈り、呼吸器の装着を承諾した。

 それから3週間。「奇跡が起きました」。主治医から店長に吉報がもたらされた。5月1日、人工呼吸器が外れた母は中等症に改善した。

 5月21日に退院した母は「私は普通の年寄りとは体力が違った。毎日、階段を上り下りして、接客をしていましたから」と、うれしそうに“奇跡”を振り返る。

■「ああ生きている」 家族や友人、医療関係者に感謝

 入院期間が53日に及び、自慢の体力は落ちたが、母は市内の病院にリハビリに通っている。「リハビリの初日は家族総出で見送ってくれた。家族や友人、医療関係者の支えに感謝しながら頑張る」。母は週明けの22日から店に立つつもりだ。

 店長も妻も退院し、かつての日常が戻ったかに見えるが、現実は違う。母は「つい最近まで、不安で不安で眠れない日々が続いた」。自分のような苦しい思いを誰にもしてほしくない。「油断せず、感染しないよう細心の注意をしてほしい」と涙ながらに訴える。

 店長も、肺の機能が低下し、すぐに息が切れ、5分歩くのがやっとだ。寝ても2時間ほどで目が覚めてしまう。「呼吸ができなかった時があるから、そのまま死んでしまうんじゃないかという気がして…。それでも毎朝呼吸をして、ああ生きている、と安心するんです」

 死を覚悟した入院生活、いわれのない差別、多くの人からの激励…。さまざまな経験をした店長は、自らに言い聞かせるように言う。「未知の感染症に家族で立ち向かい、絆はより深まった。これからも、どんな困難にも負けることはないと思う」

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アイヌ文化施設「ウポポイ」、7月12日開業

2020年06月22日 15時27分09秒 | 社会・文化・政治・経済

アイヌ文化施設「ウポポイ」、7月12日開業 コロナ感染拡大で2度延期

毎日新聞2020年6月19日 


7月12日の開業が決まったアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(愛称ウポポイ)」の展示室=北海道白老町で9日、貝塚太一撮影
 赤羽一嘉国土交通相は19日の記者会見で、北海道白老町のアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(愛称ウポポイ)」を7月12日に開業すると発表した。前日の11日に記念式典を開く。赤羽氏は「ウポポイが最高の形でスタートできるよう、感染症対策を講じつつ準備に取り組んでいきたい」と述べた。

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アイ

 


理念

国立アイヌ民族博物館は、日本の先住民族であるアイヌの尊厳を尊重し、国内外にアイヌの歴史・文化等に関する正しい認識と理解を促進するとともに、新たなアイヌ文化の創造及び発展に寄与する。
博物館設立の経緯

国立アイヌ民族博物館の設立経緯等については、文化庁のこちらのWebサイトをご覧ください。
博物館ネットワークについて

アイヌ文化の伝承者や実践者、道内外の博物館や大学、研究機関等との連携・協力体制をつくり、情報の共有・発信、資料の収集や共同研究等を促進します。さらに、北海道をはじめ全国の博物館等と連携した、被災文化財のレスキュー・修復等に備えます。
館内におけるアイヌ語の表記・方言について

館内および展示室の解説パネルや表示には、アイヌ語による表示を行っています。アイヌ語は、第一言語として最初に表示しています。
☆アイヌ語の表記について

現在、アイヌ語はローマ字やカタカナで表記されています。アイヌ語には統一した表記法(正書法)はないため、館内の表示は、(公社)北海道ウタリ協会(現在の(公社)北海道アイヌ協会)が編集・発行したアイヌ語テキスト『アコㇿ イタㇰ』をもとに、カタカナで表記しています。
☆アイヌ語の解説文と方言について

展示室には、各地のアイヌ語を受け継ぐ人が書いたアイヌ語の解説文があります。博物館ではアイヌ語の多様性を大切に守っていくため、それぞれの執筆者の方言や表記法でアイヌ語を表示しています。

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ヌ文化施設「ウポポイ」、7月12日開業 11日には記念式典

2020年6月21日 日曜日 traicy. 

アイヌ文化の復興・創造施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」は、7月12日に開業する。

当初の開業予定日は4月24日だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期していた。感染症対策の基本的対処方針や、各種ガイドラインに基づく取組みを十分に講じたうえで、開業する。開業前日の7月11日には、開業記念式典を実施する。前売り入場券の販売再開などについては、決まり次第発表するとしている。

「ウポポイ」は、北海道白老町に開業予定の、アイヌ文化の復興・創造と、アイヌの歴史・文化に関する理解の促進を目的とした施設。国立アイヌ民族博物館や国立民族共生公園、アイヌの慰霊施設などで構成される。「ウポポイ」は、アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味する。


中国の雲南省がペストの起源説

2020年06月22日 15時13分20秒 | 社会・文化・政治・経済

ペストは中国が起源、シルクロード経て世界に拡散 国際研究
2010年11月3日 14:47 発信地:パリ/フランス [ ヨーロッパ フランス ]

11月3日 AFP】疫病のペストは2600年前の中国で初めて発生し、シルクロードを経て欧州にもたらされたとの国際研究チームによるDNA研究結果が前月31日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」(電子版)に発表された。中世の欧州で全人口の3分の1が死亡したとされるペストは中国を起源とするとの説を、裏付ける結果だ。

