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台風など天候不良により登山者が減ったことが遭難減少の要因とみられる。一方で登山ブームを背景に13年から遭難者が年間2500人以上で推移するなど事故の多発が続いている。都道府県別では長野290人、北海道232人、山梨185人の順。
台風など天候不良により登山者が減ったことが遭難減少の要因とみられる。一方で登山ブームを背景に13年から遭難者が年間2500人以上で推移するなど事故の多発が続いている。都道府県別では長野290人、北海道232人、山梨185人の順。
毎日新聞と社会調査研究センターは20日、全国世論調査を実施した。河井克行前法相と妻の案里参院議員が公職選挙法違反容疑で逮捕されたことについて、安倍晋三首相の責任は「重い」との回答が59%を占め、「重いとは言えない」は32%だった。安倍内閣の支持率は36%。5月23日に行った前回調査の27%から9ポイント戻したものの、不支持率は56%(前回64%)と支持率を大きく上回る状態が続いている。
新型コロナウイルス対策のため会期延長を求める意見がある中で通常国会が17日に閉会したことについては「延長すべきだった」が52%と半数を超え、「閉会したのは妥当だ」は30%だった。 政府が都道府県をまたぐ移動の自粛要請を解除したことについては「妥当だ」が55%、「自粛を続けるべきだ」は32%だった。 東京を中心に新規感染者の発生がなお続き、第2波も懸念される中で、少しでも日常生活を取り戻したい気持ちと、国の対応への不満や不安が交錯する結果となった。 新型コロナに対する日本の医療・検査体制に「不安を感じる」は50%で、「不安を感じない」の29%を上回った。前々回調査(5月6日)の「感じる」68%、「感じない」14%からは改善されたものの、なお半数が不安を感じている背景には、依然としてPCR検査(遺伝子検査)が受けにくく、医療現場の防護具不足や経営難が報じられる現状がありそうだ。
新型コロナの問題で安倍政権の対応を「評価する」は26%にとどまり、「評価しない」はなお過半数の51%に及んだ。5月6日の調査では「評価する」が22%で「評価しない」が48%、23日は「評価する」が20%で「評価しない」が59%。事業者や個人への給付金がなかなか届かない一方で、給付事業の委託契約をめぐる問題などが批判されたことが評価の低迷につながっているとみられる。 調査は、携帯電話のショートメール機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせて行い、携帯777件・固定307件の有効回答を得た。固定調査は回答者が高齢層に偏る傾向が強いため、前回の携帯505件・固定514件から携帯の比率を高めた。
前回調査では携帯と固定の回答者で内閣支持率に差はみられなかったが、今回は携帯40%・固定28%と明らかな違いが表れた。男女別の支持率でも男性42%・女性29%と差がある。年齢が下がるほど、女性より男性で、支持率の低下が底を打つ傾向にあると言えそうだ。 政党支持率は自民31%(前回25%)▽日本維新の会11%(同11%)▽立憲民主10%(同12%)▽共産6%(同7%)▽公明4%(同4%)▽れいわ新選組3%(同1%)▽国民民主党2%(同1%)など。支持政党はないと答えた無党派層は30%(同36%)だった。【平田崇浩】 ◇ フジテレビと産経新聞の世論調査で架空の回答を集計する不正が繰り返されていました。毎日新聞の世論調査で同様の問題は起こりえないことを説明します。 毎日新聞の電話世論調査は今年4月までフジ・産経の委託先とは別の調査会社に実務を委託していました。そこから下請けへの再委託はしていません。
調査はコンピューターで無作為に数字を組み合わせた番号に電話をかけるRDS法で実施。対象者への電話はコンピューターがかけるため、実際に電話していない架空のデータを調査員が捏造(ねつぞう)することはできない仕組みになっています。
調査を実施するオペレーションセンターには必ず毎日新聞の社員が立ち会い、調査員と回答者のやり取りをモニタリングします。調査結果は、一件一件の回答が確認できる生データの形で受け取り、不審な点がないことをチェックしたうえで集計してきました。
4月以降は自動音声応答(オートコール)と携帯ショートメールを組み合わせた方式に切り替えました。多数の調査員が集まって作業する「3密」環境を避けるためです。特殊詐欺の横行によって、知らない人からかかってくる電話への警戒が広がり、従来方式の電話調査に限界が見えてきたとの判断もあります。
新しい方式では人為的な不正が介在する余地はなくなりましたが、調査の検証とデータのチェックを引き続き重ねていきます。
アメリカ各地で抗議デモが行われていた最中ですら、資本主義の象徴的存在といえる株式市場ではおかまいなく株価が上昇したことが理由の一つです。
株価上昇の恩恵を受けることもない多くの中間層以下は、コロナ不況のダメージをもろに受けるだけではなく、今後政府が打った金融政策に苦しむ事になるかもしれません。他人事ではないこのような不公平な仕組みについて考えてみます。
アメリカ株は3月23日の底値から順調に回復をみせ、6月上旬にはS&P総合500種は約40%の回復し、ナスダック総合は2月に達した過去最高値に届こうとしています。アメリカに限らず日経平均も2月以来久しぶりに2万2,000円台に回復をしました。 世界的にCOVID-19感染拡大が一段落をみせ、ビジネスが再開され始めたところもありますが、急に株価が上昇したわけではありません。
3月の底値から徐々に着実に上昇しつづけてきたのです。 というのも、コロナ禍では市場全体が被害を受けたわけではなく、むしろコロナ禍で人々の生活パターンの変化によって、今まで以上に売り上げを伸ばしている会社があります。その株価は上昇しているのです。
とくにアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトといった大手ハイテク企業が絶好調なのです。これらの企業の時価総額はS&P500時価総額の約20%を占めているといわれています。影響力をもつこれらハイテク企業の株価が上昇し、市場をけん引しているということです。
儲かっている企業があれば、儲かる人います。株式投資をしていない富裕層なんていないといっても過言ではないでしょうから、彼/彼女らのほとんどはしっかり株価上昇の恩恵を受けています。
あるシンクタンクの報告書によれば、アメリカの富裕層の資産は3月から約3カ月で5,650億ドル(約62兆円)増え、「富裕層らの現在の資産総額は3兆5,000億ドル(約380兆円)で、感染拡大初期から19%増加した」とCNN(※)は伝えています。
