Cover Story
よりよい世界のために活動する日本人にコロナ禍の今だからこそ、誰もが勇気づけられる
雑誌『ニューズウィーク日本版』のご案内
![2021.11.23号(11/16発売) 2021.11.23号(11/16発売)](https://www.newsweekjapan.jp/magazine/assets_c/2021/11/1123-thumb-240xauto-294096.jpg)
特集:世界に貢献する日本人30
Cover Story
よりよい世界のために活動する日本人にコロナ禍の今だからこそ、誰もが勇気づけられる
よりよい世界のために活動する日本人にコロナ禍の今だからこそ、誰もが勇気づけられる
雑誌『ニューズウィーク日本版』のご案内
よりよい世界のために活動する日本人にコロナ禍の今だからこそ、誰もが勇気づけられる
(1)国際機関で活躍する日本人
国際機関は、国際社会共通の利益のために設立された組織である。世界中の人々が平和に暮らし、繁栄を享受できる環境作りのために、様々な国籍の職員が集まり、それぞれの能力や特性をいかして活動している。
紛争予防・平和構築、持続可能な開発、食糧、エネルギー、気候変動、防災、保健、教育、労働、人権・人道、ジェンダーの平等など、それぞれの国が一国では解決することのできない地球規模の課題に対応するため、多くの国際機関が活動している。
国際機関が業務を円滑に遂行し、国際社会から期待される役割を十分に果たしていくためには、専門知識を有し、世界全体の利益に貢献する能力と情熱を兼ね備えた優秀な人材が必要である。
日本は、これら国際機関の加盟国として政策的貢献を行うほか、分担金や拠出金を通じた財政的貢献を行っている。また、日本人職員の活躍も広い意味での日本の貢献と言える。
現在、約880人の日本人が専門職職員として世界各国にある国連関係機関で活躍している。日本人職員数は増加基調にあるが、他のG7各国の職員はいずれも1,000人を超えていることを踏まえると、まだ十分ではない。
国連関係機関の国別職員数(専門職以上)
世界で活躍する日本人
日本政府は2025年までに国連関係機関で勤務する日本人職員数を1,000人とする目標を掲げており、その達成に向けて、外務省は、大学や関係府省庁、団体などと連携しつつ、世界を舞台に活躍・貢献できる人材の発掘・育成・支援を積極的に実施している。
その取組の一環として、国際機関の正規職員を志望する若手の日本人を原則2年間、国際機関に職員として派遣し、派遣後の正規採用を目指すジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)の派遣制度や、将来の幹部候補となり得る中堅以上の日本人の派遣制度がある(312ページ 資料編参照)。
これらを通じて日本人職員を増やしていくことに加え、日本人職員の採用・昇進に向けた国際機関との協議や情報収集にも取り組んでいる。
国際機関を志望する日本人候補者に対しては、ホームページやメーリングリスト、ソーシャルメディア(フェイスブック及びツイッター)を活用して、国際機関ポストの空席情報などの有用な情報を随時提供しているほか、応募に関する支援にも力を入れている。
国際機関で働く魅力や就職方法を説明するガイダンスを国内外で開催したり、国際機関の幹部職員や人事担当者が訪日して行う就職説明会を実施したりするなど、広報に努めている(外務省国際機関人事センター ウェブサイト参照4)。
より多くの優秀な日本人が国際機関で活躍することによって、顔の見える形で国際社会における日本のプレゼンスが一層強化されることが期待される。
各日本人職員が担当する分野や事項、また、赴任地も様々であるが、国際社会が直面する諸課題の解決という目標は共通している(270ページ コラム参照)。
また、日本人職員には、国際機関と出身国との「橋渡し役」も期待される。例えば、8月に、日本が国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)と共催した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を成功裏に実施するに当たり、日本と国際機関双方の立場や仕事の進め方を理解している日本人職員が重要な役割を果たした。
このように、日本が重視する外交課題の推進の観点からも、国際機関における日本人職員の存在は極めて重要な意味を持っている。
さらに、国際機関において職務経験を積み、世界を舞台に活躍できるグローバル人材が増加することは、日本の人的資源を豊かにすることにもつながり、日本の発展にも寄与する。
今後も外務省は、地球規模課題の解決に貢献できる高い志と熱意を持った優秀な日本人が一人でも多く国際機関で活躍できるよう、より積極的に国際機関における日本人職員の増強施策に取り組んでいく。
国連の舞台を支えてきた方々の声
飢餓のない平和な世界を目指して
国連世界食糧計画(WFP)ニューヨーク事務所長 牛山浩子
2020年は国連が創設されて75周年となります。私は、物心がついた頃から“United Nations”の理想に憧れていました。それは、国々がお互いの違いを乗り越え、理解し、尊重し合いながら国境を越える難問を解決するというものです。
25年以上前、「国連に入るので辞めます」と当時勤めていた証券会社の同期に言ったら、「国連のほかにも貢献の仕方があるから考え直せ」と注意されたことを今でも鮮明に憶えています。
私はこれまで、ニューヨークの国連本部、バンコクのアジア太平洋経済社会委員会、そして様々な国のWFPの事務所で働いてきました。WFPは現場中心であり、WFPでの勤務が一番長くなりますが、平均で3、4年ごとに新しい国で違う仕事をしているので、毎日が新鮮です。
WFPは主に紛争、自然災害、貧困や不景気のため毎日の食料が足りない国で、食料支援を中心とした人道支援業務を行っています。危険な場所で働くことも多く、きつい時もたくさんあるので、体力的にも精神的にもタフになっていきます。
また、いつでも電気や水道を使えること、そして子供が子供らしくいられることなど、日本では当たり前だと思うことをとても有り難いと感じることができます。例えば、1990年代、石とホコリだらけのケニアの乾燥地帯で働いた時には、1日の汚れを落とすことができるお湯があることに感謝しました。
たとえ小さなタライ一杯だけでも、ぬるくても、虫がプカプカ浮いていても。また、3年前まで働いていたマラウイでは停電がしょっちゅうで、ひどい時には自宅で1日に4、5時間しか電気がない毎日が続きました。
私たちは、今目の前に迫る問題と将来的な課題を同時に解決しなければなりません。マラウイで、気候変動、穀物の不作、インフレなど様々な要素が混ざり、歴史的な食料不足が発生した際には、数か月にわたり週末を削って仕事をして、恐れていた深刻な飢餓の発生を防ぐことができました。
貧しさのため小学校に行けず、家計を助けるため家の手伝いをする子供たちのために、学校給食を届けるという仕事もしました。
また、将来的にレジリエントな(困難な状況にも柔軟に対応できる)村、地域、国を作るため、政策の立案、マルチセクター(多方面の関係部門)へのアプローチ、投資のための中央政府と地方政府との連携への協力、村人たちへのプロジェクト参加の呼びかけとキャパシティ・ビルディング(能力構築)支援などにも力を入れて取り組んできました。
「平和ぼけ」という言葉を日本で初めて聞いた時は大変驚いたのですが、今も世界の各地で戦争が行われ、平和の訪れを待ち望んでいる人たちがたくさんいます。
終わりが見えない戦争だけでなく、自然災害を加速させる温暖化、環境汚染など色々な課題が増えています。WFPの同僚たちはイエメンやシリアといった紛争地帯でも任務に励んでいます。
私たちは世界中で大規模な緊急人道支援を5、6件同時に掛け持ちしているような状況です。残念ながら、これは25年前、いや10年前でさえ考えられなかったシナリオです。
人類、そして、かけがえのない地球が、持続可能な平和や繁栄を享受できるよう、国連はこれまで以上に活躍が求められています。
国連はみんなの国連。世界への好奇心や国際社会に貢献したい気持ち、グローバルな問題を解決するための情熱と能力を持つあなた─国連に入りませんか?
