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処理を終えた検体を「リアルタイムPCR検査装置」にかける臨床検査技師の男性=5月、札幌市の北海道大病院
新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査を高い精度で実施できているかどうか、厚生労働省が全国の地方衛生研究所や医療機関など実施施設の能力を調査する方針を決めたことが1日、分かった。施設間で判定する能力に差があり、放置しておくと、誤判定が増えて感染の広がりを正確に把握できなくなる恐れがあることが理由。 唾液PCR検査可能に 保険適用
国内で100人以上報告されている、いったん陰性になりながらも再び陽性となる「再陽性」についても能力のばらつきが影響している懸念があり、学会から改善を求める声が出ていた。 国が主導する調査は今回が初となる。
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6/2(火) 7:01配信
現代ビジネス
中国を襲う内憂外患
中国の習近平国家主席は5月28日、香港の自由と自治を揺るがす歴史的な方針転換に動いた。中国の国会に相当する「全人代(全国人民代表大会)」で、反体制運動を禁止する「香港国家安全法」の制定方針を採択して、全人代を閉幕したのだ。明らかに、香港の最大の特色である「1国2制度」の終焉にリーチをかける行為である。
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そもそも、香港は、英国の19世紀のアヘン戦争の勝利によって南京条約で同国に割譲された島だ。租借期限が切れ、中国への返還式典が行われた1997年7月1日、当時の江沢民国家主席は居並ぶ各国要人を前にして1国2制度の堅持を表明した。
具体的には、香港を「高度な自治」権を持つ特別行政区とする「香港基本法」を制定、「従来の資本主義制度および生活様式を保持し、50年間変更しない」ことを保障したのだ。
1国2制度が定められた背景には、香港住民と国際社会が、人権を抑圧する中国型の統治制度が香港に持ち込まれると危惧したことがある。香港返還に関する中国と英国の共同声明にも、中国が香港に言論、出版、集会、結社などの権利と自由を保障すると明記されている。
このように中国には、香港住民と国際社会に約束したことを守る義務がある。しかし、返還から23年が経ち、ここ数年は、中国が香港の民主化運動を抑圧すればするほど香港の民主化運動は大規模化・過激化してきた。中国当局が発想転換を求められているのは明らかだ。
すでにトランプ米政権が制裁措置を打ち出しただけでなく、国際社会も外為市場も固唾を飲んで中国の次の出方を見守っている。経済成長の大幅低下予測、中国からの資本流出懸念、対米貿易戦争の再燃、新型コロナウイルス対策など内憂外患に溢れる習近平体制にまったく余裕がないのは明らかだ。
しかし、ここは習近平体制がしっかりと自重すべきである。もし、米国との報復合戦を始めたりすれば、国際情勢は第2次世界大戦以降最悪の事態に陥りかねない。
香港の「1国2制度」終焉へ
1国2制度とは、英国からの返還後も50年間、つまり2047年まで、香港では社会主義を実施せず、香港の高度な自治を維持するというものだ。中国領の一部である香港(島)に、中国本土とは異なる制度を適用することから1国2制度と呼ばれている。
仕組みとしては、香港は特別行政区として独自の行政、立法、司法権を有し、中国本土では認められない言論・集会の自由が認められている。また、通貨やパスポートの発行権を持っている。
半面、中国は、香港版の憲法にあたる香港基本法の解釈・改正権のほか、政府高官の任命権を握っており、香港を間接的にコントロールする仕組みを担保している。
香港では、伝統的な民主派議員が1国2制度を前提とした自主権の維持・拡大を求めている一方、一部の若者には期限を迎える2047年以降は1国2制度に縛られず、中国からの独立も含めて住民投票で決するべきだと主張する層も増えているという。
1国2制度はもともと、中国が台湾を統一するための方策として考え出されたものだ。当の台湾は、中国が年々香港への締め付けを強めるのを横目に見て、一段と警戒感を強めている。今年1月、過去最多得票で再選された、台湾の蔡英文総統は「香港は1国2制度が失敗し、秩序を失っている」として、同制度の受け入れは拒否すると主張している。
そうした中で、全人代が5月28日に賛成2878、反対1、棄権6と圧倒的多数で可決し、反体制活動を厳しく取り締まる「国家安全法」を香港に導入する方針が決まった。今夏にも具体的な法整備を行う模様だが、その方針には、中国の分裂や共産党政権の転覆、組織的なテロ活動、外部勢力による内政干渉を禁止するとし、中央政府機関が香港政府に組織を設置し、国家安全に関連する職責を果たすと明記している。
苛立ちを隠せない習近平
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香港の林鄭月娥・行政長官は全人代の採決に先立つ5月25日、国家安全法が成立すれば、香港では「『反逆、分離独立、扇動、反政府』行為などが禁止される。香港の活動家は、これを香港の自由を制限するものだと批判しているが、法に従っている大半の市民を守るための『責任ある』取り組みだ」と擁護した。