ちなみに、アマゾンCEOのベゾス氏は今回のパンデミックで3月より6月上旬時点までに362億ドル(約3.9兆円)も資産を増やしたそうです。 一方、日々の支払いで精一杯の世帯では、株式投資などまったく関係ないことです。それどころか、コロナ不況の犠牲となり、失業で貯金を取り崩しながら生活する人も大勢います。
株価上昇の背景にはハイテク企業の業績の伸びだけではなく、米連邦準備理事会(FRB)と米政府の無制限の量的金融緩和策も大きく影響しています。
FRB の債券購入による無制限の量的金融緩和が市場を安定させるだろうという期待が強まるからです。 無制限の量的緩和で国内にお金が増えすぎるとお金の価値を下げてしまい、いずれは物価上昇、インフレーションに繋がるというのが基本的な流れです。株式・不動産などを所有する富裕層にとっては、インフレで物価が上がれば資産を増やすことになります。
しかし十分な昇給もなく、物価上昇に追いつけない中間層以下への負担は重く、生活がますます厳しい状況になってしまいます。 どうでしょうか。今回の量的金融緩和ではインフレにはならないだろうという意見もあるようです。様々な解釈が出来るのかもしれません。
ただ、基本的な流れをみれば、こうして格差がまた広がってしまうという仕組みが分かります。 黒人差別から始まった抗議デモですが、一生懸命働けど生活は苦しくなっていくという不遇な人々の格差や差別を容認する社会構造に対する不満が、米国中で爆発し大規模な抗議デモとなりました。
アメリカに限らず、世界的な問題でもある格差、差別が少しでも改善されることを願います。 参考 (※)「米富裕層の資産、コロナ禍の3カ月で62兆円増える」CNN
美紀 ブライト
民度(みんど)とは特定の地域・国に住む人々の平均的な知的水準、教育水準、文化水準、行動様式などの成熟度の程度を指すとされる。
明確な定義はなく、曖昧につかわれている言葉である。
テレビ番組の内容が時代、地域の民度と連動しているとの考えも存在する。
概要
各国・各地域の民度について語られる事がある。
特定の国民や民族が場所をわきまえず、痰を吐く、大声で話すなどのマナーの悪さや横柄さや性悪さが多々見られる場合に「民度が低い」と言ったように用いられる。
中国でも「民度」との言葉が日本から輸入され、同様の意味を持つ。
ある国家の国民や民族に対して、「○○は民度が低い」「××だから民度が低い」「民度を高めよう」と語られる。
2018年9月に習近平国家首席も教育が重要だとして、「国民の総合的な民度を高める」と演説している。
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麻生太郎財務大臣の「民度のレベルが違う」発言が話題になっている。
新型コロナウイルスへの対応が緩かったにもかかわらず、感染者数、死者数ともに欧米諸国に比べて桁違いに少なかった「日本の奇跡」を「民度」という言葉で表現した発言だ。民度は、ネットではしばしば日本の優秀さを物語る言葉として登場してくるが、民度とはいったいどういう意味なのか。その実態を明確に示すことができる人は少ないのではないか。
【ランキング】コロナで「売れた」「売れなくなった」商品TOP30 そもそも、新型コロナウイルスで事業の継続に苦慮している人たちを支援するプロジェクトで、ほとんど運用実態のない幽霊会社を通して何10億円もピンハネするような政治がまかり通っている日本の民度が、高いレベルとは到底思えない。
東京高等検察庁検事長だった検事が賭けマージャンの常習者だったという国の民度は、ほんとに高いのか……。民度の中身について国際統計などを使って検証してみたい。
■「民度」とは何か?
辞書などを見ると民度の明確な定義はないように思われる。真偽のほどはわからないが、明治5(1872)年の政府議事録の文言に民度という言葉が記載されている、といわれており、古くから使われている経済や貧富の度合いを示す言葉と解釈されている。
具体的にどんな基準が民度の判断材料になるのだろうか。以下ざっと挙げてみると、次のようなものが考えられる。 ●教育水準(大学進学率、生涯教育の水準)
●貧困の度合い(貧困率、最低賃金、平均給与など)
●治安(犯罪発生率、社会的安全性、セキュリティ、平和度など)
●雇用環境(失業率、パワハラ発生率など)
●道徳観(道徳観、セクハラ発生率、秩序への認識度合い)
●腐敗の度合い(汚職や賄賂の社会的認知度)
●衛生観念(健康な国かどうか、平均寿命など) ざっとこんな項目が考えられる。これらの国際ランキングを見れば、日本の民度が本当に高いのか、とりわけ、今回、麻生財務大臣が「民度が低い」と批判した「新型コロナウイルスによる死者数や死亡率の高い地域」と比較してみることができる。
イタリア、スペイン、フランス、イギリスそしてアメリカといった先進国、加えてロシアやブラジルといった最近になって、数多くの死者数を数える国との比較も必要になるかもしれない。
こうした多種多様な分野での国際ランキングを実施している機関といえば、「OECD(経済協力開発機構)」が有名だが、OECDのデータなどを駆使して導き出した7つの国際ランキングから、日本の民度を分析してみよう。 <教育水準> まずは、日本は教育水準が高く、国民はみんな賢いと思われがちだ。実際に若年層の80%近くが高等教育段階に進んでおり、これはOECD諸国の中でもトップクラスのレベルといってよい。ところが「大学進学率」を見ると、次のようになる(2010年、OECD)。
◆大学進学率
◆ 1.オーストラリア……96% 2.アイスランド……93% 3.ポルトガル……89% 4.ポーランド……84% 5.ニュージーランド……80% 9.アメリカ……74% 10.韓国……71% 16.イギリス……63% 21.スペイン……52% 22.日本……51% (出所:OECD「Education at a Glance 2012」)
日本はかろうじて22位であり、大学進学率はOECDの平均63%を大きく下回っている。
ちなみに、日本では大学進学率が低いうえに、社会人が大学などで学ぶ「生涯教育率」は先進国では最低レベルだ。30歳以上の成人の通学率(OECD、2012年)を見ると、第1位はフィンランドで8.27%、第3位のイギリス(7.67%)、6位のスペイン(5.69%)に対して、日本は18位の1.60%。先進国の中では最下位だ。
<貧困> 貧困はさまざまな面で国民生活や国のイメージを損なう。貧困者が増えれば貧民街が形成され、犯罪組織が出来て麻薬や人身売買、暴力などの犯罪が蔓延ってしまう。そういう意味では、貧困率も「民度」とは密接な関係があると思われる。そこで、貧困率ランキング(OECD、2017年)をチェックすると――。
◆貧困率ランキング◆ 1.南アフリカ……26.6% 2.コスタリカ……20.4% 3.ブラジル……20.0%