ちょっとのことではへこたれない前向きなあなた─我々のパートナーになりませんか?
マラウイでの給食プログラム実施校で小学生に話しかける筆者(右手前)
マラウイのコミュニティ・レジリエンス・プログラムでの植樹の様子(筆者中央)
国連の舞台を支えてきた方々の声
調達権限と責任
国連事務局管理局総務サービス部調達課チーフ 三井清弘
三井清弘
大学を卒業後、総合商社に勤務していた私が国際機関で働くことになったきっかけは、外務省のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)制度でした。JPOとして1988年9月から2年ほど、国連開発計画(UNDP)のトリニダード・トバゴの事務所に派遣され、様々な国連機関が実施するプロジェクトの管理・調整を同国政府と協働して行う業務に就き、主に国連工業開発機関(UNIDO)のプロジェクト管理業務をしていました。
JPOの任期終了後は、UNIDOのウィーン本部で総務部長室に勤務し、1991年9月、空席広告でニューヨークの国連事務局調達課に採用されて以来、国連事務局の様々なプログラム・プロジェクトや平和維持活動(PKO)を支える調達活動に従事しています。
平和維持活動で必要とされる通信機器、車両、海上・航空輸送サービス、配給食糧、燃料のほか、国連本部で必要とされる様々なサービス、本部改修プロジェクトなど幅広い分野の調達活動に関わってきました。
民間企業では企業の利益を追求することが求められましたが、国連の調達活動では、国際社会が国連の活動を通じて追求する共通の目的や大義に、調達という側面から貢献することになります。
国連の活動の円滑な運営に必要な物資やサービスを供給する外部の契約先を、公正で透明性を確保した競争入札の原則に基づき、適正なコストで確保することで国連の活動を支えているのです。
調達官には個々人に調達権限が付与されており、付与された権限の範囲内の契約金額であれば、国連の調達規則やルールにのっとり入札により契約先を決定し、調達官の裁量で契約を締結することができます。
その権限を付与されるには職業倫理も含めたトレーニングを受ける必要がありますし、調達に関与する全ての職員は個人の利益が国連の利害と相反しないよう、毎年資産公開をすることが義務付けられています。
国連の調達担当者として常に意識をしなければならない言葉があります。Fiduciary Responsibilityという言葉です。受託者責任と訳すのでしょうか。調達官が契約をするに当たって予算決定過程で使用目的が承認された資金を使用するのですが、その資金は加盟国の分担金が原資となっています。
調達活動においてはその資金が適切に支出されるように契約を締結する責任があるのです。その資金には世界の最貧国が分担した資金も含まれていることに思いを馳(は)せる時、この責任をとりわけ重く感じます。
国連の資金を支出することになる契約先を、調達活動を通じて決定する権限を委ねられた者として、常に与えられた権限と責任を意識して業務に当たらねばならないと自戒するようにしています。
(本稿は個人の意見を表明したものであり、必ずしも国際連合の意見や立場を反映するものではありません。)
成都(中国)での企業向けビジネスセミナーで、国連側の参加者と打ち合わせする筆者(右)
(2)非政府組織(NGO)の活躍
ア 開発協力分野
開発協力活動に携わる日本のNGOの多くは、貧困や自然災害、地域紛争など様々な課題を抱える開発途上国・地域で、草の根レベルで現地のニーズを把握し、機動的できめ細かい支援を実施している。
政府以外の主体の力をいかし、オールジャパンでの外交を展開する観点から、開発途上国などに対する支援活動の担い手として、開発協力においてNGOが果たし得る役割は大きく増している。
外務省は、日本のNGOが開発途上国・地域で実施する経済・社会開発事業に対する無償の資金協力(「日本NGO連携無償資金協力」)によりNGOを通じた政府開発援助(ODA)を積極的に行っており、事業の分野も保健・医療・衛生(母子保健、結核・HIV/エイズ対策、水・衛生など)、農村開発(農業の環境整備・技術向上など)、障害者支援(職業訓練・就労支援、子供用車椅子供与など)、教育(学校建設など)、防災、地雷・不発弾処理など、幅広いものとなっている。
2019年は、日本の55のNGOが、アジア、アフリカ、中東など34か国・地域で95件の日本NGO連携無償資金協力事業を実施した(273ページ コラム参照)。さらに、NGOの事業実施能力や専門性の向上、NGOの事業促進に資する活動支援を目的とする補助金(「NGO事業補助金」)を交付している。
また、政府、NGO、経済界との協力や連携により、大規模自然災害や紛争発生時に、より効果的かつ迅速に緊急人道支援活動を行うことを目的として2000年に設立されたジャパン・プラットフォーム(JPF)には、2019年12月末現在、43のNGOが加盟している。
JPFは、2019年には、アフリカ南部サイクロン被災者支援、ネパール水害被災者支援、ベネズエラ避難民支援プログラムなどを立ち上げたほか、ミャンマー、南スーダン、ウガンダ、シリア、イラク及びその周辺国における難民・国内避難民支援を実施した。
JPF事業「ミャンマー避難民人道支援」:(特活)難民を助ける会によるコックスバザール避難民キャンプ(バングラデシュ)の水衛生環境改善事業(©(特活)難民を助ける会)
JPF事業「ミャンマー避難民人道支援」:(特活)難民を助ける会によるコックスバザール避難民キャンプ(バングラデシュ)の水衛生環境改善事業(©(特活)難民を助ける会)
このように、開発協力の分野において重要な役割を担っているNGOを開発協力のパートナーとして位置付け、NGOがその活動基盤を強化して更に活躍できるよう、外務省と国際協力機構(JICA)は、NGOの能力強化、専門性向上、人材育成などを目的として、様々な施策を通じてNGOの活動を側面から支援している(2019年、外務省は、「NGO相談員制度」、「NGOスタディ・プログラム」、「NGOインターン・プログラム」及び「NGO研究会」の4事業を実施)。
さらに、2019年も引き続きNGOとの対話・連携を促進するため、「NGO・外務省定期協議会」として全体会議のほか、ODA政策について協議するODA政策協議会や、NGO支援や連携策について協議する連携推進委員会を開催した。
また、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取組についても、SDGs推進円卓会議などでNGOを含め多様なステークホルダーとの意見交換を行いながら取り組んでいる。
日本NGO連携無償資金協力をいかし、より多くの人々に安全な水を
認定特定非営利活動法人 ホープ・インターナショナル開発機構 木下香奈子・ンジャイさおり
近年、NGOと外務省は、お互いの強みをいかしたより良い「パートナーシップ」が構築されるよう、両者間の協議の場を多く設けるようになりました。当団体は、世界の極貧層の人々への自立支援を行っていますが、外務省との連携を通じ、より広い支援を実現してきました。
当団体は、2005年からエチオピア南部の農村地域(僻地(へきち))で、現地住民が貧困から抜け出すために不可欠な安全な水の供給と保健衛生教育に焦点を置いた事業を実施しています。
過去に外務省の日本NGO連携無償資金協力を得た年の裨益者(ひえきしゃ)数は、ファンドレイジング(資金調達)による自己資金のみで実施した年のおよそ10倍になったこともありました。
これと同等の巨額な事業費を支援者からの寄付金や事業収入でファンドレイズすることは極めて困難ですが、当団体の培った現地での知見と外務省のスキームを活かすことで、より多くの人々に安全な水を供給することが可能となりました。