また、李克強・中国首相も全人代の閉会後の記者会見で、同法導入は「1国2制度を安定させ、香港の長期的繁栄を守るものだ」と主張した。
習近平政権としては、これ以上、手をこまねいてはいられないという苛立ちがあったのは事実だろう。
そもそも「香港の憲法」といわれる香港基本法の23条には、香港政府が自ら国家分裂や政権転覆などを禁じる法律を制定しなければならないと規定しているからだ。規定に従い、香港政府は2003年に、この立法を試みたが、大規模な反対活動に遭い条例案の撤回に追い込まれた。
また、昨年6月以降は、香港に逃げた刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」を巡り、香港で大規模な抗議デモが長期間繰り返された。
そして昨年11月の香港区議会議員選挙では、7割以上の投票率で民主派が全議席の8割超を獲得して圧勝。「逃亡犯条例」に反対する大規模デモへの支持の高さと、締め付けを強める中国政府への反感を浮き彫りにした。デモ参加者は勢い付き、行政長官選挙の民主化など要求項目を増やしている。
こうした経緯から、習近平政権は香港政府が自力で国家安全に関する立法を実現するのは困難と判断、香港基本法の例外規定を使い、中国本土の法律を直接適用する立法手法を採ることにしたというのである。
抗議デモの再燃
だが、国家安全法が近く施行されれば、詭弁が詭弁に過ぎないことが明かにする可能性が高い。例えば、CCTV(中国国営中央テレビ)によると、中国軍の香港駐留部隊の司令官は同法について「分裂勢力や外部の干渉勢力を震え上がらせるだろう」とコメントした。こうした姿勢は、その証左とみてよいだろう。
当然ながら、全人代が香港立法府の頭越しに「香港版国家安全法」の本土側での策定を仕掛けたことを、香港の市民活動家たちは容認しなかった。コロナ騒ぎで鎮静化させていた抗議活動を再開し始めたのだ。
5月23日にはコロナの感染流行後最大という抗議集会があったほか、5月27日にも国家安全法への抗議が呼びかけられ、昼すぎから繁華街に若者が集まった。複数の繁華街で次々に抗議デモが起き、1千人以上が参加したとされる。
香港では新型コロナウイルス対策で9人以上の集会が禁止されていることからこれらのデモは、武装警察官が出動して解散を命じる事態を招き、街は物々しい雰囲気に包まれたという。結局、当局がこの日の午後9時半(日本時間10時半)までに360人以上を逮捕したと伝えられている。
早くも、トランプ米大統領は5月29日に記者会見を開き、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことについて、「香港にはもはや十分な自治はなく、私たちが提供してきた特別扱いに値しない。中国は『1国2制度』を『1国1制度』に置き換えた」と中国を強く批判した。そのうえで、対抗(制裁)措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入るほか、中国や香港の当局者への制裁を行うと発表した。
ついに米国はWHOを脱退し…
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米国はこれまで、香港の「高度な自治」を前提に、優遇措置を提供してきたが、トランプ氏は会見で「関税や渡航の優遇措置を取り消す」と明言した。こうなると、香港原産品にも米国の対中制裁関税が適用されるし、香港市民は中国本土の中国人よりも容易に米国の査証(ビザ)を取得できるという特権を失うことになる。
関税見直しでは、香港経由の中国の対米輸出が不利になるが、香港経済や香港に拠点を置く米国企業もその影響を免れない。また、香港は昨年、米国にとって最大の貿易黒字国・地域であり、その黒字約260億ドルが吹き飛びかねない問題もある。
加えて、トランプ氏によると、撤廃される優遇措置には、犯罪人引き渡しや軍民両用技術の輸出規制など広範な施策が含まれるという。また、中国や香港の当局者への制裁では、香港の自治の侵害に関わった人物らを対象とし、ビザ発給停止や発給済みビザ取り消し、米国内にある資産の凍結などが検討されている。
トランプ大統領は、関連して、かねて「中国寄り」と批判してきたWHO(世界保健機関)から脱退する意向も表明した。要求してきた「必要な改革を実施しなかったため関係を断絶する」と述べ、WHO向けの拠出金は他の公衆衛生分野に振り向けると言い放ったのだ。
米国はWHOの最大の資金拠出国で、かつ大口の人材派遣国でもあるため、WHOの運営に支障を来たし、中南米、アフリカ諸国などへの新型コロナウイルス感染症対策の国際支援が停滞するのは必至の情勢だ。
また、トランプ大統領は会見で、このところ控えてきた、「武漢ウイルス」という呼称を復活。改めて、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を巡る中国の責任追及をエスカレートさせる構えも見せた。
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中国では新型コロナウイルスの感染者も減り、年に1度の重要会議である全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が2カ月半遅れで開催されるなど、ようやく感染も下火になってきたと思われていた。ところが、遼寧省や吉林省、黒竜江省などの東北部で、劇的に感染者が増えて、いまや東北3省で数万人以上の市民が隔離観察中だ。