4.イスラエル、ルーマニア……17.9% 6.アメリカ……17.8% 7.韓国……17.4% 15.日本……15.7% (出所:OECD) ちなみに、貧困率が最も低いのはアイスランドの5.40%となっている。アメリカで新型コロナウイルスの死者が多かったのは、国民皆保険制度がなかったことに加えて、移民など貧困率が高かったからだといわれている。少なくとも、日本はアメリカや韓国よりも貧困率はわずかながらも低いから、民度が高いとも言える。とはいえ、日本の貧富の格差は拡大し続けていると言われる。新型コロナによって、その格差はさらに拡大する可能性が高い。
■凶悪犯罪発生率の低さは世界一? <治安> 治安がいい国、というのが日本国内では定着した日本のイメージと考えられているが、本当にそうなのだろうか。 暴力に対する社会的許容度が低いのは、やはり犯罪がはびこり、外国から訪れる観光客を襲うなどの事件の温床になりやすい。たとえば、「UNDOC(国連薬物犯罪事務所)」の調査によると「殺人発生率」では、日本は174カ国中168位で0.24件(10万人当たり、2017年、以下同)。シンガポール(0.19件)、香港(0.33件)と並んで治安の良さは納得できる。
不名誉な第1位はエルサルバドルの61.71件、ロシアは40位で9.13件、65位のアメリカは5.32件で、トルコ(4.31件)やイラン(2.50件)よりも高い。
凶悪犯罪以外の犯罪も含めて調査したデータではどうだろう。「国際犯罪被害者調査」(UNDOCとUNICRI=国連地域間犯罪司法研究所)による共同調査、2009年)で見ると、日本は「在来型10犯罪(暴行、恐喝、強盗、女性に対する性犯罪などの10犯罪)」でみると、OECD加盟国の中ではスペインに次いで2番目に低かった。
とりわけ「凶悪犯罪(殺人、強盗、強姦、暴行)」の発生率は、OECD諸国中、最低だった。日本の治安がいいことはどうやら間違いなさそうだが、犯罪全体ではスペインに負けていることを考えると、パンデミックを引き起こしてしまったスペインに対して、民度が低いというのは失礼に当たる。
一方、「世界平和度ランキング」という指標もある。イギリスの『エコノミスト』誌が各国の平和度を相対的に指数化したもので、「戦争による死者数」「隣国との関係」「テロの潜在性」「殺人事件の数」「軍人の数」「警官の数」など24項目によって算出される。ちなみに、世界平和度指数は「=治安が良い国」という意味ではないようだ(2019年版)。
◆世界平和度指数ランキング◆ 1.アイスランド 2.ニュージーランド 3.ポルトガル 4.オーストリア 5.デンマーク 6.カナダ 7.シンガポール 8.チェコ 9.日本 10.アイルランド (出所:『The Economist』) 犯罪率が低いからといって、イコール民度が高いともいえない。強権的な警察機構や司法のシステムが不備な場合、国民は検挙を恐れて犯罪に手を染めない。日本の検挙率は、法務省の『犯罪白書』によると、国内での刑法犯の認知件数は約369万件(2002年)をピークに減少し続けているものの、検挙率も刑法犯総数で53.1%(2012年)、一般刑法犯で31.7%(同9。約半数の犯罪は検挙されていない、ということだ。
一方で、日本の場合は他の国と異なる点が2点ある。ひとつは、一度逮捕されたら勾留期間が長期に及ぶこと。元日産CEOのカルロス・ゴーン被告の問題でもクローズアップされたが、「代用監獄制度」が機能していて、どんな軽微な犯罪であっても2週間程度は警察に勾留される。ほとんどの犯罪が数時間程度で釈放される欧米諸国に比べると、その強権度合いは大きい。
さらに、日本の刑法犯の場合、一度起訴されてしまうと99.8%が有罪という「有罪率」の高さも際立っている。「裁判」など意味を持たないのと一緒であり、日本の司法は延々と「儀式化された裁判」をしているにすぎない、という批判が国内外からある。仮に、この強権的なシステムが日本の民度の高さを維持しているとしたら、素直に喜んでいいものかとも思う。
そもそも日本の検察は、他の先進国と違って起訴する権利を持っているだけで、起訴は義務付けられていない。裁判に行く前に、検察が判断しており、検察の力が強すぎるという指摘がある。
■安定した雇用環境が、高いレベルの道徳観を生む?
衣食足りて礼節を知る、という昔の偉い人が言った言葉があるが、民度が高いということは、社会的基盤がしっかりしていないとなかなか成立しない。貧困率でもある程度わかるが、不安定な雇用や職場での環境など、雇用環境の安定も不可欠だ。
<雇用環境> まずは「失業率」だが、2019年のIMF(国際通貨基金)の調査によると、日本の失業率は105カ国中98位、2.36%と完全雇用の状況に近い。シンガポールやスイスには負けるが、その他のOECD諸国などには勝(まさ)っている。最悪の南アフリカなどは28.7%だ。 もっとも、新型コロナウイルスによって、世界経済は一変。死者数ナンバー1のアメリカなどは、20%近い失業率に陥っている。5月は回復傾向にあるものの、世界中どこでも今回の新型コロナウイルスでは失業率は当然ながら跳ね上がっている。
ところが、日本では相変わらずで、総務省が発表した4月の失業率は前月比0.1%増の2.6%にとどまっている。ブルームバーグも指摘しているが、日本では休業者を失業率に含めないために低くなっており、休業者を全部失業者とすれば11%程度になるそうだ。
ここは少し脱線するかもしれないが失業率で民度の度合いを測る前に、日本の統計の在り方を議論すべきかもしれない。新型コロナウイルスの感染者数や死者数もそうだが、どうも現在の日本政府には数字を少なく見せるテクニックがあるようだ。たとえば、交通事故死亡者数という数字も、日本の場合は24時間以内に死亡した人のみがカウントされる。最近は、30日以内死者数として発表されるようになっているが、かつては交通事故死としてはカウントされなかった時代もあった。
では、安定した生活を送るための「賃金」はどうなのか。世界の最低賃金ランキングで見てみよう。OECDの2018年のランキングでは次のようになる。
◆最低賃金ランキング◆ 1.オーストラリア……12.1ドル(時給、以下同) 2.ルクセンブルク……11.8ドル 3.フランス……11.5ドル 4.ドイツ……10.9ドル 5.オランダ、ベルギー……10.4ドル 11.日本……8.1ドル(2017年) (出所:OECD)
最低賃金だけでは、その国の豊かさはなかなか計り知れないが、世界の「年収ランキング」を見ると、その国の豊かさがわかるかもしれない。OECDの「平均年収ランキング(2018年)」で見てみると、日本はOECD加盟国35カ国中19位。日本より低い国の中には、韓国(20位)、スペイン(21位)、イタリア(22位)といった国があるものの、先進国の中では高くない。
平均年収でも、胸を張って他の先進国に民度が低いと言えるレベルではないということだ。
■日本はハラスメント大国?
