子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年サッカーW杯南アフリカ大会E組:予選突破は大変だが,可能性はゼロではない

2009年12月18日 23時50分39秒 | サッカーあれこれ
今月5日に行われたW杯抽選会からほぼ2週間が経った。翌日の新聞には,各グループの監督が集まって撮られた集合写真が載っていたが,何故か日本が入ったE組は,岡田監督を除く3人の監督が闘志を湛えつつ微笑み合う写真になっていた。なぜそんな事態になったかと言うと,別に岡田監督がボイコットした訳でも何でもなく,そんな儀式が行われることが事前に伝えられていなかったために,岡田監督だけがさっさと帰ってしまった,というのが真相らしい。結局残った3人は「日本の存在を忘れたかのような雰囲気(nikkan sports.com)」の中で,にこやかに写真撮影に応じたそうだ。

対戦したばかりのオランダの監督ファンマルヴァイクが岡田監督の顔を覚えておらずに会話していた,というエピソードに代表されるような,「日本以外」の3ヶ国による争いという雰囲気は,この2週間の間,国内のマスコミにも蔓延していたように感じる。
世界ランキング3位のオランダに,五輪,W杯の実績も充分で,あのエトーを擁するカメルーン,更に予選でポルトガルとスウェーデンを破ってきたデンマーク。
近年の成績が反映されるFIFAランキングは勿論,長いサッカーの歴史の中で培われてきた「格」という点から見ても,明らかに日本より上位に位置するチームを前にして,何となくあきらめに近い空気が流れてしまうのも仕方がないという気もする。
アグネス・チャンと同じくらい日本語が苦手な日系ブラジル人のサッカー評論家も「いずれも今の日本が勝てる相手ではないよ」と断言しているようだし。

そういった空気に,岡田監督の「目標はベスト4」発言が影響を与えていないとは言いきれない感じもある。確かに出場国のFIFAランキングで見れば,日本より下は僅かに4ヶ国しかないという現実を前にして「ベスト4を目指す」と果敢に言い放った岡田監督の意図が何処にあるのかは,外部にいる人間は推し量りにくい。
何処かの予備校のCMの台詞ではないが,「頑張って頑張って」かつ運にも恵まれれば,ひょっとしたら手が届くかもしれない「予選グループ突破」という第一の目標を前面に打ち出さなかったことによって,逆に真剣な議論が興りにくい雰囲気になってしまったという状況は,過去3回を見ても例がなく,やはり何となく寂しい感じがする。

だがそれでも,敢えて言いたい。日本にもこのグループを抜けるチャンスはあると。
確かにどの国も大変な相手ではあるが,対戦相手の格や実績に怯えて臆しているようでは,そもそも「W杯」というトロフィーに挑戦する資格はないはずだ。
オランダとは引き分け,残る二ヶ国からは勝ち点3をもぎ取る,という前向きな目論見を中心に,全部勝つという超前向きな願望と,1勝1分け1敗や1勝2分けでの得失点差抜けという現実的な見立てを加えて,あらゆるケースを想定した詳細なシミュレーションを何度も繰り返し,その作戦を具現化するために最も確率の高いメンバーを選んで勝負に出るという姿勢が,サポートを含む日本代表チームには求められる。

その「予選突破」を実現するために日本に必要なものは数え切れないくらいあると思われるが,どれか一つと言えば,それは高くて速くて強いCBだと私は考えている。
オランダのスピードと組織力が融合した攻撃力,そしてカメルーンのエトーとデンマークのベントナー,この二人の絶対的なFW。このタイプの異なる二種類の攻撃を抑え込むディフェンスの整備こそが,日本を予選突破に導く最も重要な,そして獲得するのが最も難しい鍵だろう。闘莉王か中澤のどちらか一人でも蹴落とすような若いCB(多分最もその可能性が高いのは吉田麻か森重だろうが)の台頭があれば,初戦のカメルーン戦を制して波に乗る可能性は充分にある。

更に,このグループ分けで浮上してきた他の3ヶ国の「油断」も,日本の追い風になるはずだ。デンマークとカメルーンは互いの研究に最も力を割くだろうし,日本に完勝したばかりのオランダは決勝トーナメントの1回戦で対戦するF組の動向に気が行っているはずだ。そんな中で,1戦目と3戦目の会場となるスタジアムの標高が1,400mと1,500mという地理的条件から予想される,涼しい気候を活かした「走り勝つ」サッカーを展開出来れば,サプライズを起こす可能性は膨らむはずだ。

ジョホールバルの歓喜から始まった日本の挑戦もこれで4度目。南アフリカ大会を,本大会に参加することが目的という段階を越えたチャレンジにするために,あと半年の間,全国のあらゆる場所で熱く激しい議論が巻き起こって欲しい,と切に願う。


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