 研究チームはペスト菌17株のDNA配列を解析し、共通の祖先から変異した病原菌の遺伝子系統を調べた。その結果、ペスト菌は2600年以上前の中国で初めて出現したことを示唆する結果が得られたという。

 その後、約600年前からペストは中国からシルクロードを通じて西ヨーロッパに伝わり、さらにアフリカへと拡がった。15世紀に通商貿易航海で活躍した明王朝(1368~1644)の鄭和(Zheng He)も、ペスト菌の拡大に「貢献」したとみられる。

 さらに19世紀末、ペスト菌は中国からハワイ(Hawai)に伝わり、サンフランシスコ(San Francisco)やロサンゼルス(Los Angeles)などの港町からカリフォルニア(California)に上陸。米本土全域へと広まっていった。今回の発見は、ペストだけでなく、炭疽症や結核など感染性の病原菌の起源解明にもつながると期待されている。

 ペスト菌は元来、ネズミなどの齧歯(げっし)類の体内に潜伏しているが、感染した動物の血を吸ったノミを媒介としてヒトに感染する。ペスト菌がリンパ腺に伝播すると、腺ペストを発症する。

 研究は アイルランドのコーク大学(University College Cork)のマーク・アフトマン(Mark Achtman)教授が主導し、米国、英国、中国、フランス、ドイツ、マダガスカルなど、多くの国の科学者が参加して行われた。(c)AFP

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北京駐在スタッフの随想

No.014 「中国の結核問題と対外医療援助:負債と資産」

2017年11月20日

東京大学医科学研究所 林 光江
 2017年10月18日から24日まで、中国は5年に一度の重要な会議を開いた。第19回中国共産党大会である。この大会の開幕式で習近平国家主席は3時間半もの長い演説を行った。その演説の中で最も多用された言葉は「新時代」で、35回だったそうだ。一方、私たちの関心事である感染症については、一度だけだが触れられている。「平和的発展の道を堅持し、人類運命共同体の構築を進める」という項目の中で、安全への新たな脅威としてテロリズム、サイバー攻撃、気候変動とともに「重大な感染性疾患」が挙げられた。回数はともかく、地球という運命共同体にとって感染症への対策が重要であることは言を俟たない。
 医療施設が完備し公衆衛生に対する意識の高い日本では、いまや文学作品の中だけで知る病であったり、遠い昔や遠い国のこととしてほとんど意識されない感染症であったりしても、世界規模でみれば大きな問題になっていることがある。
 2017年10月末、世界保健機関(WHO)が「グローバル結核レポート2017」を発表した。2016年の一年間に全世界で正式に報告された結核の新規症例は630万件、報告されていない症例を加えておよそ1,040万件と推計している。HIVとの重複感染者約40万人を含むおよそ170万人が結核で亡くなっており、この数値は現在感染症の中で最も多い。
 患者数でいうと中国はインド、インドネシアに続いて3番目に多く、中国衛生部門の統計によれば2016年には約84万人の新規感染が報告されている。中国で結核患者が多い理由については、感染してから受診や診断までの時間が長くかかるためだという研究がある。2006年から2013年に雲南省の疾病コントロールセンター(CDC)が行った調査では、患者の32%が治療を開始するまでに3か月以上かかっているという。
 また中国国内における結核の罹患率は「西高東低」といわれ、西部内陸地域で感染者の比率が高い。仕事を求めて大量の農村人口が西の内陸部から東の都市部に流入しているが、都市と農村の保険制度の違いなどにより、農村から来た人々は都市の医療機関にかかりづらい。病院へ行くのが往々にして遅くなり、診断・治療がなされるまでの間、結核菌を保有したまま周りの人と接することになる。結核は空気感染によって広まるため、治療までの時間が長くなれば、そのぶん周りの人が感染する機会が増えるのだ。
 もう一つの大きな問題は薬の効かない薬剤耐性結核菌の出現である。結核の治療には長い期間がかかるので、途中で薬をやめてしまうと耐性菌が生まれやすくなる。今回のWHOの発表によると、結核治療によく使われるリファンピシンという薬に耐性を持つ新規感染者は60万人ほどおり、その約半数をインド、中国、ロシアが占めている。
 このように結核患者数や耐性菌出現など、国内の公衆衛生領域で重荷をかかえている中国であるが、一方海外へ医療隊を派遣するなどの形で世界の感染症対策に貢献もしている。まだ自国が貧困状態を脱していなかった1960年代から、中国はアフリカを中心とする第三世界への支援を開始し、自然災害、内戦、感染症流行などにより医療が不足している地域に医療隊を送ってきた。近年では2014年から西アフリカで流行したエボラ出血熱制圧のために多数の医療隊を派遣した。また先ごろ日本の自衛隊が撤退した南スーダンにも、現在第8団目となる医療隊が駐留している。
 直近ではアフリカ大陸の南東部、西インド洋上にある島国のマダガスカルに医療隊が派遣された。マダガスカルでは今年8月からペストが流行し、11月上旬までに2,000人以上の感染者と160人以上の死者を出している。ペストはもともとマダガスカルには常在する病気で、毎年400件ほどの腺ペストが報告されるという。しかし今回は例年の流行時期より早く、これまであまり発生のなかった都市部で流行したこともあって対応が遅れたようだ。また、ネズミとノミが媒介する腺ペストだけでなく、人から人へ感染する肺ペストも同じように広がったことが流行抑止を遅らせた。2017年10月末に中国CDCの公衆衛生専門家6名、そして11月9日に北京地壇病院の医師2名と看護師1名が現地へ向かった。
 中国の西部地域ではまだ時折ペストの症例がみられる。
今回派遣された医師の一人も2010年に青海省とチベットにまたがる青蔵高原で肺ペスト患者の治療にあたった経験をもつという。14世紀に「黒死病」と言われヨーロッパを席巻したペストは中国雲南省周辺に起源を持ち、その地に遠征したモンゴル軍がペスト菌に感染したノミを中央アジアに持ち帰ったといわれている。
そしてその後中央アジアの草原地帯に棲む齧歯類の中で保有されてきたペスト菌が、モンゴル帝国の版図拡大とユーラシア大陸の東西交易によってヨーロッパ各地に広まったとの説がある。
 このように中国は古来重大な感染症の発症の地であり、世界に対し現在に至るまで多くの「負債」を抱えている。しかし同時に、国内や海外での長年にわたる感染症への対応経験は、世界にとって「資産」にもなっているのであろう。


