監修:岩田 重則(中央大学総合政策学部)
「お墓」とは何でしょうか?
わたしたちが普段連想するお墓といえば、四角い石塔に「◯◯家之墓」と刻まれた墓石のことでしょう。「唐櫃(カロウト)」などと呼ばれる、納骨室の上に石塔を建て、お盆やお彼岸にお参りをして、線香を焚き、手を合わせ、先祖の霊を慰めるのが、死者に対する儀礼や祭祀であるという認識が一般的です。
しかし、このような現代のお墓のありようは、実はそれほど歴史の古いものではなく、近現代の現象にすぎません。現在でも日本列島各地を歩くと、さまざまな形態の「お墓」に出会います。
たとえば、現在でも、近畿地方を中心に、「両墓制」という学術用語で示されてきた「お墓」が存在していますが、この「両墓制」は、私たちが普段連想する「お墓」とは、明らかに異なる形態を持っています。日本の伝統文化といわれる「お墓」といえども、決して画一的ではないのです。
各地でのフィールドワークに基づいた、民俗学の視点から、日本の「お墓」とは何かを探ります。
2015年度制作
知の回廊 第108回「「お墓」の民俗学」