「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

犬人一如どころか 2005・09・18

2005-09-18 06:06:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「人と犬は共に哺乳類だから、よく似た存在であることはやむを得ないと、はじめ私は思っていたが、次第に人は犬に及ばない

 のではないかと怪しむようになったのである。

  何より犬は金銭を持たない。したがって売買しない。むさぼらない。たくわえない。また武器を持って争わない。遠方へ行かない。

 犬の立ち回りさきは近所に限られている。

  私は人のなかのある部分が悪いと言っているのではない。ある部分が悪いということは、他の大部分は悪くないということだろう

 から、それなら満足のなかの不満足である。

  私は人は根本的に下劣醜陋な存在で、それは一時的なものでなく永遠のものだと信じているのである。」


   (山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)



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