今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「人と犬は共に哺乳類だから、よく似た存在であることはやむを得ないと、はじめ私は思っていたが、次第に人は犬に及ばない
のではないかと怪しむようになったのである。
何より犬は金銭を持たない。したがって売買しない。むさぼらない。たくわえない。また武器を持って争わない。遠方へ行かない。
犬の立ち回りさきは近所に限られている。
私は人のなかのある部分が悪いと言っているのではない。ある部分が悪いということは、他の大部分は悪くないということだろう
から、それなら満足のなかの不満足である。
私は人は根本的に下劣醜陋な存在で、それは一時的なものでなく永遠のものだと信じているのである。」
(山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)
「人と犬は共に哺乳類だから、よく似た存在であることはやむを得ないと、はじめ私は思っていたが、次第に人は犬に及ばない
のではないかと怪しむようになったのである。
何より犬は金銭を持たない。したがって売買しない。むさぼらない。たくわえない。また武器を持って争わない。遠方へ行かない。
犬の立ち回りさきは近所に限られている。
私は人のなかのある部分が悪いと言っているのではない。ある部分が悪いということは、他の大部分は悪くないということだろう
から、それなら満足のなかの不満足である。
私は人は根本的に下劣醜陋な存在で、それは一時的なものでなく永遠のものだと信じているのである。」
(山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)