「鳥インフルエンザ」から人に感染性を持つ「新型インフルエンザ」の出現が危惧

2020年06月22日 15時10分19秒 | 医科・歯科・介護
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授



インフルエンザウイルスの種類・・・・・・・
     インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で起こります。インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類が知られていますが、人の間で流行するのは主にA型とB型です。
 A型は、特に遺伝子変異が起こりやすく、人に抗体ができても、少しずつ変異して、新たな感染源となって毎年流行を繰り返します。
 また、インフルエンザウイルスの活動性が高まるのは、一般的に湿度と気温の低い冬の季節です。
     通常、人の気道(鼻から喉、気管支などの空気の通り道)には、空気と一緒に入ってきた小さなゴミや細菌、ウイルスなどの異物を粘液で包み込み、外へ送り出す働きがありますが、乾燥した冷たい空気はこの働きを低下させるためです。

 

  鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係
   最近、「鳥インフルエンザ」から人に感染性を持つ「新型インフルエンザ」の出現が危惧されています。
     もともとインフルエンザウイルスは、カモなどの水鳥の腸に共生していました。カモが渡りの途中で、アヒルやニワトリなどと接触するうちにインフルエンザウイルスが伝わり、さらに豚に感染し、豚の鼻の粘膜でいろいろなタイプのインフルエンザウイルスが 「遺伝子再集合」※ を起こして人に感染するものが生まれると考えられています。
 鳥インフルエンザは、本来ニワトリなどの鳥同士が感染するものですが、直接人に感染する例も見つかっています。強い病原性をもった鳥インフルエンザウイルスが遺伝子再集合により人に感染しやすいタイプに変化すると、今までにないインフルエンザウイルスが出現することになります。
  厚生労働省編:新型インフルエンザに関するQ&Aより作図
 
このような新型インフルエンザウイルスに対する対策は、日本だけでなく世界規模で考える必要があります。
※遺伝子再集合: 同じウイルスでも遺伝子の違うものが集まり、それまでにみられなかった新しい遺伝子の組み合わせが生まれること。

インフルエンザの症状・・・・・・・・・・・・・
     インフルエンザの症状は、風邪と似ています。しかし、喉の痛みや鼻汁、くしゃみ、咳といった風邪の症状に加えて、38~40度の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの強い全身症状を伴うのがインフルエンザの特徴です。
 感染してから発症するまでの間には、1~5日程度の潜伏期間があると考えられています。症状は、健康な成人であれば通常3~7日間続き、その後、治癒に向かいます。

 

  重症化させないために
      インフルエンザの症状は、免疫機構の働きが正常であれば1週間程度で治りますが、呼吸器、心臓などに慢性の病気を持つ人や高齢者では重症化しやすく、最悪の場合は死に至ることもあります。
 インフルエンザが重症化すると、気管支炎や肺炎を併発します。小児では、「中耳炎」や「熱性けいれん」、そして非常に危険な状態ともいえる「急性脳症」などに至る可能性も高くなります。
 『風邪かな?』と自己判断せずに、早いうちに医師にかかることが重症化させないコツです。
 また、インフルエンザワクチンを接種しておくことも重症化を防ぐ上で有効です。

 

  ウイルスと免疫機構との闘いが症状に?!
      インフルエンザウイルスは、気道の正常な細胞の遺伝子に自己の遺伝子を送り込み、増殖します。一方、人の体には免疫機構があり、ウイルスの増殖をいち早く察知し、免疫機構がウイルスの増殖を抑制しようとウイルス対免疫機構の闘いが始まります。
 この闘いが、高熱と関節痛、全身倦怠感などのインフルエンザに特徴的な症状となって現れると考えられています。
  また、 ウイルスにとって高熱は苦手な環境なので、むやみに解熱薬を使って熱を下げるのはよくないといわれています。
   

検 査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      インフルエンザの検査は、迅速診断キットで行われるようになってきました。これは、喉あるいは鼻の粘液を綿棒で取って調べる簡便な検査です。
 また、血液を採取してインフルエンザウイルスに対する抗体の有無や量を調べることもあります。

 

  30分で診断?!
     インフルエンザは、流行する時期が決まっていることや特徴的な症状から問診などで診断は容易です。
現在は、迅速診断キットによって30分以内に正確な診断ができます。
   

