まだ若かりし頃フェリーニの映画を観て,それまで馴染んでいたハリウッド製のアメリカ映画と根本的に何が違うのか考えたときに,一番に感じたのが女優がふくよかであるということであり,二番目がいろんな顔の役者が出てくるということだった。設定の特異さがあるとは言え「人生,ここにあり!」に出てくる役者を観ていると,やはりイタリア映画の強みのひとつは,この世を構成しているたくさんの要素を凝縮したような,とりどりの人間の顔を揃えてあるということなのかもしれないと,改めて感じ入ってしまった。
世界で初めて制定された精神病院廃絶法である「バザリア法」の施行によって,病院から実社会へと踏み出すこととなった元患者たちと,彼らの出発を自らのリスタートに重ねて協同組合を成功させようと奮闘する男(ネッロ)を描いた,イタリア・ゴールデン・グローブ賞(一体どんな賞なのかは良く分からないけれども)受賞作。
実話を元に構成された物語は,成功譚に付きものの高揚感は確保しつつも,善悪両面の運が支配する世界のやるせなさも漂わせつつ,笑わせながら賑やかに進んでいく。
冒頭に記したように,とにかくユニークな顔をした(失礼)患者たちが,全編にわたってヴィヴィッドに弾んでいるところが肝だ。
まるで自らの病気を全て知り尽くしていながらも,所詮そこからは脱却出来ない,という諦念に縛られていたようにすら見えた彼らが,自分で稼いだ金で生活することの尊さを知り,社会人としての尊厳を取り戻していく過程は,実に感動的であり,その輪が広がっていくことを示唆したラストシーンの余韻は忘れがたい。
また,どんなに妄想と強迫観念に押しつぶされそうになろうとも,強力な性欲はまた別の話である,ということを描いた「出張旅行」エピソードも泣かせる。ついに思いを果たした帰りの車中の歌声は,純粋で幸福なエネルギーに満ちている。
患者の中では,「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドを真似たかのように寡黙な理事長が笑わせる。ひたすらビールを呷りながら,熱い言葉でネッロの背中を押す精神科の医者も,とても「良い顔」をしている。
彼らの成功の元となった寄せ木細工のように,いびつなピースが合わさって,美しい幾何学模様を織りなす世界こそ我らが目指すべき理想,というベタな感想が,するすると胸に湧き上がってくる感動作だ。
★★★★
(★★★★★が最高)
世界で初めて制定された精神病院廃絶法である「バザリア法」の施行によって,病院から実社会へと踏み出すこととなった元患者たちと,彼らの出発を自らのリスタートに重ねて協同組合を成功させようと奮闘する男(ネッロ)を描いた,イタリア・ゴールデン・グローブ賞(一体どんな賞なのかは良く分からないけれども)受賞作。
実話を元に構成された物語は,成功譚に付きものの高揚感は確保しつつも,善悪両面の運が支配する世界のやるせなさも漂わせつつ,笑わせながら賑やかに進んでいく。
冒頭に記したように,とにかくユニークな顔をした(失礼)患者たちが,全編にわたってヴィヴィッドに弾んでいるところが肝だ。
まるで自らの病気を全て知り尽くしていながらも,所詮そこからは脱却出来ない,という諦念に縛られていたようにすら見えた彼らが,自分で稼いだ金で生活することの尊さを知り,社会人としての尊厳を取り戻していく過程は,実に感動的であり,その輪が広がっていくことを示唆したラストシーンの余韻は忘れがたい。
また,どんなに妄想と強迫観念に押しつぶされそうになろうとも,強力な性欲はまた別の話である,ということを描いた「出張旅行」エピソードも泣かせる。ついに思いを果たした帰りの車中の歌声は,純粋で幸福なエネルギーに満ちている。
患者の中では,「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドを真似たかのように寡黙な理事長が笑わせる。ひたすらビールを呷りながら,熱い言葉でネッロの背中を押す精神科の医者も,とても「良い顔」をしている。
彼らの成功の元となった寄せ木細工のように,いびつなピースが合わさって,美しい幾何学模様を織りなす世界こそ我らが目指すべき理想,というベタな感想が,するすると胸に湧き上がってくる感動作だ。
★★★★
(★★★★★が最高)