今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「パール・バックの『大地』にはイナゴの大群が、空が暗くなるほど畑に襲いかかる場面があるが、穀物を食いつくすと自滅する。
ハメルンの笛吹きは鼠の大群をみちびいてライン河に入水させた。町は約束の礼を払わなかったので今度は町中の子供を同じく
集め、同じくつれ去った。
ある種の動物が全地球を覆うほどふえたためしはない。ふえればそのふえたことによって滅びる。
そのあるまじきことが今おこっている。人類はチブスコレラ天然痘その他伝染病のすべてを根絶した。わずかにガンが残っているが、近く
これも退治すれば人類がふえるのを妨げるものは何ものもなくなる。あればそれも退治するだろうから、人類は全地球を覆うだろう。
覆ったことによって滅びるだろう。太古の恐竜にその例がある。これを天の配剤または自然という。」
(山本夏彦著「世間知らずの高枕」新潮文庫 所収)
「パール・バックの『大地』にはイナゴの大群が、空が暗くなるほど畑に襲いかかる場面があるが、穀物を食いつくすと自滅する。
ハメルンの笛吹きは鼠の大群をみちびいてライン河に入水させた。町は約束の礼を払わなかったので今度は町中の子供を同じく
集め、同じくつれ去った。
ある種の動物が全地球を覆うほどふえたためしはない。ふえればそのふえたことによって滅びる。
そのあるまじきことが今おこっている。人類はチブスコレラ天然痘その他伝染病のすべてを根絶した。わずかにガンが残っているが、近く
これも退治すれば人類がふえるのを妨げるものは何ものもなくなる。あればそれも退治するだろうから、人類は全地球を覆うだろう。
覆ったことによって滅びるだろう。太古の恐竜にその例がある。これを天の配剤または自然という。」
(山本夏彦著「世間知らずの高枕」新潮文庫 所収)