現在、日本NGO連携無償資金協力の下で実施している事業は、エチオピア南部のボンケ地区3郡を事業地として、3年間で住民1万2,000人に安全な水を届ける計画です。長期間にわたり安全な水を供給できるよう、水供給システムは現地の地形に合わせ、重力のみで水源から給水所へ水を届けます。
また、住民の健康を守る大切な要素として、トイレの利用促進や手洗いなどの基本的な衛生教育も現地住民から選ばれたコミュニティー保健委員を中心に地道に進めています。
事業地は標高3,000mの僻地にあり、悪路(泥の山道)を通るため4WDの車でも近隣都市から4時間程かかります。他団体からの支援も届いておらず、住民たちは安全な水の供給を心待ちにしています。
しかし彼らのニーズを充(あ)てがうだけの事業では、自分たちの力で問題を解決しようという気持ちが生まれず要求ばかりが高まってしまいます。尊厳ある生活を営むためにも自らの手で問題を解決し、恒久的に貧困の連鎖から抜け出せるよう、「支援の届いていない人々の自立への道筋を支援すること」が当団体の事業の根幹です。そのために、「住民のオーナーシップ」を重視しています。具体的には事業開始前の事業地までの道路整備、資材運搬等の単純労働などを現地住民に任せることで、当事者意識が育(はぐく)まれるようにしています。
さらに、給水所の利用者が自ら資材と労力を出し合って給水所の防護柵と鍵を設置したり、給水所利用規約を住民全体集会で決定するなどの取組を通じて事業のサステイナビリティ(持続可能性)を担保しています。
2019年10月には、ボンケ地区3郡のうち2郡において、水供給システム(簡易水道設備)が完成しました。同事業により6,636人の村人に安全な水が届いただけでなく、保健衛生知識が向上し水の扱い方、トイレの利用や手洗いなど生活習慣に変化が見られ、下痢症などの疾病率が減少し始めています。
また水汲(く)み作業が軽減されたことにより、子どもが学校へ通い、女性が収入向上のための活動に取り組むための環境も整えられつつあります。
同地で開催された本水供給システムの「引き渡し式」には、在エチオピア日本国大使館の松永大使が参加しました。槍(やり)を持ち正装した村人は「Thank you people of Japan」という紙を掲げ待っていてくれました。
彼らの感謝の気持ちを数値で表すことはできませんが、私たちの胸を震わせます。より多くの日本の人たちにこの変化を伝えていくことも私たちの役割です。技術革新が進み、ビジネス的な要素を含む支援も多くなる中、安全な水すら手に入れられない状況にある人々を支援することの重要性を今後も伝え続けていきたいです。
グローバルフェスタ入賞写真 安全な水の供給を喜ぶ子供たち
安全な水の供給を喜ぶ子供たち
「Thank you people of Japan」と書かれた紙を掲げる正装したボンケ地区の村人
イ そのほかの主要外交分野での連携
外務省は、開発協力分野以外でも、NGOと連携している。例えば、2019年3月に開催された第63回国連女性の地位委員会(CSW)で、田中由美子氏(城西国際大学招聘(しょうへい)教授)が日本代表を務めたほか、NGO関係者が政府代表団の一員となり積極的に議論に参加した。
また、第74回国連総会では、宮崎あかね氏(日本女子大学教授)が政府代表顧問として人権・社会分野を扱う第3委員会に参加した。さらに、人権に関する諸条約に基づいて提出する政府報告や第三国定住難民事業、国連安保理決議第1325号及び関連決議に基づく女性・平和・安全保障に関する行動計画などについても、日本政府はNGO関係者や有識者を含む市民社会との対話を行っている。
また、軍縮分野においても、日本のNGOは存在感を高めている。外務省はNGOと積極的に連携してきており、例えば、通常兵器の分野では、地雷・不発弾被害国での地雷や不発弾の除去、危険回避教育プロジェクトの実施に際して、NGOと協力している。
さらに、核軍縮の分野でも、様々なNGOや有識者と対話を行っており、「非核特使」及び「ユース非核特使」の委嘱事業などを通じて、被爆者などが世界各地で核兵器使用の惨禍の実情を伝えるためのNGOなどの活動を後押ししている。2019年12月までに、101件延べ299人が非核特使として、また、35件延べ405人がユース非核特使として世界各地に派遣されている。
国際組織犯罪対策では、特に人身取引の分野において、NGOなどの市民社会との連携が不可欠であるとの認識の下、政府は、近年の人身取引被害の傾向の把握や、それらに適切に対処するための措置について検討すべく、NGOなどとの意見交換を積極的に行っている。
とりわけG20においては、政府とは別に、市民社会によるC20(Civil 20)がエンゲージメントグループ(国際社会での活動にかかわる関係者により形成された、政府とは独立した団体)の一つとして立ち上がった。
4月には、東京においてC20サミットが開催され、G20大阪サミットの主要課題について市民社会の視点から幅広い議論が行われるとともに、C20代表者がG20議長を務めた安部総理大臣を表敬して「G20に向けた世界市民の政策提言書」を手交した。
C20代表による表敬を受ける安倍総理大臣(4月18日、東京 写真提供:内閣広報室)
C20代表による表敬を受ける安倍総理大臣
(4月18日、東京 写真提供:内閣広報室)
(3)JICA海外協力隊・専門家など
JICA海外協力隊派遣は、技術・知識・経験などを有する20歳から69歳までの国民が、開発途上国の地域住民と共に生活し、働き、相互理解を図りながら、その地域の経済及び社会の発展に協力・支援することを目的とするJICAの事業である。
本事業が発足した1965年以降、累計で98か国に5万4,106人の隊員を派遣し(2019年12月末現在)、計画・行政、商業・観光、公共・公益事業、人的資源、農林水産、保健・医療、鉱工業、社会福祉、エネルギーを含む10分野、約200職種にわたる協力を展開している。
帰国した協力隊参加者は、その経験を教育や地域活動の現場、民間企業などで共有するなど、社会への還元を進めており、日本ならではの国民参加による活動は、受入国を始め、国内外から高い評価と期待を得ている。
協力隊としての経験は、グローバルに活躍できる人材としての参加者個人の成長にもつながり得る。このため、政府はこうした人材育成の機会を必要とする企業や自治体・大学と連携して、職員や教員・学生を開発途上国に派遣するなど、参加者の裾野の拡大に向けた取組を進めている。
例えば、主に事業の国際展開を目指す中小企業などの民間企業のニーズにも応えるプログラムとして、JICA海外協力隊(民間連携)を2012年度から実施している。また、帰国した隊員の就職支援など、活動経験の社会還元に向けた環境整備を積極的に実施してきている。
帰国した隊員の中には被災自治体で活躍している者、元隊員同士で協力して派遣国への支援を続ける者、国際機関などで活躍する者など、国内外の幅広い分野で活躍している者も多い。
なお、本事業は2018年秋に制度見直しを行い、年齢による区分(青年・シニア)を、一定以上の経験・技能などの要否による区分に変更した。
JICA専門家派遣は、専門的な知識、知見、技術や経験を有した人材を開発途上国の政府機関や協力の現場などに派遣し、相手国政府の行政官や技術者に対して高度な政策提言や必要な技術及び知識を伝えるとともに、協働して現地に適合する技術や制度の開発、啓発や普及を行う事業である。
専門家は、開発途上国の人々が直面する開発課題に自ら対処してくための総合的な能力向上を目指し、地域性や歴史的背景、言語などを考慮して活動している。