治 療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   
一般療法
  できるだけ安静にし、栄養と十分な睡眠を取ります。
  インフルエンザウイルスの空気中での活動や感染を抑えるために、加湿器などで室内の湿度を50~60%に保ちます。
  水分を十分に補います。お茶、スープ、ジュースなど何でもいいので飲みたいものを飲みます。
 
  対症療法
     発熱や関節痛などに対しては解熱鎮痛薬、鼻水やくしゃみに抗ヒスタミン薬などが用いられます。一方、インフルエンザの症状はインフルエンザウイルスに対して免疫が正常に働いている結果であり、薬で無理に抑えないほうがよいという考え方もあります。市販の薬を自己判断で使用することは、却って逆効果になる場合があるので、医師の指示にしたがってください。

 

  避けたほうがよい解熱薬

 

     
 インフルエンザに対して避けたほうがよい解熱薬があります。アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸がその代表的なものです。市販の解熱薬の中には、これらが含まれている製品があります。特に、小児では重い副作用が起こることがあるので、自己判断を避け、必ず医師に相談してください。



  抗ウイルス療法
     インフルエンザウイルスに対する治療薬として、塩酸アマンタジンとノイラミニダーゼ阻害薬があります。塩酸アマンタジンはA型インフルエンザウイルスに有効で耐性が起こりやすいのですが、ノイラミニダーゼ阻害薬はA型、B型どちらのインフルエンザウイルスにも有効です。但し、これらの抗ウイルス薬は 発病後48時間以内に服用 しないと効果がありません。
 また、現在日本ではノイラミニダーゼ阻害薬のリン酸オセルタミビルと塩酸アマンタジンを予防薬として使用することができますが、13歳以上に限るという制限など、いくつかの条件があるので医療機関に相談してください。
   

インフルエンザにかからないためにできること・・・・
   
インフルエンザが流行しているとき
人ごみを避ける。
  外出時にはマスクをつける。
  外出から帰ったらうがい、手洗い、洗顔を行う。
  栄養バランスのよい食事を摂る。
  疲れをためず、休養および十分な睡眠をとる。

 

   
インフルエンザワクチン接種を受ける
 インフルエンザワクチン接種を受けたからといって感染を100%防ぐことはできませんが、健康な成人では70~90%くらい発病を阻止するといわれます。



接種時期 11月頃
接種回数
原則として1~4週間の間隔をおいて2回
65歳以上/昨年予防接種を受けている/近年インフルエンザにかかった人は1回でよいとされますが、最終的には医師が判断します
費  用 自己負担で、1回/約3000~5000円
※接種について
明らかな鶏卵・鶏肉アレルギーを持つ人はワクチン接種ができません
妊婦または妊娠の可能性のある人は医師に相談することをすすめます
高熱があるなど体調が悪いときはワクチン接種を避けます



 
インフルエンザの予防接種を実施している医院
    秋から冬にかけて大流行が予想されるインフルエンザですが、ワクチンを打つことでたとえ発症したとしても軽い症状で済むといわれています。提携サイトであるEPARKクリニック・病院では、全国でインフルエンザワクチン接種を受け付けている医療機関を掲載しております。
インフルエンザの予防接種を実施しているクリニック・医院の一覧

インフルエンザ予防接種 EPARK クリニック・病院補助について
インフルエンザの予防接種をお考えの方にEPARKクリニック・病院では補助を実施しております。 詳しくは「インフルエンザ予防接種 EPARK クリニック・病院補助対象について」をご確認ください。
 



  編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社

高病原性鳥インフルエンザについて(鳥を飼っている皆さんへ)

2020年06月22日 15時04分43秒 | 医科・歯科・介護

鳥インフルエンザは鶏やアヒルのほかにも色々な種類の鳥に感染することが知られていますが、国内で鳥インフルエンザが発生したために、これまでペットとして家庭や学校などで飼養している鳥がただちに危険になるということはありません。むしろ、家庭などで隔離して飼われている鳥は、野外からの感染の危険は小さいといえます。「ペットのチャボが感染」との報道以来、安易に飼い鳥を手放したり捨てたりする事態も起きています。ペットは大切な家族の一員です。冷静な対処をお願いします。

飼っている鳥への感染予防方法

 鳥インフルエンザは日本に飛来する渡り鳥が運んできたか、人や物に付着して持ち込まれた可能性があります。飼っている鳥へ感染させないように、特に次のことに注意してください。

ペットの鳥を渡り鳥などの野鳥に接触させない。
・飼養ケージを点検、補修して野鳥が侵入できる穴などはふさぐ。

野鳥の糞などが飼っている鳥の水や餌を汚染しないように気をつける。

  • 水や餌は毎日取り替えて、常に清潔なものを与える。
  • 餌は野鳥が侵入しない場所に保管する。
  • 野鳥が飛来する池の水を鳥の飲水に利用しない。

人がウイルスを持ち込まないように気をつける。

  • 飼養舎に入るときは、専用の長靴にはきかえる。入り口に、消毒液の踏み込み槽を設置するとなおよい。
  • 飼い主は鳥インフルエンザが発生している地域などへの旅行、訪問は控える。
  • 鳥を飼養する場所に飼養に関係ない人が立ち入らないように注意する。

 鳥インフルエンザウイルスは鶏(チャボ、ウコッケイ等を含みます。)やウズラ、キジ等の家畜に感染しやすく、鶏から鶏への伝播は容易に起こります。これらの鶏を飼っている方は、特に注意してください。

