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Beck「Modern Guilt」:なんと!1時間ちょっとで2度聴ける!

「モダン・ギルト」という言葉が持つイメージを,そのまま文字と写真にしたようなCDジャケット。全10曲で,34分弱。1曲だけのコラボの予定で始まりながら,最終的には全面的に関わることとなった,ナールズ・バークレーのDJデンジャー・マウスのプロデュース。
前作「The Information」に続くベックの2年振りの新作は,正にこれらの要素から想像される通り,密度の濃いビートの複合体となってその姿を現した。この万華鏡のような多面体の複雑な展開図を解く鍵は,ずばりリズムだ。

例えば,7曲目の「Replica」。重たく速いドラムンベースで幕を開け,透明なリヴァーブが印象的なギターが,音を間引きながら重なる。気怠げなヴォーカルが二つのリズムに橋を渡すように被さり,変幻自在なコーラスが後を引き取って,曲の骨格をくねくねと折り曲げる。
いつになく気合いの入ったプロダクションは,時に南部の香りを漂わせながらも,あくまでクールなリズムへのアプローチによって,リスナーを緊張感と開放感の間を行きつ戻りつさせるのだ。

クラシカルなロックンロールに,ディープサウスの匂いの濃厚な後打ち,更には6曲目のレゲエと,ヴァラエティに富んだリズムを取り揃え,実験的でありながら,完成された落ち着きのような空気も感じさせつつ,34分はあっという間に過ぎていく。

ことほど左様に汲めども尽きぬリズムの見事なショウケースではあるが,一方でベックの魅力の一つであった,編集感覚の横溢した脱力フォーク的な魅力については,ここではその痕跡を見つけることすら困難だ。
芯を外すことにより生まれる面白さを見出せないわけではないが,この見事に構築された美を堪能した後では,10年前はどうにも捉え所がないという印象が強かった「Mutations」が懐かしくなったりもするのだ。
「立派な作品」であることは間違いないのだが…。

★★★★
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