<パワハラ発生率> 雇用環境を考えたときに忘れてならないのが、パワハラやセクハラがあるような職場が多いか、少ないかだ。パワハラの多少でその国の民度がわかる、とも言われる。たとえば「この5年間に、職場の上司や同僚から、いじめや身体的・精神的な攻撃といったハラスメント(いやがらせ)を受けたことがあるか」というアンケートに対して、日本はワースト4位にランクされている。
◆パワハラ・国際ランキング
◆ 1.インド……32.3% 2.オーストラリア……31.9% 3.ニュージーランド……29.6% 4.日本……25.3% 5.フランス……24.2% 6.ベルギー……19.1% 7.アイスランド……18.3% 8.フィンランド……18.0% 9.アメリカ……17.3% 10.デンマーク……17.2% (パワハラの国際比較、出所:ISSP Work Orientation Ⅳ、2015年) もともと日本はパワハラに対して寛容というか、甘い対応が目立つ。
せっかくパワハラに対応する法律を制定しても、罰則規定を設けないなど、「いじめられるほうも悪い」という考え方が根強く残っているのかもしれない。学校内のいじめも昔からあって今も解決しない問題だ。ちなみに、日本の女性へのパワハラは36.7%で世界第3位と高い。
もっとも、日本の場合は、テレビで日常的に漫才やバラエティという形で「いじめの芸」を得意とする芸人が第一線で活躍している。政治などの問題にも、専門家とともに出てきてしばしば「いじめ」とも取れる発言が日常的に存在している。「いじめの芸ではなかった」として評価された志村けんさんのような芸人は少なくなり、そうしたテレビの影響なども、パワハラに関係しているのかもしれない。
訪日外国人がよく口にすると言われる「日本人の道徳観の高さ」は本当なのだろうか。確かに日本人はキチンと行列を作って、割り込む人が少ないなど、「秩序正しい」面があることは間違いないだろう。 しかし、それは学校教育の問題であって、幼稚園や保育園の頃から、きちんと整列を強制され、毎朝全員が揃って「おはよう」の挨拶をする……。いわば教育のたまものであって、海外ではそんな教育をしている学校は、一部の寄宿学校などを除けば少ない。授業の一環として生徒たちに掃除をさせるのも日本特有と言われる。
ただし、それは見方を変えれば「教師=管理者」にとって都合にいいように教育され続けているとも言えなくはない。太平洋戦争以前の軍隊式教育の名残りを感じる。企業のトップや権力者にとっては、極めて都合のいいおとなしい存在となる素養をつくり、政治家から見れば日本国民は民度が高いといえるかもしれない。香港やアメリカでは、若者が政府や社会に不満があればデモをするのが当たり前なのとは、異質な感じだ。 ちなみに、イギリスのチャリティ機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が毎年実施している「World Giving Index(人助け指数)」では、日本は125カ国中、最下位。人助け、ボランティア、寄付をしない国民として日本は有名だ。
一方、政治家や政府、公務員などの公的分野での腐敗度を示したデータに「腐敗認識指数(TI=Transparency International調べ)」というのがある。2019年の数値を見てみると、日本は20位となっている。腐敗指数が健全な順位で、第1位はデンマークとなっており、ニュージーランド(2位)、フィンランド(3位)、ドイツ(9位)、オーストラリア、イギリス、カナダ、オーストリア(12位)と続く。ちなみに、アメリカは23位、韓国(39位)、中国(80位)となっている。
新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数がなぜ、日本だけ少ないのか。それを「民度」で測るとすると、何がポイントになってくるのだろうか。 <健康な国ランキング> ブルームバーグが2019年2月に発表した「2019 Healthiest Countory Index(健康な国ランキング)」によると、健康な国は欧州に集中している。 ◆健康な国ランキング◆ 1.スペイン 2.イタリア 3.アイスランド 4.日本 5.スイス
17.韓国 35.アメリカ 52.中国 (出所:ブルームバーグ) 日本がトップレベルの長寿国であることはよく知られているが、今回の新型コロナウイルスで、同じく長寿国のスペインやイタリアが、パンデミックとなり、高齢者が数多く犠牲となったことと関係が深いはずだ。 日本でも、一部で高齢者施設がコロナのクラスターとなったが、爆発的感染にはならなかった。 ■日本の「民度」が高いことの証明はない? こうしてみると、確かにある部分ではアメリカや欧州の国々よりも高い水準のモノもあるが、日本だけが特別に優れていることを的確に示しているものは特にないような気がする。統計は、あくまでもその分析方法によって、また別の結論が導き出されることも多いため、何とも言えないが……。
最も重要なことは新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数が他の国に比べて、なぜ日本が少なかったのかを正確に、そして科学的な根拠に基づいて分析することであり、その結果を公にすることだ。それが、今後の第2波、第3波への対応に役立つことであり、また後世に残す貴重なデータとなるはずだ。
岩崎 博充 :経済ジャーナリスト
ロンドン大火(ロンドンたいか、The Great Fire of London)とは1666年にロンドンで起こった大火のこと。
これによって中世都市ロンドンは焼失し、木造建築の禁止などからなる建築規制やセント・ポール大聖堂をはじめとする教会堂の復興が行われた。
恋人に暴力を振るわれながらも「私にはこの人しかいない」と信じて関係を続けていた女性が、男に火を付けられ身体の80%を火傷する重症を負った。女性は一命を取り留めたものの全てを失い、『The Dallas Morning News』などに自分の経験や思いの丈を語った。
【この記事の他の写真を見る】米テキサス州ダラス在住のダニエル・タウンゼンさん(Danyeil Townzen、42)が、自分の人生を変えることになるマシュー・ガース(Matthew Gerth、34)に初めて出会ったのは、2017年9月のことだった。ダニエルさんはその日、自宅から約480キロ離れたサンアントニオの友人宅を訪れるために長距離バス「グレイハウンド」に乗ったものの、バスが途中で故障してしまった。
