子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.2:「流れ星」「フリーター,家を買う。」

2010年10月25日 22時03分41秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
主演が上戸彩と竹野内豊。松本潤を起用しながら不完全燃焼に終わった前クールから,是非とも巻き返しを図りたいであろう2010年秋の月9のメインキャストとしては,かなり地味ではないか。そんな印象を持ったのだが,やはり「流れ星」初回の数字は13.6%という,月9としては低い水準に留まってしまった。
しかし人格破綻者の兄に苦しめられる女と,肝臓移植が必要な妹を持つ男という,不幸てんこ盛りのカップルの出会いを描いた初回の作りは,実に丁寧で,好感の持てるものだった。

イメクラ勤めを恋人に隠して,兄の借金を払い続ける健気なヒロインを演じる上戸彩は,水商売という役柄もあってか,TVのフレームでは珍しく足まで見せるフルショットが多かったのだが,それが上戸彩のパブリック・イメージとは少し離れたはすっぱな色気と,真面目な性格という,相反する要素を上手く表現していたように思う。
役者としてのイメージが上戸彩の6~7年前とかなり重なるように感じる北乃きいは,実の父親と年齢が近い竹野内豊の「妹役」を演じるという戸惑いもあったのか,やや精彩を欠いていた。本当は話題を呼んだ写真誌のスクープの上前をはねるような,大人の役柄の方が,カムバック作としては相応しかったのかもしれない。
このところ悪役づいている稲垣吾郎は,ようやく「TVドラマ」という難所に自分の足場を見つけたような,充実感を感じさせる演技を披露していた。ただし地歩を固めたこの場所から,再び「連ドラ」の主役に戻っていけるかどうかは,定かではないが。

「風のガーデン」以来となる演出の宮本理江子は,庭園に咲く季節の草花の代わりに,竹野内豊が勤める水族館にいるクラゲの妖しく美しい姿を,悩める家族を描く背景に持ってきた。「脳みそがない=悩まない」クラゲ,というメタファーが,結構深いところでドラマのアウトラインを定めているような感じもあり,予想以上に中身の詰まった物語になりそうな予感を感じさせた初回だった。
ただ,「コブクロ」の主題歌にはまいった。どうみても切なさをべったりと打ち出すタイプのアーティストではなく,人生を俯瞰で切り取る「くるり」とか,辛い人生を軽やかに転がしてしまいそうな「クラムボン」辺りが,クラゲの飄々とした姿には似合うと思うのだが。

一方で,売れっ子作家有川浩の原作を,二宮和也の主演でドラマ化した「フリーター,家を買う。」の初回視聴率は17.6%と,こちらはほぼ期待通りだったのではないだろうか。
そこそこの大学から会社に入った途端に,実社会の矛盾や偽善に我慢できずに退職してフリーターとなった若者の挫折と再生の物語という,実にタイムリーな企画に加えて,二宮を筆頭に芸達者な役者を適所に配置したキャスティングを見ただけで,ある程度の内容と数字は保証されたような感触はあった。初回の数字と内容は,そんな予想を裏付けたものとなったと言える。

役者の中でも,病んだ母に扮した浅野温子の演技には迫力があった。「ごめんなさい,ごめんなさい」と呟き続ける後ろ姿を見て,おののかない子供はいないだろう。
井川遥は相変わらず美しかったし,作業服姿の香里奈の凛々しさも特筆ものだった。最早死語かもしれないが,「3K職場」と揶揄された土木作業現場のイメージアップを考えれば,土工協の推薦を受けてもおかしくないくらいだ。

だが17%という数字は,現代にあっては保つのが非常に難しいラインでもある。挫折→社会の厳しさを知る→奮起→再生,という予定調和の物語を淡々と進めるだけでは,たとえ二宮といえども,維持することは簡単なことではない。
第2回以降は,隣家の主婦(坂口良子)の悪意や医者の家に嫁いだ妹(井川遥)の苦悩などが横糸となって,どれだけドラマに奥行きを持たせられるかが鍵になってきそうだ。


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