映画「シン・ゴジラ」：次は東京五輪の開会式で会いましょう

とんでもない大ヒットとなっているらしい。アニメでもなく，女子高生をターゲットにした土屋太凰や有村架純，二階堂ふみ等と若手のイケメン俳優との順列組み合わせ恋愛劇でもなく，EXILEやAKB周辺作品でもないのに，既に興行収入は40億円を超え，公開後５週目となった先週のランキングでもなお３位に踏みとどまっているというのは一種の「現象」と言っても良いのではないかとさえ思う。

総監督と監督という分業体制は，大雑把に言って庵野秀明が生み出すアイデアやイメージを，樋口真嗣がCGと現場での演出によって映像として定着させるという作業分担で進められたのではないかと想像するが，そのコンビネーションのレヴェルの高さが成功の第一の理由であることは間違いないだろう。既に各方面から絶賛されているとおり，緊急事態を机上のものとしてしか把握していない政府が，ゴジラの出現という事象の勃発によって右往左往する様子をリアルに捉えた前半部，結局現場の地道な積み上げによってしか問題は解決されないという真実をアクション映画として仕上げたクライマックス，いずれもイメージと技術の高度な融合がなければ，ここまでの成果は生み出し得なかったであろう。

金子修介の平成ガメラシリーズに特殊撮影監督として参加した樋口真嗣は，第１作「ガメラ　大怪獣空中決戦」において作り上げた，湾曲した東京タワーが夕日に映えるショットで私のハートをぶち抜いたのだが，庵野秀明と組んだ本作でも同様に，ゴジラを無闇矢鱈と暴れさせずに，高度に発達した都市にただ闖入してしまった「異物」として際立たせることに腐心している。
かつての「ゴジラ」シリーズが子供向けに変節して，次第に勢いを失っていってしまった最大の理由は，怪獣同士の対決をメインにした「派手なアクション映画」こそが子供の歓心を買うのだ，という思い込みなのだろうが，そもそも怪獣はそれが目の前に現れるだけで，とてつもない「事件」なのだ。その驚きと恐怖を拡大する，という原点回帰がはまったのが本作の成功の肝だろう。
複数の怪獣が現れた場合に，そのサイズ感がフィットし，怪獣同士は目的や意志が一致することなく必ず反目し合う，というお約束自体を壊した二人の演出家の英断に拍手を送りたい。

リオ五輪が終わって，今度は東京大会の開会式の演出を誰が担うのかということに話題が移っているが，ここは庵野＝樋口コンビに再登板をお願いしたい。条件は２兆とか３兆とかかかるらしい東京の新しいインフラを，ゴジラが壊さずにスペクタクルを生み出す，という離れ業をやってのけること。小池知事，あなたが実名で出演する続編と同時公開ということで如何でしょうか？
★★★★
（★★★★★が最高）