2018年度は新規に9,874人の専門家を派遣し、活動対象は119か国・地域に及ぶ。保健・医療や水・衛生といったベーシック・ヒューマン・ニーズ(人間としての基本的な生活を営む上で最低限必要なもの)を満たすための分野や、法制度整備や都市計画の策定などの社会経済の発展に寄与する分野など、幅広い分野で活動しており、開発途上国の経済及び社会の発展と信頼関係の醸成に寄与している。
4 外務省国際機関人事センターウェブサイト:https://www.mofa-irc.go.jp/
外務省国際機関人事センターウェブサイトQRコード
日時:平成28年11月18日(金曜日)13時00分~15時00分
場所:経済産業省別館2階238会議室
出席者
桐山委員(座長)、イエンセン委員、井上委員、榎田委員、大西委員、垣貫委員、澤田委員、高橋委員、渡邉委員、生駒委員、鈴木委員、増田委員
議事概要
I.「日本らしさ」を再検討する意義
前回の東京オリンピック開催時、日本は戦後経済成長の真っ只中で、日本の製品・サービスは発展途上であった。当時の日本企業は「QCD(Quality、Cost、Delivery」」の価値軸で商品価値を高め、競争を続けてきたが、現代では従来の3つの軸に加え「感性」が重要視されていると考えている。
経済産業省としては、日本の「感性」を活かしたブランドの構築・発信をこの10年ほど進めてきた。
昨今では、日本食のユネスコ世界遺産への登録、ミラノ万博での日本館への高い評価、訪日外国人旅行者数の2000万人突破など、さらに日本に対する関心が高まっており、今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、改めて日本の「感性」を発信していくという観点から、この研究会において、日本の感性を表現するコンセプトを取りまとめたい。
II.世界を驚かせる日本人ならではの感性・価値観を表すキーワード
各委員からの発表
第1回の研究会での議論を踏まえ、国内外有識者ヒアリング、外国人留学生ワークショップ等を経た結果、日本人の自然観を表すキーコンセプト、自然と日本人との関係性によって培われた日本人独特の価値観を表すキーワード、さらに、日本人の生活、及びそれを支える商品・サービスに表されている世界を驚かす5つのキーワードを事務局より提示し、検討を行った。主な発言は以下の通り。
ものを言わない、外国人から見てファジーな存在だった日本人を言い表す際に「間」というキーワードを用いるのは面白い。
文化の根源は、自然の脅威に対する民族の姿勢に由来するが、西洋文明は自然をどう支配するかという考え方で成り立ち、日本人は自然と共生することを選び、畏怖や畏敬の念から、自分と同等もしくはそれ以上のものとして扱ってきた。
文学では、本居宣長の「もののあはれ」という言葉が示す通り、日本人は他に寄り添う心、自分ではなく、他に心をあずける感覚を培ってきた。また、自然を大切にし共存してきたことで、枕草子の「やうやう白くなりゆく山ぎは・・・」のような自然に対する感性を千年を超えても失わずに来たのである。例えば、自然が維持されたことでトキ色のような自然にある物の色が使い続けられ、近代まで日本の色はわずか300色ほどだった。自然が大きく変化した欧米では、白や黒、青のような一万を超える抽象色が作られたが、日本では自然の色の無限の美しさを、物の名と多様な形容詞で表現したのである。伝統と現代を国内外に分かりやすく繋ぐことが重要であり、提示された検討ステップでそれが実現できればと思う。
素材、おもてなし、安心・安全、クラフトマン、技術力、美とアート、その他ポイントがあると思うが、概ね事務局の整理に賛同。
「受け入れる(共存する)」には、多様性を認めるという特徴がある。「素材を活かす」には、素材そのものの魅力という点が挙げられる。テキスタイルも食も、季節感が日本の素材をつくり、その先にそれをどう活かすかという考え方から生みだされたもの。「アレンジする」では、日本人の器用さにより、異質なものを組み合わせ、新しい価値観を生み出している。「極める」では、先進性と伝統の融合という点が将来に向けての日本の強みになる。
総合すると5つのキーワード、「『間』の感覚」は理解できるが、キーコンセプトとして挙げられている「自然との共生」については、これに相対する概念を提示した方が良いと感じた。
「受け入れる」という点では、外国人をあまり受け入れていない、保守的な印象。「自然との共生」についても日本人特有の感覚ではないのでは。景観が破壊されていたり、家も輸入材で建てられていることが多く、今の日本では当てはまらないように感じる。
自然を「感じる」、「受け入れる」には、「感謝する気持ち」が含まれる。自然観には「八百万の神」という考え方があり、繊細さにも表れる「何事にも感謝する」気持ちは、私たち日本人の特徴。
それに付随し「敬う気持ち」がある。例えば「労働」という概念は、古事記や日本書紀では「祝福」という意味合いがあった。日本人の根底には、神様が見ているからさぼってはいけないという考え方があり、「感じる」、「受け入れる」姿勢の根底に、こうしたスピリットが流れている。
また、フランス人から見た日本人の魅力は「神秘性」。黙って静かにしている性格が神秘的で好感を持たれているほか、雄大な自然や高野山のような神秘性が評価されており、アピールしなくても海外の方々を惹きつけている。日本らしいアピールの仕方も検討すべき。
江戸、明治、大正、昭和、戦後と、日本人の考え方も変化してきた。戦後の日本は自然を破壊し、化学調味料を大量使用、大量生産してきた時期もあれば、過去を反省し自然を大事にし、素材を活かそうと考え直している部分もあるなど、時代毎に異なる。そのため、これらのキーワードの使用目的、使い方が非常に大事。
今回の事業を通して、日本らしさを表すコンセプトを日本人に対しても伝え、人生を豊かにするために日本を変えていこうという運動として捉えることができれば、結果的に外国人にも訴えることに繋がる。
先日、中国人を案内した際、日本の「部活動」について、「ダオ(道)」を感じ、子供の頃から「道」という考え方を教えているところに日本人の優秀さの一端を見たと指摘された。
人間は2足歩行により動物的な体構造から解放されたが、人間の体の中で、自然に則した部分(他の動物に共通する部分)と、人工的な部分(人間ならではの部分)が、常にせめぎ合っている。日本人は、自らの内なる自然を見つめ、そこから文化が生まれ、「道」という概念が出てきた。「道」という概念によって、体構造へ回帰しようとする衝動と、解放されたいという衝動との分裂を防ぎ、繋ぎとめている。それが「道」という考え方の起源。
人の身体や感覚を変化させるために重要なポイントを表す「機度間(きどま)」という言葉がある。「機」は機会、「度」は度量、「間」は繋がり、関係性を表す。この場合の「間」は、元来、身体の持つ対立する衝動を繋ぎとめることを指す。だから、間があるものを見ると人は安心する。また、間が論理的、構造的かつ美しく昇華された体系が「道」の起源である。
内なる自然と外部の自然との調和を日本人は考えてきたので、そこから整理するべき。
人が魅力を感じる感覚は言語化されていない。これまで政策として「伝える」活動は膨大に実施しているが、「伝わる」メカニズムについての行動分析はできていない。それこそ政府が主導して取り組むべき。
「自然との共生」は納得。とあるオンラインゲームのイベントで約2000人が同時に踊ったが、皆の振りがすぐに合い、ここに働く共感とは何かと考えると、自然との共生から来る古来のお祈り、お祭りに通じる感性が我々の中に今も残っているのではないか。
日本に行きたいが日本がまだよく分からないという外国人は多く、情報発信の機会が大事であると改めて感じており、東京ウォーカー、横浜ウォーカーを翻訳し海外で出版しているが、現地サイドで彼らが行きたい・見たい日本に置き換わってしまう。こうした視点をどう取り込んでいくのか、彼らとともにどう日本という像を作り上げていくのか、というアプローチが現実的には伝わりやすい。