その感染源は、吉林、遼寧の両省と国境を接していながら、「感染者ゼロ」と発表している北朝鮮である可能性が高いことが明らかになった。習近平指導部は北京で全人代を開催していたこともあり、クラスターを警戒し、東北3省の市民約1億人以上の移動禁止措置を決めていた。
中国メディアによると、中国東北部も他の都市同様、4月下旬には厳戒態勢が解かれて、通常の生活に戻っていた。しかし、5月上旬に吉林省北部の舒蘭(じょらん)市の病院でクラスターが発生した。市政府の対応が悪く瞬く間に感染が拡大し、人口60万人の同市は都市封鎖を余儀なくされた。市トップは感染拡大の責任を問われ解任された。
さらに、感染の「第2波」は遼寧省の省都で、東北部最大の都市である瀋陽市にも波及した。発端は瀋陽市の中心病院「463病院」(北部戦区空軍病院)の看護師が舒蘭市に出張していた知人男性から感染し、病院内でクラスターが起き、5月中旬に完全封鎖されたという。このため、7500人の市民が隔離された。
吉林省と遼寧省では複数の都市つなぐ列車とバスの運行が全面ストップしており、学校や店舗なども閉鎖されている。中国政府は舒蘭市の市民の感染源を明らかにしていないが、ネット上では「北朝鮮の貿易業者からだ」との書き込みもある。
吉林省は北朝鮮と国境を接しており、朝鮮族の市民は国境をまたいで北朝鮮国内に多くの親戚がいる。また、貿易も盛んで、非合法な密貿易も活発に行われていることから、吉林省の市民の間では「感染源は北朝鮮からの可能性が高い」との口コミが広がっているという。米国政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、北朝鮮では数万人規模で新型コロナウイルス感染者が隔離されているという。
一方、黒竜江省でもロシアに留学していた学生や仕事で越境していた市民から新型コロナウイルスの感染が拡大しており、中国当局は国境を封鎖している。当局は正確な感染者数などを発表していないが、東北3省で、数万人以上が隔離措置を受けているとみられ、東北部が中国の第2波の感染源となる可能性も否定できないようだ。
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朝日新聞社
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愛知県瀬戸市の踏切に故意に車を停めて列車に衝突させたとして、逮捕・起訴されているブラジル国籍の女が、当時、覚せい剤を使用していたとして再逮捕されました。
逮捕されたのは、ブラジル国籍で住所不定のマッサージ店員・アンドレザ・イリクチ容疑者(36)で、去年12月、愛知県内などで覚醒剤を若干量使用した疑いが持たれています。
イリクチ容疑者は去年12月に、瀬戸市南山町の名鉄瀬戸線の踏切内にわざと車を停めて列車に衝突させた罪で、すでに起訴されています。
イリクチ容疑者は列車との衝突後、治療のため入院していましたが、病院からの通報で警察が尿検査をしたところ、覚醒剤の陽性反応が出たため、体調の回復などを待って逮捕されました。
調べに対しイリクチ容疑者は「やっていない、知りません」と容疑を否認しています。
警察によりますとイリクチ容疑者は、自宅で交際相手の男性と別れ話をした後、自殺を図るため踏切内に入ったとみられています。
東海テレビ
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朝日新聞社
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6/2(火) 5:17配
1日、東京都では新たに13人の感染が確認されました。このうち8人は、いわゆる「夜の街」での接待をともなう飲食業に関わる人と、その関係者だということです。東京都によりますと、「夜の街」に関連する感染は先月25日までの1週間は5人でしたが、1日までの1週間では26人と、およそ5倍に増えています。
「年代を見ると、20代が7人、30代40代がそれぞれ2人ずつ。「夜の街」関連の方々がかなり多いというのがつかめている」(東京都 小池百合子知事)
「夜の街」関連の感染者の半数が新宿周辺だということで、東京都は注意を呼びかけています。(02日00:00)
最終更新:6/2(火) 5:17
TBS系(JNN)
6/2(火) 14:24配信
最終更新:6/2(火) 16:12
日本テレビ系(NNN
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国民1人あたり10万円給付をただちに行うことなどを求める日本共産党後援会の街頭宣伝=5月9日、沖縄県沖縄市
10万円給付
対案示し論戦 市民・野党と共に
政府が当初打ち出した「一部世帯に30万円」給付案は、「世帯主の収入が半減」「収入が減って住民税非課税水準に」など、さまざまな条件で、いま困っている人たちを「線引き」するもので、あまりに対象が狭いうえに基準も複雑かつ不公平だと、国民的な批判が巻き起こりました。
日本共産党は、すべての日本在住者を対象にまず「1人10万円」を支給することがより迅速な給付を実現するためにも有効だと主張。政府が当初案を撤回し、「すべての日本在住者への1人10万円給付」(特別定額給付金)を決めたことは、国民の声が政治を動かした結果です。
<世論と国政野党の追及で実現した「1人10万円給付金」を、「公明党の成果」と恥ずかしげもなう言う公明党>と、共産党沖縄県議選挙が<ビラ>で発信!
