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映画「ミレニアム2 火と戯れる女」:「北欧産のミステリー」という妙味は何処へ?

2010年10月20日 20時13分48秒 | 映画(新作レヴュー)
著者の死後に世界的なベストセラーになった原作を,スウェーデンの冷たい空気をそのまま閉じこめたような映像で映画化した第1作は,わざわざハリウッドで,しかもあのデヴィッド・フィンチャーを起用してまでリメイクすることはないんじゃないの?というくらい良くできたスリラーだった。
3部作の幕開けは,ハイテクを駆使するパンクなハッカー,リスベット・サランデル(ノオミ・パラス)と編集者ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)が,スウェーデンの名家で40年前に起こった失踪事件と連続猟奇殺人事件の謎に挑む,それだけで独立した物語となっていた。特に「古い一枚の写真」というアナログな素材を出発点として,二人がハイテクと想像力を駆使しながら真相に迫っていく描写には,原作に劣らない緊密度があり,捜査の過程で二人の間に芽生える連帯感も過不足なく描出されていた。

その続編は,前作の最後で大金を手にして国外に旅立ったリスベットがスウェーデンに帰国すると同時に,東欧の少女売春を取材していたライターがミカエルのもとを訪れるところから始まる。そのライターと,事件について執筆していた恋人が同時に殺され,現場に残されていた凶器についた指紋からリスベットに嫌疑がかかる。

役者は揃い,新たな事件のお膳立ても充分。さあまたMacBookを使った謎解きが始まるぞ,と思いきや,案に相違して鍵となる人物が次から次へと,あっさり顔を表す。
仲間は痛めつけられ,ミカエルは恋人といちゃいちゃしながら推理を巡らすが,リスベットはと言えば,手持ちぶさたでひたすら煙草を吸うのみ。
見せ場はウィグを使った変装と,自分の過去のファイルを取り戻すためのファイトに勝って小さな身体で大きなバイクを転がす場面,そしてラストで埋められた墓穴からゾンビの如く甦って黒幕を襲うシーンくらい。後は物語の収束に向けて必要になってくると思われる少女時代の回想シーンが尺を使うだけで,どうにも物語は弾まない。

原作に忠実な映画化ゆえに仕方ない部分もあるのだろうが,ここまでペースが変わるとやはり観客は戸惑わざるを得ないだろう。第1作に立ちこめていた「北欧産のミステリー」という気配は消え失せ,普通のスリラーという印象しか残らないのは,舞台が北部の島から都会へ移ったことが大きいのだろうが,監督が交替(第1作はニールス・アルデン=オプレブ。第2,3作はダニエル・アルフレッドソン)したこともかなり影響しているのかもしれない。
第1作で生まれたリスベットとミカエルというユニークな捜査コンビは,最後のショットでようやく再会するまで一度も機能せずに「to be continued」となってしまったのだが,最終作ではここで溜まってしまった欲求不満と謎の分まではじけることが出来るのだろうか?
★★☆
(★★★★★が最高)


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