子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「パレードへようこそ」:老若男女ゲイとレズ,みんな一緒に生きていく
イメルダ・スタウントンという女優には,イギリスの曇り空の下,どーんと腰を落として世間を見つめながら,世の男たちを一喝するおばあちゃん,というイメージがある。
代表作の「ヴェラ・ドレイク」は勿論,アメリカで撮った「ウッドストックがやってくる」でも,怒鳴られたら何も言い返せなくなるような迫力で,若者たちの冒険に睨みをきかせていたのが実に印象的だった。
そんなイメルダばあちゃんが「パレードへようこそ」では,何と踊るのだ。私のようなイメルダ推しは,もうそれだけで目頭が熱くなるというものだ。
文句なしの傑作「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」をはじめ,「ブラス!」のような佳作を産み出したというだけでも,サッチャー政権の圧政というのは歴史に記録されるべき出来事だと思っていたのだが,そんな反サッチャー・ムーヴィー群の中にとびきりの特等席をゲットした感のある作品が登場した。
演劇界出身のマシュー・ウォーチャスが撮り上げた「パレードへようこそ」は,「笑いと涙に包まれた人情劇」という使い古された褒め言葉をどうしても使いたくなるような,オーソドックスでありながら新しいコメディだ。
炭鉱閉鎖の危機に立ち上がった労働者のストを,ロンドンに住むゲイやレズビアンの活動家たちが応援しようとする。世間の寒風に晒されている少数派同士,旧弊な偏見を乗り越えて手をつないだ彼らは,国に戦いを挑んでいく,という風に進んでいくものと思っていたら,実話を基にした物語は私の予想を裏切りつつ,連帯の鉱脈を求めてウェールズの片田舎の中をくねくねと,しかし力強く掘り進んでいく。
ウォーチャスはLGSM(レズやゲイの団体)のメンバーひとりひとりの事情,炭鉱側の受け入れ容認派と反対派それぞれの想いを丹念に綴ることで,サッチャーに先導された強硬な大声が支配するイギリス社会全体の有り様を呟くような声で伝えようとする。
嫌がらせで落書きされた書店のウィンドウを,いつものことさ,と言わんばかりに静かに掃除するゲイの書店主人の姿が象徴的だ。
全編を通して80年代のヒット曲が,そんな彼らの懸命な姿の応援歌としてヴィヴィッドに響く。脳天気なトリックスターというイメージだったボーイ・ジョージの声も,この真摯で痛ましくも愉快な物語の伴奏曲として艶めかしく輝いている。サッチャーさん,こんな作品を届けてくれて,本当にありがとう。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
代表作の「ヴェラ・ドレイク」は勿論,アメリカで撮った「ウッドストックがやってくる」でも,怒鳴られたら何も言い返せなくなるような迫力で,若者たちの冒険に睨みをきかせていたのが実に印象的だった。
そんなイメルダばあちゃんが「パレードへようこそ」では,何と踊るのだ。私のようなイメルダ推しは,もうそれだけで目頭が熱くなるというものだ。
文句なしの傑作「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」をはじめ,「ブラス!」のような佳作を産み出したというだけでも,サッチャー政権の圧政というのは歴史に記録されるべき出来事だと思っていたのだが,そんな反サッチャー・ムーヴィー群の中にとびきりの特等席をゲットした感のある作品が登場した。
演劇界出身のマシュー・ウォーチャスが撮り上げた「パレードへようこそ」は,「笑いと涙に包まれた人情劇」という使い古された褒め言葉をどうしても使いたくなるような,オーソドックスでありながら新しいコメディだ。
炭鉱閉鎖の危機に立ち上がった労働者のストを,ロンドンに住むゲイやレズビアンの活動家たちが応援しようとする。世間の寒風に晒されている少数派同士,旧弊な偏見を乗り越えて手をつないだ彼らは,国に戦いを挑んでいく,という風に進んでいくものと思っていたら,実話を基にした物語は私の予想を裏切りつつ,連帯の鉱脈を求めてウェールズの片田舎の中をくねくねと,しかし力強く掘り進んでいく。
ウォーチャスはLGSM(レズやゲイの団体)のメンバーひとりひとりの事情,炭鉱側の受け入れ容認派と反対派それぞれの想いを丹念に綴ることで,サッチャーに先導された強硬な大声が支配するイギリス社会全体の有り様を呟くような声で伝えようとする。
嫌がらせで落書きされた書店のウィンドウを,いつものことさ,と言わんばかりに静かに掃除するゲイの書店主人の姿が象徴的だ。
全編を通して80年代のヒット曲が,そんな彼らの懸命な姿の応援歌としてヴィヴィッドに響く。脳天気なトリックスターというイメージだったボーイ・ジョージの声も,この真摯で痛ましくも愉快な物語の伴奏曲として艶めかしく輝いている。サッチャーさん,こんな作品を届けてくれて,本当にありがとう。
★★★★☆
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