子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「のだめカンタービレ 最終楽章後編」:引き延ばし作戦は失敗に終わってしまった
TVシリーズ,そして映画化第1作となる前作では,物語の中核をなす柱として,クラシックの佳曲が幾つか(「ベト7」や「ラプソディー・イン・ブルー」など)取り上げられてきたが,本作ではラヴェルのピアノコンチェルトがメイン・テーマとなっている。これがジャズ・テイスト溢れる曲で,ラヴェルと言われても「ボレロ」しか知らなかったクラシック音痴の私も前のめりになるような,迫力ある演奏シーンが繰り広げられる。いっそのことアニメーションや実写とCGの合成を目一杯使って,ディズニーの名作「ファンタジア」を模したイメージ・シークエンスをもっと展開しても良かったのに,と思ったくらいだ。
裏を返せば肝心の物語部分は,千秋との関係だけでなく,コンクールに出られないまま留学の修了が近付き,あせり落ち込むのだめ(上野樹里)の眉間の皺を写したショットばかりが延々と続き,「芸術の終着点」というテーマは薄く引き延ばされて,力を失ってしまっているということに他ならない。興行的にはホクホクかも知れないが,TVドラマ史に残るユニークな作品の幕切れとしては,残念ながら何とも中途半端なものになってしまった。
どんどん一人で前に進んでいく千秋先輩(玉木宏)に対して湧き上がってくる複雑な感情を持て余し,文字通り途方に暮れるのだめ(上野樹里)の姿で終わった「最終楽章前編」は,主人公二人の関係を扱ったメイン・プロットを,千秋が凋落オーケストラを立て直す過程がサブ・プロットとしてうまく支えていたことが,作品に前進するエネルギーを与えていた。
それがシリーズの最終作となる本作では,芸術を志す者がいつかは自問するであろう「自分は何を目指して,どこまで行くべきなのか」という悩みが,単独でクロース・アップされているが故に,かえって訴求力を欠いた描写に終始するという結果を招いてしまっている。せっかく声優に蒼井優を起用した屋根裏の作曲志望の学生との絡みも通り一遍だし,旧友との再会もペースを変えるエンジンにはなっていない。
それでも,大々的に展開しているポスターを観た誰もが想起するであろう,Sオケ(もしくはライジング・スター)でののだめと千秋の共演というクライマックスが用意されていたならば,単調な展開に対するフラストレーションも少しは解消されたかも知れない。映像的なカタルシスという点では,原点に返った二人の連弾という選択も確かにありかもしれないが,「恋愛の成就は,必ずしも芸術面での成長に優先する課題ではない」というシニカルなテーマの結びとしては,この幕切れは肩透かしと言わざるを得ない。さんざん痛い目に遭ってきたはずの,フジテレビの映画化路線に乗せられた私が甘かった,と深く反省。
★★☆
(★★★★★が最高)
裏を返せば肝心の物語部分は,千秋との関係だけでなく,コンクールに出られないまま留学の修了が近付き,あせり落ち込むのだめ(上野樹里)の眉間の皺を写したショットばかりが延々と続き,「芸術の終着点」というテーマは薄く引き延ばされて,力を失ってしまっているということに他ならない。興行的にはホクホクかも知れないが,TVドラマ史に残るユニークな作品の幕切れとしては,残念ながら何とも中途半端なものになってしまった。
どんどん一人で前に進んでいく千秋先輩(玉木宏)に対して湧き上がってくる複雑な感情を持て余し,文字通り途方に暮れるのだめ(上野樹里)の姿で終わった「最終楽章前編」は,主人公二人の関係を扱ったメイン・プロットを,千秋が凋落オーケストラを立て直す過程がサブ・プロットとしてうまく支えていたことが,作品に前進するエネルギーを与えていた。
それがシリーズの最終作となる本作では,芸術を志す者がいつかは自問するであろう「自分は何を目指して,どこまで行くべきなのか」という悩みが,単独でクロース・アップされているが故に,かえって訴求力を欠いた描写に終始するという結果を招いてしまっている。せっかく声優に蒼井優を起用した屋根裏の作曲志望の学生との絡みも通り一遍だし,旧友との再会もペースを変えるエンジンにはなっていない。
それでも,大々的に展開しているポスターを観た誰もが想起するであろう,Sオケ(もしくはライジング・スター)でののだめと千秋の共演というクライマックスが用意されていたならば,単調な展開に対するフラストレーションも少しは解消されたかも知れない。映像的なカタルシスという点では,原点に返った二人の連弾という選択も確かにありかもしれないが,「恋愛の成就は,必ずしも芸術面での成長に優先する課題ではない」というシニカルなテーマの結びとしては,この幕切れは肩透かしと言わざるを得ない。さんざん痛い目に遭ってきたはずの,フジテレビの映画化路線に乗せられた私が甘かった,と深く反省。
★★☆
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