新型コロナウイルス緊急事態宣言や、変異ウイルスや、オリパラ組織委員会長の女性蔑視発言、会長辞任、後継決め迷走、菅総理の息子問題や自殺者2万人越えなど冷え冷えする社会環境下、日経平均株価があれよあれよと言う間になんと30年ぶりに3万円を超えてしまった。
(筑前、386号線、松延池上空、ミサゴが獲物を探索旋回中)
要するに全世界がコロナパンデミック下で救済予算や経済対策予算を財政状態おかまいなしにどんどん出すものだから札束が全世界でばらまかれた。わが日本でも昨年国民ひとりひとりに10万円給付されたが8割がたは貯蓄にまわったらしい(私は全部使ってしまったが)。高額所得者へも一律給付だから金もちは金が余って仕方ない。その金が株式投資に回ってきたというわけ。なにも森村誠一ミステリーというわけではない。
今年もコロナ禍から完全脱出できる保証はないしオリパラが中止にでもなったら日本経済のダメージは大きかろうし、ますます対策予算が拡大する。ということで日経平均も35000円のさらなる大台越もあるやもしれないというわけだ。いやはや実態乖離でカネが金をうむ金融資本主義の再拡大だ。といっても私の塩漬株はいまだ含み損を抱えておりどうしようもない。いやはや2021年、どうなってゆくことやら?
なんとなく時間つぶしに「森村誠一の写真俳句のすすめ」という本が書棚にあったのでひっぱりだして読んでみた。氏いわく、あらゆる創作ジャンルにおいて受け取り手がいないと創作物は存在しえない。文芸には読者、絵画には鑑賞者、演劇には観客が表現者の存在価値を決める。しかい受け取り手が感動したからといって簡単には創作家にはなれない。しかし俳句の世界はだれでも5、7、5音をよむことで作家になれる。
俳句は作者の生きている作品宇宙を17文字に凝縮できる芸。凝縮能力により秀句と凡句の差は著しい。しかし名人と言えども死屍累々たる凡句のうえにわずかな秀句が輝いているだけである。秀句をものにするために必要なのは言葉の抽象化の訓練であるという。心に感じた世界、苦境を17文字に置き換える抽象の階段を登る訓練を毎日せよという。たとえば空を染める残照をみて、「赤い夕陽に染められている」と表現するのでは浅い。屈辱に胸をえぐられている人の心理に託して「心の奥から流れ出した血によって染められているような夕映え」とでも表現できれば句境となる・・というわけ。それをさらに煮詰めてゆくのが俳句の芸である。夕日を光のかけらとみる。
暮れ残る光の破片胸にあり
なるほどベストセラー作家の真髄はこういうところにあるのだと感じ入り、久しぶりに図書館に行き、森村誠一ミステリーを借りてきた。江戸川乱歩賞を受賞した「高層の死角」、日本推理小説作家協会賞をとった「腐食の構造」、そして「終着駅」の3冊を借りてきて読んだ。
1969年江戸川乱歩省受賞の作品「高層の死角」10年のホテルマン生活のキャリアを最大限に生かした密室殺人事件と殺人ほう助した美人社長秘書のダブル殺人事件の容疑者のアリバイ崩しサスペンス。新幹線他高速交通網がこれから整備されるという時代環境の中での巨大ホテルのチェックインや高層スイートルームの構造、ホテルマネジメントの隙間をぬって犯人が周到のアリバイ工作をする。それを殺された秘書の恋人だった捜査一課長の刑事が謎解きにとりくむ。さすがに江戸川乱歩賞をとっただけのことはある。松本清張の点と線を彷彿させる。
「腐食の構造」( 角川書店611ページ)日本推理作家協会賞受賞の長編社会ミステリー。濃縮ウランの実用化実験に成功した若き科学者雨村をとりまく政財界の魑魅魍魎、それに美しい女性たちが絡む。親友である大商社の御曹司土器村との若き日のアルプス縦走時におきた道標へのいたづら。それがもたらした未来の妻たちや男たちとの最初の出会いになってゆく。研究者、国防省、政治家、財界、政商、色と金と権勢欲が絡む腐食の構造を解きあかす。TVドラマにもなった長編ミステリー。一体どういう構想着眼でこんなミステリーを構想してゆくのか聞いてみたいものだね
心に響いた句境、シャッターチャンスをカメラで写し撮り、感動ポイントをどう抽象化して表現するか、その訓練が秀作を生み出すと森村誠一は言う。がんばってみましょう!