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安倍晋三首相(自民党総裁)と公明党の山口那津男代表は4月16日夕、電話会談を行い、安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大する方針を固めたことを踏まえ、「1人当たり10万円を所得制限なしで一律に給付する方向性だ」と伝えた。
また、安倍首相は同日夜の政府対策本部で「全ての国民に一律10万円の給付を行う方向で与党で検討する」と表明した。政府は改めて補正予算案を編成する。15日の自公党首会談で、山口代表は首相に「所得制限なし、一律で10万円給付」の決断を促していた。山口代表は16日午前、東京都新宿区の党本部で開かれた中央幹事会で、10万円一律給付の必要性について、大要、次のような見解を述べた。
一、緊急事態宣言が7都府県に出されて人との接触を8割減らすことが求められ、状況が一変していることを率直に受け止めなければならない。国民の生活や経済状況、心理的な不安などを政治が受け止め、迅速に対応していく取り組みが重要だ。
一、この認識の下、15日午前の自公党首会談で安倍首相に対し「今年度第1次補正予算案に盛り込まれる1世帯30万円給付の実施をやめ、所得制限なしで1人10万円給付を一律でスピーディーに行う対応が国民から支持されることは間違いない。決断してもらいたい」と求めた。15日午後にも首相とやり取りし、「第1次補正予算案に1人10万円給付を入れることを公明党として求める」と伝えた。その後、3回にわたって自民、公明両党の幹事長、政務調査会長が断続的に協議したが、結論には至らなかった。
一、かねてから、公明党は経済対策を検討する過程で、国民に広く届く1人10万円給付を提案していた。緊急事態宣言が発令された後の状況を考えれば、1人10万円給付は国民の期待に広く沿う内容だ。政治の意思決定をスピーディーに行えば、第1次補正予算案の月内成立は可能だと考えている。
一、(1世帯30万円給付について)これを強行すると、実務を担う自治体の職員は(給付対象かどうかの)収入を判定せざるを得ず、大変な事務負担を強いられる。また、現状の規模や制度設計では厳しい影響を受ける人たちに届く範囲が極めて限られる。1世帯30万円給付に対し、どれだけの国民の支持が得られるだろうか。
令和2年度厚生労働省第二次補正予算案(参考資料). 第1.検査体制の充実、感染拡大防止とワクチン・治療薬の開発. (1)PCR等の検査体制のさらなる強化 ... 自殺防止に関する相談体制の強化と相談環境への支援・・59. ○ 低所得 ... 事業. 内容. ①地域外来・検査センターの運営への支援. ②検査研修の支援. □新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・ ... 新型コロナウイルスの抗体保有状況等の疫学調査結果の分析を通じた対策の立案を行う。 ... メンタルヘルス改善に積極的に取組事業所等の好事例を盛り込んだ.