ブランディングの視点から、今回目指すべき方向性は、外国人の心に響かせたい、欲しい・行ってみたい・学びたいと感じてもらうこと。どの国にも固有の風土があり、日本特有の風土から展開することは、外国人に分かり易い。「『間』の感覚」は、他の言語には類を見ず興味を引くだけでなく、日本人が日本らしさを発見する導入としてもよいキーワード。
キーワードは、英語表現で何というかを意識すること。また、概念としてのキーワードがどこに現れているのか、感覚的に分かるような具体例を挙げてほしい。
相手国には無いが日本にはある、その差異として生じる憧れを見極め、発信することで、バイヤーや旅行会社は自分達の実利に繋がる情報として拡散してくれる。旅行では歴史や自然、ものづくりの面では匠の存在やその姿勢。世界の人々から見て憧れを抱いてもらえそうな要素を、しっかり具体的な例でまとめて頂けることを期待したい。
一般の人が理解し使えるキーワードは包括的にこの5つでまとめられる。地方では地場産業、農業など、世代交代が進み、若く志のある作り手が生まれており、このキーワードに刺激を受けてものづくりを進めてくれたらと感じる。
産地側でもライフスタイルの変化に合わせて変革しようという機運が出てきているが、地方の若い生産者たちが、日本のものづくりの極意が詰まったコンセプトとして、今回のキーワードに注目し、活かしていくようになれば良い。
日本らしさについて5点コメントしたい。1点目は、日本が注目されている「結果」よりも、その「原因」に世界は関心を持っている。2点目に、日本は、技術など文明的なもので評価されたが、これからは文化で評価を集める時代になってくる。3点目に、資本主義が人間の幸せとかけ離れていく危惧を世界が感じ始めている。4点目は、戦後にものづくりを頑張ってきた日本が、中国の台頭で厳しい状況におかれている今、工業化を進める上で日本の風景や日本人が元々有する良さを潰してしまったことへの反省の機運が生まれている。5点目に、そもそも日本人とは何だろうか、ということへの関心が国内でも高まった結果、日本人の特徴として、「利他」の心、シェアリングエコノミーといった言葉がキーワードとして現れている。
日本人は情報処理能力に長けている。“間”の概念にも通じてくるが、日本人は相手との関係性によって、「自分」という表現を幾通りも使いこなすがアメリカは”I"のみ。こうした、日本人の情報処理能力が今後活かされてくる。
中国に『知日』という雑誌があり、中国が日本に学ぶために5年前に創刊された。一つのテーマで一冊の本を編集しているが、テーマは「禅」、「武士道」、日本の「礼儀作法」、「富士山」、「太宰治」、「萌」など。中国人が知るべき日本のコンセプトの編集視点などを参考にしてほしい。
共感・進化・発見を通して、伝わる方法論をいかに確立するかが重要。1点目として、運動体にしていくことが大事。5つのキーワードがどう「伝わる」ように政策を作っていくのか、それを経営手法とか、地域の発展にどう落とし込めるかが大切。こうした運動体にしていくための共感発生装置をどこに作るのか、どう置くのか、どう仕組み化するのかを考えていく必要がある。2点目に、意図的にどう進化を起こしていくのか。インバウンドにおいて日本をどう再解釈するか、日本のクラフトをどう再編集していくか、など。3点目は発見。一番テコ入れしなくてはいけないのは日本人そのもの。明治以降に和魂洋才という考え方のもと洋の才能を導入してきたが、そろそろターニングポイントに来ている。日本らしさを発見する機会を例えば企業の中、政策の中、学校の中にキーワードとしてどう意図的に置いていくのかを考えていくべき。
一つの手法として、全てを伝えきらず受け手に考えさせるというやり方もある。他にも、例えば化学反応をする時に二つのアクションが必要。一つは異質の物を混ぜ合わせること。もう一つ忘れていけないのが「触媒」の存在。意図的に進化を起こすためには、何かと何かをつなぎ合わせる「触媒」となるような仕組みやサポートや強化のプロセスが必要なのだろうと思う。
CJ機構での業務を通じ、海外から日本に対する期待感は、まずはクリエイティブ&テクノロジー、次に伝統的な文化がある。「間」と言う言葉にもあるとおり、どこか肉声のもの、縦横斜めの論理性にないゆらぎのようなもの、ある種のいい加減さ、といった言葉が海外からよく聞かれる。5つのキーワードも、良い意味での「いい加減」さが枕言葉にあり、色々なワードを置いてみると、海外の方々の期待に合うのではないか。120%作りこんだものを出してしまうとお客様が引いてしまう。8割方に留め、残りの2割が受け手の関心を呼び込むような仕掛けが必要。
III.今後の進め方
第三回研究会では、コンセプトブックの編集案を事務局より提示し、第二回で意見の出たキーワードの伝え方、ブックにおける表現の仕方を議論して頂く。また、キーワードの発信について、コンセプト発信検討委員の皆様よりご意見を頂きながら検討し方向性を定める。
関連リンク
「世界が驚く日本」研究会の開催状況
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商務情報政策局 生活文化創造産業課(クリエイティブ産業課)
電話:03-3501-1750(直通)
FAX:03-3501-6782
最終更新日:2017年1月5日
グローバル化の好条件が揃う日本人の民族性とは?
――SBIホールディングス代表取締役CEO北尾吉孝氏
ダイアモンドオンライン
北尾 私は海外に10年住んで、世界100ヵ国に出張しました。その経験を通して感じたことは、国際性とはまず、違いを理解できることに始まると思うのです。自分が日本人として海外で誰かと出会う時、その二者は“違う”わけです。生きてきた文化背景も違えば、風習も違う。民族的特質が異なっています。大切なのは、それを片方から見て「良い・悪い」と判断せず、「自分とはこういう点で違っている」と理解できることです。そうすればそこにコミュニケーションが生まれます。
南 なるほど、日本人としての視点も持ちながら、二者の真ん中に立って互いを見ることができる、ということですね。
北尾 そうです。そしてもうひとつは、互いに違う存在でも、人間性には変わりがないということを知ることです。肌や髪の色が違って、話す言葉が異なっていても、人間は大体同じことに喜び、怒り、哀しみ、楽しみを覚えます。つまり人間性には普遍性があるということです。
最初の違いの部分から例を挙げて説明をしましょう。日本の製造業は、まさに日本人のものづくりの感性が世界に理解された例です。日本のデパートに行けば、商品を丁寧に包んでくれます。この日本の包み紙とその包み方は、世界で最も美しいと言えます。こうした日本人の美的感覚ときちんとものを作る完璧主義に支えられたクラフトマンシップが製造業に生き、ある時代には圧倒的な地位を世界に築いたのです。
きたお・よしたか
1974年慶応義塾大学経済学部卒業後、野村證券に入社。
1978年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券NY拠点勤務後、英国ワッサースタイン・ペレラ社常務取締役、野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長を経て、1995年孫正義氏の招聘でソフトバンク入社、常務取締役就任。
2005年、SBIホールディングス株式会社代表取締役CEOとして現在に至る。
南 豊富な海外経験を振り返って、今日本人が身につけるべき国際性は何だと思いますか?