鳥インフルエンザに感染した鶏等の症状

鳥インフルエンザに鶏が感染すると様々な症状が出て高率に死亡します。
(主な症状)

  • 元気消失
  • 呼吸器症状
  • 下痢
  • 肉冠、肉垂のチアノーゼ、出血、壊死
  • 顔面の腫れ
  • 脚部の皮下出血
  • 産卵の低下
  • 神経症状

 (鶏の症状の写真は、動物衛生研究所のホームページで見られます。)

 鳥の伝染病には、これらの鳥インフルエンザの症状に良く似た症状を示すものもあります。飼っている鳥に健康異常が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。

日常の正しい衛生管理が大切

鳥インフルエンザに限らず、鳥から人に感染する病気はいくつかありますが、正しい衛生管理をしていればむやみに恐れることはありません。

衛生管理のポイント

  • 鳥を触る前、触った後には手を洗う。
  • 排泄物は速やかに処理をして、常に動物の周りを清潔に保つ。
  • 排泄物の処理をした後は、ずぐに手を石鹸でよく洗い、うがいをする。(心配なときは、マスクや手袋をする。)
  • 水や餌は衛生的なものを与える。
  • 鳥の健康状態を毎日よく観察する。
  • 鳥に健康異常が見られたら、すぐに動物病院を受診する。

飼い主の体調に不調を感じたら、早めに医療機関を受診することも大切です。

鳥インフルエンザについて詳しいことは、下記のQ&Aを御参照ください。

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)への対応
(東京都産業労働局)
鳥インフルエンザに関するQ&A
(国立感染症研究所 感染症情報センター)
高病原性鳥インフルエンザQ&A
(動物衛生検査所)

お問い合わせ

このページの担当は 健康安全部 環境保健衛生課 動物管理担当(03-5320-4412) です。


中国産アヒルから鳥インフルエンザウイルス検出 

2020年06月22日 15時02分07秒 | 事件・事故

中国から輸入されたアヒル肉から、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が検出されたことが12日、農水省の抽出検査でわかった。

H5N1型ウイルスは、香港で人間に感染した例も報告され、少なくとも7人が死亡している。日本国内で検出されたのは初めてだが、検疫段階で見つかったため流通していない。

農水省によると、アヒル肉は中国・山東省から、大阪港と神戸港に先月下旬に輸入された冷凍肉で、横浜市の農水省動物検疫所の検査でウイルスを検出した。

中国産鳥肉は、2000年の統計で鶏肉やアヒル肉を中心に年間約30万トンが輸入され、鳥肉の全輸入量の半数近くを占めている。生きた鳥は輸入しておらず、農水省は「国内の鳥に感染する恐れはない。抽出検査した以外の鳥肉に万が一ウイルスが存在しても、加熱処理して食べれば問題はない」としている。

◆香港で死亡例◆

鳥インフルエンザ(H5N1型)の人への感染が初めて確認されたのは97年の香港だ。鶏市場などで18人が感染し6人が死亡した。今年2月にも2人が感染し、1人が死亡。オランダでは先月、別のH7N7型で1人が死亡した。

インフルエンザは、数十年周期で新型ウイルスが世界的な大流行を起こしてきた。H5N1やH7N7はまだ流行は引き起こしていないが、もし遺伝子が変異し感染力が強まれば、新型肺炎を上回る被害をもたらすことは確実。旧厚生省は、日本でH
5N1が流行すれば最低で3―4万人が死亡すると試算した。

専門家の多くは「国内で食肉からH5N1が流行する恐れは考えにくい」と話す。だがウイルスが生きている限り感染源になる可能性は完全には否定できない。万一の事態に備え、徹底した監視と輸入規制が重要になる。

(2003/5/13/03:07 読売新聞WEB版)


インフルエンザの始まりはすべて鳥だった—さまざまなインフルエンザの脅威に備える—

2020年06月22日 14時56分05秒 | 医科・歯科・介護

京都産業大学総合生命科学部 動物生命医科学科 大槻 公一教授

さまざまなインフルエンザの脅威に備える

 2009年、新型インフルエンザが世界中で流行しました。パンデミック(pandemic:世界的大流行病)の発生源はアジアではなくメキシコで、鳥インフルエンザウイルス由来ではなく豚インフルエンザウイルス由来でした。いまや人類の生存を脅かす感染症は世界中から襲ってきます。グローバル社会に生きる私たちにとって、宿命的な脅威なのです。新型インフルエンザの流行に備えるために、敵の正体を見極め、いかに被害を小さく抑えるのかを研究されている大槻公一先生に新型インフルエンザや鳥インフルエンザについてお聞きしました。

もとをたどればすべて鳥インフルエンザ

図3

 インフルエンザは、もとをたどるとすべてが鳥インフルエンザに行き着きます。というのも、インフルエンザウイルスは本来、カモやアヒルなど足に水かきのある水鳥、渡り鳥に感染するウイルスだからです。ただし私たちが腸管内に大腸菌を持っていても病気にならないのと同じで、水鳥がインフルエンザウイルス感染で病気になることは基本的にありません。インフルエンザウイルスが数百万年もの長い間、水鳥へ感染し続けた結果、両者に共存関係ができたのです。

