子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「狙った恋の落とし方。」:フォン・シャオガンに名誉観光大使の称号を

2010年03月09日 22時59分14秒 | 映画(新作レヴュー)
結婚相手を探す男と不倫に悩む女が北海道をさすらう,という筋の中国作品が,中国の映画興行史上第1位のヒットを飛ばすなんて,一昔前には一体誰が想像しただろう。しかも映画を観た中国人が,大挙してロケ地を訪れるという,「フェイチェンウーラオ(原題)」ブームを巻き起こすとは。
「エコノミック・アニマル」と揶揄され,「メガネにカメラ」が定番の日本人団体観光客が世界中で話題となった1970年代から早30年,その日本人に替わって,お金とバイタリティーの両面で世界を席巻している中国人の「現在」を象徴するような作品だ。

中国で1億人以上(!)が観たというニュースが伝わってきたので,さぞかしポピュラーで分かり易い作品かと思ったら,さにあらず。全体的にはコメディーの体裁を保ちながら,ちょっと目を離すとシリアスに流れ,元に戻ったと思ったら,また脱線する。一言で括ることが難しい,実に変わった「婚活」映画だった。

主役二人の疑似恋愛模様が取りとめなく延々と綴られるが,「おっ」と思わせるのは,冒頭で主人公の昔の知り合いというゲイが登場して主人公の偏見を揶揄するエピソードと,花嫁候補の一人が「1年に1回」という(ほぼ)セックスレスの結婚を望み,主人公が呆れる,というシーンが出てくることだ。
「Google」への公共施設からと見られる集中攻撃や,「アバター」の上映自粛問題などによって,中国の排他的な国家主義がまたもや取り沙汰されているが,こうしたシークエンスが中国国内でもカットされずに上映されているとすると,少なくとも映像作品に関する検閲のレヴェルは,(ゆっくりとかもしれないが)確実に西側のそれに近付いていることが推測される。そしてそういった変化が,平均的な中国人の生活の質的な変化を反映したものであることも,間違いないだろうということも実感出来る。それは収穫だった。それだけか?と言われても,困ってしまうのだけれど。

花嫁候補を探すため,ネットの「結婚相手募集サイト」に投稿する主人公のグォ・ヨウが,帽子をかぶってサングラスを掛けると「伊武雅刀」にしか見えなかった,というのが結構致命的だったかもしれない。と思いつつ,道東の景色は,必ずしも絵葉書的なものばかりではなかったことだけは,きちんと書いておきたい。
次は「日本人も冗談を言うんだ」という高飛車な台詞に対抗できるような日本映画で,誰か堂々と大陸に乗り込んでくれないものだろうか。
★★☆
(★★★★★が最高)


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