猿が知性を持って,感情をコントロールするようになる過程を撮りたい。巨木を駆け上がり,空を舞う猿の群れを,自由自在にカメラを動かしながら撮りたい。そして,霧に包まれたコールデンゲイト・ブリッジの中から現れた一頭の馬を駆る猿の姿を撮りたい。
これまで多くのクリエイターたちが頭の中に描いてきたであろうイメージが,最新のコンピューター・グラフィックスの力を得て,鮮やかにフィルムに焼き付けられている。猿たちが獲得した自由は溢れんばかりの躍動感に満ち,人間は自然の支配者であるという愚かな幻想を猿たちが木っ端微塵に打ち砕く様は,痛快ですらある。
SF映画史に燦然と輝く傑作と称されている「猿の惑星」のプリクエル(前日譚)。
猿が人間を支配するという物語は,一見至極シンプルなお伽噺に見えながら,あのティム・バートンですらリメイクに失敗した難物だ。巧妙なメイクやCGによって猿(チンパンジー)をただ人間に近付けるだけでは,どうやっても観客に親近感を覚えさせることは困難である一方,視点を人間側に置いて描いた場合は,1作目に出てきた「自由の女神像」を超えるインパクトのあるエピソードを見つけることが,これまた難物であることは,上記のリメイク作や,オリジナル・シリーズの第2作以降の作品が証明している。
本作「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」がそういった高いハードルを乗り越えて,見事に傑作たり得た理由の一つは,アンディ・サーキスの演技とそれを映像化したモーション・キャプチャー技術の洗練だろう。「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラム役で,CG時代のパントマイム役者としての地歩を固めたサーキスの繊細な演技がなければ,人間に虐げられる猿から苦悩する「シーザー」へと変貌を遂げる,主人公の感情の襞は,これほど鮮やかに表現されることはなかっただろう。
このところ乗りまくっているジェームズ・フランコだが,今回はやや見せ場を欠いて,知性を持った猿に見えないこともない久々のジョン・リスゴーに,語り手としての役割を振っている。時々黒木メイサとダブって仕方なかった「スラムドッグ$ミリオネア」のフリーダ・ピントは,可もなし不可もなし。
捕まって動物保護センターのような場所に連れて行かれたシーザーが,ジャングルを模した広い部屋の壁に描かれた絵にぶつかる瞬間,ピーター・ウィアの「トゥルーマン・ショー」とものの見事にシンクロするが,あれは意識的だったのだろうか。
それにしても「X-MEN」然り,「スター・トレック」然り,プリクエルものにオリジナルを超えるような秀作が相次いで生まれるというのは,なんとも皮肉。
★★★★
(★★★★★が最高)
これまで多くのクリエイターたちが頭の中に描いてきたであろうイメージが,最新のコンピューター・グラフィックスの力を得て,鮮やかにフィルムに焼き付けられている。猿たちが獲得した自由は溢れんばかりの躍動感に満ち,人間は自然の支配者であるという愚かな幻想を猿たちが木っ端微塵に打ち砕く様は,痛快ですらある。
SF映画史に燦然と輝く傑作と称されている「猿の惑星」のプリクエル(前日譚)。
猿が人間を支配するという物語は,一見至極シンプルなお伽噺に見えながら,あのティム・バートンですらリメイクに失敗した難物だ。巧妙なメイクやCGによって猿(チンパンジー)をただ人間に近付けるだけでは,どうやっても観客に親近感を覚えさせることは困難である一方,視点を人間側に置いて描いた場合は,1作目に出てきた「自由の女神像」を超えるインパクトのあるエピソードを見つけることが,これまた難物であることは,上記のリメイク作や,オリジナル・シリーズの第2作以降の作品が証明している。
本作「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」がそういった高いハードルを乗り越えて,見事に傑作たり得た理由の一つは,アンディ・サーキスの演技とそれを映像化したモーション・キャプチャー技術の洗練だろう。「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラム役で,CG時代のパントマイム役者としての地歩を固めたサーキスの繊細な演技がなければ,人間に虐げられる猿から苦悩する「シーザー」へと変貌を遂げる,主人公の感情の襞は,これほど鮮やかに表現されることはなかっただろう。
このところ乗りまくっているジェームズ・フランコだが,今回はやや見せ場を欠いて,知性を持った猿に見えないこともない久々のジョン・リスゴーに,語り手としての役割を振っている。時々黒木メイサとダブって仕方なかった「スラムドッグ$ミリオネア」のフリーダ・ピントは,可もなし不可もなし。
捕まって動物保護センターのような場所に連れて行かれたシーザーが,ジャングルを模した広い部屋の壁に描かれた絵にぶつかる瞬間,ピーター・ウィアの「トゥルーマン・ショー」とものの見事にシンクロするが,あれは意識的だったのだろうか。
それにしても「X-MEN」然り,「スター・トレック」然り,プリクエルものにオリジナルを超えるような秀作が相次いで生まれるというのは,なんとも皮肉。
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(★★★★★が最高)
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