 しかし私が研究を始めた1970年代にはまだほとんど何もわかっていませんでした。鳥取大学に所属していた私は、渡り鳥のやってくる10月末から北帰行の始まる2月末まで、山陰地方を中心に、月に2回ほど定期的に定点を定め、インフルエンザウイルスの分離材料である渡り鳥のフンを採取し続けました。分離した多数のインフルエンザウイルスについてニワトリやマウスなどへの感染実験を行ったり、ウイルスの性質を調べる研究を学生とともに20数年間続けていました。

 フンから取り出したウイルスは、水鳥とは違う種類の鳥類であるニワトリにも感染することがあり、1、2%は死に至ったのです。また、ニワトリからニワトリに感染を起こして、強毒のウイルスになるものもあり、動物の種類が違えば、感染態度も違うことがわかりました。

 高病原性鳥インフルエンザの原因になるH7N7やH5N3ウイルスも分離していましたから、「近い将来日本でも鳥インフルエンザは出るに違いない。いつどこで最初に発生するのかが問題だ」と思っていた矢先、山口県で鳥インフルエンザが発生しました。それまで200回以上も野鳥たちの集まる島根、鳥取両県の定点で調査していたため、感染経路などのイメージができました。ただその後の京都での発生は想定外でした。鳥取市から関西はすぐ近くですが、中国地方しか私は見ていなかったのです。※1

※1 京都産業大学に来てからは、琵琶湖の東湖岸などで渡り鳥のインフルエンザウイルスの分離を行っている。山陰地方を調査する鳥取大学とも協力しながら、日本に飛来した渡り鳥が持つウイルスが、東南アジアや周辺の国々に分布するウイルスとどう関係しているのかなど、長い目で徹底的に調べていこうと考えている。

今回の新型インフルエンザウイルス

 現在わかっている主なインフルエンザウイルスの宿主と血清型※2を上の図に示しました。これまでの主な人インフルエンザウイルスは渡り鳥から直接感染してきたものではなく、ニワトリやブタ由来のものだということがわかります。現在の新型インフルエンザウイルスの型も、ブタ由来のH1N1です。しかも90年前にパンデミックを起こした当時のスペインかぜウイルスとほとんど同じ性質のH 1ですから、厳密にいうと、新興感染症というよりも再興感染症です。

 ウイルスは感染するためにまず動物の呼吸器表面にある糖を含む受容体にくっつきますが、ヒトのインフルエンザウイルス受容体は鳥類のインフルエンザウイルス受容体とは異なる構造を持つため、非常にくっつきにくいのです。ところが、ブタは鳥インフルエンザウイルス受容体のみならず、人インフルエンザウイルス受容体も持っています。両方の受容体を持つブタの体内で、鳥インフルエンザウイルスと人インフルエンザウイルスが遺伝子交雑を起こすことがまれにあります。そして、新しくできた遺伝子再集合体がたまたまヒトに感染しやすい場合、新型インフルエンザウイルスが生まれたと考えられています。新型インフルエンザの発生を予測するために、ブタがどのようなウイルスに感染しているかを把握することはとても重要なのです。

 今回の豚由来の新型インフルエンザで警戒すべき点は、まれに急性肺炎が起きていることです。これはヒトが鳥インフルエンザに罹患した際にみられる典型的な症状で、このウイルスが鳥インフルエンザウイルスの性格も持っていることを示しています。本来、鳥インフルエンザウイルスはヒトの気管にはくっつきませんが、気管のさらに奥、肺には鳥インフルエンザウイルスと結びつく受容体がたくさんあるので、一気に増殖してウイルス肺炎を引き起こすのです。

※2 A型インフルエンザウイルスを構成するHA(ヘマグルチニン、赤血球凝集素)NA(ノイラミニダーゼ)の性質の違いによって亜型に分けられている。HAは1~ 16、NAは1~9である。

グローバル時代 開発途上国を脅威が襲う

 野鳥やニワトリから鳥インフルエンザウイルスに感染しないかと心配される方がいますが、その可能性はまずありません。また、日本の野鳥やニワトリは鳥インフルエンザウイルスにもともと感染していないので、日本で世界に先駆けて新型インフルエンザが発生することもまずな いでしょう。

 新型インフルエンザの震源地になるのではと私たちが心配しているのは、開発途上の国々です。2005年から、文部科学省のプロジェクトでベトナムのハノイに研究拠点を作って調査を行っていますが、ようやく現地の状況がつかめてきました。ベトナムは鳥インフルエンザの大発生で、2003年には国全体で飼育されていた8千万羽の約半分を処分しています。かつては鳥インフルエンザウイルスで国全体が汚染され、現在でも完全にクリーンな状態とはいえません。

 また、アジアの国々では畜産がさかんです。しかも、日本とは違い、ほとんどがブタやアヒル、ニワトリ、ウシなど、複数の種類の動物を一つの農家が飼育する形態をとっています。農村に一歩入ると、どこにでもブタやアヒルがいて、それぞれの動物間の距離も、人間との距離も近い。これは極めて新型インフルエンザウイルスを生みやすい環境です。

 東南アジアの中では最も環境が整っているはずのベトナムでも、農村ではインフラ整備も医療システムも不十分で、衛生状態も決してよいとはいえません。私たちはこの5年間、こうした国で飼育されているアヒルやブタなどの動物がどういう状態なのか、野鳥はどうかというデータを集めてきました。第二期となる次の5年では、新型インフルエンザを発生させないために何ができるのか、また発生したときにどういう対応ができるのかなど、さらに研究を進めていくつもりです。