ダニエルさんは「友人に迎えに来てもらうことになって、待っている間に話をしたのがマシューだったの。とてもハンサムだし、気さくで話も弾んでね。せっかくだからと友人の車にマシューを乗せてサンアントニオに向かったわ。私はホテルを予約していたんだけど、いつの間にかマシューも一緒に泊まることになったのよ。そしてそれから2週間、マシューとロマンチックなホリデーを過ごしたの」と当時を振り返る。
13歳で母を亡くしたダニエルさんは、16歳で家を出ると自分の力で高校を卒業した。26歳で結婚したが37歳で離婚し、その寂しさを埋めるかのようにマシューが現われたのだった。ダニエルさんはその後、週に2回のペースでダラスからサンアントニオに通い、マシューとのデートを重ねた。
しかし出会いから3か月が過ぎた12月31日のこと、優しかったマシューの態度が豹変した。マシューはダニエルさんの携帯電話を勝手に操作し、男友達からのメールを見つけて怒鳴り始めた。ダニエルさんは携帯をいじられたことに腹を立て「ただの友達よ」と説明したが、マシューの怒りは収まらなかった。マシューは高速道路を運転中にダニエルさんを車の中から押し出そうとし、車を停めるとダニエルさんの顔を何度も殴ったのだった。
ダニエルさんはマシューの一面を知ってショックを受けたが、マシューは翌日に謝罪。その後も2度ほどダニエルさんを殴ることがあったが、2人の関係は続いた。ダニエルさんは当時のことを「マシューはまるで何かのスイッチが入ったように別の人格になった。でも私にはマシューしかいなかった」と振り返っている。
そんなダニエルさんに悲劇が起こったのは2018年5月、マシューがダニエルさんのアパートに移り住んで2週間が経った頃だった。
マシューに「他の男とデートしている」と責められたダニエルさんは、家を出ると外に停めていた車の中で一夜を過ごした。翌朝の21日、ダニエルさんが仕事着を取りにそっと家に戻ると、マシューはすでにキッチンで朝食を作っていた。そしてダニエルさんの姿を確認すると不気味な笑みを浮かべ、ナイフを掴んでダニエルさんに襲いかかってきた。ダニエルさんはカウンターにあったチリソースをマシューの顔にかけて抵抗したが、マシューはダニエルさんの顔を何度も殴りつけた。ダニエルさんはそばにあった携帯用バーナー(トーチランプ)を手に取り、マシューの腕に向けて炎を出すと家の外へと逃げた。しかし運悪く、何かにつまずいて転んでしまった。
マシューはすぐに灯油を持って現れ「俺に火傷させやがって」と言って灯油をかけ、命乞いをするダニエルさんに携帯用バーナーで火をつけた。そして火に包まれて苦しむダニエルさんを見て笑い、蹴り飛ばすとその場から逃げ去った。
ダニエルさんは近所の人の通報で駆けつけた消防隊らによって病院に搬送され、薬による昏睡状態に置かれた。身体の80%を火傷して神経損傷、腎不全、心不全を起こして危険な状態だった。そして5か月後、ダニエルさんは奇跡的に意識を取り戻したのだった。
ダニエルさんは目覚めた直後のことを、こう語っている。
「目覚めると病室に誕生祝の風船がたくさんあったの。私は意識がないまま、40歳の誕生日を病院で過ごしていたのよ。医師から火傷のことを聞かされ、初めて鏡を見た時には涙が出て止まらなかったわ。鏡に映った自分を認識することができなかったのよ。」
「医師らは私が眠っている5か月の間に15回の皮膚移植手術を行ったわ。私は話すことや歩く訓練から始めたけど、左手はもう機能しなくなってしまった。入院は1年にも及び、家も、車も、仕事も全て失ったわ。心的外傷後ストレス障害で、火を見るのが未だに怖いの。薬は一生飲み続けなくてはならず今後も手術が必要よ。マシューによって私の人生はズタズタにされてしまったの。」
なおマシューは自宅から約380キロ離れた場所で逮捕され、昨年9月に終身刑を言い渡された。裁判でマシューの弁護士は「マシューは10代の頃に交通事故を起こして人をひき殺しており、それがもとで脳に障がいを負い、時々人が変わったように激怒するようになった。またドラッグに依存するなど精神的に不安定な状態が長く続いた」と擁護したが、裁判官は「あなたがしたことは犯罪。明らかに殺意をもってしたこと。自分の罪としっかりと向き合うべき」と厳しい判決を下した。
ダニエルさんは自分の経験を通し、こう語っている。
「どんなに暴力を振るわれても、『私には彼が必要』と言い聞かせて生きてきた。でもそれは間違いだった。もしあなたが虐待を受けたら、すぐにパートナーのもとから逃げるべき。そして2度と後ろを振り返らずに、前に進んで欲しい。」
画像は『The Sun 2020年6月11日付「BURNED ALIVE I was scarred for life and suffered 80% burns after evil boyfriend set me on fire – I looked like a monster」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
中性子線は放射線の一種だが、BNCTは従来の放射線治療とは仕組みが異なる。このため、手術▽抗がん剤▽放射線▽がん免疫療法――に続く治療法にと期待されてきた。1回の照射で高い効果が見込まれ、副作用も少ない。再発がんなど治療の難しいがんに有効な場合もあるとされる。
2020年3月、ホウ素薬剤「ステボロニン」(ステラファーマ社)と、病院などの施設でも中性子線を生み出せる加速器「ニューキュア」(住友重機械工業)の製造販売が国から承認され、6月までに公的医療保険の適用を受けた。現在、設備のある南東北BNCT研究センター(福島県郡山市)と関西BNCT共同医療センター(大阪府高槻市)で治療が可能だ。
外科治療や抗がん剤治療と並び、がんの3大治療の1つに数えられる放射線治療の分野では、近年、患者さんの体にやさしい低侵襲治療の研究開発が進められています。今後の躍進が期待される治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT ビー・エヌ・シー・ティー Boron Neutron Capture Therapy)」は、副作用が少ないうえに、1度の照射で根治の可能性も高いと言われています。
またBNCTは、有効的な治療法が見つかっていない難治がんや希少がんに対しても効果が見込めると期待されています。現在、実用化に向けた研究に尽力し、「2、3年後の治療開始を目指したい」と語る国立がん研究センター中央病院放射線治療科 放射線治療科長の伊丹純(いたみ じゅん)先生にBNCTについて伺いました。