今朝の取手市内は、午前5時気温マイナス2℃。
ビンの廃品回収日で出しに行くが、こんなにもワンカップ酒を飲んだのかと我ながら呆れる。
半欠けの月が白く見えた。
日が長くなったものだ。
冬至(昨年は12月21日)がターニングポイント。 そこから、日が再び長くなり始める。
ついでに、思い立って利根川堤防へ行く。
水溜りに氷がはっていて、土手の草は微細な氷でカラスの粒のように輝いていた。
堤防からの通勤の人が「おやようございます」と挨拶し、駅方面へ向かっていく。張りのある声だった。
次に出会ったご婦人には、こちらから先に挨拶をする。
日の出の時刻であった。
吉田地区から利根川へ流れる水路に朝もやが立っていた。
富士山は微かに見えた。
青空が背後にあれば、雪山影がくっきり見えただろう。
走る人も多いが、当方はもはや走る気持ちにはなれない。
水路沿いに吉田方面へ向かう。
その道では、自転車に乗った人からも挨拶をされたが、通勤なのだろう取手駅へ向かう様子であった。
表現力とは、感じたことを顔の表情や身ぶりで表したり、自分の思いや感情などを言語や音楽、絵画などで表現する力のことです。
言語で表現する詩人や小説家、音楽、絵画、舞踊などで表現する芸術家、テレビや舞台で活躍する役者たちは、「表現者」と呼ばれることもあり、豊かな表現力を身につけています。
また、 フィギュアスケートやアーティスティックスイミングなどは採点項目に「表現力」が設けられるなど、自分を魅力的に見せる演出として表現力が求められています。
もっと身近な例で言えば、人に自分の考えをわかりやすく伝える「話す力」や「書く力」も表現力です。
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映画監督に託す―東京「2020」
東京オリンピックはコロナ禍で、初めて開催が1年延期された。
だが、開催に反対した人たちも少なくなかった。
それはそれとして、オリンピックは人類のスポーツの祭典であることを否定することはできない。
1964年の東京大会の記録は市川崑が総監督に託された。
日本にとっては、戦後復興の象徴とされた五輪であった。
今大会は、映画監督の河瀬直美さんに記録映画が依頼された。
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「未来に触れる」作業
映画監督の河瀬直美さん
自分自身が試ためされたように、目の前で起こることに一喜一憂する。
公平なまなざしで物事を見ようとするが、揺れる思いも隠しきれない。
時代の転換期。
誰も経験したことのない事案。
そこに集う人々の喜怒哀楽。
「日本」をこれほどまでに意識した時間がこれまでにあっただろうか。
そして、諸外国の人々の感情をこんなに真正面から受け取った出来事があっただろうか。
その場に立った時、私は何を目撃したのだろうか。
5000時間に及ぶ撮影素材を各担当ディレクターからできるだけまとめてもらって確認する。
2021の夏を思う。(毎日新聞から引用)
映画監督の河瀬直美さんの毎日新聞の連載記事に感慨を新たにした。
自宅から歩いて行ける場合が世界遺産である土地には、千年続く行事や建造物がある。
年の初めに先人からの宝を愛でるように、この地に生かされていることに感謝する。
手のひらに乗るだけの幸せで充分なのだと改めて思う。
このなんでもない日常の豊かさは、誰と比べることをせずともよい。
元日の夕刻に西の空に沈んでいく太陽の光が誰のもとにも均等に届けられるが示すとおり、ただそこにそれがある。
そのことに気づくことができるか否か。
私が私であっていいのだと思えるのかどうか。
笑い学研究27巻
福島県立医科大学の大平哲也主任教授
抄録
笑いと健康に関する研究はここ数十年で飛躍的に報告数が増えてきた。
それに伴い研究手法及び研究対象についても変遷がみられるようになってきた。
そこで本稿では、2010年以降の笑いと身体心理的健康及び疾病との関連について文献的レビューを行うとともに、今後の課題を提示することを目的とした。
文献検索の結果、うつ症状、不安、睡眠の質に関する無作為介入研究が複数行われるようになり、エビデンスレベルの高いメタ分析もいくつか報告されていた。
また、生活習慣病、要介護等の身体疾患への影響も前向き研究での報告が増えてきた。
これらの研究を、観察研究(①笑いと死亡、要介護との関連、
②笑いと生活習慣病との関連、③笑いと認知機能との関連)、及び介入研究(①笑いが生活習慣病・身体的指標に及ぼす効果、
②笑いが心理的指標に及ぼす効果)に分けて研究内容を概説した。
加えて、日常生活において笑いを増やすことに関連する因子についても文献をもとに考察した。本研究の結果、笑いはストレス関連疾患及び生活習慣病など様々な疾患の予防・管理に有用である可能性があることが示唆された。
生活に笑いを増やす要因
「友達に週に2回以上会う」
「社会活動に参加する」
<笑いのもと>は「家族や友人と話している時」が最も多かった。
「人と話をす機会を増やすことが重要」と大平教授は指摘している。
ヨハン・ガルトゥング博士
1930年ノルウェー生まれ。
平和学の第一人者で世界的に「平和学の父」として知られる。
1959年に世界初の平和研究の専門機関、オスロ国際平和研究所(PRIO)を創設。
主張
戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態を「積極的平和」とする概念を提起した。
これまでに、スリランカ、アフガニスタン、北コーカサス、エクアドルなど、世界で40ヶ所以上の紛争の仲介者をした。日本においても中央大学、国際基督教大学 (ICU) 、関西学院大学、立命館大学、創価大学などで客員教授を務める。
尖閣諸島の領有権を巡って日中が対立している状況に対し、中国と日本がそれぞれ40%ずつの権益を分けあい、残りの20%を北東アジア共同体のために使うという解決案を示している。
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「平和学の父」 ヨハン・ガルトゥング講演と映画『コスタリカの奇跡』特別上映会
2017年06月13日に開催 logmi