  • 写真1
    ベトナムの典型的な畜産農家の風景。
    池には野鳥などをさえぎるものが何もない
  • 写真3
    子豚が飼育されている隣の部屋で
    飼育されているヒヨコ
  • 写真2
    豚や牛の飼育小屋のすぐそばにある池
  • 写真4
    アヒル、鶏と飼育されている子豚

終わりなき闘い

 人間は有史以前からインフルエンザウイルスと闘ってきています。第一次世界大戦中に発生したスペイン風邪は、世界中で2000万人以上の命を奪いました。

 新型インフルエンザに変異するのではと恐れられていた強毒のH5N1鳥インフルエンザウイルスは、中国南部に初めて出現してから14年が経ちました。変異しやすいインフルエンザウイルスにとって、14年というのは大きく変異するのに十分な時間だと考えられます。しかし、いまだに鳥インフルエンザウイルスのままで、ヒトのウイルスにはなっていません。ヒトのウイルスになりにくい性質を持ったウイルスなのかもしれません。別の鳥インフルエンザウイルスの可能性や、今回の新型インフルエンザウイルスと別の鳥インフルエンザウイルスとの遺伝子交雑体の出現など、様々なリスクを考え、パンデミックを防ぐ努力をしていく必要があります。

 今回の新型インフルエンザウイルスについていえば、もっとも危惧されるのは、冬の間にそれが一人勝ちしたことです。例年の冬なら、ソ連型やホンコン型、B型がそれぞれ競り合って出現していたために、どれか一つだけが爆発的に広がるということがありませんでした。ところが、昨年の冬は、新型以外のインフルエンザウイルスがほとんど消えました。これらの季節性インフルエンザウイルスが消滅して過去のウイルスとなり、次の冬に新型インフルエンザウイルスが猛威をふるうことも心配されます。

 アヒルやカモのように、人間がインフルエンザウイルスと共存関係を築くためには、少なくともさらに数万年必要でしょう。ですから今は、感染しないこと、また、発生したときにはウイルスを拡散させない方策を考えるのが、インフルエンザウイルスとの闘いで最も重要になると考えています。

すべての生き物はウイルスに感染している?!

謎だらけの生物、ウイルスに迫る

図3

 インフルエンザウイルスの基本的な構造は上のようになっています。RNA(リボ核酸)が8本、表面で宿主の細胞のレセプター(受容体)にくっつく役割をするヘマグルチニン(赤血球凝集素、HA)と、逆に離れる作用をするノイラミニダーゼ(NA)という2種類のスパイクを持っています。人間とは比べようがないくらい単純な構造ですが、ウイルスの中には3、4個の遺伝子しか持っていないさらにシンプルなものもあります。

 ウイルスは他の生物に入り込まないと増殖ができない、すなわち自己増殖できないために生物ではないといわれることもあります。しかし、遺伝子を持っているということは自己を確立していて同じものを代々作っていけるわけですから、私はウイルスは生物だと考えています。ウイルスの出現した時代はわかっていませんが、植物やバクテリアで増殖するウイルスもいるので、生物と同じくらいの歴史があって、生きているものはほとんど何らかのウイルスに感染しているだろうと考えられています。シンプルな作りながら、様々な機能を持ち、その種類や生態はすべてわかっているわけではありません。わからないことの多いインフルエンザウイルスですが、それでも、ウイルスの中では一番解明が進んでいるのです。

総合生命科学部 動物生命医科学科 大槻 公一教授

プロフィール

獣医学博士。大学に入学してから、構造は単純なのに複雑な働きをする微生物の正体をつきとめれば生命の根源に迫れるのではと、微生物学に興味を持った。もともと鳥の病気に関心があり、ニワトリのコロナウイルスを研究していたが、70年代後半に北海道大学の恩師からインフルエンザ研究プロジェクトに誘われた。以後、前任の鳥取大学で山陰地方に飛来する野鳥を長年隈なく調査して回ったことが、今日の鳥インフルエンザ研究の基盤になっている。鳥インフルエンザ研究センター長として「本学は学部間の垣根が低く、生物系はもちろん、社会科学系、数学系など多彩な人材と共同研究できるのが強み」と胸を張る。静岡県立静岡高校OB。


「黒死病・ペスト」はネズミのせいではなかった?最新研究

2020年06月22日 14時09分09秒 | 医科・歯科・介護

「黒死病」はネズミのせいではなかった?最新研究
中世欧州を襲ったペストの大流行、現代と異なる感染経路か

中世の欧州やアジアで大流行し、多くの人々の命を奪ったペスト。その原因であるペスト菌は、ネズミによって拡散されたと長い間信じられてきた。だが、犯人は別にいたようだという結果が最新の研究で示され、論争を呼びそうだ。

 論文は1月15日付けの科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。それによると、欧州の人口の3分の1が死亡した「黒死病」と呼ばれる14世紀のペストの大流行を含め、14世紀から19世紀初頭まで続いた世界的流行では、主にヒトに寄生するノミとシラミが細菌を媒介していたと示唆されている。

「疫病は、人類の歴史を大きく変えてきました。ですから、どうやって拡大したのか、なぜあれほど速く拡大したのかを知ることはとても重要なのです」。ノルウェーにあるオスロ大学生態学進化学統合センターの博士研究員で、論文の筆頭著者であるキャサリン・ディーン氏はいう。(参考記事:特集「エボラはどこに潜むのか」)

