6/12(金) 読売新聞オンライン
北海道内では11日、新型コロナウイルスの感染者が新たに7人確認された。札幌市は同日、昼間にカラオケができる市内の喫茶店で60歳以上の男女10人の感染が判明したとして、市内11例目のクラスター(感染集団)に認定した。「昼カラオケ」が行われていた喫茶店でクラスターとなったのは2店目。市はカラオケでの感染拡大防止に向け、注意を呼びかけている。
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発表によると、感染が判明したのは札幌市の6人と空知地方の1人で、70~80歳代と年代非公表の男女。このうち2人は感染経路が不明だった。
11日にクラスターと認定された札幌市の喫茶店では、利用客8人、従業員2人の感染が確認された。利用客は5月28日~6月5日に店を訪れていた。9日にクラスターと認定された市内の別の喫茶店では、利用客10人、従業員3人が感染。両店は近所同士で、感染が判明した60歳以上の利用客1人は、5月下旬に両方の店を訪れていた。
札幌市保健所は、利用客を把握できているとして、ともに店舗名を公表していない。
札幌市では5月1日~6月8日に公表した病院や高齢者施設のクラスター関連を除く、60歳以上の感染者109人の行動を分析した結果、2割超にあたる24人が、昼のカラオケに関わっていたことが判明した。
市は、大きな声を出したり、マイクを共用したりするため、感染拡大のリスクがあるとして、距離の確保や仕切りの設置、マイクの消毒などを呼びかけた。クラスターとなった2店舗では、ともに予防策は取られていなかったという。
11日に記者会見した札幌市保健所の三觜(みつはし)雄所長は「カラオケで感染が拡大する可能性は十分把握していたが、昼間に喫茶店でカラオケをしていることは考えていなかった。呼びかけが足りなかったかもしれない」と話した。
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「昼カラオケ」は、カラオケ機器を備えた喫茶店や、日中も営業しているスナックなどで、昼間にカラオケを楽しむ行為や業態だ。全国カラオケ事業者協会(東京)によると、関西地方の喫茶店で、「コーヒーと歌を楽しんでもらおう」と機器を設置したのが発祥とされているという。
道内で、カラオケボックス以外でカラオケ機器を設置している店舗は約8700軒。ただ、昼カラオケを行っている店舗数は不明だ。
札幌市で昼カラオケの店舗を経営する男性によると、市内ではスナックが日中の集客を狙って営業するケースが多い。1人当たり1000円程度で、歌い放題とソフトドリンクの飲み放題がセットになった料金を取るのが一般的とされる。
男性は「年金生活で、夜は出歩かないような高齢者がストレス発散で来ている。公民館で開かれているカラオケ教室のメンバーが、教室が終わった後に流れてくるパターンもある」と話す。
男性の店舗は、緊急事態宣言中は休業した。6月1日の営業再開後は、来店者に非接触型の体温計を使った検温や、氏名や連絡先の申告を求めている。マイクも使う度に消毒しているという。
男性は「カラオケボックスのような密閉された空間ではないが、不特定多数の人が集まって歌うため、カラオケボックスとは異なる感染リスクはあると思う。だからこそ、しっかり対策すべきだ」と話した。
札幌市内で「昼カラオケ」による二つのクラスターが確認されたことについて、感染症予防に詳しい北海道医療大の塚本容子教授は「つばが飛びやすいカラオケは感染リスクがあるため、カラオケボックスは休業要請の対象になったが、(喫茶店などで行われる)『昼カラオケ』はある意味、盲点だった」と述べた。
一方、塚本教授は「黙って一人で運動する高齢者よりも、周囲と楽しく雑談しながら運動する高齢者のほうが健康を保てるという研究結果がある」として、高齢者の健康における周囲とのつながりの重要性を指摘。昼カラオケを危険視し、利用を一律に控えることには否定的な見解を示した。
緊急事態宣言が解除されても、道内の新規感染者はゼロにならない状況が続く。
塚本教授は「一定数の感染者がまだ市中にいるとみられる」と説明。「今回、たまたま昼間のカラオケで感染者が出たが、ウイルスはどこでも潜んでいると考えるべきだ。どのような環境にいても、マスクを着けたり、こまめに手指を消毒したりといった、これまで言われてきた感染防止策を徹底してほしい」と訴えた。