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放射線治療は、外科治療(手術等)と同じように局所療法として、がんの根治はもちろん、症状の緩和を目的とした治療としても用いられます。がんに侵された部分を切除することなく治療でき、体の機能・形態を損なわず患者さんの生活の質(QOL)を保てるという特徴があります。そのため、切除が困難な頭頸部や骨盤部などの治療にも用いられてきました。
また近年では、正常細胞へのダメージをできるだけ少なく抑えられるよう治療も進化しており、多方向から放射線に強弱をつけてがんの形に合わせて照射するIMRT(強度変調放射線治療)などの高精度放射線治療や、重粒子線治療や陽子線治療などのX線以外の放射線を利用した治療も開発されて、効果を発揮しています。
このように進化する放射線治療の中でも、伊丹先生が推進するBNCTは「次世代の治療」として期待されています。BNCTとは、一体どのような治療法なのでしょうか。
「ひとことで言うと、中性子とそれに反応するホウ素を用い、正常細胞への影響を抑えてがん細胞のみを破壊することを狙う治療法です。具体的には、まず患者さんの体にホウ素製剤を投与してがん細胞に集積させます。ホウ素製剤を用いるのは、がん細胞がこれを積極的に吸収する原理によるもので、がん細胞にホウ素が集積されたタイミングに合わせて中性子を照射します。すると、ホウ素を吸収した部分だけで核分裂反応が起こり、がん細胞が破壊されるという仕組みです」(伊丹先生)
放射線治療は、通常2、3か月を要し、正常細胞に放射線があたった部分には副作用を伴います。例えば頭頸部への照射であれば、脱毛、皮膚炎 、口内炎、吐き気などの副作用をでる場合があります。BNCTの場合、治療は1日で終了し、正常細胞への影響も抑えることができるため、副作用も軽微だと伊丹先生はいいます。
「従来の放射線治療の場合、正常細胞へのダメージをできるだけ少なくするために、1回5~15分の照射を複数回に分けて行います。一方BNCTでは60分ほどかけて1回のみ照射します。照射の3時間ほど前からホウ素製剤の点滴を始めて、これに2時間ほどかかりますから、トータルの治療時間は3、4時間になりますが、治療は1日で終了します。
ホウ素を集積したがん細胞をピンポイントで破壊するため、大きな副作用がでる可能性は低いと言えます。ホウ素製剤は微量ながら正常細胞も吸収するので、その点で副作用が部分的に起こる可能性はあるものの、ごく軽度でしょう。投与するホウ素製剤自体も人体には無害です。」
伊丹先生よれば、「正常細胞に比べてがん細胞はより多くのホウ素を取り入れる」とのことですが、なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。
「正常細胞に比べてがん細胞は何倍ものスピードで分裂して増殖していきますから、それには多くのアミノ酸を必要とします。ホウ素製剤はアミノ酸由来なので、がん細胞が増殖するために必要不可欠なものなのです」
ただし、全てのがん細胞が同じようにホウ素を吸収するわけではないといいます。しかし、効くか効かないかについて、治療前に判断できるのもこの治療が期待される理由のひとつです。
「治療前の患者さんにホウ素薬剤を注射して、専用のPET検査(陽電子断層撮影)を行うと、その患者さんのがん細胞がどのくらいのホウ素製剤を吸収するかがわかりますから、結果、BNCTの効果が予測できるのです。こうした事前検査のお陰で、患者さんに効果のない治療をして負担をかけたり、薬剤を無駄にしたりすることもありません。がんのタイプ別に取り入れるかどうかを決められるBNCTは、個別化医療を担う治療法の1つといえます」
まさに夢のような治療法ですが、もちろん限界もあります。外部から照射した中性子の届く範囲が、表皮から6~7㎝と制限されるため、伊丹先生は、まず、表皮に発症する悪性黒色腫(メラノーマ)や血管肉腫の患者さんで治験をスタートさせたいと考えています。
「高齢者の頭皮に生じやすい血管肉腫などは効果的な治療法がないというのが現状です。希少がん、難治がんに関しては、少しでも早くこうした治療法が承認されるように急がなければならないと思っています。また、既に放射線治療を受けられていて、同じ部位で再発した患者さんに対しても、BNCTにより再度治療できる可能性もあります。」
このように、再発後の治療にも効果が期待できるBNCTですが、患者さんのQOL向上のためにも、伊丹先生は初発のがんからこの治療が受けられるようにしていきたいと考えています。
「正常な脳組織には、有害な物質が脳内に侵入するのを防ぐ血液脳関門があり、ここが〝関所〟のような働きをしています。脳腫瘍などを発症した人の場合、この血液脳関門が壊れていることがあるのですが、それがかえってホウ素製剤の脳への通りを良くして、結果、BNCTがスムーズに行われるということも起こります。ただ、その前に放射線治療を行うことで脳関門が閉じてしまこともあり、そうなるとBNCTの効果が発揮できなくなってしまいます。このようなケースを想定すると、やはり初発からBNCTを受けていただきたいと思います」
BNCTを広めたいとの思いから、伊丹先生が医療機器メーカーの(株)CICSと組み、加速器の開発にも関わって10年近くになりますが、この治療法の原理が提唱されたのは、じつは80年以上も前のことでした。
きっかけは、1932年、イギリスの物理学者ジェームズ・チャドウィックによる中性子の発見でした。これを受けて50年代のアメリカでは、ハーバード大学を中心に、ブルックヘブン国立研究所やマサチューセッツ工科大学などで臨床研究が行われました。日本でも1968年から74年までに東大の佐野圭司教授や帝京大の畠中担教授のグループが脳腫瘍において13の症例を発表。アメリカを上回る好成績を上げたといわれています。
しかし、その後、この治療法が長らく発展しなかったのはなぜなのでしょうか。
「ひとつには中性子を発生させる設備の問題です。当時、この治療に必要な中性子を得るには原子炉しかありませんでした。治療のたびに患者さんを原子炉まで連れて行くのは非常に非効率なことですし、そもそも原子炉自体、医療用に開発されたものではありません。BNCTが発展しなかった一番の理由は、原子炉に変わって中性子を発生させる加速器の開発に時間を要した点にあります」
2015年、国立がん研究センター中央病院に世界初となる病院内設置型BNCTが設置され、翌年には公開されました。また、住友重機械工業も京都大学との共同研究で加速器を開発。現在、それは大阪医科大学と総合南東北病院に設置されています。