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立憲など野党は差額の実態や受託手続きの解明を求め、政権を徹底追及する方針だ。 この法人は一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」。新型コロナウイルス感染症の影響で減収した事業者への給付金支給を国から769億円で受託し、別会社に749億円で再委託した。
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6/2(火) 9:26配信
日刊ゲンダイDIGITAL
白河屋の店主となった十文字貴信氏(C)日刊ゲンダイ
【あの五輪メダリストは今】
十文字貴信さん(96年アトランタ五輪・自転車1キロタイムトライアル銅)
◇ ◇ ◇
その店主の筋骨隆々な姿からは、到底44歳とは思えない。1996年アトランタ五輪でプロ競輪選手として日本史上初の銅メダルを持ち帰ってから24年。十文字氏は今、地元で評判のラーメン店「白河屋」の厨房にいる。19歳で競輪デビューし、わずか1年で五輪を経験。その後20年余りを競輪最高位のS級でレースを戦い、稼いだ獲得賞金総額は5億4000万円を超える。競輪のトップ選手からラーメン屋の主に――。第二の人生選択の裏には何があったのか。
■選手時代は4軒ハシゴ
十文字氏が初めて白河ラーメンに出合ったのは幼少の頃。祖母の家がある福島県に遊びに行くたびに「白河屋」というラーメン屋に連れていってもらった。
「それが本当においしくて。私はラーメンマニアではなく“白河ラーメンマニア”です。日本全国、競輪の開催地であらゆる種類のラーメンを食べましたが、やっぱり断トツで白河ラーメンが大好きです。水分を多く含んだ麺の独特なモチモチ感、醤油のカエシ、香りやうま味が生きたスープもたまりません。20代の頃は時間があれば競輪仲間たちと福島県まで行って、4軒くらいハシゴしていました」
十文字氏の転機となったのは、30歳の時に腰部脊柱管狭窄症の手術での入院生活だった。競輪選手は一生続けることは出来ない。セカンドキャリアを考えたとき、古い記憶がよみがえった。
「小中学生の頃の夢は1番が競輪選手、その次が料理人でした。そんなこともあり、大好きなものを自分の手で作りたいという思いが生まれました」
退院後は選手として再びS級で活躍する傍ら、インターネットや料理本を見てレシピの研究を始めた。そうして仲間や家族に自作した白河ラーメンを振る舞ううちに、自分の店を出すためにはと考えた結果、独学ではなくプロの技術を学ぼうと決心した。37歳のことだった。
「まず祖母と通ったお店を訪ねましたが、店主がお年を召していたことと、震災の影響で閉店していたんです。代わりに、そこで修業してのれん分けされた方がやっている『白河屋』を紹介していただき、仕込みの作業を見せてもらいながら学びました。家に帰って実践しても、これがうまくいかない。見学、試行錯誤、見学、と半年に1回くらいお店に通い、これが4年くらい続きました」
朝が来るのが待ち遠しい
アトランタ五輪で表彰台に上がる(銅メダルの十文字貴信氏=右)/(C)共同通信社
2019年1月15日に競輪を引退し、現在は千葉県柏市で「白河屋」を経営している。自分の原点となったお店と同じ名前、そして、一目で白河ラーメンと分かるシンプルさから許可を得て、屋号をこの名に決めた。
ラーメン作りには自身のこだわりの強い性格が非常に合ってるという。
「選手時代は引退までずっと自転車の調整に熱中していました。1ミリ以下の単位でメンテナンスして、自分の体に合わせていく。朝6時から始めて気が付くとお昼を回っていることもザラでした。わずかな変化が結果に大きく影響する。これは麺作りも一緒です。白河ラーメンは、例えば4リットルの水を使うとして、おちょこ1杯の水量の差で出来栄えが全く変わってしまう。気温と湿度の変化でその日に合った水量を探らなければいけません。これが非常に難しい。でも、本当に楽しいです。毎晩布団に入ると明日の仕込みを考えているので、朝が来るのが待ち遠しいほど。自転車の調整は20年近くやっても答えは出ませんでした。きっと白河ラーメンも100点の正解にたどり着けないかもしれない。だからこそ夢中になれます」
店は夫婦で切り盛りしているため十文字氏の朝は早い。10時半の開店時間に間に合わせるべく朝4時すぎから準備を始め、仕込み作業を1人で行う。10時前に奥さんが合流し、2人で味の最終チェックを済ます。平日は14時までの営業だが、土曜日は行列ができ、売り切れることも珍しくない。コロナ禍の影響で4月25日から店を閉めているが、1日から営業を再開する。今や食べログの評価は3・51(5月末現在)の人気店だ。
「初めて来た人には、やっぱりオーソドックスな『中華そば』に『煮卵』のトッピングがオススメです。研究を重ねた結果、煮卵は4日間漬けています。お客さんから『これ注射器で中に味付けしているの?』と聞かれるほど、中心まで味が染み込んでいます。使っている卵はLサイズ、そしてトロトロ半熟です!」
十文字氏の白河ラーメン研究は続く。
▽じゅうもんじ・たかのぶ 1975年11月10日生まれ。現在の千葉県野田市出身。95年に競輪デビューし、96年アトランタ五輪で銅メダル獲得。以後20年以上S級で活躍。2019年に引退し、現在、千葉県柏市で「白河屋」を経営している。