世界的に「平和学の父」として知られる「積極的平和」の提唱者ヨハン・ガルトゥング博士が緊急来日。
軍隊を1948年に撤廃し、社会福祉国家の道を選び、積極的平和国家作りにチャレンジしてきた中米コスタリカについての映画『コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~』(配給:ユナイテッドピープル)の上映に伴い、ガルトゥング博士が「日本人のための平和論」をテーマに緊急提言を行いました。
コスタリカと比べて日本に欠けている点
関根健次氏(以下、関根):次の質問。はい、どうぞ。
質問者3:映画から、コスタリカは外交と対話から平和を構築したというのがわかったんですけど、その点において日本人はあまり自分たちの未来とか、特に政治に関することについて、対話することを避ける傾向があると思います。そういう点では、未来に対することへのイマジネーションが欠けているんじゃないかなぁと私は思ったんですけど、そのことについてどう思われますか。
ヨハン・ガルトゥング氏(以下、ガルトゥング):ご質問に関係して、3つ日本に欠けている点があると思います。1つ目は知識がもっと必要だと思います。つまり、今の世界の状況に関する知識。過去の歴史だけじゃなくて今の現状に関することの知識です。それを日本人は十分に持っていない。例えば、知識としてコスタリカがどういう状況にあるか。あるいはスイスがどういう歴史をたどってきたか。そういう知識も欠けている。
日本は表向き専守防衛となっていますが、非常に政治手腕のある安倍首相ですら、ディフェンシブ・ディフェンスと攻撃的兵器の区別をつけないで話をする。それも知識のなさだと私は思うのです。つまり、短距離の防御的な武器というのは、他の人たち、他の国に対して脅威にならないのです。
だから今、日本が武装しているような長距離を目指していて、他国を攻撃できるようなそういう武器を持つということは、決して本当の意味での国防にならないということを理解していないのではないか。
それからビジョンということをおっしゃいまいた。まさにそれが2つ目に欠けている点です。
右派にしても左派にしてもそれぞれのビジョンを持っているのですが、それは決して十分なものではない。欠陥が多すぎる。例えば、右派の人たちは外交や対外関係における日本の独立性を主張される。それは非常にいい点です。だからそれは取り入れる。
それから、左派の方の反戦的発想、ネガティブなピースで消極的平和ではありますが、それはいい点ですからそれも取り入れる。これは今でも言えるかわからないんですけども、これくらい通信網が発達しているにも関わらず、いまだに日本が島国根性的な想いがあるんじゃないかと思います。
国境を接しているお隣さんがいないということで、本当の意味でのお隣さんがいない。だから近所でもめ事があって敵みたいに思っているんですけど、あることを通して非常に友好なお隣さんになるという経験をしていないわけです。
ところが、他の世界の国々、特にヨーロッパの諸国をみてみます。血で血を洗う戦争をして、でもそれを克服して仲間になった。それはラテンアメリカについてもアフリカについても言えると思います。ところが日本はそういう経験をしていない。
そしてビジョンをもっただけでは十分ではなくて、政治家として政治的な強い意志をもって実践する、実行するという意志の力です(これが3つ目の欠けているところ)。
なぜ日本が被占領国であるのかというその一例として、例えば米軍の要人、高官その他が日本への入国手続きなしで横田米軍基地からヘリコプターで都心へ行く。そして主要省庁の上級官僚に指示を出すという米国の対日支配構造は、まさに日本は独立国とは程遠い、今なお占領下にある状態と言えます。
政府に頼らないで、例えば、いいお手本になるようにNGOが中心で手を差し伸べる。そういうことを考えたらどうかと思います。特に女性が中心となっているNGOは非常に将来有望だと思います。でも男性も除外してしまうと困るので、男性の中にも手を携えてできる人がいますから、どうぞシャットアウトはしないでください。
(会場笑)
男性にもちょっとはいい点がありますからね(笑)。
(会場笑)
関根:そういっていただいてホッとしました(笑)。
(会場笑)
今回のうちのスタッフもほとんどが女性です。最近では女性の方が活発で男性がね、もっとがんばらなきゃと思います。えー、いい時間になってきましたけれども、最後どうしても聞きたいぞっという人、短めにクエスチョンを。手を挙げていただけたらなと思います。
市民の力で戦争をやめさせるには
今回が来日最後の講演です。はい、ありがとうございます。どうぞ。
質問者4:僕はシリア和平ネットワークという組織をつくって、それはシリアでシリアの難民を人道的に助ける数々の団体が集まっているんですけれども。今は性格をちょっと変えて、シリアにおける殺戮をストップさせるための活動を去年から始めています。
伊勢志摩サミットとか、今回の定例サミットにおいて、外務省に圧力をかけてシリア人の人を呼んで大学でシンポジウムをやったりして、なんとかシリアの市民の声が今のシリアの状況に影響を与えられるように活動しています。
でも今までブレイクスルーは全然達成できていないんです。市民の力を使って戦争を止めさせるには、いったい何が足りないんでしょう?
ガルトゥング:私もシリアも含めてそういう環境の仕事をずっとやっています。あの問題に関するキーとなるアクターといいますか、当事国はイスラエルです。1985年ぐらいからイスラエルがとった対外政策で、近隣諸国をなるだけ分断しようという方針を打ち出したわけです。それが関係しています。
つまりイラクではこれが成功したわけですね、イスラエルの(分断)政策が。でシーアのセクションとか、クルドのセクションとか、スンニのセクションとか、つまりセクショナリズム的に民族間の対立を深めました。ということは分断することに成功したわけです。
それでアメリカは外交政策において、イスラエルが主張することをそのまま実行する傾向にあるということです。でもいろいろお話していると時間がすぎてしまいますから結論として言えることは、根本的に大切になるのは、真のイスラムとは何か? どんなものか? ということです。トゥルー・イスラムとは何か?