「こうしたなか、当院の病院内設置型BNCTが画期的と言われる理由は、加速器は水平ビームを用いているのが一般的ですが、当院の加速器は上から照射することが可能な垂直ビームだからです。加速器そのものがコンパクトなので天井からつることができるのです。
コンパクト設計の理由は、リチウムターゲット(ベリリウムターゲットが一般的)システムにあります。加速器で発生させた中性子は、そのままだとエネルギー量が大き過ぎて患者さんに被爆の問題が生じるため、照射部分で減速させる必要があります。リチウムターゲットの場合、加速器で加速させた陽子線をリチウムに衝突させて中性子を生成するのですが、ベリリウムを用いた加速器と比較して生成されるエネルギーが低いため、ベリリウムほどの減速は必要なく、その分、機械のサイズもコンパクトになっているのです」
基礎的なデータは得られており、今秋までには頭皮の血管肉腫などの治験を開始して、2、3年後の承認を目指したいとのこと。
「今後、ホウ素製剤も加速器もよりレベルアップしていくでしょうから、治療環境はどんどん整っていくことでしょう。当初は希少ながんが対象になりますが、国立がん研究センターという環境ですので、患者さんも集まりやすいと思います。とにかく1日でも早く治験を始めたいですね。将来的には乳がん治療などにも役立てていきたいですし、垂直ビームという利点を活かせば術中照射も可能で、そうなるとすい臓がんの治療にも効果が得られるのではないとかと期待は膨らみます」
これからの展開を意欲的に語る伊丹先生ですが、BNCTに関わってからはクリアすべき問題が多く、遅々として進まない場面に悩むことも少なくありませんでした。長かったこの10年を振り返ると、ある言葉がよぎります。
「人間は常に解決しうる問題のみを問題としている」というマルクスの言葉です。若き日に出会い、感銘を受けたこの言葉の深さを改めて実感したと語る伊丹先生。先生のようにがん治療に情熱を燃やす医師がいる限り、がん治療は今後も進化を続け、BNCTのように未来へ希望をつなぐ治療法が生み出されていくことでしょう。
伊丹 純 (いたみ じゅん) 先生
国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 放射線治療科長
吉川は「慎吾さん(石川)に続けるようにつなぐ意識で打席に入ったことが最高の結果になりましたね!」とコメントした
8回・中川皓太、9回はルビー・デラロサが無失点に抑え、巨人が開幕戦の勝利と球団通算6000勝を達成した。
7回6安打2失点の菅野が今シーズン1勝目をマークした。
阪神は開幕投手の西が6回1失点、打つ方でも2打数2安打2打点の活躍を見せたものの、2番手の岩崎優が捕まり逆転負けを喫した。
プロ野球は19日、新型コロナウイルス感染症の影響で当初予定よりも3カ月遅れてセ、パ両リーグの公式戦が開幕し、各地で6試合が行われた。東京ドームではセ連覇を狙う巨人が阪神に3―2で逆転勝ちし、プロ野球初の球団通算6000勝に到達した。
4年連続日本一を目指すソフトバンクは延長十回、栗原の適時打でロッテに2―1でサヨナラ勝ち。西武は4人の継投で日本ハムを3―0で下し、楽天は終盤の猛攻でオリックスに9―1で快勝した。オリックスは2012年から開幕戦9連敗。広島は大瀬良が完投し、DeNAを5―1で退け、中日は延長十回に代打堂上の犠飛などで2点を勝ち越し、ヤクルトを9―7で振り切った。
今季は各チーム例年よりも23試合少ない120試合でペナントを争う。開幕が遅れたことに伴う過密日程となることなどを考慮し、延長回は十回で打ち切られる。
北京で新規感染者の確認が続いているが、当局は「既に制御されている」とみている。移動規制が強化され、北京市外を訪れる市民はPCR検査で陰性を証明する必要があるため、北京の検査場では長い行列ができている。
【AFP=時事】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかっても症状を示さない人は、症状が重くなる人に比べて、獲得できる免疫レベルが顕著に低い可能性があることが、18日に発表された最新研究で明らかになった。
【図解】現在の感染者・死者数(19日午前4時時点) 大半のCOVID-19患者は、感染症の兆候を示しても比較的軽度だが、中には全く症状を示さない患者もいる。 こうした無症状グループは、呼吸器疾患などの重い症状を発症する段階に進む人に比べて、検査を受けるケースがはるかに少ないと考えられる。そのため、このグループに関して分かっていることは非常に少ない。
中国を拠点とする研究チームは、重慶(Chongqing)市の万州(Wanzhou)区で、COVID-19に感染した有症状患者37人と無症状患者37人の2グループを比較調査した。
回復期に入ってから数週間後、研究チームは両方のグループから血液サンプルを採取・分析した。その結果、短期抗体を持つ人の割合は、有症状患者グループでは全体の78.4%だったのに対し、無症状グループでは62.2%にとどまっていたことが分かった。
また8週間後の調査では、血液中に存在する抗体の減少が認められた人の割合は、有症状患者グループでは全体の62.2%、無症状グループは81.1%だった。
さらに、無症状グループでは有症状グループに比べて、炎症誘発性および抗炎症性の細胞シグナル伝達タンパク質18種類の存在量が低いことも明らかになった。これは、新型コロナウイルスに対する免疫応答が弱いことを示唆している。
研究結果について、医学誌ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)に掲載された論文の執筆者らは「新型コロナウイルスに感染したことがある人なら誰でも将来の感染に対して免疫がある」とする説に疑問を投げかけるものとなったと話す。
今回の研究には参加していないが、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のダニー・アルトマン(Danny Altmann)教授(免疫学)は「患者のサンプル数が限られてはいるが、新型コロナウイルスに対する自然免疫の持続期間は極めて短い可能性があるとする一部の懸念と一致する」と指摘している。【翻訳編集】 AFPBB News
アメリカの複数の州で、新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数が過去最多となった。
