子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「Red」:大人の恋愛映画として期待したのだが…
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雪道を走る車に結わえられた紅い布,深い雪に埋もれた公衆電話ボックス,フロントガラスに吹き付ける雪。ミステリアスな雰囲気で幕を開ける三島有紀子の新作「Red」は,過去を引き摺る二人(妻夫木聡と夏帆)の目的地の見えない疾走を描いた,近年では珍しいストレートな大人の恋愛映画だ。観る前は,どうしても鮮烈なデビュー作である「天然コケッコー」の印象が抜けない夏帆が,ついに「R15+」という鑑賞制限指定を受けた作品のヒロインを演じるまでになったのか,という作品そのものとは直接関係のない感慨が邪魔をしていたのだが,残念ながら観ている間もそんな先入観が薄れることはなかった。「どうみてもこれは『PG12』だろ」という,制作陣に対して失礼と言えばあまりに失礼な,レイティングに関する無駄なツッコミばかりが頭を駆け巡っていた,と正直に告白しなければならない。
裕福な夫と娘に囲まれ,姑との確執はあるものの,恵まれた日々を送っていた主婦塔子が,昔別れた建築家の男鞍田と再会し,再び愛し合うことによって,自らが陥っていた孤独を思い知る。しかし鞍田は病に冒され,余命幾ばくもないことが明らかになった時,二人が選んだのは孤独を抱えた同士として共に生きることだった。
映像はいつもの三島作品の水準を保ち,端正で品のある画面が続く。撮影,録音,照明,どれもしっかりとした仕事をしており,丁寧な絵作りが最後まで連続する。余貴美子や柄本佑ら,出番の少ない脇も,主人公二人をしっかりと支えて,物語の安定感は見事なまでに保たれている。しかし安定感はやがて既視感に繋がる。どこにも驚きがないのだ。
塔子が再び働き始めた職場の同僚小鷹(柄本佑)と夜の町を走り抜けるシーンは躍動感に満ちて美しいが,それが物語の中で有機的に機能することはない。塔子がつれない鞍田と小鷹との間で揺れ動くこともなければ,母親の心が離れていくのを感じた子供との間の葛藤も深く描かれることはない。
何よりも,おそらくは作品中でもっとも大事なシークエンスであったはずの,塔子と鞍田のセックスを描いた場面に,冒頭に記した「あの夏帆がこんなシーンを」という驚きがまったくないのだ。抱き合う二人のクローズアップが延々と続くだけで,そこには生の根源に迫る濃密な愛の交歓は感じられない。あるのは「夏帆が見せられるのはここ迄です」という所属事務所の意向だけだ。
この落胆を埋めてくれるのは,やはり神代辰巳だろう。大きく化ける素質を持っていると信じる夏帆には,是非とも「赫い髪の女」の宮下順子に学んで欲しいと思うのだが,それも「消毒」必至の今は無理な願いだろうか。
★★
(★★★★★が最高)
裕福な夫と娘に囲まれ,姑との確執はあるものの,恵まれた日々を送っていた主婦塔子が,昔別れた建築家の男鞍田と再会し,再び愛し合うことによって,自らが陥っていた孤独を思い知る。しかし鞍田は病に冒され,余命幾ばくもないことが明らかになった時,二人が選んだのは孤独を抱えた同士として共に生きることだった。
映像はいつもの三島作品の水準を保ち,端正で品のある画面が続く。撮影,録音,照明,どれもしっかりとした仕事をしており,丁寧な絵作りが最後まで連続する。余貴美子や柄本佑ら,出番の少ない脇も,主人公二人をしっかりと支えて,物語の安定感は見事なまでに保たれている。しかし安定感はやがて既視感に繋がる。どこにも驚きがないのだ。
塔子が再び働き始めた職場の同僚小鷹(柄本佑)と夜の町を走り抜けるシーンは躍動感に満ちて美しいが,それが物語の中で有機的に機能することはない。塔子がつれない鞍田と小鷹との間で揺れ動くこともなければ,母親の心が離れていくのを感じた子供との間の葛藤も深く描かれることはない。
何よりも,おそらくは作品中でもっとも大事なシークエンスであったはずの,塔子と鞍田のセックスを描いた場面に,冒頭に記した「あの夏帆がこんなシーンを」という驚きがまったくないのだ。抱き合う二人のクローズアップが延々と続くだけで,そこには生の根源に迫る濃密な愛の交歓は感じられない。あるのは「夏帆が見せられるのはここ迄です」という所属事務所の意向だけだ。
この落胆を埋めてくれるのは,やはり神代辰巳だろう。大きく化ける素質を持っていると信じる夏帆には,是非とも「赫い髪の女」の宮下順子に学んで欲しいと思うのだが,それも「消毒」必至の今は無理な願いだろうか。
★★
(★★★★★が最高)
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