それで真のイスラムという視点から見ると、イラクにしてもシリアにしても余りにも「欧米」ではなくて「欧化」されている。ヨーロッパ化されてしまっている。イラクの場合は英国。シリアの場合はフランス。その影響が強すぎてせっかくの真のイスラムが 水増しされているのが気になっているわけです。
それでIS(イスラミック・ステイツ)が主張しているのが、真のイスラムに帰るということです。ですからシリアとイラクとかが問題なんじゃなくて、1番の問題は、メッカやメディーナの問題なんです。シリアのアサド政権、これはお父さんの代からですけれども、これはマイノリティーの政権なんですね、多数派じゃなくて。
それで彼らISからみれば、シーア派のマイノリティーが、しかも独裁者として国を統治している。それに対する反発心がある。シリアではスンニの方が多数派です。多数派なんだけれど他の要素が入ってくることをがんとして受け付けない。そういう態度をとっているわけです。
だからいずれに転んでも、それは専制的な政治になってしまう。少数派の独裁政権か、多数派の独裁政権か。いずれにしても独裁政権に終わる。そういう状況にあるわけです。こういう状況の中では勝者はISになってしまう可能性がある。それが「カリファット」という昔のイスラム圏を形成することになる。
イスラム圏では、イマーム(指導者)は発言権というか大きな力をもっているわけです。つまり聖職者であるイマームなんですけれども、それは宗教的な力を持っているだけではなくて、法制度、シャリーアのロー、法廷、司法の力も持っているのです。
イマームの地位を確固としたものにしているのは、いわゆるカリファットをベースとした力をもってサポートしていると。そういうことを理解できてないのが欧米の国だと思うんです。今、同じことがフィリピンのミンダナオ島で起こっています。
残念ながらアメリカのメディアの力が強く、日本も含めてその影響下にある国のメディアは、いったい何が起きているのか見る眼をもっていない。アメリカ的見方になってしまっている。
本当の目的はイマームに対する影響力なんですけども、それをサボタージュするかのように、いわゆるISの兵士が蛮行に及ぶことをむしろサボタージュするためにやっている。その可能性もあると思います。
私は理想主義者と思われることがありますが、実は頭の中の私は極めて現実主義者です。しかし、心の中の私は理想主義に燃えています。しかし、現実と離れた理想主義ではいけない。日本の有名な三大紙とかNHKから情報を得れば正確な情報が得られると思われたら、ちょっと間違いだと思います。
かえってYouTubeの方が適した情報が得られるかもわかりません(笑)。
(会場笑)
関根:ありがとうございます。YouTubeってオチがありました(笑)。
(会場笑)
ビックリしましたけれども。もうお時間となりますが、今回、博士は3年連続の来日でした。今回がパブリックでの最後のイベントになるわけですが、何か一言これを伝えたいというラストメッセージがありましたら是非お願いします。
ガルトゥング:創造力、独創力です。問題にうちひしがれないで創造力をたくましくもってアイデアをだす、ということです。つまり新しいアイデアをだして、もちろん明日それが実現するわけではないけれども、それで諦めないでいいアイデアをだしつづけてください。幸いこの部屋には若い方たちがたくさんおられる。その柔軟な頭で未来を考えてください。素晴らしい未来を築くための大きな責務を持っておられるのです。
本日はありがとうございました。
関根:ありがとうございました。
(会場拍手)
Occurred on 2017-06-13, Published at 2017-07-26 17:30
平和を科学的に研究し、その成果を共有するためには何が必要か。国際社会の平和について学ぶ上で基本となる事項をわかりやすく解説。
平和学は、戦争、貧困、開発、人権といった様々なテーマが関係する分野である。
本書ではこのような国際関係論のテーマと平和学を関連づけ、平和学の歴史、そして平和や戦争をどのように理解するべきなのかを、初学者にもわかりやすく説明し、さらに行動学としての平和学、すなわち、平和構築方法論のエッセンスを提供する。
近代文明は、富の蓄積だけを目指す経済成長路線に象徴されるように、人間の自然の多様性を切り捨てて、ひたすら一元化され一様に画一的な目標を追い続けてきた。
こうして突き進んだ結果け、遭遇しているのが、環境破壊をはじめとする、深刻な「地球的問題群である。
「この世代に生きる私たちは、自然と折り合っていかなければならないと私はかたく信じております。そして、私たちは、自然の支配に熟達するのではく、私たち自身を制御する面で熟達することを、今日ほど強く求められたことはなかったと考えております」レイチェル・カーソン
多様な知恵の時代への移行
物的な豊かさがかなりの程度満たされている今日、人々は個性や多様性を求める傾向を強く示している。
また、技術進歩により、供給される財・サービスの多様性も一段と高まっている。
今後は情報、プログラミング、デザイン等といった、知識や知恵を新たに創造したり、使いこなしたりすることによって生み出される価値が、経済成長や企業収益、人々の満足を高めるための原動力となる。
こうした知恵の社会では、流行(社会主観)による価値の変化が大きい。
また、新しい社会主観を創造することによって、可変的(一時的)な価値を生み出す仕組みが社会的に創られていく。これがグローバル化すれば、グローバルな社会主観を創造できる情報発信力が大きな国際競争力となる。
商品説明
宗教学、憲法学、政治学、教育学、歴史学、キリスト教史学等の研究者らが、昭和期の戦前、戦中、戦後の天皇制の諸側面を論じる。教育、教会、無教会の現場におけるケーススタディも収録。
目次
はしがき
Ⅰ総 論
第一章 国民統合軸としての「天皇教」―制度の視点から 横田耕一
Ⅱ 現人神天皇から象徴天皇へ
第二章 敗戦と天皇の聖性をめぐる政治―「国体護持」と「国体のカルト」の制御 島薗 進
第三章 天皇は「人間宣言」でどう変わったか 吉馴明子
第四章 敗戦直後の教育勅語の廃止をめぐるキリスト者の言説―田中耕太郎と南原繁を中心に 石井摩耶子
Ⅲ 宗教からみる天皇制の桎梏
第五章 神道指令後における新しい神道の構想―岸本英夫の神道をめぐって 星野靖二
第六章 村岡典嗣の神道史研究とキリスト教―国体論と宗教理解 齋藤公太
第七章 「大東亜戦争」下の日本基督教団と天皇制―教団機関紙に見る「日本基督教樹立」の問題 豊川 慎
第八章 賀川豊彦における戦前と戦後のはざま 遠藤興一
Ⅳ ケーススタディ:教育・教会・無教会の現場で
第九章 満州国におけるキリスト教教育と国民道徳―孔子廟参拝強制をめぐって 渡辺祐子
第一〇章 戦中戦後の同志社と天皇制―湯浅八郎と牧野虎次の時代 伊藤彌彦
第一一章 田中剛二と神港教会―戦後、教団を脱退した教会の歩み 吉馴明子
第一二章 戦後初期「無教会」にとっての「象徴天皇制」―肯定と批判の意識の交錯 柳父圀近
Ⅴ 象徴天皇制の課題
第一三章 神権天皇制から象徴天皇制への転換―大衆天皇制の成立 千葉 眞
現人神(あらひとがみ)は、「この世に人間の姿で現れた神」を意味する言葉。現御神、現つ御神、現神、現つ神、明神とも言う(読みは全て「あきつみかみ」又は「あきつかみ」のどちらかである。)。
荒人神とも書く。
また、生きながらも死者と同じ尊厳を持つ。
という意味もある 「人間でありながら、同時に神である」という語義でも用い、主に第二次世界大戦終結まで天皇を指す語として用いられた。
後述する「人間宣言」では「現御神」の語を使用している。
本来は一定期間カミオロシなどのシャーマニズム的行為を続けた人間を指す言葉であった。
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天皇が現人神といわれた昭和戦前期…
余録
毎日新聞 2021/9/2
天皇が現人神(あらひとがみ)といわれた昭和戦前期、昭和天皇は自分を神扱いする側近にこんなことを言っている。「私は普通の人間と人体の構造が同じだから神ではない。そういう事を云(い)われては迷惑だ」(昭和天皇独白録
▲戦後、自らの神性を否定した人間宣言で昭和天皇は、国民とは「終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依(よ)リテ結バレ」ると宣明した。その後の新憲法のいう国の「象徴」という立場と、生身の人であることとの溝を埋める「信頼と敬愛」である
▲そんな「象徴」に連なる皇族という立場にも求められてきた「信頼と敬愛」だった。昨秋、秋篠宮(あきしののみや)さまは長女眞子(まこ)さまの結婚の自由を認めながら、皇室の婚姻(こんいん)儀礼を行うかは「多くの人が納得し、喜んでくれる状況」が前提だと語った
▲その眞子さまの年内の結婚へ向けて調整が進んでいるとの報道である。婚約が内定していた小室圭(こむろ・けい)さんの米国での就職の見通しがつき、眞子さまは結婚後は米国で新生活を始める。ただ納采(のうさい)の儀など皇室の婚姻儀礼は行わぬ見通しだ
▲結婚延期の原因となった母親の金銭トラブルについては小室さんが釈明の文書を出したが、「多くの人の納得」は得られなかったと判断されたのか。コロナ禍を理由に結婚式も見送られ、眞子さまには婚姻儀礼なしの皇籍離脱となる
▲皇族という生まれながらの宿命と、一個の人として当然の自由とのジレンマは、誰しも理解・共感できる今の日本の社会だ。若いお二人にはどうか声高とはいえぬ祝福やエールにも耳をすましてほしい。