アンソニー・ファウチ博士は「第2波のことが話題になっているが、我々は今も第1波の中にいる」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。 ウイルス感染を抑え込むことができたと思われる国々もあるが、今は感染者が再び増加するのではないかと恐れられている。
アメリカの複数の州で、新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数が過去最多となったことを受け、感染症専門家でアメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)博士は、アメリカはまだ「第1波」の中にいると述べた。
「第2波のことがよく話題になっているが、我々は今も最初の波の中にいる」と同博士は6月16日、ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。 さらに、各州で規制が緩和され、多くの人々が通常の生活を取り戻す中、ウイルス拡散のリスクが高まっていると指摘した。
「テレビでバーに人が集まる様子が映し出されているのを見た。まだそういう場所で集まれる段階ではない。非常に危険だ」 感染症の流行が抑えられたように見えても、再び感染者が急増したり、いっそうひどい状況になったりすることもあり得ると、パンデミックの初期から専門家は警告してきた。
ウイルスの発生源となった中国や、ニュージーランド、ヨーロッパのいくつかの国々は、国内でのウイルス感染を抑え込むことができたようだ。現在、新規感染者のモニタリングや検査が行われているが、いわゆる「第2波」の発生が恐れられている。 一方アメリカでは、アリゾナ州、ネバダ州、オクラホマ州、フロリダ州、テキサス州、オレゴン州の少なくとも6つの州で6月16日、1日の新規感染者数が過去最多を記録したと発表された。
フロリダなど、複数の州の知事は、感染者数が増加したからといって、新たにロックダウンの措置を取ることはしないと述べた。ただし、オレゴン州では、6月9日に経済活動を再開させる予定だったが、感染者数の増加により延期となっている。 他の専門家も、新規感染者数の記録的増加は、第1波によるものであり、第2波ではないというファウチ博士の見解に同意している。
ノースカロライナ大学医療センター疫学病院の医療ディレクター、デイヴィッド・ウェーバー(David Weber)博士は「そもそも第1波から抜け出せていない」とNBCニュースに語った。また、ヴァンダービルト大学メディカルセンターの疫学者、ローレン・リップワース(Loren Lipworth)氏も「第2波というのは、第1波が消滅した後に現れるものだ」とNBCに語った。
「それがアメリカで起こっているとは思わない」 ファウチ博士は6月に入ってから、新型コロナウイルスの流行は彼が経験した中で「最もひどい悪夢」であり「世界を打ちのめした」と述べ、「今もまだ終わっていない」と警告した。
だが、アメリカ合衆国のマイク・ペンス(Mike Pence)副大統領は、6月16日に公開されたウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿文で、第2波への恐れは「大げさ」だと主張し「我々は見えない敵との戦いに勝利している」と述べた。 [原文:Fauci says the US is still in the 'first wave' of its coronavirus outbreak as states report record cases after lifting lockdown] (翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
Sinéad Baker
新型コロナの流行が最初に確認された湖北省武漢では先月、9億元(1億2700万ドル)を投じ、10日間余りで約600万人を検査した。
他の多くの国と異なり、中国では広く検査が受けられる。香港大学の感染症専門家のベン・コーリング氏は、中国の多くの組織機関が職員に定期的に検査させるとみる。「検査は高価だが、中国ではたぶん、それほどかからない。検査試薬や機器が中国で生産されていることが多いからだ」と指摘。「把握されないうちに流行が発生し、地域や都市全域が封鎖される事態に比べれば、負担は軽い」と述べた。
<全国的広がり>
各省の病院や疾病対策予防センター(CDC)による今年5月初め以来の調達入札文書では、新設の検査施設向けの調達品がリスト化されており、全国規模の迅速な計画を物語る。
最も高額な品目はPCR検査機器で、文書によると価格は最大9万9000ドルのこともある。リストによると、中国内の検査機関が過去30日間に購入したPCR設備は257。過去1年間では1カ月当たり平均21だった。こうした数字は全体のごく一部にすぎない。すべての計画が公開文書で詳述されているわけではないからだ。
武漢では今年1月の新型コロナ患者確認から2週間余りの間、110万人の都市人口に対し、検査機器を備えた病院はゼロだった。
新しい検査施設の大半は現在、病院内に併設され、設置費用はほぼ10万-300万元(1万5000-42万ドル)だ。
一部の医療機関はすべての機器が中国製になるように要請していたが、それ以外は特定の外国製品を要望していた。スイスのロシュ(ROG.S)や米バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(BIO.N)などの製品だ。
<価格統制>
中国政府は同国の検査キット生産能力は1日当たり500万個としている。地方政府は製造業者に厳しい価格統制を課している。
5月9日の発表によると、湖北省は大量注文と引き替えに製造業者に納入価格を下げさせており、核酸検査は1キット当たり16.78元、抗体検査で12.9元もの低価格のこともある。
同省によると、医療機関は政府レベルで協議された価格を請け合う数社からのみ納入できることになっており、これに従わないとウイルス検査ができなくなる。中国は検査数のこれまでの実績を公表していないが、他国を大きく上回っているとの見方が一般的だ。米疾病対策センター(CDC)の発表によると、米国の6月5日時点での検査実績は2000万件余りだ。
大学生のル・メイピンさんは今月、北京の大学に戻り、一定の隔離措置と検査プログラムを受けることになっている。「誰もが何回でも検査を受けると思う。そのまま家での自主隔離が続くことを望む人はいないだろうから」と話した。