先月20日、俳句界の重鎮、金子兜太さんが御年98歳で亡くなられた。豪放磊落な人間性と語り口で多くのファンがおられた。私も好きな人物だった。中経文庫の「俳句の作り方が面白いほどわかる本」など俳句の面白さ、作り方などがわかりやすく書かれている。
わが家の庭の梅がやっとピンクの彩の面積がふえてきて、ふとタイトルの俳句が思い出された。
梅咲いて 庭じゅうに 青鮫がきている
伝統的な「有季定型」「花鳥風月」を大事にしつつ、とらわれない自由な発想で「前衛俳句」「社会性俳句」の世界を切り開いた。「人間はなまなましく面白いもの、人間も自然も生き物としてとらえ共感しあう、そういう世界で俳句は生まれる」と強調。アニミズムこそ必要だと訴えられた。感性鈍い私など、梅が咲く庭にたって、そこから青鮫がきているなどという感覚はなかなかでてくるものではない。
トラック諸島での戦争体験、目の前で友が非業の死をとげてゆく。その壮絶体験から
「水脈(みお)の果て 炎天の墓標を置きて去る」
敗戦後、日本銀行長崎支店に勤務した時
「湾曲し火傷し爆心地のマラソン」「原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫歩む」
「銀行員ら朝より蛍光す烏賊のごとく」
生まれた埼玉県秩父の農村ではぐくまれた自然との共生、アニミズム。
「曼殊沙華どれも腹だし秩父の子」「牛蛙ぐわぐわ鳴くよぐわぐわ」
「オオカミに蛍が一つ付いていた」
あふれる、おおらかな人間性が彷彿とする
「酒やめようかどの本能と遊ぼうか」「谷間谷間に満作が咲く荒凡夫」
指をおりおり5、7、5と数えつつ俳句をよむ凡人の我、読む人のこころに響く句はつくれそうにありませんね。愚作八句!
天上に声かまびすしあげひばり 赤と黒てんとうむしやファッショナブル
啓蟄やレンタル畑の子らも出て 昇竜のごと駆け上りたる野焼きかな
冬ばれやひとなき社に鯉二匹 節分や厄がはれる齢かな
古希の身や香りかすかに冬至の湯 白瀑布落ち行く先や深みどり
いやはやすごい人を失ってしまった。ご冥福をお祈りします・・・・
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます