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2012年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.2:「純と愛」

「朝の連続テレビ小説」。まるで普通名詞のようなドラマ枠名だが,毎日15分という放送フォーマットについて行くことが出来ず,これまではどんな話題作も敬遠してきた。しかし今期は「家政婦のミタ」以来となる脚本家遊川和彦が手掛ける作品とあって,ついつい「愛と誠」もしくは「純とネネ」などと言ってしまいそうになるというハードルを越えて,視聴を続けている。

祖父が築いた,人に幸せを与える夢の国=リゾートホテルの再建を夢見て,ホテルパーソン修行に励む元気だけが取り柄の純粋な女の子(夏菜)と,双子の弟を亡くして以来,人の本性が見えてしまうという能力を身に付けた代わりに,社会との折り合いを欠いてしまった青年(風間俊介)の物語。
幅広い層に評判が良かった前作の「梅ちゃん先生」に比べると,久々の「現代物」という,この枠に特有のハンデもあってか,「うるさい」「落ち着かない」「暑苦しい」「風間俊介の前髪が邪魔だ」「風間俊介が20年前の江口洋介にそっくりだ」(後の二つは私の感想)などと,どちらかというと否定的な反応が多いようだ。
確かに「身体だけが目当て」という台詞が主役ふたりの間で何度も交わされたり,ヒロインがキスを成就できずに焦ったり,望まれない妊娠や統合失調症や借金や兄弟の死のトラウマなど,ネガティブな要素が前面に出てきたりと,朝ドラに「爽やかさ」を求める向きには「どうなってるんだ?」という印象を抱かせる展開と言えるかもしれない。

だが「家政婦のミタ」や「女王の教室」などで,トラウマを背負った人間を主人公に物語を書き続けてきた遊川和彦のキャリアを考えれば,これまでの展開は想定内だろう。社会には不適合者の烙印を押されてしまったように見える愛が,実は英語が堪能で経済学にも明るいスーパーマンでもあるという設定は,「ミタさん」と同様に物語を動かすフックになっている。
純粋故に空気を読めず,他人をも騒動に巻き込むことで,周囲から煙たがられ疎んじられても,正論と直感を信じて突き進む主人公の「痛い人生」には,視聴者を「この先どうなるんだろう?」と思わせながらもぐいぐいと引っ張って行く,字義通りの「サスペンス」がある。

宮古島の家族,純の職場であるホテル,そして愛との恋愛と愛の家族と,大まかに3つに分かれるプロットが,ドラマとしてスムーズに溶け合っていないという印象は否めない。風間俊介の演技も,やや鼻につく部分がないでもないし,吉田羊演じる謎の先輩の立ち位置がはっきりしないのも残念だ。
だが,既視感がありそうで,実は見たことのない,そして躍動感溢れる物語が内包するエネルギーは,ものぐさな私をして最後まで付き合おうという気にさせるレヴェルは,充分にクリアしている。
願わくば,城田優が純を惹きつけるためにやたらと引用する作家に幅を持たせて,ヴォネガットあたりを引いてくれると最高なのだが,どうでしょうか?
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