現代の伝染病よりはるかに速く拡大

 ペスト菌Yersinia pestisを媒介するのはノミだ。感染したノミが人間を刺すと、菌が血管に侵入する。現代で多い症状は、菌が人体の各所にあるリンパ節に集まり、その部分がひどく腫れあがる腺ペストと呼ばれるものだ。

 19世紀後半から現在まで続いているこの流行では、ネズミやその他の齧歯類が菌を拡散させていることが知られている。ネズミがペスト菌に感染すると、そのネズミの血を吸ったノミに細菌が移る。感染したネズミが死ぬと、宿主を失ったノミは次に人間を襲うというわけだ。

 このように、現代の流行がネズミによるものという点と、中世のペスト犠牲者の遺伝子を調べた研究結果から、多くの専門家が中世の世界流行もネズミによってもたらされたと考えている。
しかし、黒死病の感染経路は別だったと主張する歴史家もいる。根拠のひとつは、黒死病が現代のどの伝染病よりもはるかに速く欧州に広がったことだ。加えて、現代のアウトブレイクの前には、ネズミの大量死がしばしば確認されているが、中世で同様にネズミが大量死したという記録は残されていない。(参考記事:「エボラウイルスの感染源に意外な動物」)

「遺伝学者や現代史の専門家は、ネズミを大流行の犯人に仕立て、証拠の断片を歪めてしまっているのです」と、ネズミ=ノミ説に懐疑的な英グラスゴー大学の中世史専門家サミュエル・コーン氏は語る。(参考記事:「ペスト菌、600年前から変化せず」)
ネズミ=ノミか、ヒト=ノミ・シラミか

 ならば、黒死病はいかにして広がったのか。以前から、ネズミではなくヒトに寄生するノミが原因だったと考える学者もいた。感染した人間から血を吸ったノミやシラミがペスト菌も一緒に吸い取り、すぐ近くにいる別の人間に飛び移れば、その人間も感染する。

 数理的には、ネズミ=ノミとヒト=ノミ・シラミの場合では病気の広がり方が異なるため、ディーン氏のチームはそれぞれにおける感染拡大のモデルを作成した。

「基本的には、数字の処理です。シミュレーションのなかで、人々がどのように移動するかを見ます」。論文の共著者であるボリス・バレンティン・シュミッド氏はそう語る。シュミッド氏は、オスロ大学の計算生物学者で、ディーン氏の研究のアドバイザーでもある。

 これらのモデルで何度も計算を実行したディーン氏とシュミッド氏は、中世の流行中に欧州で発生した9回のアウトブレイクによる死亡パターンに一致するのはどのモデルであるかを、統計的に評価した。すると意外なことに、調査対象になった9カ所の都市のうち7カ所で、ネズミ=ノミよりもヒト=ノミ・シラミの方が死亡の記録と一致したのである。(参考記事:「致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している!」)

「そもそもアウトブレイクはなぜ起こったのかという根本的な問題に取り組んだ、大変すばらしい研究です」。米国にあるアルゴンヌ国立研究所のシステム科学者で感染症拡大モデルに取り組むチャールズ・マカル氏は、この研究を評価してそう述べた。同氏は今回の研究には関与していない。

 ディーン氏とシュミッド氏は、さらに多くの実験データを集めて、モデルを改善する余地があるとしている。また、この研究が疫病研究者の間で論争を呼ぶだろうということも認めている。なかには、ネズミが中世のアウトブレイクを引き起こしたと言って譲らない学者もいる。

「ペストに関しては、たくさんの論争があります」というが、ディーン氏とシュミッド氏は、自分たちは客観的な立場にいるとしている。「私たちは、このことで得もしなければ損もしませんから」

ギャラリー:コウモリ、黒猫、フクロウなどハロウィンの悪役動物たち

哺乳類の中で唯一飛翔できるコウモリは、コウモリにしては迷惑な話だが、古くは得体のしれない極悪の生き物とされていた。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL 


日本の民主主義と感染症との関わり

2020年06月22日 13時37分50秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽日本の新型コロナ対策「なぜうまくいったのか」。
公衆衛生に対する国民の意識の高さ。
科学的根拠に基づくクラスター対策。
緊急事態宣言が国民の警戒心を喚起した。
▽緊急事態宣言は、わが国の民主主義にとって大きな意義があった―日本大学の先崎彰容(あきなか)教授が指摘。
国は不要不急の外出自粛などを要請するによどめて判断を国民に委ね、国民が受け入れた。
▽「民主主義の基本理念に照らせば、自分たちの将来は自分たち決めるということを、戦後、初めて真剣に考えるきっかけになったはずだ」
日本の民主主義と感染症との関わりについての先崎教授の見解は示唆に富む。
今後、私たち一人一人の賢明な判断が一段と重要になる。
▽新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、社会のあらゆる面に及んでいる。
文化芸術界も公演自粛で甚大な被害を受けている。
今回のコロナ禍は、文化芸術にとって大きな危機となった。

▽「文化芸術省」の創設を期待する―日本芸能実演家団体協議会の野村萬会長

1965年に設立、発足当初から、作詞家作曲家脚本家などの著作者に対し立場の弱い俳優歌手などの実演家の地位向上を訴えており、その観点から著作隣接権の保護期間延長、いわゆる映画の著作物に認められている「ワンチャンス主義」の撤廃(映画やテレビドラマに出演した俳優が、作品のDVD化などの際に二次使用料の分配に与れるようにすること)などを求めている